■Fiori e Vino. (リゾット)
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Fiori e Vino.
そして、キミに恋をする
二度目の挨拶をすることになったyouとリゾット。
今度はちゃんとお互いの名前を確認し合った……までは良かったが、その後唐突に脈絡のないリゾットからの問い掛けがあった。
「you………ワインは好きだろうか?」
「え、ワイン…ですか?」
自己紹介が終わった直後の話題に、個人の好みを問う…というのはそうおかしな話ではないのだが、あまりにも不思議な問いだったため、youはすぐに答えるではなく、内容に「何故それを問うのか?」という意味を込めて質問の意図を聞き返した。
リゾット自身も、恐らくそのように意図を問われるであろうことは予測しており、すんなりとその理由を彼女に伝えてくれた。
「ああ、実は今からエノテカへ行こうと思っていたんだ……食事を作るのが面倒になってな……だから、キミはもう夕飯は済んだのかと思って。」
「いえ、夕飯はまだです……今、帰ってきたので。」
「それなら、一緒にどうだろうか?よかったら菓子折りと手紙の礼として、夕飯をご馳走させてくれ。」
「えぇっ!いや、そんな……恐れ多いです!半ば押し付けの好意だったのに…!!」
「オレは嬉しかった。まぁ、だが……知合ったばかりの男と一緒にというのも……確かに敬遠されるか…。」
「いえ……ええと……嬉しいです、うれしいです……とってもご一緒したい、けど…。」
「・・・。」
「リゾットさんが……用心し過ぎるに越したことは無いって言われていたので…。」
「確かに、言ったな…。」
一度目の邂逅の時、知らない輩に態々挨拶に行くな、ホイホイ付いて行くな、危ないぞ…と、確かにそのように彼女に忠告したと思い返すリゾット…。
有言実行はいいことだが、割と最悪なタイミングである。
どう切り返すべきか……同僚たちよ、テレパシーで不甲斐ないオレに教えてくれ…と、非現実的なことを一瞬考えてしまうほど。
以降、口を噤んでしまったリゾットに、youも暫し「うーん」と悩んだのだが、そのうちに「あ!」と何かを思いついたようで、徐に自分の手に持った鞄から携帯電話を取り出した。
「リゾットさん、連絡先を交換しませんか?」
「え、あ…ああ。」
「実は、夕飯はまだなんですが、今日は遅くなるって分かってたのでご飯作って家を出たんです、すみません。」
「そうだったのか……では、仕方ないな。」
「はい、なので……後日、改めてご一緒していいですか…?」
「!!」
「リゾットさんがご迷惑でなければ……ですけど…。」
「ああ、勿論だ……ありがとう。」
「基本的に土日平日関係なく、夕飯の時間は空いてますし、休みも暇してるんで。」
「はは、それは誘い甲斐があるな。」
「リゾットさんはいつもお忙しいようですが……大丈夫ですか?」
「ああ、少なくともこうやって家に帰れるから、大丈夫だ。」
「本当に…?無理しないでくださいね。」
「ありがとう。」
彼女の空き時間は御自ら明かしてくれたが、誘う分にはいつでも問題ないようだ。
あとは自分の予定さえ確認して、連絡をすればいい。
そのための情報も、今正に交換している。
「はい、ちゃんとリゾットさんの情報登録できましたよ。」
「ああ、オレもだ。」
「あ、嬉しいな~……何気にリゾットさんはわたしの一番最初の自力獲得のお友達さんかもです。」
「そうなのか?」
「はい、今までずっと寮…みたいなところでお世話になっていたので、仲良くなった人は皆お仕事の関係者さんなんです。」
「そうだったのか。」
「勿論、一緒に出掛けたりご飯行ったりできるお友達でもありますけど……お仕事以外では、初めて。」
「すまないな、初めてのオフの知合いがこんな……無口なゴリラみたいな男で…。」
「ぶはっ……無口なゴリラって…!そんなことないです、リゾットさんとっても素敵です。」
「そうだろうか…。」
「ええ……だって、何だかんだ言ってもお菓子を受け取ってくれましたし、わたしのことを心配してくださるし、それに……。」
「?」
「ん……ほんとに、胸が苦しくなるくらい……嬉しかった、わたしの国のこと……褒めてくださって。」
「・・・。」
「やだ、また泣きそう……もう1年も経つのに、慣れないと…ねぇ?」
困ったように笑いながら、また泣きそうに目を潤ませ始めるyouを見て、気付けばリゾットは無意識に手を伸ばしていた。
彼女の頭に大きな手を乗せると、子どもをあやす様に優しく髪を撫ぜる。
「泣きたくなったら泣いたらいい、泣ける涙があるなら、そうした方が良い。誰も責めない……1年間、一人で頑張ったんだな。」
「っ……ああもう、ひどい……何もここで泣かせなくても……いいのに…ぃ。」
「ええと…………すまない。」
「んっ……いいんです、話題振ったのは……わたし、なんで……っ。」
「…キミの故郷はとても素敵なんだろうが、イタリアだって負けていないぞ……此処に来てよかったと思ってもらえるように、オレが沢山それを教えよう。」
「リゾットさん…。」
「リゾットでいい、オレもキミのことはyouと呼ぶが……構わないだろうか?」
「はい、是非。」
「知っているだろうが、パスタにピッツァ、スープや肉料理も色んなものがあるし、ドルチェも種類がとても豊富だ……それに酒も。美術やアート、史跡だって沢山あるし、それこそ神話の時代のものからだって……そうも言えば、近代的なものもちゃんと………ああ、すまない、郷土愛が深いのはオレもだな…。」
「ふふっ、そうですね……イタリアって素敵。」
「そう言ってもらえると有り難い。」
「だってリゾットみたいに素敵な人がお隣に住んでいるんだもん。」
「・・・。」
「リゾット……ありがとうございます、励ましてくれて……本当に嬉しい。」
指先で軽く滲んだ涙を拭い、泣き笑いした顔でリゾットにお礼を告げるyou。
「一緒にご飯、楽しみにしてますね!」
「あ、ああ………明日にでも行けそうな日を確認して連絡させてもらう。」
「はい、お待ちしてます。」
「何かリクエストがあれば言ってくれ、オレのお勧めで良ければ一番美味いと思うところに連れて行こう。」
「わぁ、それは今からとても楽しみです!」
「それじゃぁ、オレはそろそろエノテカへ向かうことにしよう。」
「あっ、そうですね……すいません、お引止めしてしまって!」
「構わない、色々とありがとう、you……これからよろしく。」
「はい!こちらこそ……なかよくしてくださいね。」
「じゃぁ、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい……良い夜を。」
別れの挨拶を軽く交わして、リゾットは酒と食事のため、夜の街へと歩き出す。
youはその背中を見送り、リゾットが完全に下の階に降りるまで手を振っていた。
アパートの外、街灯に照らされた路地に出るや否や、リゾットは建物の壁に寄りかかる。
次いで、大きな溜息を吐き、それから口元を抑えた…。
「陽の当たる場所で生きる人間というのは……ああも綺麗な言葉が出てくるものなのか……いかん……しかし、オレは、あの子が、とても好きだ…。」
自分から話の終了を促した理由はそれであった。
あのまま話し続ければ、十中八九話の途中で彼女の好ましい言動や行為に対し、衝動的にその細い腕を引き寄せて、その身体を抱きしめていたかもしれない。
回数では2回、時間に換算すると凡そ1時間も費やさずして、リゾットは恋に落ちた。
そして、キミに恋をする
words from:yu-a
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