Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「でも良かったね、youが思い出してくれて。」
「それはそうなんだが……色々と、な…。」
両手放しには喜べない部分もある、と
少し口を尖らせてメローネはジェラートに答えた。
Lei e un fiore.
perverso ragazzo(変態)!
youがメローネのことを思い出し、彼の言葉が理解できるようになって…
というよりも、気持ちを確認し合い、お互い好きでいることを諦めないと納得した日。
雨に濡れたまま2人してそのまま仮眠室で寝落ちしてしまったことで、
これまた2人して風邪を引いてしまい、2日程休むことになってしまったメローネとyou。
本日、youは元々休日だったため、出勤はしていないが、
復帰したメローネが事務所に来るや否や、その日の出勤メンバーから質問の嵐となった。
何故2人して雨に濡れて同じベッドで寝落ちていたのか、結局言葉は分かるようになったのか、
その他にも色々、根掘り葉掘り(ギアッチョの前では禁止用語だが)聞かれたが、
「自分だけが語っていい話じゃあないから」と、のらりくらり返答を交わして逃げたメローネ…。
だがしかし、他のメンバーは良くとも、彼…ジェラートだけはそれを良しとせず、
これこうして…。
「おれが書くのを手伝ったyouのメローネへの手紙が、あの日事務所の床にくしゃくしゃにして捨てられてたんだけど、どういうことなの?」と、休憩時間にメローネに声を掛けてきた。
彼女のことを傷付けたのであれば絶対に許さない、皆に頼んで制裁してもらう、とでも言いそうな顔付きで迫られたため、
これは逃げられないと踏んだメローネは、ひとまず事の経緯を軽くだがジェラートにだけは話して聞かせた。
「そっか……でも良かったね、youが思い出してくれて。」
「それはそうなんだが……色々と、な…。」
自分のことを思い出して、言葉が理解できるようになったことは勿論この上なく喜ばしいし、
その上、彼女の心が自分に向けられていることが分かったことも幸せ以外の何物でもない。
そこに於ける弊害は未知数なので、これから自分と彼女が向き合って知っていくことになるのだろう。
そして、彼女が自分を思い出したことで、あの雨の日に起こった事件は彼女の心と身体を深く傷付けたと、ハッキリと分かる弊害もある。
「色々あっても、きっと大丈夫だよ。メローネがyouのこと、もう突き放したりしないなら、きっと。」
「・・・しないな。というか、もう二度と離してやれないくらいなんだが…。」
「ふふ、ご馳走様。」
「子ども相手に何惚気てんだオレは……ゴメン、ジェラート、今の忘れて。」
「気にしない気にしない。」
参ったな…と、口元を抑えて自分の気持ちの緩みを反省するメローネに対し、
寧ろ貴重な、大人の恋の話をありがとう、と歯を見せて笑うジェラート。
一呼吸置いた後、彼はメローネが心配しているという、件の事件に関しての感想について話し始めた。
「事件の事はさ……本当はちょっと心配してたけど、でも今はもう安心した。」
「何で言い切れる?」
「おれがソルベに出会ったように、メローネがyouの傍にいるって言ったから。」
「・・・。」
「おれの日常は「そういうこと」が繰り返されてたから、正直いつ死んでもいいって思ってたんだ……でも、ソルベに出会って、助けてもらって…皆と出会って……今は生きるのが楽しい。だから、きっとyouは大丈夫。すぐには難しくても。」
「……ジェラートは強いな、ディ・モールト、強いヤツだ。」
「へへ……ギャングに向いてる?」
「向いてる向いてる。だってオレもそうだったから、まぁ、もうマジで忘れたけど。」
「え…?」
「グラッツェ・ミッレ、ジェラート。youのことは心も身体も、何があってももうオレが守るから大丈夫だって、自信持って言うことにするよ。」
うっかりなのか、もしくはジェラートにだからこそ敢えて口を滑らせたのか…それとも意味深なだけで特に深い意味は無いのか分からないような顔で、
ポン…とジェラートの肩を軽く叩いて、メローネは「オレは仕事に戻るから、ジェラートも勉強頑張って」と事務室へと戻っていった。
それから午後の仕事を終え、定時を迎えると、メローネは速やかに帰宅の準備を始めた。
きっちり時間内に仕事が終わったというのもの勿論あるし、病み上がりの身体で無理もしたくない。
おまけにその場に居残れば、必ず飛び出してくるであろう自分とyouに対しての質問の数々…。
更に外勤で遅番の者達が戻ってきたら、それこそ自分にとっては事務室が地獄と化すはず…。
これは早々に退散すべきと判断し、メローネは「悪いが病み上がりだから今日は早めに帰る」と大きく宣言。
・・・したのだが。
「とりあえず明日youが出勤したら、仕事始める前にお前ら2人、何があったかちゃんと話せよなぁ~。」
「そうそう、オイラ達皆心配したのに、いつの間にか仲直りしていつも通りになったから心配しないで~なんて狡いからね?オレが許しても兄貴が絶対許さないっスよ…。」
「ああ、後、youの見舞い行くんならついでにこないだ店で買ってた冷蔵庫のプリン持ってっとけよ、あれ早めに食わないとだろ。」
本日内勤で一緒に事務室で仕事をしていたホルマジオとペッシに説明放棄は許さないと釘を刺され、
しかも見事、早々帰ろうとする魂胆まで見抜かれていた。
「うげ」と苦虫を噛み潰したような顔をして、2人を見れば、勿論逆にジロリと睨み返されたので、
メローネは渋々「分かった分かった」と小さく零して事務所を出る事となった。
(勿論冷蔵庫のプリンは回収して)
事務所を出て、バイクを駐車している場所へと向かいながら、メローネは携帯を取り出して電話を掛ける。
数コールののち「もしもし」と、聞こえてきた柔らかな声に思わず口元が緩む…。
「チャオ、you。今、家にいる?」
『チャオ、メローネ。うん、家にいるよ…身体はなんともないけど、ちょっと咳が出るから外に出るのもなぁと思って。』
「やっぱりそうか、あのさ、今仕事終わって帰るんだけど…帰りじなに夕飯を何かPorto via(テイクアウト)しようかと思うんだ。それで…良かったらyouの分も買って届けようかと思ってるんだが……そっちに行ってもいいか?」
『え、うん、夕飯何も考えてなかったから正直凄く助かる…!けど、いいの…?わざわざ申し訳ない…。』
「ああ、全然構わない。何が食べたい?」
『メローネの食べたいものでいいよ。』
「オレの食べたいものか……うーん…(オレが食べたいのはyou一択なんだがなぁ…)…あ、ここは趣向を変えてハンバーガーなんてどうだ?美味い店を知ってる。」
『イタリアでのハンバーガー!意外です、それは採用です!食欲は全然あります!』
「ベネ!では今日の夕食はアメリカーノでいこう!」
『あ、あの!こっちにどのくらいに着くかな?』
「ん?もう待ちきれないのか、キミは相変わらずgolosa(食いしん坊)だな……そうだな……バイクで店に寄って…まぁ、遅くても今から1時間か1時間半も掛からないくらいじゃあないか?」
『わ、分かった…!それまでに準備します!』
「準備…?」
家で待つだけなのに何の?と思って首を傾げるメローネ。
youはすぐに「何でもない!」と焦ったように言葉を濁した。
気になるので追及したい気持ちもあったが、駐車場に着いたことと、
さっさと夕飯を買って早く彼女に会いたいという気持ちが勝ったため、そこで素直に電話を切る事した。
「じゃあ、また後で。着いたらまた連絡する。」
『はい!お待ちしてます!』
彼女の丁寧な言葉で締めくくられた電話を切ると、思ったより自然に会話ができたことに安堵感が押し寄せる…。
だがしかし…
もし数日前に交わした言葉の数々とお互いの気持ちが、風邪の熱でまた彼女の頭からスポーンと抜け落ちてしまっていたら、
ちょっと立ち直れないかもしれないぞ…と、ちょっとだけ不安を抱きつつ、メローネはバイクに跨り、エンジンを掛けた…。
・
・
・
・
「you、着いたよ。」
『わかりました!ちょっと待って、今開けます!』
youの家の近くにバイクを停め、アパートのインターフォンで到着を伝えれば、
オートロックのエントランスの鍵が開く。
目的の部屋の前までやってきて、最後の鍵を開錠してもらえば、
数日前から自分の恋人になった(ハズの)愛おしい女性と、随分久しく訪れていなかった彼女の家の玄関が目に映る…。
「いらっしゃい」と優しい笑みで自分を見上げる顔と目が合えば、
心臓がバクバクと煩く騒ぎだし、思わず手に持った夕飯を取り落してしまいそうになってしまう。
今まであれほど拒絶して視線も合わせないようにしていたのに、
ひとたび傍にいられる名目を手にすれば、キスやハグの愛情表現をしたくてたまらなくなる。
何と現金なことか…と、自分を省みてその愛情表現を自重するメローネだった。
「どうぞ、メローネ。」
「ああ、ありがとう。」
「おかえりなさい、お仕事お疲れ様。」
「ディ・モールト…ベネ…………オレ、いつの間にyouの旦那になったんだっけ…。」
「急にどうした?!」
メローネ的には帰宅後の挨拶が夫婦の遣り取りに思えたらしく、
一人で口元を抑えて、悶える身体を必死で抑えている様子…。
「よく分からないけど、身体は大丈夫…?あと頭も?病み上がりなのに出勤して大変じゃなかった?」
「ああ、オレは平気だ。熱もう全くないし、ほぼほぼ咳も出てないしな。頭も問題ない、うん、ディ・モールト酷いな、you。」
「そっか、それなら良かった。」
「youの方は大丈夫だったか?」
「ありがとう、大丈夫。わたしもほぼ熱は無いし、ちょっと咳が出るくらい。明日は出勤できると思う。」
「ベネ!だが無理は禁物だからな。」
ポム、と軽く頭を撫でると、youは嬉しそうに「ありがとう」と微笑む。
再び襲ってくる愛情表現をしたい欲に駆られ、ぐっとそれを制すると、
メローネは話題を変えるべく買ってきた夕飯を彼女に手渡す。
「はい、これ。今日は持ち帰りだけど、そのうち一緒に食べに行こう、その場で食べるともっと美味いから。あと、事務所の冷蔵庫のプリン回収してきた。」
「わ!ありがとうございます!!美味しそうな匂い……お腹空いてきた…もうご飯にしても?」
「勿論、オレもちょうど腹が減って来たところだった。」
「じゃあ、準備しますね!」
「サラダだけは作ったので」、とキッチンに入っていき、夕飯の準備を始めるyou。
メローネも飲み物などを準備し手伝い、とても久しぶりの彼女の家での夕飯を摂る…。
口いっぱいにハンバーガーを頬張る姿が見ていて気持ち良い上、
咀嚼すればその味わいに舌鼓を打って恍惚の表情を浮かべるので、
思わず自分が食べることを忘れてしまうほど彼女を観察することに集中してしまうメローネ。
途中、彼女の「メローネ、早く食べないと冷めちゃうよ?」という言葉で、
締まりのない顔で見つめていたことに気付く。
「そうだな」と冷静に言葉を返して食べ始めたものの、
内心は一通り彼女が食べ終えるまで細かくその様子を観察したい気持ちでいっぱいであった。
(多分怒られるから言わないが)
そうして、食べ終えた後にちゃんと「ごちそうさまでした」とメローネが手を合わせて言えば、
「いただきます」と「ごちそうさま」の挨拶を忘れていなかったことに喜びを隠せないyouから
突如として「ありがとう」の言葉が飛び出す…。
「メローネ…覚えててくれたんだ、嬉しい。」
「何がだ?」
「「ごちそうさま」って、日本語の挨拶。」
「勿論さ。前に話してくれた「命をいただくことへの感謝」、「食材を育ててくれた人への感謝」、「作ってくれた人に感謝」、日本人の考え方がとっても素晴らしくて興味深かったしね。ちゃんと覚えてるよ。」
「もう随分一緒にご飯食べてないのにね。」
「う……それはもう言わないでくれ……本気で申し訳ないと思ってるし、後悔してる…。」
「まぁ、また一緒にご飯食べれて嬉しいから、許します。」
「・・・。」
ふふ、と軽く笑うyouを見て、意外にあっさりとした言葉と態度で受け流された印象を受け、
もしかしてもしかすると、ひょっとしたらマジで、彼女はこの2、3日の風邪で、以前と同じように記憶が抜けてしまい、
自分のことを「何かよく覚えてないけど、多分ちょっと喧嘩して距離を置いたけど仲直りしたからまた一緒に笑い合えるようになった同僚」と認識しているのではなかろうかと…。
メローネはそのように考えて表情こそ笑顔だが、サァーっと顔を蒼くする。
そんな彼の心情の推移には全く気付いていない彼女は、いつもの通り後片付けをして、
食後用の2人分の飲み物を用意して、リビングに向かいがてら、それをメローネに手渡す。
「・・・。」
「何も面白そうな番組やってないねぇ。」
「・・・。」
ソファに座ってTVのチャンネルをポチポチと変えながらそう呟いて、youがメローネの方を向けば、
ズゥウウン…と沈んだ顔の男が隣に鎮座しているのに気付き、ビクゥっと肩を跳ねさせた。
「びっ……どう、どうしたのメローネ?もしかして体調悪くなった??」
「いや…そうじゃあないんだが……。」
「顔色悪いよ……大丈夫…?」
「なぁ、you…………念のために聞いておくんだが……キミ、風邪の熱でオレの事を忘れていたりしないか?しないよな?」
「はい?どういうことですか…?」
「だからその………この前、言ったこと…。」
「・・・この前言ったこと。」
おいおいおい、復唱してるぞ?!これはマジでヤバいヤツなんじゃあないか?!と…。
思考が一瞬停止して、まるで岩のように動かなくなるメローネ…。
一方の彼女はあっけらかんとした表情で会話のキャッチボールを続けてきた。
「何言ってるの??メローネを忘れてないからこうして一緒に話してるんじゃない?」
「いや、それはそうなんだが!そうじゃないと言うか!」
「そうだけど……そうじゃない……とは…。」
「もしかして、距離を置いたこと…めちゃくちゃ根に持ってるからか?!だからそんなに素っ気ない態度を取ってたりするのか?!」
「メローネがわたしを避けてたことは確かに悲しかったけど…それはメローネなりの理由があったって話してくれたじゃない…根に持ったりはしてないけど…。」
「じゃあどうして……何でそんな……ふ、普通なんだ?!」
「普通……ふつう……メローネには………わたし、普通に見える…?」
「どういう意味だ…?」
「・・・。」
自分はこんなにも気持ちがざわついて、キミの一挙一動に心臓が鷲掴みされているというのに!
そんな動揺した表情でyouを見つめれば、彼女は少し困ったような表情を浮かべて、
自分の手を両頬に添え、メローネの方へと向けていた身体を正面のTVの方へと向け、そのまま俯いてしまう…。
「you…?」
「普通なんかじゃないです…。」
「?」
俯いた顔を少し動かしてチラリと、下から覗き込むようにしてメローネを見上げるyouの顔は
つい今しがたまでの平静のものではなく、頬を染め、放っておけば泣いてしまいそうな程目を潤ませていた。
一体何が起こったのかと、メローネの目が驚きで見開く…。
「だって……っ…、メローネが…また隣に、いてくれる…だよ?一緒にご飯も…食べてくれ…った…の。」
「!!」
「もう、話せないかも…って……ずっと思って…っ…!」
「あ、あぁ……you……ゴメン…。」
「うぅ……気を張ってないと……ずっときっと泣いちゃうって、思って、だから…っ。」
「悪かった……またオレの所為で泣かせちまった……ゴメンな…。」
「~~!!」
張りつめていた糸が切れて、堰を切ったように泣き出してしまったyouの身体を抱きすくめる。
事件の日にも思ったが、自分も彼女も、以前よりずっと痩せた…というかやつれた気がするのは、
恐らく間違いないのではないかと、お互いに抱き合ってみて感じるところだった。
距離を置いている間に、自分は食欲も減退したし、以前のように食事を抜くこともあった。
もしかすると、彼女もまたそれと同じような状況だったのかもしれない…と。
「you…。」
「…っはぃ…?」
「もう絶対離さないし、どんな感情を抱いても、突き放したりしない……youの心も身体も、何があってももうオレが守るから。」
「メローネ……。」
「つまりだな……何が言いたいかと言うと…その…。」
「はい…?」
「これは確認になるんだが……youはオレのアモーレでテゾーロ……になってくれた、で合っているだろうか?!
いや、こういうのって確認するのもオカシな話だと思うんだが!こう、色々とオレ達は特殊な流れがあったから!!」
キリっとした表情から打って変わって、いざ自分のポジションを確認するとなると、
否定されるのが怖くなり、言い訳気味な言葉が口を突いて出てしまう…。
しかしながら、具体的な関係性を示してほしいと思っていたのは、彼女も同じ…。
ゆっくりと身体を離して、youはメローネの両腕を掴んだまま、
彼の腕の中で、瞼を少し赤く腫らした顔を上げる…。
「メローネは……そう…思ってくれてる?」
「そう…思いたい……youのこと…そう思っていいか…?」
「うん……じゃあわたしも、今まで以上に大事な人だって、思うね。」
「・・・あー…その……youの言う大事な人ってポジションは……キスやハグを許容してもらえるポジションの…男か?」
「……してくれる…?」
「ベネ……寧ろさせてくれ。」
眼下に映るyouが享受するために目を閉じると、そっと落とされた優しく触れるだけのキス。
数秒間程目を閉じたままでいたyouだったが、その後に追加で口付けられる様子が無かったため、パチリと目を開く。
物足りないワケでは勿論ないのだが、数日前に風邪を引く要因となってしまった程の蕩けるようなキスを思うと、
意外にも短く終わったメローネからの2回目のこのキスにほんの少しだけ戸惑う…。
恐らくは彼女の表情でその「意外」という心情を察したのだろう、
メローネは「いや、違うんだ…」と顔を赤らめて口元を抑えながら、言う…。
「は……歯止めが効かなくなる……好きすぎて、アンタの全部が欲しくなる、から……自重してる。」
「そう…なの…?」
「すまない……思春期のガキじゃああるまいし、自分でもどうなんだって思うが…。」
「学生時代にするような恋……ふむふむ、まさに青春、つまりアオハルというやつですね…?」
「いや、ただ単に勃起しそうなだけだが。」
「うん、自重しましょう。」
できれば言葉もね…と、涙を引っ込め(というか引っこんだ)、
真顔でメローネの両頬を軽く抓るyouであった…。
広げられた口で「ふひはへう(すみません)」と謝って、手を離してもらうと、
彼女の手を掬い取り、指を絡めて握りしめるメローネ。
「you。」
「はい?」
「改めて……これからもよろしく。」
「はい、よろしくお願いします。」
「ああ、困ったな……明日からどうしたものか…。」
「何か問題があるの?」
「ある。今リーダーから請け負った外勤が一通り落ち着いたら、また内勤メインに戻る。そしたら……大体ずっとyouと一緒だ。」
「そっか、良かった。」
「グラッツェ……だが、良すぎて困るんだ……同じ空間にいるだけでも……勃っ………嬉しくて仕方ないのに。」
「・・・。」
「今のはセーフじゃあないかと思うんだが。」
「微妙です…。」
youは、先程判断した中高生生の「青春」というのは間違いで、彼が示唆した「思春期のガキ」は
恐らく学生は学生でも、性に奔放になれる大学生あたりが該当するのだろうな…と察し、溜息を吐くのであった。
ただ、今までもメローネと仕事やプライベートで話をする際には、ちょくちょくそのような発言も出ていたし、
自分ももういい大人なので、恋に対してピュアでプラトニックなものを求めるのも無理があるだろうと思い、
それもまた彼の個性だから、と……ある程度は享受することにするのだった。
「でも、やっぱり良かった、嬉しいよ。だって外勤の時はメローネが怪我して帰ってきてたりしてたから…ずっと心配だった…。」
「あー…そうか…言われてみればそんな時もあったな…。」
本来ならスタンド持ちの奴らが行くような案件を、思えばよく身一つで任務に行ったものだ!と、少し前の自分を顧みる。
本当に命が危ない案件までは任されてはいないものの、彼女を避けたい一心で…。
それがこのような結果になるのだから、その努力は何のためだったのかと…。
何とも言えない気持ちになるメローネであった…。
「あぁ、そうだ……明日のことなんだが……出勤はできそうかい?」
「はい、明日は問題ないと思います!」
「そうか…出勤できてしまうのか……そうか…。」
「何?わたしが出勤したらマズイんですか?」
「ああ…まずい……アイツ等に状況の説明をしろと釘を刺された…ディ・モールト面倒だ…。」
「仲直りしました、心配掛けてごめんなさいじゃダメなのかな…。」
「リゾットはまだしも、他の面々がそれで納得すると思うか?」
「納得してくれるよ、ちゃんと話せば。」
「ちゃんとって…。」
「んん………。」
「・・・。」
ほら、いざ追及されると困るだろ?と、メローネがそのような視線を送ったのだが、
youはそんな彼を見つめ返して、真顔で自分の考えを口に出す。
「メローネを好きになりました。」
「っ…?!!?」
「伝えたら、傍にいてくれることになりました………?とか…?」
「悪いんだが、you!」
「はっ、はい?!」
「Posso usare il bagno per un po?!(暫くの間、トイレを借りてもかまいませんね?!)」
「ど……どうぞ…。」
至近距離にいたyouの両肩を掴み、身体をぐいっと離して勢い良く立ち上がると、
何だかちょっと前屈みでトイレへと入っていくメローネ。
不思議そうに首を傾げながら、その背中を見つめていたyouだったが、
その後は気にせずに、改めてどのように説明すればチームのみんなが納得してくれるかを考える事にするのだった。
「うーん……何て説明すれば納得してもらえるんだろうねぇ…。」
そんな対策などを考えて暫く…、メローネがイタリアでは一般的な、
トイレも併設されているユニットバスから溜息を吐きながら出てきた。
「あ、メローネ、おかえりなさい。大丈夫?風邪でお腹痛かったの?」
「えっ?!いや……うん、まぁ……。」
いきなり上目遣いで「メローネを好きになりました。」などと不意打ちを食らい、
下半身がのっぴきならない状態になったので、ちょっとトイレで発散してきましたなど、言えるハズもなく…。
そのような変態的な行為は確かに気付かれたくもない事ではあるが、
腹を下して恋人の家のトイレを占領したと思われるのもディ・モールト心外である…。
ちょっとだけ複雑な気持ちで妙な顔つきになってしまうメローネであった…。
「本当に大丈夫?」
「全然平気さ(まぁ…確かにある意味で溜まってるモンも出せたし)。」
「それならいいんだけど……あっ、そうそう、ちょっと考えたんだけど、明日はメローネは外勤なんだよね?」
「ああ、まだしばらくは外勤が続くな。持ってる案件が終わるのが…恐らく来月あたりになるんじゃあないか…?」
「もし、明日メローネが外勤なら、わたしが代わりに話せば、皆納得してくれない?」
「どういう風に?」
「ざっくりと……メローネはわたしを傷付けるのが怖くて、離れようとしたけど、わたしが傍にいたいって言ったから、仲直りできた……でいいんじゃないかな…?」
「フム……確かにまぁ、大体その辺りが関の山……というかディ・モールト無難で良い答えだと思う。」
「分かりました、じゃあそう説明しましょう!」
「youが話しても納得してくれないのなら、その時はもう、洗い浚い観念してオレが話すよ…。」
「うん、分かった。」
その時はよろしくお願いしますと伝えて、ペコリと一礼するyou。
それから2人は長いこと距離を置いていた時間を埋めていくように沢山の話をした。
それは、メローネが請け負った外勤の時の出来事だったり、
youがメローネ以外のメンバーやソルベ、ジェラートなどと盛り上がった時の話など…。
夢中になって話をし続けて、ちょうど会話のインターバルのタイミングで
テレビ画面で23時のドラマが始まったことで、ふっと2人は時計に目を遣った…。
「おっと……もうこんな時間になっていたのか……全然気が付かなかったな…。」
「本当だ…びっくり。」
「明日も仕事だし……そろそろ帰らないといけないな。」
「メローネ、今日は本当にありがとう、凄く楽しかった。」
「ああ、オレも。また一緒に食事や話ができて、ディ・モールト最高の気分だ。」
メローネはそう言って、ソファから立ち上がり、youもそれに続く。
2人でリビングを後にし、帰る支度を整えて玄関へと向かった。
「それじゃあ、また明日……あ、忘れてた!メローネ、夕飯のお代!!払うよ、いくらだった?」
「ああ、オレがyouに会いたい口実で買ってきたんだ、気にしなくていい。」
「わたしだって会いたかったし、今日は一日すっぴんでパジャマでゴロゴロしてたんです…夕飯だって何食べよう、面倒だな~って思ってたし……だから買ってきてくれて有難かったし、そういうワケには…。」
「キミのすっぴんか……ディ・モールト見てみたいな…。」
「いや、いや、無理です!見せられないよ!今日だってメローネが来てくれるならって、慌てて準備したくらいなのに…!」
「え、オレのため……あ!」
そういえば、電話を掛けた際にどのくらいの時間で到着しそうか尋ねられ、
「それまでに準備しておく」と言っていたなと思い出すメローネ。
それはつまり、今日一日何処へも行かず、すっぴんでパジャマでゴロゴロして一日を終える予定だったところ、
急遽会うことになったことで、自分を迎えるためだけに髪や服装やメイクを整えて待ってくれていたのかという事に他ならず…。
好きな相手にダメな姿は見せたくない、可愛い自分で会いたいと奮闘する彼女の気持ちを
勝手に想像してメローネは一人、感動に浸る……。
「ディ・モールト……ベネ………ベリッシモ……カリーナ…語彙力、死ぬ…。」
「め、メローネ…?」
「ああ、すまない……オレのために色々準備をしてくれた事が嬉しくて。」
「うぅ……まぁ、でも、それはそれですから……代金はちゃんと払わないと、ね?」
「だがオレは金を受け取る気は無いんだ。」
「えぇ…。」
「ではこうしよう!youの方からオレにバーチョしてくれ!頬でも額でも、勿論口でも!金なんかよりずっとキミから貰いたいものだから。」
「え、えぇぇ…?!」
戸惑うyouの両肩に手を置き、メローネは嬉々とした顔で彼女からのキスを待つ…。
もうお金で解決(というのも語弊があるが)できない状況になった事は明白で…。
うんうん唸った後、困り果てた声色で彼女はメローネに問うた。
「ほ、本当にどこでもいい…?」
「勿論。」
「うぅ……分かった、でも一応目を瞑ってほしい…。」
「ベネ…恥じらうキミもディ・モールトかわいい……了解した、目は瞑ってあげるよ。」
そう言って素直に目を閉じるメローネ。
少しだけ様子を見ていたが、途中で目を開けたり、薄目で確認しているといった様子ではないようで、
youは小さくスゥ…と呼吸をして、意を決したようにメローネの顔に唇を近付けた…。
「・・・・。」
「!!」
「……これで、いい…?」
youはゆっくりと唇を離した後、恥ずかしそうな顔をしてメローネに尋ねる…。
「ディ……モールト……え…というか……予想外、というか……。」
「やっぱり…慣れないです……すごく、恥ずかし…。」
「てっきり頬っぺたやおでこにされるものだとばかり…。」
「子どもがするみたいなものでゴメンなさい……わたし日本人だから……慣れなくて、どうしても…恥ずかしい。」
「口、だった…。」
逃げ場を作ってやるために提案した、唇以外の箇所が選ばれるものだとばかり思っていたメローネは、
youからの口へのキスに動揺して目を泳がせており、
youはyouで、唇にほんの少し触れるだけの子供騙しのようなキスでは、
きっとイタリアーノであるメローネには満足してもらえないだろうし、それが夕飯代と同等とは到底思えず、
申し訳なさと、大の大人がそんな対応ではすぐに愛想を尽かされるのではないかという不安から自己嫌悪でしょんぼりと俯いている…。
暫しお互いに視線が合わないままで、凡そ約1分程だろうか…。
短い沈黙ののちに、ようやくパチリと視線がかち合った。
「・・・メローネ、ごめん…。」
「いや、構わない、全然構わない。寧ろイイ……ディ・モールト、スゴク、良かった。」
「そう、な、の?」
「まいったな……お釣り、いる?」
「要らないよ、寧ろ足りた?」
「足りた、今はこれで十分…。」
「今はって……。」
「そりゃあね……オレが買い出しやデートやキスやハグだけで満足できる男じゃあないって事はキミだって分かってるだろ?」
メローネの言葉に呆れたような、困ったような顔をしながらも、youはコクリと頷く。
「ベネ……自分でも「そんなちっさな子どもがするみたいな愛情表現」で大丈夫なのかって思うし、ぶっちゃけ我慢できるのか?って思う。」
「う…っ…。」
「だけど、オレはマジで、ありえないってくらいキミに恋してる。」
「メローネ…。」
「だから、例えばホルマジオやプロシュート達に同じように揶揄されても、からかわれても、これでイイって思える。」
「・・・。」
「そりゃあキスやハグやセックスもできれば嬉しいけど……多分どんだけ焦らされても、それこそ一生できなくても……youから愛情をもらえて傍にいられれば、それでもいい。」
「そんなに…?」
「そうなんだ………本当に、マジで……あ、でも全然勃つから。youのことディ・モールト可愛いとか思ったらもうさ、秒でギンギンに勃つから。」
「~~~?!!」
「you……心は勿論なんだが、身体でもオレを受け止める覚悟ができたら是非、教えてくれ。」
また最後の最後で全てを台無しにする台詞を吐くメローネ…。
真顔で下品な物言いをしてくる顔からプイっと顔を横に逸らす…。
最早そういう言葉を定期的に入れないと彼はきっと死んでしまうのだろう…。
それこそ、これは自他共に認める変態を好きになってしまった自分の宿命なのだと…。
……そう考えることにするyouであった…。
perverso ragazzo!
変態!
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*