Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「G……Grazie、Me…Melone!」
「プレーゴ(どういたしまして)!」
ああ、なんてぎこちないイタリア語
Lei e un fiore.
Ti amo Ti amo Ti amo.(愛してる 愛してる 愛してる)
「はぁ~~……。」
「すごい溜息だな…。」
「ああ、ソルベ……うん、ちょっとね。」
「メローネのことか?」
「…うん……わたし、どうして彼のこと思い出せないのかな…。」
「・・・。」
身体の回復からしばらく、今まで通りの生活を送れるようになったyouだったが、
唯一メローネのことだけを思い出せずにいる日々に憤りを感じていた。
そもそも、何故自分が皆のことを忘れていたのか、言葉が理解できなくなっていたのか、
どうして全治数週間の怪我を負ったのかも未だに思い出せていないため、
そういった部分でも自分自身に疑問符を抱いてしまうというところもあるのだが…。
(皆ざっくり「交通事故に遭った」としか教えてくれない)
しかしながら、彼女の思考回路的には自分のことは二の次で、
今一番頭を悩ませているのは、自分が彼の事だけを思い出せないことで、
伝わらない言葉を交わす度に、彼に悲しい笑顔を作らせていることだった。
何かを手伝ってもらったりしたり、お土産でドルチェを買って帰ってきてくれた際、
「ありがとう」と何とかイタリア語でお礼を伝えたり、その他に少しだけ皆に習った簡単なフレーズなどで
会話をしてみると、同じように簡単な単語を使って満面の笑みで返してくれる。
そういった反応を見ると元来、彼が鬱々とした人間ではないのだろうと察するが、
笑顔の最後、去り際にいつもフッと寂しそうな表情を浮かべていることをyouは知っている。
そのため、余計に自分の所為でそんな表情をさせているのだと思うと心が痛む…。
「ねぇ、ソルベ……メローネって、どんな人なの?」
「youの口からそんな言葉が出るのは、驚きだな…しかもオレに尋ねるか、それ。」
「ダメ?」
「…主観になるが……アンタら仲が良かったと思うぜ。多分アイツもyouも内勤が多いからさ。」
「そういえば彼、過去の予定表では内勤多いね、今は外勤多めみたいだけど。」
「ほとんど買い出しは一緒だったし、よく一緒に帰ったり、帰りに飯行ったり、休みの日もたまに一緒に遊んでた…ってジェラートは言ってたな。」
「そうなの?!」
「らしいぜ。」
「すごく仲良しだね?」
「他人事みたいに言うな……「そんな2人が一緒にいられないなんて、見てるこっちが辛い」ってジェラートが傷付いてんだぞ…。」
「ご、ごめんなさい…そうだよね…凄い違和感だよね…。」
「アイツ…メローネは……確実に変態じゃあねーかって思うけど、youの前ではあんまり変じゃなかったと思う。」
「はぁ…?」
「つーか……アンタと話す度に一本一本「毒気」が抜けてってるって感じ。あれは毒が「刺さってる」ってレベルじゃなくて「埋まってる」って感じの人間だな。」
「毒気…。」
「ああ、だからだろうな……アンタから離れたの。怖くなったんだろ、今までの自分じゃなくなるみたいでさ。オレもジェラートに会う前はそんなだったから、分かる。」
「・・・。」
「っと、余計な事まで話しちまった……知られるとどんなキモい質問攻めに遭うか分かったもんじゃない……おい、今のはメローネに言うなよ。」
「言いたくても言えないよ……伝えられないから…。」
「・・・そうか。」
最後はyouが少し寂しそうに笑って、ソルベとの会話が終わった…。
溜息を吐いて少し猫背でリビングから事務室に入って行こうとするyouに、
ソルベの方が更に深い溜息を吐いて、彼女を呼び止める。
「you。」
「?」
「伝える方法ならある。」
「え…?」
「言葉が交わせないなら、文字で書けばいいだろ。」
「!!!」
刹那、バタバタと駆け戻ってきたyouがソルベにガバッと抱き着き、大声で「グラッツェ!」と叫んだ。
・
・
・
・
定時を少しだけ過ぎた夕刻、ちょっとしたお使いから事務所に戻れば、明るい声が聞こえた。
今日も今日とて、youはいつも通り出勤して仕事をしているし、
オレ以外のメンバーとは意思疎通もバッチリ、体調も概ね良好のようだし、ディ・モールト、何よりだ。
未だにオレの事は思い出せていないし、言葉もお互い分からないけれど、
今はそれがイイと思うオレがいる。
だってそうだろ、元々オレはyouのことを好きになり過ぎて、手酷く傷付けてしまう可能性があった。
だから距離を置いて、気持ちに蓋をして、鍵をした。
その所為で「あんなこと」が起こってしまったけれど、
幸いなことに今の彼女はオレごと丸っと忘れていることで、あの事件の事も忘れることができている。
つまり、彼女の中でオレとの距離感は、最初のスタート地点に戻っているんだ。
だからこのまま「はじめまして」の関係を続ければいい。
流石に数年も経てば彼女がイタリア語をマスターして、
お互い会話できるようになる可能性はあるかもしれないが、
それでもオレはyouの隣で笑えばいい。
もう突き放さず、一定の距離感を守って、踏み入らず、気持ちの蓋と鍵は開けないまま。
もしも、もしもたとえば「好きだ」なんて告白されて舞い上がるくらい嬉しくても、絶対断る。
今までの人生を思い返せば、もっともっとしんどい経験なんて多々あったし、
恋愛感情?そんなものをコントロールするくらい何でもないことだ。
だからこれが理想的、オレが望んだ結果。
だってもしオレのことを思い出せば…オレと言葉を交わしたら…。
youはきっと全部思い出しちまう。
オレが突き放したことも
その所為で自分が酷い目に遭ったことも。
何もかも、全部…。
だから、これでいいんだ。
・
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・
・
メローネが事務室に入ると、ちょうど入れ替わりでホルマジオとプロシュート、ペッシが
退勤の準備を済ませて出てくるところだったようだ。
「あれ、もう皆帰るの?今日は随分早いんだな。」
「おう、予報で今から夜にかけて雨が降るって言ってたからな…。」
「そういえばさっき外の雲行き怪しかったな…。」
「そういうことだ。オメーもさっさと帰った方がいいぜ。」
「そうだな……忠告グラッツェ、プロシュート。」
「おう。」
最後に部屋を出る前にペッシがyouに声を掛ける。
「youも、早く帰ってね!」
「うん、ありがとうペッシ!まぁ、わたしは常に軽量の折りたたみ傘常備しているデキる子なんだけどね!」
「スゲーや!!」
そう言って自慢気に自分の鞄から折りたたみ傘を取り出すと、
ツカツカとプロシュートがyouの元へ向かい、彼女の髪をわしゃわしゃと撫でまわす。
「流石はオレのバンビーナ……用意周到ってのはイイことだ!」
「わー!もう、髪が崩れます!!」
「気にすんな、崩れてもオメーは愛くるしいぜ。」
「くっ……イケメンだからって何してもいいと思ってるな…。」
「おう。」
「揺るぎない~!!!もう、ペッシとホルマジオ、気をつけて帰ってね。プロシュートだけ雨に打たれればいい!」
「あぁー??可愛くねェ台詞吐きやがって……口で塞ぐか?」
「く、口「を」でしょう?!」
「ッハ……んな事でイチイチ顔を真っ赤にするんじゃねェ、マンモーナか、オメーは…。」
「まぁ……マンモーニのペッシの後輩にあたるので……そうかもです。」
「ああ…成程。」
ピタ…と、youとプロシュート、ホルマジオが一斉にペッシに視線を向ければ、
彼は自分を指さして「え…」と呟いた後、口を山型に開いて「えぇ~~!」と嘆く。
「お、オイラまだマンモーニ扱いなのかよぉおお!!!」
「プロシュートがいる限り、多分一生じゃあねェ~かぁ?」
「ホルマジオまで!酷いよ!」
「ハハハ!!」
一同声を揃えて笑う…。
ただ1名、メローネだけはyouの言葉が理解できないため、談笑には参加が叶わず、
ただ優しく口角を上げて皆の様子を見守っていた。
それに気付いた一同がハッと各々我に返って、youが中断された帰宅を促す…。
「引き留めてごめんね、また明日!」
「チャオ、you!」
「うん、チャオ!」
帰っていく3人に手を振って見送り、youは改めて事務室に入ってきたメローネを見ると
一生懸命にぎこちないイタリア語でもって挨拶する。
「B…Bentornato、Melone!(お…おかえりなさい、メローネ!)」
「ただいま、you。」
「A~……Adesso hai……fretta?(あ~……今急いでる……かな?)」
「……いや、急いでないよ。どうした?」
「Ti ho……scritto una、lettera.(あなたに、手紙を書きました。)」
「手紙…?」
コクコクと頷いて、youは自分のデスクの引き出しを開け、
綺麗な封筒に入った1通の手紙を取り出し、それをメローネにそっと手渡した。
それは、仕事で使ういかにも事務的な味気無い封筒ではなく、
恐らく彼女が日常的に知り合いに手紙を出したりする時に使っているものだろう…。
柔らかい落ち着いた色のそれは間違いなく彼女のチョイスで購入した私物だろうと察するに余りあった。
メローネは封筒を受け取ると「今(読むのか)?」と問う。
短い言葉だったため、意味はわからずともyouに「今?」もしくは「オレへ?」と言っているのだろうと察し、
youはその言葉に再びコクコクと首を縦に振って頷いた。
拙い単語で「書いた」とか「ジェラート」、「手伝う」といった言葉が目の前の彼女から伝えられ、
ジェラートに手伝ってもらって手紙を書いたという凡その検討はついた。
メローネは一言「グラッツェ」と言って、封筒の中身を取り出し、手紙を黙読する…。
・
・
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・
メローネへ
まずは手紙を読んでくれてありがとう。
(ほとんどジェラートに手伝ってもらって書いていますが)
どうして貴方の事だけ思い出せないのか分からないけど、
言葉が通じなくてとっても不便な思いをさせていると思います、ごめんなさい。
でも、今回手紙を書いたのは、謝ることよりも
あなたに、たくさんの「ありがとう」を伝えたかったからです。
思い出せないわたしを怒らないでいてくれてありがとう。
わたしを責めないで、いつも笑ってくれてありがとう。
よく手土産で美味しいドルチェを買ってきてくれてありがとう。
(全部美味しいし、しかも全部わたしの好きなものだし…!)
困ってたらスマートに助けてくれてありがとう。
他にもたくさん、ありすぎて書けないくらい。
わたしのこと、気に掛けてくれてありがとう。
いつか思い出せて、貴方の言葉が分かるようになるのかな?
でも、もし、このままだとしても、貴方とちゃんと話がしたいです。
数年くらい掛かるかもしれないけど、イタリア語を勉強するから、
待っててくれるとすごく嬉しいです。
わたしは、もっとメローネのことが知りたいです。
今まで知ったことも、もう一度教えてほしいし、
今まで以上に貴方のことを教えてほしいです。
誕生日や星座、血液型とか好きな物や嫌いなもの。
他にもたくさん、貴方のことを知りたいです。
流暢に会話ができないから、なかなか伝えられないけれど
いつも貴方が元気でいてくれるといいなと思ってます。
これからもよろしくお願いします。
you
・
・
・
・
手紙を読むメローネをyouが黙して見ていると、次第に手紙を持つ彼の手がぶるぶると震え出し、
最後にはそれを……クシャ、と……握り潰した。
当然、予想と違う反応をされたことでyouの目が見開く…。
「Aa…。」
「……んで……だ…よ……。」
怒らせるような内容を書いたつもりはなかったが、
何かが気に障ったのであれば謝らなければと、視線を合わせるためにyouが
下に伏せられたその顔を覗き込もうとした時、バッと勢い良くメローネの顔が上げられた。
彼女が驚いたのはその勢いの良さではなかった。
顔を上げた刹那の表情は、一瞬にして全てを悟らせる悲痛な色が浮かんでいた。
深いエメラルドグリーンの瞳は潤み、唇は微かに震えながらも、
腹の底からのどうしようもない憤りを、メローネはその低い声でもって絞り出す…。
「このままでいいって………言ってるだろ……何だよ…何なんだよ、これは……。」
「Melone…A…Watashi…。」
「オレがどれだけ自分の気持ちを抑えてるか知りもしないで、よくこんなモンが書けたな!!」
「ッ…!」
「アンタを傷付けたくないから一定の距離なんだ!それでいいんだ!何で、どうして近付こうとするんだ!」
「Gomennasai…!」
「オレはもう二度と、絶対にアンタを………傷付けたくないのに!!頼むからもう、近付こうとしないでくれ!!」
「・・・。」
「もう……もう、これ以上アンタを愛させないでくれよ!!」
「Melone!!」
伸ばされたyouの手を振り払い、メローネは踵を返して走り出す…。
先程の表情や、怒りを顕わにした様子で普段の彼の心情の状態ではないということはすぐに分かるし、
何より、人の心の機微には敏感な彼女がそれを放っておけるはずもなく…。
言葉は分からずとも、追い掛けねばという使命感が先に立ち、youもメローネの後を追って走り出した。
すぐに玄関の閉まる音がして、メローネが外へ飛び出したと分かったため、
youも後を追って事務所の外へと出る…。
いつの間にか夜の帳が降りた外は雨で…。
定間隔に灯ったオレンジの街灯が夜の雨道に反射していた。
「ッ……Ne、Matte!!Melone!!!」
バシャバシャと音を立てて、youがすぐ前を走るメローネの名を大声で呼んだ刹那…。
『オレが知りたいのはキミの本心。キミの本心を聞いた上で、その時にオレは自分の考えと言葉を選ぶんだ。』
『ディ・モールト!!その顔が見たかった!』
『じゃあ、you……オレが誰も傷付けず、オレの心と体も傷付かないようにするために、手を離さないでくれるとディ・モールト嬉しい』
『そうだな。キミの「初めて」を貰えて嬉しいよ、you。』
ああ わたし
あの日からずっと…
『怒ってない!!怒ってないって……言っただろ……言ったじゃないか…。』
会いたいと思って
話したいと思って
『謝るのはオレの方だろ……オレが悪い…全部、何もかも、オレの所為だ……こんな…ッツ!!』
また、前みたいに笑って…
メローネに名前を呼んでほしかった
雨音に混じってドサッという重量の大きな物が地面に落下した音と、大きく水が跳ねる音がして
メローネが後ろを振り返れば、自分を追いかけてきたyouがうつ伏せで倒れている姿が視界に映る…。
あの雨の日を彷彿とさせる光景に、一瞬にしてサッと血の気が引くメローネ…。
名前を叫び、すぐさま駆け寄り気を失って倒れている彼女を抱き上げて事務所へと駆け戻った。
・
・
・
・
「ぅ…。」
「you!」
逃げようとしたメローネをyouが外まで追いかけ、倒れた後…。
彼は結局逃げることはせず、彼女を抱えてすぐに事務所に戻り、仮眠室へ連れて戻った。
仮眠室の簡易的なベッドの上に身体を横たえた後、とりあえずタオルを取って戻ってくると
小さく唸り声を上げてyouが目を開いたため、メローネは彼女の元へ駆け寄った。
「頼むから……倒れて驚かせたりしないでくれ、あの日みたいに……生きた心地がしないだろ…。」
「・・・。」
口ではそう言ったものの、今回は倒れてから意識が戻るまでそう時間が掛からなかったことで、
ホッと安堵の表情を浮かべ、メローネは持ってきた大判のバスタオルを広げ、彼女の頭にバサリと被せる。
「ただでさえもう、キミがいなくなったらオレは生きていけない状態だっていうのに…。」
「ぇ…。」
「どうせ言葉が分からないから、オレは今から勝手に一人で話すぞ。全部吐き出して、そんで終わりだ。
言いたい事とか吐き出したいこととか、そういうの実際口にしたら多分、スッキリすると思うんだよな。」
「メローネ…。」
「あー、あっ!アンタは何も言わなくていい。重要なのはオレが話すってことだ。オレが自分の気持ちを昇華するためにだ。」
「・・・。」
「そう、いい子だ。」
ポン、とタオルの上からyouの頭を軽く叩いて「ベネ」と呟く。
それからメローネは自分の生い立ちやスタンドに目覚めた話…。
つまり自分の過去の話の独白を始めた。
「それで…まぁ、そういう経緯があってスタンド能力に目覚めた。…オレのスタンドに関しては本当は詳しく語って聞かせたいところではあるが…そこは悲しいかな禁則事項ってヤツだ。使う事も語る事もするなって、これは今のボスに言われてるからな…ギャングにとってボスの命令ってのは絶対だ……この世界じゃ「壁に耳あり障子に目あり」は日常茶飯事、うっかり口を滑らせると比喩ではなく本当の意味で首が飛ぶ可能性があるから…秘匿にさせてもらうが…。」
シーっと、人差し指を自分の唇に当てて「秘密」を表現すれば、
彼女もまたそれを真似てみせたので、ふっとメローネの目元が緩んだ…。
「まぁ、そんな禁則事項扱いになるくらい酷い能力を使って、オレは人を沢山傷付けて、犠牲にして…生きてきた。生き残ってきた。勿論それは……オレだけじゃないんだが…。」
「・・・。」
「それが消したい過去かと言われれば、まぁ確かに消したくはあるが、能力を手にした時に高揚した気持ちや、今の仲間と出会ってからの経験は良いものだったと言い切れるし、そういった闇と光が入り混じった人生があって、それこそアンタに出会えたとしたなら、矢張り無かったことにはしたくないかな。」
いつぞや自分の気持ちと向き合った時に考えた事を、言葉にして、今度は彼女に語って聞かせる…。
「だけど、そう……そんな汚れた人間がどういうワケだか生き残って……アンタに出会っちまった。」
「・・・。」
「滅茶苦茶フツーのさ、平和な日本で生まれて、凡そ一般的な人間が送るような平々凡々の女と出会って、変わっちまった。いや、多分本質的には変わってないのかもしれないけど……ただ……アンタと出会って、過ごした時間は今まで感じたことのないような不思議な時間だった。そう、不思議。……アンタと一緒にいる時間は陽だまりの中にいるみたいで……そういうの、オレは今まで知らなかった。」
「・・・。」
「素直と言えば聞こえはいいが、オレ達からするとそれは馬鹿正直で騙し甲斐がある女。参るよねホント……会う度もう何度食っちまおうかと思ったか……押し倒して「アンタが信頼して家に上げた男はこういう人間なんだぜ」って言ってやりたかったよ……オレの理性、今までマジでよく持ったと思わないか?」
はぁ~~~っと盛大な溜息を吐いて呆れた顔をyouへ向けるメローネ。
心なしか目が合った彼女が怒っているような気がしたが、分からない日本語で話を遮られるのも癪で、
メローネは鋭い視線はまるっと無視して話を続けることにした。
「あんなことになるんなら……口説いて抱いときゃ良かったな………なんて……いや、無理か。それができてたら…。」
「?」
「多分、こんなに自分の気持ちに苦しんでないハズだもんな…。」
自分が嫌になるよ、と呟いてみる。
「アンタの傍は心地が良くて……ずっと一緒にいたいと思って……でも、きっと今も外道だったオレは消えてなくて、そんなオレが傍にいれば、どういう風にかは分からなくても、間違いなくアンタを傷付けるって思った。いや、思ってる。」
「・・・。」
「だからあの時……アンタから離れようと思った。自然に、いつの間にか友達より薄味の、ただの同僚になろうって。好きな気持ちに蓋をして、箱に入れて、鍵を掛けて……二度と開かないよう海の底に沈める勢いでさ。アンタのこと、突き放した………。」
「・・・。」
「その結果がアレだ。そして今「こう」なってる。本当に良かった。アンタがあの日のことを忘れてくれて……心の底からそれだけは嬉しい。あとはちゃんと、アンタはオレのことを忘れて、オレもアンタの言葉が分からなくなって……ただの同僚以下になった。」
でもそれがオレの目指して、そうなろうと思っていたカタチなんだ、とメローネが言葉を零す…。
そして、今までで一番優しい眼差しをyouに向け、彼女の頬に手を伸ばした…。
「だから、you……キミはこのままでいいんだ。このままオレを思い出せないまま、オレを苦しめたまま幸せになってほしい。」
痛いくらい切ない表情で、少しだけ泣きそうな、震える声でそう言えば、
それに応えるように穏やかな笑みを浮かべて、youがメローネの伸ばした手に自分の手を重ねて口を開いた。
「そう…でも、わたしはメローネにわたしの所為で苦しんでほしくないし、幸せになってほしいと思ってるよ。」
「そんな言葉、オレには過ぎた願い過ぎる………え。」
「……ごめんなさい、全部聞いちゃった…。」
「え…you、あ、え……キミ、イタリア語……っていうかオレのこと…いやそんなことより…!!」
人差し指をメローネの唇に押し当てて泣きそうな顔をするyou。
ああ、全部、何もかも全て思い出してしまったのか、全部聞かれてしまったのか…とメローネも泣きそうな顔をする。
しかし、あれほど今しがた饒舌に「忘れたままでいい」、「思い出さないでほしい」などと口にしておいて、今はどうだ。
いざ目の前の彼女が自分の名前を呼んで、伝わる言葉で話してくれることが
今まで経験してきたどんな出来事よりも今、自分の心を震わせている…。
結果的に自分自身で暴露することになったとはいえ、
結局メローネはあらゆる要因から、もう感情を抑えることができなくなり、
溢れた想いを曝け出し、震える声で全て吐き出し始めた…。
「ッ…ゴメン、ごめんyou……オレ、キミに謝らなきゃいけないことが沢山あるんだ…!」
「うん、うん……全部聞くよ。」
「けど、でも、ゴメン、何よりも一番…謝ってもきっと絶対、皆も、神様だって許しちゃあくれないだろうけど…でも、それでも…一番……本当に謝らなきゃいけないのは、ゴメン、you……オレが…オレみたいなヤツがキミのこと、好きになってごめん…!!」
「メローネ…。」
思い出してくれたことに感極まることよりも、ただ、本当はずっと自分の気持ちを伝えたかったのだと思い知る…。
どうしようもないくらい傍にいたくなって近付きたくなって、メローネはyouに手を伸ばす。
結局両手で彼女の頬を包み、コツンと額を当てれば、
久しく忘れていた、あの優しい石鹸のような香りに胸が痛くなり、泣いてしまった。
「好きだ、you……キミのことが、死ぬほど好きなんだ…。」
「…うん…。」
「キミだけなんだ…キミだけが唯一……ずっと、純粋にオレの心に触れようとしてくれてたんだ……なのに、オレは…。」
「いいんだよ、メローネ。あの時も言ったけど、わたしだってそんな、マリア様みたいな人間じゃないもの。」
「オレにとっては、聖母以上の存在なんだ…。」
「でも、聖母でも聖人だとしても、わたしはそんな出来た人間じゃないから……すぐ怒ったり、泣いたりするし、嫉妬だってする……メローネと同じただの人間。」
「you…。」
今度はわたしが話すね、と…。
youはやんわりとメローネの手を掴んで下ろし、お互いの身体を少しだけ離した。
ベッドサイドに腰掛けたメローネと視線を合わせて、問い掛ける…。
「覚えてる?前に一緒にご飯を食べた時に「買い物の時に女の人によく声を掛けられてるね」って話したの。」
「…覚えてる…。」
「あれ、多分……無自覚だったけど……「嫉妬」してた。」
「何だって…。」
「仕事で財団の人とローマに行くからって言った日も。あの日もそう、出張の日……尋ねなかったけど、財団の人って女の人だったのかな、タクシーで一緒に戻るくらい仲良くなったのかなって。」
「まさか……あれは男だったよ。」
「そっか…良かった。」
「良かったって…。」
思いも掛けない彼女の発言に、ひと時涙が引っ込んでしまうメローネ。
内心物凄い動揺をしているのだが、逆に動揺し過ぎて言葉に詰まっていると、
何の反応も見受けられないと判断したyouが困ったようにメローネの手を両手で握る。
「わたし、メローネのことが好きです。」
「…you……。」
「もう突き放さないで、傍にいさせてくれないかな。」
「ッ…!」
「ずっとメローネの隣にいたいです。」
「それは…。」
突然のyouからの告白の返しに、内心力いっぱい抱きしめてしまいたかったが、
メローネはぐっと口を噤んで、ぎゅっと目を瞑って…。
そして一度深呼吸をした後、ゆっくりと目を開き、静かな声で彼女に言った。
「……ダメだ。」
「メローネ…!」
「さっき話したの、聞いただろ……オレは今までアンタに言えないくらい酷い事を沢山してきた。アンタを傷付けた奴らときっと何ら変わらない……生きてる時点で地獄行が決定してるような、そんな人間が……アンタみたいな綺麗な女から想われるなんて…万が一にもあっちゃあいけないんだ。」
「メローネを好きになるかはわたしが決めることでしょう?どうして否定されなきゃいけないの…。」
「否定はしていないさ…好かれちゃいけない、って言ってるんだ。それだけじゃあない……オレはそうやって生きてきた人間だから、もしキミの好意を受け入れたとして、きっとこの先キミを傷付ける…。」
「傷付けるって…。」
「色んな意味合いだ。そんな生き方をしてきたから、沢山の恨みを買ってる。ある程度組織のネームバリューで守られてはいるが、それでも許せないって思う奴がいるかもしれない。危ない目に遭わせるかもしれないし、オレ自身がキミに「そうする」かもしれない。」
「ッ……!!」
「そう……確かに今は昔とは違う環境だけれど、オレの中にはやっぱりどす黒い何かが何処かにあって、ふとしたきっかけで溢れ出るんじゃあないかって、そうしてキミをいつか心身ともに傷付けるんだ……寧ろ酷く傷付ける自信しかない。」
そもそも今までも2人きりの時にそういう気持ちになることもあったし、
現にその懸念が理由で距離を置き、自分の気持ちの都合だけを押し付けて、キミを傷付けた…と。
「だからyou……オレ達、また「Piacere(はじめまして)!」から始めよう?」
「え…?」
「仕事で一緒に買い出しに行って、帰りに寄り道してジェラートやパニーニを一緒に食べたりな。
たまに休みが合えば美味しいご飯やドルチェを食べに行こうぜ。
ああそうだ、仕事の終わりが一緒の時はたまに飲みに行ってくれると嬉しいな……
その時キミは自分の好きな男や恋人の話をして、オレは最近どんな女を抱いたか報告するんだ。
そんな話聞きたくないって君が怒って、じゃあ別の話にしようかってオレが笑うんだ。
今まで通りだ、ディ・モールト!そうしよう、you?オレ達ならきっとそうなれる。」
「ッ………馬鹿にしないでくださいッツ!!」
「何で、何が馬鹿な話だ…これは最適解じゃあないか!」
「どうしてメローネだけがわたしを「傷付ける」って思ってるの!?」
「は、どういう…?」
メローネの一方的な気持ちの吐露は、自分にしてみれば独りよがりもいいところだ、と…。
youは大いなる怒りを含んだ目でメローネを睨に付ける。
ああ、本気で怒ってるな…と感じたが、そんな真剣に向き合ってくれる表情であれば
どんな感情だって自分にとっては嬉しいもので、正直、怒った顔もディ・モールト素敵だと感じるだけであるが、
どうして怒っているのかは大いに気になるところではあるので、彼女の言葉を待つことにした。
「わたしだって……わたしだってメローネを傷付けたでしょう…?」
「!!」
「これからだって……一緒にいてメローネがわたしを傷付けることがあるように、わたしもメローネを傷付けることがあるかもしれない。物理的にじゃなくても……だから、心、痛かったでしょ…ずっと…。」
「そっ…れ、は……。」
youはメローネの胸にそっと自分の手を添えた。
「だから皆、好きな人を傷付けないように、想いを伝えるんじゃないのかな……傷付けたら謝って、傷付いたらそう言うの。」
「き、傷付けるの程度が違うって言ってるんだ……オレのは謝るだけじゃあ済まされないかもしれない、だから…!」
「メローネ。」
「!!」
「わたしがそんなに……馬鹿でお人好しないい子に見えるなら、それ、間違ってる。」
「何だって…。」
「確かにわたしは非力だけど……味方がいてくれるでしょ。」
「……それは……チームの…?」
「チームの皆もそうだけど……わたし、自慢じゃないけど、貴方のところのボスと仲が良いの。」
「そっ…………そいつはディ・モールト……おっかないな…。」
「メローネに殺されたってタダじゃ死んであげない。」
「怖い事言わないでくれ!」
「でも、そういうこと……伝えたかったんでしょ?」
「それは……。」
「怖いでしょ、リゾットとプロシュートとホルマジオとイルーゾォとペッシとギアッチョに、ブチャラティやハルノくんに追われるの。」
「怖いなんてモンじゃあないぞ、それ…。」
「わたしも怖い。」
「キミなぁ……?!」
刹那、ふわりと石鹸の香りが鼻腔を掠めたかと思えば、
自分の身体が彼女に抱きすくめられていると気付いたメローネ。
思わず動揺して名前を呼べば、先程よりも随分近い場所から、彼女の優しい声が耳に届いた。
「メローネを傷付けるのも、傷付けられるのも……凄く怖いよ、だって凄く好きだから…。」
「…you…。」
ゆるりと身体を離して、視線を合わせる。
「でも、同じように人を好きになった時に人を傷付けて、傷付くものだっていうなら……メローネがいい。」
「・・・。」
「メローネを、好きでいたい。」
それは心の底からの本心だと理解できる程、綺麗な笑みを浮かべるyou。
トドメの言葉を伝え終えると、もうこれ以上の言葉は無いのだと宣言するように、一筋涙が流れた。
もうこれ以上は…拒絶すること自体が彼女を深く…それこそ再起不能なまでに傷付けると解ったメローネ…。
それでも彼女の身の安全を思うなら、絶交してでも拒絶すべきだと脳内は判断しているのに、
心は、目の前で泣いている彼女をただ抱きしめたくてたまらない。
「オレは………酷い男だぞ…?」
「わたしは、素敵な人だと思うな。」
「凄いスタンドで凄い過去があるし!」
「でも組織の言いつけが絶対だから、わたしには知る術がないって、貴方が言ったんでしょ…。」
「ッ…執着心も凄いし……きっとアンタを自由にできない…一生離してやれないかもしれないんだぞ…?」
「困ったね、ずっと傍にいないとだ。」
「自他共に認める変態だし…!」
「公序良俗を守るなら、許します。」
「……多分……絶対、一生…………アンタのことが好きだ…。」
「……多分なの?」
「いや………間違いなく、絶対……もう、youしか愛せない。」
「それは……メローネの言葉を借りると……ディ・モールト、ベネ、だね。」
「you……。」
「ん?」
「ごめん、愛してる。」
「メローネ…。」
「オレはもう、youしか要らない……だから、ずっとオレの傍にいてくれ…。」
「…はい。」
「ベネ…。」
お互いに眉根を寄せているのは、あまりに幸せ過ぎて苦しくなったから。
そうして2人で同じような泣きそうな顔をしているので、
暫くした後に同じく2人して吹き出して…引き寄せられるように額をぴったりとくっつける。
となると、この状況ですることと言えば、1つしかないワケで…。
そっとyouが目を伏せたのを見計らい、メローネの方からキスを落とす。
一度触れてしまえば、もう抑えはきかず…。
今まで堪えてきた欲望や愛情が一斉にあふれ出して、歯止めもきかないくらい何度も何度も口付けて…。
身体など重ねているわけではないのに、それだけで一つに溶けそうな程蕩けるようなキスを続けて、
メローネとyouは、そのまま仮眠室のベッドで2人して眠ってしまった。
翌日、雨に濡れて服も髪も乾かさないまま寝落ちてしまった代償に、
2人揃って風邪を引いてしまったのはまた別の話…。
Ti amo Ti amo Ti amo.
愛してる 愛してる 愛してる
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*