Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「メローネ、ちょっと相談があるんだけど…。」
「どうした?」
それはとある日の終業後。
Lei e un fiore.
Abiti da sera(イブニングドレス)
その日の報告書や日報の提出を終えて帰宅が可能となったyouとメローネ。
退勤の処理を終えて、事務所を出てすぐにyouが冒頭のように「相談がある」と声を掛けた…。
「持ってないものだから、どんなものを買えばいいか分からなくて……わたし…。」
「ベネ!もしかして際どい下着かい?」
「違います。」
「では避妊具だろうか?」
「は?」
「これもハズレか……あっ!まさかとは思うが大人の玩具…それはイイ!凄くイイが!ディ・モールト良くない!一人でスるくらいならオレがしっかり手伝…」
「メローネ。」
「Sono costernato(大変申し訳ございません)…。」
相変わらずの通常運転に、真顔でyouからの指摘が入る。
確かに主語が無かった自分の言葉も問題があったかとは思うが、
何故その発想に至るのか、本気でそのような内容だと思ったのかと問い詰めたくなるような
一方的な会話をぶつけてくるメローネに、呆れを通り越して驚きさえ抱いてしまうyou…。
小さく溜息を吐いて「違います」と言葉を漏らす。
「今度の出張のこと。2日目にパーティーがあるって言ってたでしょ…流石にドレスコードがあるんじゃないかと思って…。でも、何を着てけばいいか分からないし、そもそもパーティー用のドレスとか持ってなくて…。」
「ああ、そっちか。」
「(そっちって…)うん、メローネはそういう服、持ってる?」
「まぁ……普通にパーティーに参加する事は少なかったが、今までも潜入して調査する依頼だったりは結構あったから何着かは持ってるな…。」
「そうなんだ…今回の規模ではどんな服がいいのかとか、そういうのも併せて、メローネの経験上で構わないから、教えてほしかったの。」
「つまりはオレにyouのドレスを選ばせてくれるという事か?!」
「うん、お願いしたいかな…。」
「ディ・モールト!早速次に一緒の休みの日に買いに行こうじゃあないか!!」
ぱぁっと明るい顔でデートの約束を取り付けるメローネ。
ただでさえ綺麗な顔が更に輝くので、youはメローネの笑顔を直視できない!と顔を赤くして逸らす…。
デートできる事に加え、服まで選ばせてもらえるという特典にウハウハなメローネは
彼女の機微には気付いておらず、どの店にしようか、どのような服を着せようかと考えを逡巡させている様子…。
先程の変態的な発言のイメージを払拭する絶好の機会を知らないうちに逃すメローネなのであった…。
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出張の日があと2週間程に差し迫った頃、ちょうど休みが合致する日があったため約束通り、
メローネとyouは今回のパーティ用のドレスを見繕いに市街地の商業施設にやってきていた。
服だけでなく靴やその他の装飾品などもあるため、専門店を回るよりも効率がいいだろうということで、
話し合った結果、一挙に揃えられる場所を選択するに至った。
「you、これなんかどう?」
「ちょっとスカート丈が短いと思います…フォーマルな場なんですよね?ていうか短すぎて友人の結婚式でも着ないかも…。」
「そうか…確かに夜の開催だからイブニングドレスを選ばないといけないな……じゃあこっち!」
「タイト過ぎるし、スリット入りすぎじゃない?!貧弱貧弱ゥ!体系な日本人にはちょっとキツいですよ…。」
「そうか……知らん吸血鬼が見えた気がするが気のせいか……ではこっちはどうだ?」
「トップ部分が吊ってないと心許ないなぁ…。」
「…キミ、ドレス着る気あるか?」
「あります。メローネこそ、もう少しお淑やかなドレスをチョイスしてくれないかな。」
「ぐぬ……脚が見えた方が絶対イイと思うんだがなぁ…。」
メローネのツッコミは尤もだが、youの言い分も分かる…。
お互いどこまで妥協をするのかがポイントといったところだろう…。
ああでもない、こうでもない、これはどうだ、他に無いか…など、色々なタイプのドレスを結構な時間を掛けて探し回った2人…。
「…どうでしょう…。」
「お…おぉ!ディ・モールト!ディ・モールト!」
「本当…?」
「Si,Le sta molto bene!!(ああ、スゴク似合ってるよ!)」
「色々見たけど、これが一番良さそうな気がする…。」
「個人的にはもう少し露出が欲しいところだが……逆にその控えめな様子がキミらしくてイイと思う。」
「露出ねぇ……体型に自信が無いというのはすごく理由として大きくはあるけど…。」
「他にも理由が?」
「…メローネは嫌じゃない…?」
「オレ?」
「…わたしあまり……メローネ以外の人に肌…見せたくないなって…ちょっと思う…から…。」
「?!?!くぁwせdrftgyふじこlp?!!?」
「どうしたの?!凄いバグ起こったみたいな顔してるけど!!」
「ああ、その通りだよ!」
自分がコンピューターであれば、間違いなくバグが起こって処理できずオーバーヒートして壊れてるよ!と訴えるメローネ。
自分の好みの肌の露出の多めなドレスを着てもらえれば、それは勿論自分の性癖でもあるので嬉しいことこの上ないが、
そんな姿は他の相手にはできれば見せたくないなどと言われれば、もうそのように思考は動かざるを得ない…。
自分が見たい欲望より、他の男に彼女を見せたくない気持ちが勝つ……勝ってしまう…。
「…そんな事を考えながら服を選んでいたんだとすると……オレって自分で自分の首絞めてたんだな……もっと早く気持ちを汲み取ってやればよかった……すまない。」
「でも、イブニングドレスって基本的に露出する方が良いんだよね……さっきネットで調べた。」
「そうかもしれないが!キミの気持ちを聞いた後では全く持って肌を露出してほしいと思わなくなった!オレも大概現金だな……。」
「じゃあ、このドレスでいいかな?」
「ああ、きっとそのドレスが最適解だ。」
決まったのは、立体的で高級感のあるジャガード素材を使用したフィッシュテールデザインのドレス。
トップはワンショルダーデザインで適度な肌見せと、クラシカルな上品さのバランスが取れており、
ウエストはタックを効かせたデザインでフレアスカートとのメリハリがある。
後ろはロングドレスに見え、前からはメローネが希望する脚がスラリと見える仕様なので、
正に彼の言う通り「最適解」に間違いないだろう。
こうして彼らは、数時間ののち、ようやく着用するドレスを決めるに至った…。
その後はそれに似合う靴や装飾品等を一式揃え、出張の際のパーティーに挑む準備を完璧に整えた。
「流石に一式揃えるとなると凄い金額…。」
「旧パッショーネ時代のオレなら数か月先まで飯がエナジードリンクになること待ったなしの金額だな…。」
「いや、わたしもですよ…。」
「でもこれ、全部会社が持ってくれるんだろう?凄いな…。」
「でも私物化できない感じですね。あくまでも「保管しておく」感じだそうです。財団の他の方が使う機会があればすぐに貸し出せるようにしておく、っていう…。まぁ、経費で落とす名目でしょうが。」
「つまり売り払わなきゃOKってことか…成程な。」
「そういうことです。」
コクリと頷きながら、最後のアクセサリーを購入した店の店員に「あ、領収書お願いします」と依頼するyou。
そうして間に昼食を挟み、全ての買い物を終えた頃には夕刻をしっかり過ぎており、
どうせならばと夕飯も商業施設内で済ませて帰路へ着くこととなった…。
「you、明日って仕事だったよな?」
「ええ、はい。メローネは…確か。」
「オレは明日も休み。」
「そっか、いいなぁ…。」
「8時か……まだ解散するには早い時間だと思うんだ……帰りは勿論送っていくから、迷惑じゃあなければ、オレの家でゆっくりしていかない?」
「どうしようかな……じゃあ、お邪魔しようかな…。」
「ベネ!」
youの返事にメローネは綺麗な笑顔を作って寄越す。
今いる場所がちょうど2人の家の分岐点あたりだったため、
目的地が定まったことで、共にメローネの家を目指して向かった…。
そうして十数分程ののち、メローネは自宅のアパートの鍵を開けて彼女を迎え入れたのだが…。
「ようこそ、我が家へ!」
「そういえば、何気にメローネの家にお邪魔するのって初めてだよね。」
「そういえばそうだな……いつもキミの家でご馳走になっていたから……オレの家は滅茶苦茶散らかっているが気にせずに、遠慮せずズズイっと奥へ入ってくれ!」
「お、おじゃましま……わお…本当に散らかってる…。」
「はははは。」
玄関から廊下までは特に問題はなかったのだが、いざリビングに入ると、そこら中にペンや定規などの文具だったり、
紙屑やら多種多様なファイルなどが床に散乱しており、なかなかの散らかり具合…。
寧ろ、この状態を分かっていて何故自分の家に呼んだのかと尋ねたくなるくらいには部屋が片付いていない状況であった。
せめてもの救いは、彼があまり一人では自宅で食事をしないためか、
youが部屋の中を見渡して確認する限りは、飲食で出るようなゴミが無く、虫や異臭の害はないと見受けられるところ…。
「凄い散らかりようだけど……これ…。」
「今何か飲み物淹れるから、気にせずソファにでも座っててくれ。」
部屋がここまで散らかっていれば、普通は気にしない方が無理なのだが、
メローネは本気で気にしていないようで、鼻歌を歌いながらお湯を沸かしにキッチンへ入っていく…。
youはというと、ひとまず落ちている文房具を全て拾ってデスクの上にまとめ、
くしゃくしゃに丸めて捨てられている紙ごみをゴミ箱へ、散乱している用紙を全て回収した。
「あっ、ああー……片付けてくれたのか、悪い…。」
「勝手に拾ってごめんなさい…気になっちゃって…。」
「いや、いいんだ。落ちてるのは全部頭に入れたし、資料もデータでパソコンの中に既にまとめてあるものだから。」
2人分のカップを持ってリビングに戻ってきたメローネ。
youは資料をトントンとデスクの上で整列させ、空いているスペースに置いてから、
メローネと共にリビングのソファに着席した。
「…凄いね、メローネ……落ちてた紙も全部、地図とか、企業の情報や資料みたいだった。お仕事のヤツだよね?」
「ああ、まぁ、外勤の任務は下準備が大事だからな……特にスタンドが使えないオレには「臨機応変」が少し難しくてね……でも、そこまで大したことじゃあない、誰だってこれくらいは調べて、対応できるさ。」
「ううん、そんなことない……ギアッチョやリゾットがメローネのリサーチ力を頼りにするのが分かるよ…職場じゃなくて家でまで頑張ってるなんて……努力家なんだね、メローネは。」
「そうか?どうだろうな…任務を「こうしたら」「ああしたら」を考えるのは割と面白いから、家で趣味でやってるところがあるのかもしれないが……それを努力を称されると……何とも、少しむず痒いな……。」
「また1つ、メローネを好きになって良かったって思う理由が増えたね。」
「オレはキミを好きすぎて失禁しそうなんだが。」
「失禁はしないで?」
仕事のクオリティを高めるために尽力している事を、仲間にも見えないところで行うというのは、間違いなく素晴らしいことで…。
本人は「自分の趣味のようなものだから」とヘラヘラ笑ってはいるが、普通はなかなかできる事ではない…。
褒めた際の反応は通常通り変態的なものであったが、
それを差し引きしてもyouの心には深く届くものがあったらしい…。
彼女は徐にメローネの頭に手を伸ばすと、その綺麗なストレートの髪を上から優しく撫でてやった。
「でもやっぱり、凄いよ。偉いえらい…。」
「!!!?」
母親や教師が小さな子どもを褒めるように何度も「偉いね」と繰り返し言葉を掛けて、メローネの頭を撫でるyou…。
最初こそ戸惑ったものの、次第にそれを享受…そして最終的に物足りなさを感じてきたのか、
メローネはパシッと彼女の手首を掴み、じっと顔を覗き込んだ…。
「メ、メローネ…?」
「褒めてくれるのはディ・モールト有難いことだが……できることなら、別の方法が喜ばしいな…。」
「別の方法…?」
「Ti darei un bacio…?(君にキスしたいんだけど…)」
「えっと……んっ…!?」
許可を求められたので、戸惑いながらもそれに答えようとしたyouだったが、
先程の彼女からの嬉しい言葉だったり、褒めてくれる内容だっり、頭を撫でる行為だったりと…。
決して1つでは言い表せない様々な要因が重なり、我慢の限界を超えたメローネは
youの両頬に手を添えて、ぎゅっと唇を押し付けた。
「メ…。」
「シッ…。」
「・・・。」
「Puoi aprire la bocca per me…?(口を開けてくれるかい?)」
決して無理矢理というわけではないが、断ることはしないでくれるか?というように、
メローネは優しい誘導でキスの続きを促す…。
戸惑いながら僅かだけ開かれた口の隙間を縫って、ぬるりとメローネの舌が大胆に入り込むと、
歯列をなぞられ、舌を絡め取られて、味わうようにゆっくりと、口内を遊ばれる…。
「んっ……ふ…。」
「・・・。」
舌使いが変わる度にビクビクと肩を震わせるyouが可愛くて、
メローネは頬に添えていた手を彼女の耳や首筋に這わせたり、腕を滑らせて更なる反応を愉しんでしまう。
全ての甘い刺激に免疫も耐性も皆無なyouが自分を支えられなくなり、縋るようにメローネの胸に両手を添えれば、
彼はもう辛抱たまらないとばかりにyouを掻き抱くと、キスを続けたままで彼女の身体をそっとソファに押し倒す…。
「っ……ぁ、め…ろ、ね…。」
「you……。」
続け過ぎた深いキスで上手く呼吸ができなかったのか、はぁはぁと大きく呼吸をして上下する胸に、
蕩けそうな表情に潤んだ瞳、自分の名前を微かに呼ぶ声……。
視覚に触覚に聴覚に、全てに於いて性的欲求を刺激する要素しかなく、
メローネは自分の下半身がどうしようもなく熱を帯びていくのを感じていた。
「ッ……!」
「メローネ…わたし…。」
「you……もし…。」
その続きの言葉がどのように続くかはメローネにもyouにも分からなかったのだが、
ただ、この甘ったるい遣り取りはまだ続くべきものだと、youが何も言わずにゆっくりと頷いた。
しかし…
メローネがyouのシャツのボタンを外し、自身も上半身を裸にして彼女の下着を外すべく、
胸に手を添えたところで、一度ビクッと彼女の身体が全身跳ねた。
「ぅ……っ、あ……ゃ…ごめ…ごめ、なさ…。」
「you…!」
明らかに動揺した声色で謝罪の言葉が発されると、彼女は全身に鳥肌を立たせて、小刻みに震え始めた。
先程まで蕩けそうな表情でメローネを見つめていた目は、彼から視線を逸らし、
真っ青な顔で、遠い何処かを見ているように焦点が合わなくなっている様子…。
明らかに強烈な心的外傷体験のフラッシュバックが見て取れる状況に、
メローネの表情が一瞬で凍り付いた。
「you、you、大丈夫、大丈夫だ、何もしない、安心するんだ。」
「っ…う、ごめんなさい…ごめ、なさ…。」
「you、オレを見て。」
「ぅ、うう……。」
メローネはyouの身体を抱き起した後、両頬をしっかりと掴み、動揺する彼女と顔を突き合わせる。
過去に受けたショックからの恐怖心と、目の前にいるメローネに対する安堵感と罪悪感で、youの目から涙が溢れた…。
「っ…う、ぁ……っメローネ…ぇ…。」
「ああ……大丈夫だ……誰もキミを傷付けたりしないから。」
「ごめんなさい…っ…。」
「キミが謝る必要なんて無い……それだけは絶対に、絶対に確かなんだ。」
そう言って、メローネはyouを抱きしめる…。
youもまたメローネの首に腕を回し、まるで怖い夢から覚めた子どものように、ぎゅうっとしがみついた。
「何があっても、愛してる……だから、大丈夫。」
「…メローネ…わたし…。」
「何も言わなくていい。キミは何も気にしなくていい。」
「っ……。」
何度も安心させるための言葉を掛けてくれるメローネに、youの涙は止まらなくなる…。
肩を震わせて、彼女は自分が口にできる精一杯の言葉だけを口にした…。
「…ごめん…ごめんね…。」
「全然、構わないよ。」
「わたし、メローネが好き……ごめんなさい…大好きなの…。」
「ディ・モールト……そんなの、謝らなくったっていいじゃあないか……寧ろ感謝すべき言葉だろ…グラッツェ、you…。」
「だから申し訳なくて……っ…!」
「前にも言っただろ……オレはyouから愛情をもらえて傍にいられれば、それでもいいって。」
「わ……っ…わたしが、いやなの……。」
「おっと…。」
「わたしは……ちゃんと……メローネのものになりたい…。」
「・・・。」
思いも掛けない彼女の言葉に、一瞬理解が追い付かずフリーズするメローネ…。
暫しの沈黙ののち、恐る恐る身体を離してお互いの顔を見合わせるようにして、問い掛けた…。
「い……今の、それは……つまりその……オレと…。」
「そういうこと、です…。」
「そうか……それなら猶更……いつまでも待てるな。」
「メローネ…。」
名前を呼ばれて、ふっと優しく笑みを浮かべると、
メローネは彼女の目尻から幾度となく零れ落ちる涙を指で掬う…。
「なぁ、you、今日はキミを一人にしたくない…。」
「え…。」
「キミ、家に帰ったら一人で泣くだろ、絶対。」
「ぅ…?ど…どう、かな……。」
「明日、事務所までバイクで送るから、今日はココに泊まっていけよ。」
「えぇっ…!?」
「何もしない…というか今の話で何かできると思うか?」
「難しいかな…。」
「そういうこと。」
「迷惑じゃ…。」
「迷惑なんかじゃあない……一人で泣かせたくない。一緒にいよう。」
「…ありがとう…メローネ…。」
「ん、もう一声。」
「大好きです。」
「ベネ!勿論オレもさ。」
メローネが掛けてくれる深い思いやりの言葉に答え続けることで、
ただ単純に目の前の恋人の傍にいたいという感情だけに集中することができたyou…。
気付けば身体の震えも動悸も収まっており、涙も少し乾いてきた様子…。
「もう大丈夫そうか?」
「うん……メローネのお陰で…。」
「そうか、良かった……。」
ぽむぽむと彼女の頭を撫でると、メローネはソファから立ち上がる。
「んー…ちょっと待っていてくれ……確か予備の歯ブラシがあった気がする……着替えは無いから同じ服を明日も着ないとだが……寝る時の着替えくらいは……。」
ほぼほぼ独り言のように今からのことを呟きながら、部屋をあちこち移動するメローネ…。
暫くした後、できる限りの準備ができたようで、説明のために再びリビングのソファまで戻って来た。
「バスルームに新しい歯ブラシを出しておいた。それと、シャワー掛かるだろ?シャンプーやソープなんかは勝手に使ってくれて構わないから。」
「え、あ、ありがとう!」
「あー、でもパジャマが無いんだ。そもそもオレが使わないってのもあるんだが…。」
「ああ、ちゃんとしたパジャマじゃなくて、シャツとスウェットが寝間着とかそういう…。」
「いや、オレはいつも下着だけ。パンツだけ。たまに裸。」
「ああ、そういう………。」
「探してみたがイイ感じのシャツとかが無くてな…。」
「気にしないで、今の服でそのまま寝るよ…。」
「悪いが、これしか……これを着て寝てもらってもいいだろうか…。」
「なんそれ。」
メローネが申し訳なさそうにyouに出してきたのは
片側が大きく露出された形容し難い面積の薄い奇妙な代物……ではなく、一応「服」。
片腕はタンクトップ、もう片腕は七分程の袖で、上半身部分が一部切り取られたように布が無いのだ…。
いっそ全てが黒一色であればまだハイセンスなお洒落着とも言えたかもしれないが、
謎に明るいピンク系の二重丸が散りばめられており、どうにも変態的としか形容のしようがない服である…。
「パリコレの衣装か何かですか。」
「いいや、全然。昔オレが着てた服。」
「これ……着てたの…?」
「you。」
「は、はい…。」
「貸せる服がこれしか、無いんだ。」
「そんな事ないですよね!?絶対もっと他にTシャツとかYシャツとか!!」
「これしか、無いんだ。」
あまりにも揺るぎない程の断言…。
確かにメローネの出してきた服は奇抜過ぎるが、
この家の家主はメローネであり、youはその家主に服を借りる立場…。
「貸せる服が無い」と言われればそれしか選択肢は無いのである。
あとは拒否して今の服を着て寝るか、泊まる事を諦めて自宅へ帰ることだが、
前者は翌日が仕事なのでできれば避けたいし、後者は後者で、今はもう、家に帰って一人になるのが辛い日だと自覚している…。
youはメローネと見つめ合ってゴクリと固唾を飲み…。
そして…。
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・
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「はぁあ…っ……ディ・モールト!ディ・モールト最高だ!」
「っ……メローネ、これちょっと…わたしには大きい…!」
「みたいだな……あちこち際どく見えそうで見えなくて……オレの目が幸せで飛び出しそうだ……(主に邪な意味で)」
「な、何か羽織るもの……バスタオルとかでいいので借りたい…んだけど…。」
「えぇ……まぁ、それくらい仕方ないか……。」
「し、仕方ないって…!」
「はい、どうぞ。」
「あ、ありがと…。」
「オレもシャワー浴びてくるか……youはベッドで待ってて。先に寝てても構わない。」
「えっ、あ……!」
「A dopo!(また後で!)」
youにヒラヒラと手を振って、メローネは交代でバスルームへと入っていってしまった。
残されたyouは小さく「どうしよう」と呟く…。
「ベッドで待ってて…って……わたしはソファで寝るべきなのに…。」
メローネの家なのだから、家主のベッドを勝手に占領するワケにはいかない…と…。
そう判断して、youは若干唸りながら、リビングのソファに再び着席する…。
「ちょっと…いやかなり寒いかもだけど……ちょうどバスタオルをもらったし……ブランケット代わりにして…と。」
実際に寝られるか確認するために横になってみると、ソファもそこまで固くなく、
意外にも人がちゃんと寝られるような様子だったため、安心するyou。
もしかすると、ギアッチョやホルマジオあたりはメローネともよく飲みに行っているし、
このソファであれば、家に泊まったりすることもあったかもしれないなと考えた…。
それからややあって…。
お風呂から上がったメローネがリビングに戻ると、ソファの上で、
ブランケット代わりに先程渡したバスタオルに包まってスヤスヤと寝息を立てる恋人の姿が目に入ってきた。
「マンマミーア……クソッタレなオレの家にアンジェラ(天使)がいる…!!」
ソファの前に膝を付き(というか最早崩れ落ちた)、ワナワナと震えながらyouの寝顔を覗き込む…。
たった今しがたバスルームで煩悩と性欲を全てぶちまけて発散させ、体内をスッキリさせて出て来たというのに、
再び下腹部に溜まっていく欲望の何たることか!と鼻息荒く床で悶えるメローネ…。
ひとしきり己の欲望と奮闘し、最後に深ーい溜息を吐いてメローネの天使…否、恋人に囁くように呼び掛ける…。
「you…。」
「ん…。」
「ベッドで寝ていいと言ったのに……ソファでこんなタオル一枚なんて、風邪を引いちまうだろう……起きて、you。」
「んん……ぁ…めろ、ね…。」
「やぁ、オレのアンジェラ……場所を移動するから、掴まって。」
「ん…でも…ベッドは……めろねが…寝る、し…。」
寝ぼけながらも、家主のベッドに寝るのは申し訳ないと答えるyouだったが、
いざメローネに身体を抱きかかえられると、無意識に腕を回してその身体にくっ付いた。
リビングからベッドルームへ移動して、彼女の身体をいつも自分が寝ているベッドに一度下ろし、
片手で布団を捲ると、彼女と共に自分の身体もその中に滑り込ませる…。
「お…おお……youが……オレの横でオレのベッドで寝ている……ッツ!!」
「んぅ……。」
「?!」
どうやら、先程まで薄いバスタオル1枚で寒かったらしいyou…。
布団の中に入った上、すぐ傍にあたたかな体温を感じたことで、その温もりに包まれたいと、
彼女はメローネの胸に手を当てて、全身で擦り寄った。
「ん……あったかい…。」
「あばばば……爆発する……何かが爆発する…!!(主に下半身の)」
「めろ……ね…。」
「おおおお、落ち着け、落ち着け、鎮まれ、鎮まれ…オレの下半身…!(やっぱり下半身)」
バクバクと跳ねる心臓を落ち着かせようと、スーハー…とベッドの中で大きく深呼吸を繰り返すメローネ…。
神など信じていないと以前豪語したにも関わらず、基本的には子どもの頃から身近にあるカトリックの教えは切り離せないようで、無意識に聖書の一節をブツブツと諳んじる…。
ふいにyouに目を落とすと、自分の奮闘や我慢を知らない彼女は、既にスゥスゥと小さな寝息を立て始めていた。
「…you……。」
「・・・。」
健やかな寝顔に少しばかり冷静さが戻る…。
理性を失くして無理矢理襲おうものなら、この穏やかな寝顔も、信頼も何もかもを手放すことになるのだと…。
だとすれば、この先、自分の傍に彼女がいない未来など、1mmも想像したくもないワケで…。
小さく、自分に対しての呆れの溜息を吐いて、メローネは横で眠るyouの髪を優しく撫でた…。
「ゴメンな、you……ちゃんと我慢するよ、大丈夫。」
「ん…。」
「ん……………ん゛?!」
youの寝顔にばかり気を取られていたが、布団の隙間、少しだけ見えている彼女と自分の密着した身体の一部…。
視線をそこに映せば、無理矢理彼女に着せた以前の自分の仕事着である奇抜な服が見えるのだが、
サイズが合っていない所為で、片側の袖が肩の下までずり落ちて、
それに伴って胸元の部分の布の位置もずれていることで、
ほぼほぼ素肌の胸が自分の腹の少し上あたりに押し付けられていることに気付いてしまう…。
「(Dioーーーーー!!!(神様ぁああああ!!!))」
それこそ、彼女に出会う前の自分であれば、女性の裸だろうが痴態だろうが何だろうが、
相対する相手にこんなにも心臓を跳ねさせることなど毛程もなかっただろうが、
心底惚れこんだ相手を前にすれば人間はこうも感情が推移し、情緒が不安定になるのだろうかと…。
今の自分は変態どころか、成人向け雑誌を直視できない思春期の子どもレベルに成り下がっており、
これではマンモーニのペッシにすら笑われてしまうだろうとメローネは自らを薄ら笑う…。
「(あー……でも身体は正直なんだよなぁ…。)」
眠っている彼女は気付かないままだろうが、明らかに質感の変化を感じる下半身。
ググ…と、youのお腹辺りにめり込んでいくが、止める術も無く…。
「ああ、こんな変態ですまない」と心の中で謝罪しながら目を閉じた刹那…。
「ろ…ーね…。」
「!!」
名を呼ばれたらしく、驚きで目を見開いたのだが、そこには変わらず目を瞑って幸せそうに眠るyouがおり、
寝言だったのだと分かり、小さく息を吐いたメローネだったが…。
「zozzoni…(えっち)。」
「?!~~~!!!」
小さく呟いた言葉は起きていて発されたものなのか、
それとも腹に伝わる感触から無意識で口を突いて出たものなのか…。
いずれにせよ、その鋭い指摘が心情に突き刺さったことや、言葉の選び方に性癖を抉られたなど、
襲い来る様々な波に耐えきれなくなったメローネが意識を手放してしまったため、
真相は闇の中に埋もれるのであった…。
Abiti da sera
イブニングドレス
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*