Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「待って、まってメローネ!ちょっと待って!」
自分のすぐ横をすり抜けて玄関へと向かう男の腕を
もう逃すまいとしっかり掴んだ
Lei e un fiore.
La sua determinazione.(彼の決意)
youがメローネに「避けられている」と感じるようになってからは早かった。
外勤とほぼ被らない休みの所為で、彼女がメローネと顔を合わせるタイミングは激減。
何とかして話をしたい(というかきっと怒らせているので謝りたいと思っている)youと、
これ以上彼女の事を好きになりたくないと拒絶するメローネ。
メローネの真意を勝手に彼女に伝えるワケにもいかない一同は、
それとなく誤魔化してきたのだが、流石に最早限界であった。
そんなある日、朝一で事務室で任務の資料を受け取って出て行くメローネと、
出勤直後のyouがちょうどばったり廊下で鉢合わせた。
「!」
「メローネ…!」
「…Ciao、you!今日は早いね。」
「おはようメローネ、あの…。」
「ああ、すまないyou…キミともっとじっくり話していたいんだけど時間がなくてな…。」
「メローネ、あのね!」
「今日は今からローマ行きなんだ。それこそキミの同僚か上司か…兎に角SPW財団のスタッフと駅で待ち合わせていて……だから電車の時間に間に合うように行かなければ…。」
「待って、まってメローネ!ちょっと待って!」
自分のすぐ横をすり抜けて玄関へと向かう男の腕を、彼女はもう逃すまいとしっかり掴んだ。
「!」
「メローネ!」
「……少しビックリ、そんなにオレに行ってほしくないのかい?積極的なキミもディ・モールト、素敵だ。」
「茶化してもダメ、メローネがわたしのこと避けてるの、もう誰の目にも明らかだよ。」
「・・・そう………まいったな…。」
参った、という割にはさほど驚きもなく、ハハ…と、乾いた笑いを零すメローネ。
「お願い、メローネ……わたし、貴方と話したい。ちゃんと話をしたい。」
「・・・。」
「どうして避けるのか教えてほしいの。わたしが鈍いから、きっと何かメローネの気に障るような言葉や態度を取ったんだろうなっては思ってる。わたしはイタリアについてまだよく分かってない部分も多いし、失礼なことがあったのかもって。」
「you…。」
「そうでなくても、わたしの性格に問題があったりもするだろうなって。でも、そういうのも全部、ごめんなさい、わたし、自分じゃ分からない……直せるかどうかは分からないけど、メローネの口からわたしを避ける理由を教えてほしい。」
「Aa…Fai proprio schifo…(あぁ…お人好しのお馬鹿さん)」
「え?何…?」
「キミの話を聞いてあげてもいいけれど………望むような答えはオレの口から出ないと思うぜ…なにせオレはキミのことを微塵も怒ったりしていない。」
「・・・。」
「それでも話すって言うんなら…」
「いい。話す。話したい。」
「…そうか、じゃあ好きに話すといい。オレは変わらずキミのことを可愛いと思ってるし、大事な同僚だと思ってるけどね。そうだな……今週フィレンツェへの出張が入っているから、出張から戻ってからでいいかい?」
「分かった、絶対だよ?絶対「出張帰りで疲れてる」って前みたいに逃げないでね?絶対ですよ!」
「分かったわかった、信用ないなぁ…。」
「ここ最近のメローネには信用が無いから念押ししてるんです…っ!」
「それは大変申し訳ございません。」
「慇懃無礼~!!」
「殴りたいかい?別に殴ったって一向に構わないぞ!オレは!さぁ!」
彼女の拳か平手打ちが顔面にクリーンヒットするように少ししゃがんで両手をバッと大きく広げたメローネ。
若干目をギラつかせ、ワクワクしていそうな様子は少し気持ち悪い。
確かに今しがたのメローネの態度もあり、ディ・モールト殴りたくなる気持ちはあるが、
彼女の温和な性格的にも、これから人と会う約束がある人間に対しそのような行為ができるはずもない。
代わりに湧き出てくるのは怒りよりも不安…。
特殊任務依頼チームの人員がSPW財団の人間と出張ということは、
とどのつまり彼等の護衛という意味合いである可能性が高い。
本来であれば能力を遺憾なく発揮できるホルマジオやギアッチョ、リゾットあたりがその任に就くのだろうが、
メローネは無理を押してその任務に当たりたいと申し出ている。
能力を制限されている彼が活用できるものといえば、自分の身体能力がその全てであるワケで…。
要は同行する財団の人員と同じただの「人間」が、もしかすると武装した敵対のギャングや
スタンド能力者の襲撃に遭うかもしれないということ…。
今までも何度か外勤の任務から帰ってきた時に怪我をしたメローネを手当したことがあったが、
随分と久しぶりに顔を合わせたこともあって、より一層その不安がyouの頭を過ぎるのだ。
気付けばyouは両手を広げたメローネの胸に飛び込んで、その身体を抱きしめていた。
「え、と……。」
「メローネ、ちゃんと無事に帰ってきて。」
「あ、ああ……勿論。」
「ちゃんと話をしてくれるって、約束だからね。」
「・・・ッ!」
じわじわとyouの背に伸ばされていったメローネの両腕が、ハッと我に返ったように離散する。
すぐにメローネは彼女の両肩を掴んで身体を剥がすと、くるりと後ろを向いて歩き出した。
「悪いが、本当にそろそろ行かなくては。Ciao、行ってくるよ。」
「…行ってらっしゃい、メローネ。」
「・・・。」
彼女の見送りの言葉は背中で聞いて、メローネは事務所を出て行った。
本当は玄関を出てすぐしゃがみ込んで悶絶してしまいそうだったのだが、
この場でそんなことをしていれば、時期に出勤してくる他のメンバーと鉢合わせてしまう可能性もあるため、
グッと抑えて、何とか大通りへと走り出たメローネ…。
「人の気も知らないで……オレがどれだけ……アンタを好きになっているか……知らないクセに…。」
朝早い通りには人気は少なく…。
すれ違う人もいないため、気付けばわりかし大き目の声が口を突いて出ていた。
「オレがどんなに……アンタを抱きしめ返したかったか……分かってないクセに…。」
そしてそれを耐えて、距離を置くことが自分と、彼女の為になるのだと改めて言い聞かせる。
基本的に感情が先に立つギアッチョやプロシュートとは異なり、
メローネは自分の置かれた状況や感情などを冷静に分析し、コントロールできる方だと彼自身自負している。
故に、今回のこの状況に関しても、自分がこのまま何も気にせず感情のままに突っ走り、
彼女とそのまま親密度を深めていった場合どうなうだろうかと、ちゃんと考えての行動なのだ。
その場合、十中八九上手くいくだろうということも理解している。
自分は勿論、今はもう耐えがたいくらい彼女を好きになってしまっているし、
今まで通りのアプローチを続けていれば、いずれ彼女も自分を恋愛対象として見てくれて、相思相愛に至るだろう。
問題はその後…。
恐らくは日本で生まれて、凡そ一般的な人間が送るような日向の人生を歩んできた彼女は、善なる生き物…。
勿論、喜怒哀楽がある限り、多少人の悪口を言ったり、人に対して嫉妬をしたりと「人間の悪い部分」というものはあるだろう。
しかし、「普通」を生きてきたとハッキリわかるような心根や言葉で、彼女の善性はこのイタリアでもありありと体現されている。
そんな彼女と相対した時に抱く自分の感情はとても複雑で…。
今までの自分が嘘のように自然な関係で好意を抱くことができており、
彼女の傍はとても居心地が良いと感じる気持ちでいっぱいなのに、
そんな彼女を外道人生まっしぐらだった過去の自分が時折「彼女を汚せ」と囁きかけてくるのだ。
「本性を現した自分を見て怯えて震える表情はきっとディ・モールト!ベリッシモ!そう、美しいはず。スゴク、見てみたい」
もしもそうした場合、自分は間違いなく今のチームどころか、パッショーネを追放されるだろうし、
何より今後一生、彼女に会う事は叶わくなるだろう。
そのリスクを負ってまで彼女を追い詰めたいかと言われると……実は本心としては追い詰めたい。
今までの紳士的な姿から一変して性欲に塗れた変態的な態度でもって、
怯える彼女をベッドに組み敷き、いつものように質問して、無理矢理なのに
「キミの好みの仕方だろう」と責任転嫁の台詞を浴びせたいのだ。
ただ、それはかつての自分が出す答え。
刺激が無いといえばそうかもしれないが、一時の刺激で手にした全てを手放すなんてナンセンスなこと、
以前のジリ貧時代の自分なら、どうせ夢も希望も無いのだからと自暴自棄気味で毎度の刺激に身を委ねていたかもしれないが、
今現在に至ってはそのような考え方に至るはずがない。
とどのつまり、今の自分は新制されたパッショーネでの以前とは異なるその環境や、
それこそ彼女に出会ってからの穏やかな時間を思えば確実に…。
本性を出さずに平穏に過ごす方に自らの意思で天秤を傾ける。
「(そう…だからこそ、オレは困ってる。)」
そうしてもしも、もしも、youという平穏と安らぎを手に入れることができたら…。
オレはこれから一生、彼女に嘘を吐き続けていくことになる。
人を騙すのには全く抵抗などないが、彼女は別だ。
いつだって真摯に、真面目に自分と向き合ってくれている彼女には、
できることなら嘘は吐きたくない。自分でも気付かぬうちに、そう思って今まで接してきた。
だからこそ彼女は今、自分の事を信頼してくれている(ハズだ)し、
好意を持って接してくれている(ハズな)のだ。
少なくとも、泣きそうになりながら「メローネとちゃんと話がしたい」と抱き着いて、言われるくらいには。
だから、自分の過去やスタンド能力、なるべく大っぴらに出さないようにしている性癖など、
彼女には語る事のできないおぞましい話はずっと、黙ったままで、彼女の耳を塞いで、聞こえないようにしなければならない。
聞かせてほしいと言われても、口を噤むだろう。
彼女の事を避けていると気付かれてからは、ギアッチョやホルマジオに事情や本心を問われる事があったが、彼等も同じ見解であった。
消したい過去と言われれば、まぁ確かに消したくはあるが、
能力を手にした時に高揚した気持ちや、今の仲間と出会ってからの経験は良いものだったと言い切れるし、
そういった闇と光が入り混じった人生があって、それこそ彼女に出会えたとしたなら、矢張り無かったことにはしたくない。
ただ、それはあくまで「自分は」ということで…。
彼女はそうではないのだ。
仕事と、生きるためにとはいえ、人を傷付けてきた過去は消せない。
そもそも「仕事と生きるため」など、言い訳にもならない。
そう、つまり、彼女に自分の過去を黙ったまま共に生きていくということは、
「過去は消せない」「言い訳はできない」という抜き身のナイフを常に突きつけられている状態で、
更に最愛の女から「話すことも憚られるような汚い過去をわたしに隠して生きているのね」と言われ続けて生きるようなものなのだ。
「(オレじゃあなくても発狂ものだろ……そんなの…!!)」
色々と考えすぎて、朝からクラクラしそうになる頭に手を添え、大通りを歩き出すメローネ…。
誰だってそう、最優先すべきは「己」。
だから自分は彼女と離れる決断をしたのだ。
それはもう決定事項で、彼女と話し合って、軽く仲直りして、もう避けることはやめて、そう…。
「ベネ、初めて挨拶した時の頃に戻る。それがディ・モールト、だ。」
皮肉にも、久しぶりに彼女と話すことによって決心が固まった、と。
メローネは自分を嘲笑するように「ハッ…」と、小さく息を吐いた。
La sua determinazione.
彼の決意
words from:yu-a
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