Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「メローネ、どうかな…変じゃない?」
「(固…)」
「め、メローネ…??」
数多の褒め言葉が
宇宙の彼方にすっ飛んで行って
戻って来ないくらい衝撃的で!!
Lei e un fiore.
Festa.(パーティ)
現在、夕方4時。
場所はフィレンツェの大きな駅近くのホテルの一室…。
「や……いや、すまない……あまりにもその……うん…。」
「に…似合ってない?サイズとか…色、とか…。」
「逆だ……似合い過ぎていて、語彙力が欠乏したんだ、マジでな。控えめに言って天使だ!女神だ!KAWAIIしベリッシモ過ぎる!今だってもっと歯の浮くような甘い台詞でもっともっとキミのドレスアップした姿を褒めちぎりたいのに……子どもが使う褒め言葉みたいなものしか出てこない!!」
「似合わないわけじゃなかったなら、良かった。」
ドレスアップの全てはこのフィレンツェ出張の時に開催される
大手企業や組織、グループなどが集うパーティへ参加するために準備したものであるため、
そこに参加するに至って、人に見せられないような姿で向かうワケにはいけない…。
youはあくまでも「仕事」として準備を整え、問題ないかのチェックをメローネに頼んだだけの軽い気持ちだったのだが…。
「ああああ!オレは……オレは…!イタリアーノ失格だ!!バレたらチームの皆に袋叩きにされちまう…!」
「そ、そんなに……き、気持ちは十二分に伝わったから、嬉しいよ、ありがとう。メローネもスーツ姿凄く似合ってるね。」
逆に褒め返してみたものの、彼は「ああ、うん、グラッツェ」くらいに軽く褒め言葉を流し、
再び頭を抱えてホテルのふかふかのベッドの上に倒れ込み、自己嫌悪の葛藤を続ける…。
女性は褒めてナンボ、特にそれが好きな相手や恋人であれば尚の事…といった土地で過ごす彼等には
日本人では考えようのないポリシーのようなものがあるのだろうな…と、youは思う事にした。
前日にメローネが会場を視察へ向かい、事前の準備も万端。
こうして少し早めに準備も整え、あとは余裕を持って会場へと向かうだけとなったのだが、
タクシーで移動する道中もブツブツと独り反省会を続けるメローネに、
流石に「もういいでしょ」と声を掛けるyou。
「メローネ、そろそろお仕事モードに入らないとじゃない?」
「ん、ああ、勿論youのことは全力で守るよ。安心して。」
でも今回のパーティの内容や集まる関係者では危険な事は恐らくないであろう…ともメローネは語る。
寧ろ、危なくなる要因があるとすれば、自分たちギャング組織の所為だと思われるため、
その辺りをタクシーの運転手に分からないよう、濁して説明する。
「それに、今回ボスの名代で一緒に行くのはブチャラティだろ?あんなの、誰も手出しして来ないって…。」
「やっぱり、ハルノくんが絶対の信頼をしている人なだけあるんだね。」
「これはオレの所感だが…ボスとブチャラティは似た系統だと思う…考え方とか、任務に於ける思考や判断基準とか……味方ならこの上なく心強いが、敵だと背筋が凍るくらいに「ヤバい」って相手だな。正しく、普段温厚なヤツ程…ってヤツだ。」
「そう、なんだ…?」
「…決して仲間の命や気持ちを軽視はしないから、部下からの信頼も絶大。まぁ、これはうちのリゾットにも当てはまるけど。」
「そうだね、うん。」
「感情は殺さない、だけど感情的にもならない…これ、どういう意味か分かる?」
「えっと……情が厚いので皆のことを大事に想ってるけど、迫られた選択によっては…ってこと…かな…?」
「ベネ、じゃあ、そんな状況に陥った時って、実際にそういう行動起こせると思う?」
「…わたしには無理かな…。」
「youだけじゃあない。多分、そういうのは実際「限られた人間」しかできないんだ。例えば、自棄になったり、自己犠牲だったり、誰かを切り捨てたり…確固たる意志で窮地に挑むってところくらいはオレや他のやつらも普段やってることだし、それはできる。」
「・・・。」
「だけど、その後にどれだけの道のりが続いていて、この先どう処理していけば目的の場所に辿り着けるのかの見極め…その途中で迫られる選択に対する「覚悟」、それって何回あると思う?多分相当なハズ。普通の人間がそんなに何度も精神ギリギリの選択を迫られて前向いて生きれるか?そんなの多分無理だ。マジで本当に鋼どころか「黄金の精神」みたいなのが無いと無理。」
「そう、だね……うん…。」
「ブチャラティやジョルノやリゾットは立場と生き方がもう「そうなってる」。オレやギアッチョ、他の奴等やブチャラティの部下なんかは毎日感情の大セールだろ……「人間」やってるなって思うぜ、本当。」
「人間……かぁ…。」
「オレだってyouが大事だからそんな選択をしようと思ったけど……でもやっぱりダメだっただろ?土台無理なんだよ、どれだけ割り切って考えようとしても、その度に感情が付いてきちまう…。」
「メローネ…。」
「結果的にオレはアンタのお陰で今凄く幸せになれてるが……もし彼等みたいになるのなら、得るものも絶大だけれど、手放さなきゃいけないものもきっと……オレ達には想像できないくらいあるハズなんだ…。」
「メローネは、ブチャラティのことを尊敬してるんだ?」
「まさか!」
「え、今のってそういう話じゃないの?」
「おいおいおい、何を聞いてたんだyou……「オレにはなれない」ってのは決して憧れから出た言葉なんかじゃあない。」
「で、では一体どういう…。」
「オレは「変態」かもしれないが、「人間」で良かったって話だろ。」
「は、ぁ…。」
「だからyouの傍にいられる。」
「!」
「黄金の精神なんかじゃあなくていい、オレが選んだのはきっとオレの人生の中で一番大事なものだったって言い切れる。」
「メローネ…。」
「そういう話。」
「ありがとう……今の言葉は間違いなく、ドレスを褒められるより嬉しいな……。」
「おっと……思わぬところで名誉挽回…。」
そうしてブチャラティやジョルノ、リゾット…。
人の上に立って指揮を執る者達の在り方についてひとしきり語った頃、2人を乗せたタクシーが目的のパーティー会場へと到着した。
タクシーの運転手に代金を支払い、2人で会場のエントランスへと向かう…。
「you!」
「ブチャラティ…さん!」
「ハハ、さんは不要かな。今日は同行ありがとう。普段のキミも素敵だけれど、ドレスアップした今日は一層綺麗だね。」
「またそんな……でもありがとうございます!こちらこそ、ご一緒できて光栄です…初流……ボスはお元気ですか?」
ほぼほぼ同時のタイミングで会場へと到着したブチャラティに声を掛けられ、近況を少し話す…。
「ああ、相変わらず多忙だけれどね。本当はこのパーティー…というか、キミに会いに来たがってたんだが…別の予定があって断念した。」
「そうだったんですね……わたしも久しぶりに会いたかったです。」
「キミがそう言っていたと伝えておくよ。」
「はい!」
「さて……じゃ、早速だが、今日の目的とキミにお願いしたいことを。受付を済ませたら歩きながら説明しよう。」
「分かりました!」
それから、ボスの名代として参加するブチャラティと、その通訳、そしてメローネはその警護の役目でパーティーの会場入りを果たし、
立食形式のホールで、給仕係から適当なシャンパングラスを受け取ったところで、本日の任務内容を説明するブチャラティ。
「会場内に数名、話しておきたい企業の重役がいる。オレも英語が話せれば問題は無いが、そうでない相手もいるらしい。you、キミにはオレが直接話せない場合の相手の通訳をお願いしたい。」
「勿論です、そのために此処に来たので!」
「ああ、心強いよ。では早速声掛けに向かおう。」
youの意気込みに対し、綺麗な笑顔で頷くブチャラティ。
それから3人で今後のパッショーネの運営に協力が必要、もしくは味方に引き入れることで
組織にとって有益になる企業やグループの重役に声を掛けて回った…。
・
・
・
・
そうして挨拶も終盤に差し掛かったところで、とある企業の女性に声を掛けたブチャラティ…。
「Hi, Good evening.」
「Excusez-moi, je ne parle pas l'anglais.」
「こんばんは」と丁寧に英語で声掛けをすれば、返って来たのは何とも流暢なフランス語。
「ごめんなさいね、英語は喋れないのよ」と間髪入れず、少しの申し訳無さも見せずに答えたブロンドの淑女。
明らかに敵対と警戒を感じる雰囲気をブチャラティに見せつけたのだが…。
「Ah, que c'est jolie!」
彼女は、彼の隣に立つyouを目にして、感嘆の声を上げる。
「Est-ce que vous e'tes japonaise?(貴女、日本人かしら?)」
「Oui, exactement.(はい、そうです)」
「Je m’y attendais!(やっぱり!)」
たった今、ブチャラティにぶつけていた氷のようなオーラは何処へか、
youの方をしっかりと向いて、女性はそれはもうにこにこと、嬉しそうに会話を始める。
「ハジメマシテ、ワタシ、ノ、ナマエ、ハ、ミレーユ、デス。」
「え!凄い、日本語ですね!!」
「ワタシ、ハ、ニホン、ガ、ダイスキ、デス!」
「そうなんですね!嬉しいです!」
イタリアの地で、まさかのフランス人と日本語で会話をする日が来るとは…と、
youはぱぁっと明るい表情で、ミレーユと名乗る女性と話を続ける。
挨拶程度の日本語は覚えたが、実際に使ってみるのは初めてだったと彼女は言う。
以降はフランス語で語ったことだが、彼女は元々日本の文化や芸術に興味を持ち、その昔一人で日本旅行に行った際に
日本人に沢山親切にしてもらったとの理由で、それから日本、ひいては日本人のことがとても好きになったとのこと。
「そうだったんですね…。」
「ええ、そうなのよ。それからは長い休みが取れる度に行っているわ。」
「何だか嬉しいです、こんなところで日本のことを好きだと言ってくださる方とお話できるなんて…わたしはyouと申します、お会い出来て光栄です、ミレーユさん。」
「可愛い名前ね。よろしく、you。」
差し出された綺麗な手を、少しだけ緊張気味で握り返すyou…。
「あ、ミレーユさん、一緒に来ているのがブローノと、メローネです。わたしはブローノの通訳として同行しました。」
「そうなの………ミレーユよ、よろしく。」
youが挨拶の合間のタイミングを縫って、ブチャラティとメローネを紹介。
何故自分が此処に来ているのか、主体は誰なのかをミレーユに説明する…。
彼女は日本人であるyou以外には興味はそそられないのか、ふーん…といった表情で
ブチャラティとメローネに挨拶をして握手を交わすと、すぐにまたyouとの会話を再開させる。
「ところで貴女、今日はキモノドレスじゃないのね、残念…京都に旅行に行った時に着せてもらったけれど、とても素敵よね。」
「そうですね…着物は……流石に持ってきてないですねぇ……。」
「写真とか無いの?見てみたいわ…。」
「着物の写真ですか?!いや…着物を着る機会がなかなか無いので……あ、でも浴衣ならあるかも…。」
確かに着物は日本の伝統的な衣服なのだが、現代人の普段着ではないため、
成人式や結婚式などイベントが無いとなかなかお目に掛かれない代物だ…。
youもまた同様であったようで、撮影した写真の履歴を遡っても着物姿を収めた写真は無いと判断。
しかしながら、浴衣であれば過去に行った祭りや、簡易的にはなるが温泉旅館などに宿泊した際の
寝間着として着用したものがあるかもしれない…と、youは個人用の携帯で写真の履歴を遡ってみる…。
案の定、日本にいた時のもので、友人達と夏祭りに行った際の浴衣の写真が奇跡的に数枚残っており、
youは「あった!」と声を上げて携帯の画面をミレーユに見せてみた。
「まぁっ!やだ、可愛い…浴衣は勿論だけれど、それを着た貴女も可愛らしいわ。」
「いえ、そんな……。」
「ほら、見て貴方達も!彼女の着物姿、とっても可愛いから!」
「(浴衣なんだけどなぁ……まぁ、外国の方には同じに見えるよね…。)」
youの考えていることは微塵も気付かず、ミレーユは何故かyouの浴衣姿を自慢すべく、
その場にいるブチャラティとメローネにディスプレイに映ったyouの写真を見せ始めた。
勿論、彼女たちは2人で別の言語で会話しているため、
ミレーユが何と呼びかけたのかは分からなかったが、youの携帯の画面を寄越したので、それを見ろという意味合いなのは理解できて、男性2名は「何だ?」と不思議そうな顔で画面を覗き込む。
「!!!」
「おお、日本の伝統的な民族衣装かな、これは……よく似合ってるな。」
恋人の貴重で特殊な衣装の写真に言葉も失ってしまったメローネと、
爽やかな笑顔で彼女を褒めるブチャラティ…。
「も、もういいですか?」
「ええ、ありがとう。また日本で着物を着てみたくなったわ。貴女ほど似合わないでしょうけど…。」
「わたしよりミレーユさんの方がずっとお美しいです……今のドレスも凄く似合ってますし、王族の方のようで…。」
「ふふ、ありがとう。」
「あ、それであの……わたしはミレーユさんともっと沢山お話をしたい気持ちがいっぱいなんですが……もしよろしければ、この……ブローノの話を聞いていただければと思っているんです…。」
「・・・。」
「すみません……嫌な思いをさせてしまいました…よね…?」
「いえ…構わないわ……こういう場だもの、そういうものだと思って割り切っているわ。」
「ミレーユさん…。」
「それに、ブローノ…だったかしら、この人が貴女を連れてきてくれたから日本についての話ができたのだし……そのお礼に話くらいは聞いてあげなくちゃね。」
「ありがとうございます!」
社交界のパーティーでは仕事の話を持ち出されることは少なくないし、割り切って対応すると言ってくれたミレーユ。
youはぱぁっと明るい顔で感謝の言葉をミレーユに伝え、ブチャラティに声を掛ける。
「ブチャラティ、ミレーユさんがお仕事の話を聞いてくださるそうです!」
「本当か、you…?」
「はい!何とお話すれば良いですか?」
「そうだな、まずはありがとうと、感謝を。それから……。」
・
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・
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無事にミレーユとの長めの仕事の話を終えて、一度一息吐いたパッショーネの3名(youはSPW財団だが)…。
スムーズに、しかも日本人ならではの丁寧な通訳をしてくれることで相手にも好印象を与えることができたと、youに感謝を伝えた後、
ブチャラティはその他に数人残っていた人物とも仕事の話をして、本日のパーティーの目的を全て遂行するに至った…。
「よし……これで一通りジョルノと話して決めた人物との対話は完了した。」
「お疲れ様でした、ブチャラティ!」
「ああ、youもよく通訳してくれた。気難しい相手もいたはずなのに……助かったよ、ありがとう。」
「とんでもないです!そもそもこれが仕事ですし!」
「はは、それもそうか。それから、特殊任務依頼チームのメローネ、君も事前の調査からよくやってくれた。データで受け取った事前調査の資料は実に精密で的確だった。オレのところのフーゴと同じくらいの仕事のクオリティ……優秀なんだな。リゾットにもそのように伝えておくよ。」
澄んだ眼差しでメローネを褒める蒼い瞳には微塵も嘘はなく、本心からの言葉だということが理解できた。
旧パッショーネの時には自分とは敵対する位置にあったチームの長に褒められるというのはメローネにとっては
何とも薄気味の悪い気持ちになるようで、内心では嘔吐(えず)きつつ、それを顔には出さず「それはどうも」と…
あくまでも幹部の1名に対しての礼儀を守って綺麗に一礼するに留めるのだった。
「さて…パーティーはあと数時間残っているが、目的を達したのであればオレはここにもう用は無くなるな。」
「そうなんですか?」
「ああ。もう少し折角着飾っているキミとパーティーを楽しみたい気持ちは大いにあるが…本当に残念だ。」
「ふふ、お世辞でも嬉しいです、ブチャラティ。」
「お世辞なもんか……本当にそう思ってるよ、まぁ、君と純粋にパーティーを楽しんできたなんて報告をしたら、ホラ、拗ねるだろう、ジョルノが。」
「あら、まぁ。」
「それと、オレはまた取り掛かる次の仕事があって……。」
「そう、なんですか…ブチャラティもボスも……忙殺されないように、ちゃんと休んでくださいね?」
「ああ、心配してくれてありがとう。」
「心配しますよ……お体ご自愛下さい。」
「グラッツェ。」
心から心配を寄せる表情でブチャラティを見上げると、彼もyouの心遣いを真摯に受け止め、
目を細めて「ありがとう」と感謝の言葉を返した…。
「では、オレはもうここを出るが、君らはもう少しパーティーを楽しんでくれて構わない。参加も撤退も自由に……ああ、でもここからは逆に仕事の話をしないように。もしそういった話をしてくる輩がいたら、即撤退してくれ。そういうことで……メローネ、youのことを頼む。」
「Si, Signore.(Yes, Sir.)」
「それではな、2人とも。良い夜を。」
そう言ってヒラヒラと手を振って、ブチャラティは爽やかな一陣の風のようにその場を離れ、パーティー会場から姿を消した…。
残されたyouとメローネは顔を見合わせて「どうする?」を話し合うことに…。
「えっと……どうしたらいいのかな…。」
「パーティーが終わるまであと2時間弱あるな……撤退して2人でフィレンツェの料理や観光に行ってもいいが……。」
「でも一度ホテルに戻らないとですね、着替えないと外出れないし…。」
「そうだな…どうし…。」
どうしたものかと零したところで、youとメローネのお腹がほぼ同時にぐぅーと鳴いた。
「「・・・。」」
「折角なんで夕飯、ここでいただいていきませんか?」
「ベネ、オレもそれが良いと思う。」
今まで仕事だと気を張っていたのが解放され、自分のことを考えられるようになったからかもしれないな…と、2人して笑う。
結局、youとメローネはパーティーの終わりまでとはいかないものの、小一時間程掛け、
パーティー会場に用意されたビュッフェを夕飯とし、会話の合間にシャンパンやワインを挟みながら、珍しくセレブリティな夕食の時間を過ごした…。
そうして、もう十分パーティーの雰囲気を楽しんだので帰ろうと、
会場から出て最後にトイレを済ませるべくパウダールームへと赴いたyou…。
「あっ!」
「あら!you!」
「ミレーユさん!」
「どう、あれからパーティーを楽しんでるかしら?」
「お陰様で、とても。沢山美味しいお料理もいただいちゃいました……ちょっとはしたなかったかな…。」
「そんなことないわ、遠慮なく食べれるものは食べて、飲むものもしっかり飲んでおきなさいな。」
「ありがとうございます……あ、そうだ、わたし達そろそろ帰ろうと思ってまして…今日は本当にありがとうございました。改めて、ブローノの話を聞いてくださって…感謝します。」
「いいのよ、話を聞いてみて、私にも悪い話じゃなかったし……。」
「あの……ミレーユさんの会社って……あ、いえ、何でもないです。」
「フフ……商談の話しかしなかったから、取り扱ってる商品が気になるのね。」
「お仕事の話はもうしないようにブローノから言われているので…お口チャックです!」
「やっぱり可愛いわね、貴女……ふふ…。」
先程のフランス人女性、ミレーユとバッタリトイレで遭遇し、本日のお礼を伝えたのだが、
ブチャラティに「ダメだ」と言われた仕事の話をうっかり尋ねそうになり、自重するyou…。
親の言いつけを守る子どものような彼女を見て、益々気に入ったらしいミレーユは、
己が小さな鞄をゴソゴソと漁り、小さな小瓶を取り出して、それをyouに手渡した。
栄養ドリンクより若干小さめのそれを受け取り、youはミレーユに尋ねる…。
「ミレーユさん、これは…。」
「試供品を差し上げるわ。私の会社で取り扱ってる商品の1つよ。何でそんなもの持ってきてるのかって?私も商談目的で売り込みたい時もあるの。だからその時のためだったり、たまにね、出張先で良い相手がいれば自分で使うこともあるから。」
「(相手…???)」
「自分で使うのが怖ければ、一緒に来たパートナーの子……メローネ、だったかしら?あの子に上げてもいいんじゃない?」
「えぇっ?!パートナー…?!」
「違うのかしら?さっきの商談中あの子は貴女だけのボディガードしてたみたいだったから。私が貴女にグイグイ話すのも気に入らないみたいだったし、ブローノの通訳で2人で会話してる時なんてもってのほかって目をしてたわ。瞬間瞬間だから、ブローノは話した感じ色恋沙汰は凄く鈍そうだから微塵も気付いていないでしょうけれど…。」
「そ、そうなんですか?!そ、それは大変失礼を!!」
「いいのよ。わたしが「そういう」感情に敏感なだけ。ああ、でもそういうことだから、もしあの子がyouのパートナーじゃないのなら、その試供品は渡さない方がいいわね。」
「え、え……ど、どういう意味でしょう…。」
「それは貴女、それが……あら。」
ミレーユが何か大事な事を言い掛けたところで、彼女の携帯がトイレに鳴り響いた。
彼女はサッと電話に出ると、残念な表情でyouに「ごめんなさいね、もう行くわ」と謝りのジェスチャーを見せて出て行ってしまった…。
そんな不思議なやり取りを経て、youはパーティ会場のエントランス付近に戻ると、
そこで待つ、どこぞの外人(ここは彼の住む国だが)モデルのように静かに佇むメローネに声を掛けた。
「メローネ、ごめんね、遅くなりました。トイレでバッタリ、先程挨拶したミレーユさんと会ったので…。」
「そう……平気か?」
「え、うん…?」
「ならいい、じゃあ、そろそろホテルへ戻ろうか。」
「うん、あ、メローネ、ちょっとお願いがあるんだけど。」
「ん?」
「わたしのバッグが小さくてもう入り切れなくて……もしポケットとかに入るようであれば入れててほしいんだけど…。」
「これは…?」
youはパーティー用の自分のバッグは小さすぎるため、もう何も入れることができないのだと、
先程ミレーユに貰った商品のサンプルである小瓶をメローネに手渡した。
「ガラス瓶だからズボンのポケットは避けた方がいいと思うんだけど……胸ポケットとかに入りそう?」
「それは問題ないが……それよりyou……キミ、何てものを貰ってきたんだ…。」
「え?どういう…。」
「これ、何か分かってるか?」
「いえ、全く…。」
「…だろうな…。」
「メローネは分かるの?」
「分かる。そもそも彼女が何の会社の重役かもオレは事前に調べてたしな……まぁ、今正にこれを見て実際、うちのボスが何で商談持ち掛けたか察したって感じだ。」
「えぇ?!そうなの…???」
それがどういう意味なのか、そもそもこの試供品は一体何なのかが分からないyouは、
メローネの意味深な言葉に戸惑うばかり…。
とりあえずは、その試供品の正体を知らない事には何も分からないままな気がする為、
今一度youはメローネにそのことを問うてみた。
「商談用のサンプルだけど、ミレーユさん自身も出張先で使うこともあるって……わたしにくれたんだけど…。」
「あー成程ね、流石フランス人。オレが言うのも何だが、矢張り男女ともに性に奔放だな!!」
「フランスは紳士淑女の国ですよ、ミレーユさんも素敵な方だったし。」
「あ、そう。で、キミはこれ、は何だと思う?」
「……うーん……リポD的な。」
「え、何、リポD。」
「あー……日本の栄養ドリンクです、滋養強壮剤?みたいな。ラベルの成分表にも品名は栄養剤って書いてありますよね。成分自体は詳しくないので見ても全く分かりませんが…。」
「おお、いい線いってるぜ。半分正解。」
「半分?」
「本当に聞きたい?」
「え、はい、うん……知りたいです!」
「本当にホント?後悔しない?」
「もう、勿体ぶらずに教えてください…!」
「仕方ないなぁ~……でも、大きな声で言うのは憚られるなぁ~…ちょっと耳貸して、you。」
「な、何ですかその顔……怖いです…!」
「え~~…。」
ニヤニヤという表現に近い、何とも変態的な表情でyouに傍に寄るように言うメローネ…。
若干警戒はするものの、小瓶の正体を知りたいという好奇心に負けて、
youは恐る恐るメローネのすぐ隣に立つ…。
するとすぐにメローネが少しだけ身体を屈めて、youの耳元を手で覆い隠し、彼女の耳元で囁いた…。
「それは栄養剤じゃあなく、催淫剤。」
「ひっ…?!」
「所謂「媚薬」ってヤツだ。」
「~~っぁ!」
とびきり低く甘い声で小瓶の正体を語り、最後に耳元をベロリと舐めてきたメローネ…。
youはその衝撃に全身をビクリと跳ねさせ、抑えられなかった甘い声が口を突いて出てきてしまう…。
「っ!め…メローネ!!」
「あーらら……まいったな……キミのとびきり可愛い声をこんなところで聞くとは……説明はホテルに着いてからにすればよかった……実に勿体ない!」
「そういう問題じゃないです!!」
「ベネ、オレのテゾーロは怒った顔も可愛いな……よし、よし、早くホテルへ戻ろう!」
「メローネ!」
「Ah, Mi perdoni(あぁ、すまない)、お詫びにオレが何でこれが商談の目的だと確信したか、帰りのタクシーで説明してあげよう、それで許してくれ。いいかな?」
「う~~それは確かに気になる……分かりました……。」
「ベネ!」
それでは早速帰るとしよう!と、youの背中に手を添えて歩き出すメローネ…。
体よく恋人からの本気の叱責を免れた上、とんでもなく可愛い反応まで見ることができてホクホク顔である…。
そうして2人はパーティー会場を出て、数台並んだタクシーの先頭車に乗り込んだ。
「それで、このサンプル品で商談の目的が理解できたのは何故?」
「彼女はフランスの大手健康食品会社の重役なんだよ。」
「ミレーユさん、健康食品会社の方だったんですね…。」
「そう、だが健康食品ってのは本当に幅広いモンでさ、ガキでも食えるシリアルから老人のためのサプリメントまで何でもござれなワケだ。」
「なる、ほど…確かに一口に「健康食品」って言っても様々ありますよね…。」
「そ。それでこれ「滋養強壮剤」名目の催淫剤だったり、他にもエチルアルコール含有の製品だったりね。ギリギリ違法にならないような……まぁ「裏」の主力製品の流通ルートの確保目的で声を掛けた……って感じだろう。勿論国によっては成分の規制が掛かる場合もあるだろうが。」
「なるほど……ギリギリ合法…。」
「そう言うコト。新制パッショーネは麻薬など非合法なものは取り扱わない極めてクリーンなギャングを目指している(らしい)ので、その流通にギリギリ合法な商品を扱えるのであればそれなりの利益になるであろうため、かな。あくまでもオレの予想だが……でも、多分7、8割正解じゃあないか?」
「ふぇえ……ぎ、ギリギリなクリーン…。」
「ギリギリでもクリーンならセーフ。そこはそう、アウトじゃキミんトコの財団からの支援が打ち切られるしね。」
「そ、そうだね…。」
「財団が撤退するなんて言われた日にはオレ、キミのこと攫わなきゃいけなくなっちまうし……ココはギリギリでも合法で頑張ってもらわないとな。」
「その場合、パッショーネに転職することになるかも…?」
「あはは、ギャングは会社じゃあないぜ、you。」
「そ、そうでした…。」
ついつい同じ空間で仕事をしていることで、彼らを自分と同じ会社員のような感覚で接してきたが、
よくよく改めて考えてみると、彼らはイタリアンギャング「パッショーネ」の構成員なのである。
だからと言って、今更怖気付いてメローネのことを想う気持ちを撤回するワケではないのだが、
一般的な恋人達と比べて様々な理由で離別する可能性が高いのかと、ふいに切なくなり、
youは傍にあったメローネの手をぎゅっと握った。
「ん、どうしたんだ、you?」
「ううん、何でも……。」
「何かあった?」
「何でも……ない、ただちょっと……傍にいたくなっただけ。」
「ベネ……キミの気持ちは分かったよ……おはようからおやすみまでトイレも風呂も関係なく、24時間四六時中片時も離れずキミの傍にいるよ……安心して。」
「メローネの怖いところは本気でそう言ってるところなんだよね……。」
「怖い?今のドキッとするところじゃないのか。」
「ある意味でね。」
切なくなった気持ちが秒で消失する発言をかますが、当の本人は全く失言だったとは思っていない様子…。
安定のメローネだな…と思いながら、ちょっとだけ遠い目を浮かべながら握った手をそーっと離すyouであった…。
(しかしすぐにまた繋がれて、そのままホテルに戻るまで離してもらえなかった。)
Festa.
パーティ
words from:yu-a
※「e'tes」は「e」の上に「`」が正しい表記となります。
*。゜.*。゜.*。゜.*