Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「そういえばyou、オメー…。」
「?」
内勤の休憩時間、リビングで寛いでいた最中に、
youはプロシュートに声を掛けられた。
Lei e un fiore.
bacio(バーチョ)!
「なぁに、プロシュート?」
少しだけ小首を傾げると、youは手に持っていたマグカップをテーブルに置いて、彼の言葉を待つ。
「イタリアの挨拶、もしかしてきちんとできねェんじゃあねーか?」
「!!!!」
「・・・図星か。」
「や、あ……あの…。」
まったりと休憩していた先程の表情は何処へやら…。
「あー」とか「うー」とか返答に辛そうに唸り声をあげて困り果てるyouに、
同じ空間で休憩していたペッシとメローネが助け船…というか、素直な疑問を口に出す。
「何言ってんですかぃ、兄貴?」
「イタリアの挨拶って何のことだ?」
…と。
すると、プロシュートは「あぁ?」と無意識にメローネの方へ向いて強気に凄んだ後で、
ペッシを見て「あぁ…」と少し穏やかな顔つきに戻ってからその意味を話し始めた。
(「ディ・モールト理不尽だ!」)
「Bacio(キス)のことだ。挨拶のな。」
「なんだ、挨拶の方法のことか。」
「別にオレ達は同僚だし、結構な頻度で顔を合わせるからそんな挨拶わざわざ丁寧にする必要なんてねェけどな。」
「…なら別にいいんじゃあないか?」
「だがyouは能力の問題でボスやブチャラティに付いてお偉いさんに会わなきゃいけない時もあるだろ。」
「そう言われれば確かに……たまに連れてかれているな。」
「そん時も何かぎこちない感じてやってんのかと思ったら、妙に気になってな。」
「なるほど。」
メローネとプロシュートはそんな会話を繰り広げた後、2人してくるりとyouの方へ向き直った。
「確かに自然にしないと仕事関係者より観光客感あるよな。いや、別に慣れてない様子も初々しくてオレはディ・モールト可愛いと思うが…。」
「それで組織の品格だったり、財団さんの社員の質も問われたりしねェかなと思ってよ。」
「まさか、そんな……それよりオレはそんな挨拶のバーチョ1つで照れるyouに、変態オヤジ共がセクハラし始めないかがディ・モールト心配だ…!」
「安心しろ、そんな変態オメーだけだ。」
メローネの顔を見ずに真顔でそう言ってのけたプロシュート…。
苦笑しながら、見かねたペッシがメローネのフォローを始める。
「で、でもさ、確かに心配ではあるかもよ、世界各国の人と会うんだし、フランチェーゼ(フランス人)なんかは事あるごとに挨拶のバーチョ…するって言うし…。」
「フランス式の挨拶、ビズーだな?パリを含めた多くの場所では左右1回ずつだが、住んでいる地域によっては合計3回、4回だったり、一部地域では5回というというところもあるらしいが……クッ…うらやま……コホン……けしからん!」
「め、メローネ…。」
「しかも男同士は大概握手で済ませるっていうじゃあないか!これは完全なるセクハラだよな!ペッシ!!」
「えぇぇ……お、オイラに聞かれても…!!」
拳をぎゅっと握ってフランス式の挨拶(…というかフランス文化)に対して破廉恥だと主張するメローネ。
挨拶をセクハラと断言するアンタの脳内が破廉恥だよ…と喉元まで出掛かった言葉をごくりと飲み込んでやるペッシだった…。
「まぁ、何だ…今後の連れ出し案件の時も考えて流れるように自然にできるようになってた方がいいと思うぜ、you。」
「そ…そうだね、確かに…。」
「ンな小難しく考えるような難しいマナーじゃねーよ。」
「は、はい!」
「じゃあ、オレとメローネで挨拶してみるから、見とけ。」
「うん、ありがとう!勉強させていただきます!」
基本的に世話焼きで兄貴肌のプロシュート。
細かいことかもしれないが、彼女の今後の為を想って実演で教えてくれると言う。
プロシュートに名を呼ばれ、メローネが「オレか?まぁ、構わないが」と、自分で自分を指さした後、立ち上がる。
「いいか、you、イタリアではフランスみたいに必ずバーチョを交わす義務なんかはねェ。フィーリングってヤツだ。」
「んー、まぁ、人によるかもだけどな……近所や同僚なんか相手だと、あんまりしないヤツが多いんじゃないかな。」
「そうだな。久しぶりに再会する相手や、滅多に会えない相手、特別親しい相手にする感じだな。」
「こんな感じかな……『Prosciutto?!Da quanto tempo!!(プロシュート?!久しぶり!!)』」
「『Melone!Che piacere rivederti…!(メローネ!また会えて嬉しいよ…!)』」
突如として開始された寸劇は、久しぶりに再会する相手との挨拶…というシチュエーションだろう。
メローネが流れるように役に入ったことを考えると、流石プロシュートの人選…。
ペッシではこう上手くは演技はできなかったはず。
そのことを納得し、youとペッシは2人の演技の観察を続ける。
再会を果たした2人は、お互いズンズンと歩み寄ると、
がしっと握手をした後、プロシュートから軽くメローネにハグをして顔の横に右から左へ1回ずつキスをする。
否、キスをするというよりはお互いの頬を合わせて、横でリップ音を鳴らす…といった行為を行った。
さて、今度はメローネが同じことを……とその場の一同全員が思っていたのだが…。
「Mi sei mancato molto….」
「ぁん?何でテメェ女言葉……ッツ?!!」
「…ボソボソ…。」
「テメェェエエエ!メロネェエエエーーーッツ!!」
プロシュートが急に役を放棄したかと思えば、彼はバッとメローネから身体を離して距離を取ると、
自身の背後にスタンドを発現させる…。
驚いてギョッと目を見開いたのはyouもペッシも一緒だが、
プロシュートの能力をハッキリ理解していないyouと違い、ペッシはその危険性を身に染みて理解しているため、
「うわぁああ!」と大声を上げてプロシュートの方へと駆け寄って、急いで彼を宥め始める。
「あああ兄貴ィイイ!此処でスタンドはダメだよぉおお!!仕舞って!今すぐ仕舞ってくれよォオオ!!」
「るせェぞペッシィイイ!」
「youもいるんだよ、アニキィイイ!!」
「…チッ…!!!」
ものすごーーく不服そうに大きく舌打ちをし、プロシュートは発現させていたスタンドを仕舞った。
ペッシが半泣きの状態でプロシュートを止めた姿を見て、
彼の能力は相当に恐ろしいものなのだろうから、今後絶対にプロシュートを怒らせてはいけない…。
そう心に決めたyouであった…。
「もう、メローネの所為でオイラ寿命が縮んじゃったじゃないか!一体兄貴に何したんだよ!」
「えーだってぇー…見本だっていうから、オレがyouの役かな~って思って。」
「…バーチョした時何て言ったの。」
「『あなたに会えなくてとても寂しかったわ。』」
「それだけじゃないでしょ…。」
「え、あは、バレてた?耳元で『貴方のその男らしい香り、とっても久しぶり……今夜全身に浴びたいわ』って言った。」
「うげェ…ッ!」
バチン☆と綺麗な顔でウィンクをするメローネに、それは兄貴じゃなくても嫌がるよ、と…。
ペッシはまるで苦手な飲み物を無理矢理飲まされたような表情と声で短い嗚咽を漏らした。
さて、ここで急に模範的なシチュエーションから逸脱してしまったことによる弊害が起こる。
「あ、あ……挨拶ってそんな破廉恥な……!!」
「「「あー……。」」」
「やっぱりわたしには荷が重いです…!!」
社交辞令のハードルが高すぎる、どうしよう!と、頭を抱えるyouに、
3人が全員で「今のは違うんだ…」と誤解を解きに掛かるのであった……。
それからちゃんと誤解を解き、先程のそれはメローネがふざけたせいでそうなってしまっただけで、
通常は同じように右と左のバーチョ(はリップ音のみ)を交わせばそれで問題ないと理解させるに至った。
そして…。
「じゃあ、you。」
「ん?」
「次に事務所に戻って来たヤツにイタリアの挨拶をやってみな。」
「「えぇっ!?!」」
「別に驚く事ァねーだろ………つーか何でオメーまで驚いてんだよ、メローネ。」
プロシュートからの提案に驚いたのは勿論youだったが、
何故か同時に全く関係の無いはずのメローネまでが驚嘆の声を上げたので、一同は彼に目を向けた。
「え、だってyouの初めてのバーチョだぞ?!」
「別に口にするワケでもねーだろ。」
「彼女の「初めて」をもらうんだぞ!!」
「もういい、とりあえずオメーはもう喋んな……頼むから。」
「クッ……今からオレが一端外に出てまた戻ってくるっていうのはアリか?!」
「ナシに決まってんだろこの変態野郎が!直触りでミイラにされてーのか、あぁ?」
「申し訳ございませんでした。」
この凄みは「殺ると決めたら殺る」という顔だ…と、察したメローネ。
確かに先程調子に乗って滅茶苦茶ふざけたとは思うが、ここまでお怒りだったとは…と…。
大人しく口にチャックをすることに決めたのか、しょんぼりとソファの端で俯いてしまった。
だいたいそこで休憩が終わり、彼らは再び事務所内で内勤の仕事をこなす流れとなった…。
そうして夕刻過ぎになり…もうそろそろ誰かが戻ってくる頃ではないかという時間で、
不意にペッシがyouへと尋ねる…。
「ねぇyou、今日って誰が出勤だった?」
「ええと、今日は今いる4人が内勤で、リゾットがブチャラティのとこの事務所で16時まで会議。あとは外勤がホルマジオ…だったかな。」
「今日の休みはギアッチョとイルーゾォか。」
「そうだね。」
「今が16時過ぎだから…じゃあ、これから帰ってくるのはリーダーかホルマジオって感じかな。」
「そうだね。」
「どっちが先に帰って来るかな…。」
「ど、どっちだろうね……っていうか何かペッシ楽しんでない?!」
「えぇ?そんなことないよぉ~!」
「っ~~もぉ!!」
くすくすといたずらっ子のように小さく笑うペッシはまるで少年のようで、
悔しいながらもついつい絆されて強く怒るのを止めてしまうyouだった。
言ってしまえば頬を寄せるだけの「ただの挨拶」なのだから、誰が相手であろうとも別段問題はない。
それはこの場にいる全員がそう思っているのだが、
その中でもこの男…メローネだけは、そう軽く考えつつも、どうしてもそれだけでは自分の感情を抑えられない様子…。
「(ただの挨拶…だが嫌な予感がする…こういう悪い予感ってのは結構当たるんだよな……。)」
「メローネ、どうしたの?」
「へ?」
「うんうん唸ってたから、どうしたのかなって。」
「えぇ、オレ唸ってた?」
「うん。」
「そっか…そうか……。」
「大丈夫?何か問題?」
「そうだな、少しだけ気になる事があって…大したことじゃあないんだが……。」
「なぁに?」
「先に帰ってくるのがリゾットだったらいいなと、何となく思っているくらいのことだ。」
「何で…??」
「さぁ……何でだろうな……オレにもよく分からないんだ…。」
そんな折、ついに事務所の玄関方面からガチャリとドアの開く音がして、
恐らくはメンバーの誰かが帰ってきたと一同は察する。
いつもは事務室で帰ってきたメンバーを「お帰り~」くらいの挨拶で迎えるのだが…。
メローネはすぐに真剣な顔つきでドタバタとリビングへ走り、
ペッシが嫌そうなyouの背をグイグイ押し、プロシュートがそれに続く…。
結果、本日はyouのチャレンジデーとなってしまったため、
皆バタバタとリビングへ移動して帰宅者を待ち構えることに…。
「うぉっ?!ビックリした!何だお前ら、何で皆でリビングにいんだよ?!」
「ぐぁあああ、ホルマジオだったーー!!最悪だ!」
「あぁ?俺が帰ってきちゃいけねェってのかよ、メローネ。」
「何でリーダーじゃ…リゾットじゃあないんだ…!」
「あーん?」
帰宅直後の失礼な発言に対し、僅かに眉間に皺が寄ったホルマジオだったが、
渦中のメローネが「リーダーが良かった」と両手で頭を抱え込んで俯いたため、
何らかの相談をリゾットにしたかったのだろうと思い、先程の無礼な発言は流してやることにした。
次いで、ソファから勢いよくyouが立ち上がったかと思えば、
プロシュートがよく口にする「覚悟を決めた」ような顔つきでホルマジオの元へ向かって行く。
「ホルマジオ…!」
「お、おぅ?どうした、ガッティーナ?」
「無事でよかった!」
「?!」
挨拶の導入は完璧にこなしたyou。
すぐにホルマジオの両腕を掴むか、掴まないかくらいの弱い力で手を添え、
頭一つ分程だろうか、ホルマジオの身長に合わせて背伸びをする。
いきなりの事で驚いた顔をし続けるホルマジオを見て、
プロシュートとペッシがブフッと吹き出したのだが、当事者達はイレギュラー対応真っ最中…。
最後の仕上げに右と、左の頬を掠めるようにしてチュとリップ音を鳴らして、
youの身長はいつも通りに戻った。
「・・・お、おかえりなさい。」
「お、おお……?」
「・・・で、では、わたしはこれで…。」
そーっとホルマジオから手を離し、離れようと一歩後ずさりしたyou。
いつもはすることのない挨拶に初手こそ戸惑ったものの、そこは矢張りホルマジオ…。
頭の回転も早く、更に言うなれば男女のやり取りともなれば機転も利く男。
そっとフェードアウトしようとするyouの腕を瞬時にガシっと掴んで引き寄せる。
「!!」
「おいおい、何処へ行こうってんだ?」
「え、いや…あの…。」
「俺ァまだアンタに挨拶を返してねェじゃあねーか、な?」
「そ、ソウデシタね…。」
「しょうがね~なぁ~……くっだらねー事企みがって…。」
「くだらないと言いますか、挨拶の練習と言いますか……はい…。」
「アイツ等に何を吹き込まれたかは知らねェが……ガッティーナの練習っていうんなら、付き合ってやらねェとな。」
「…ほ、ホルマジオ…。」
目の前の男はニヤリと愉悦の表情を浮かべると、youの腰へと腕を回す。
身動きが取れないようにガッチリとホールドした後、ホルマジオは視線を合わせて彼女にだけ聞こえるよう甘く囁く。
「Sono tornato…Amore….」
「ぇ…。」
「戻ったぜ、愛しい人」と囁いて、ホルマジオはyouの右側の頬に直接唇を寄せた。
割と盛大にチューっとキスをかまされ、youの目が大きく見開くと、
それを見ていたメローネが大声で「あーーーーッツ!」と叫びながらガタっと立ち上がる。
あまりにも大きなリアクションだったため、ホルマジオとyouもビクッと肩を跳ねさせて我に返ったのだが、
その後すぐさま、2人の身体はベリっと引き剥がされた…メローネによって。
「ほ、ほ、ホルマジオ!アンタ!オレの大事なyouの「初めて」を奪っただけじゃ飽き足らず!直に頬っぺたにバーチョするなんて!」
「はぁ~~??」
「オレがyouの「初めて」を奪いたかったのにぃ…!!」
「えぇ……(ドン引き)。」
勿論ドン引きしているのはホルマジオだけではない。
しかし、周囲の反応はそっちのけで、一体何処から持ってきたのか
アルコールの除菌シートでyouの頬をゴシゴシ拭きながら、
尚も「ごめんよ、youの「初めて」を守れなかった」と泣き言のように意味不明な謝罪の言葉を呟くメローネ…。
「め、メローネ…もういいから…頬っぺたもう痛いから…。」
「だけどッツ!!」
真意は不明だが、態とのように「「初めて」を奪う」と何度も連呼するので、
youの顔は次第に赤くなり、押し黙ることになる…。
そんな彼女を見て、事の経緯を知っているプロシュートが後ろからメローネにとびきりのげんこつを食らわせて黙らせ、
ペッシはyouをフォローし「もう日報書いた?」と話題を逸らしてリビングから事務室への移動をさり気なく促してやった。
それから定時までの間にホルマジオを含めた5名で、会議から戻ったリゾットを出迎えて、
各々定時帰宅が可能となったので、youはいつもと同じように日報を提出し、帰宅の準備を整える…。
「you。」
「ん、どうしたのメローネ…?」
「今日は偶々歩いて出勤したんだ、よかったら一緒に食事でもと思って。」
「んー、一応昨日のおかずの残りとかがあるしなぁ…どうしようかな…。」
「奢るよ、ドルチェも頼んでいい。」
「…本当…?」
「モチロン!」
「ではお言葉に甘えて…ご同行させてください。」
「ベネ!」
メローネから夕飯の誘いを受け、冷蔵庫の状況を考えたものの、
ドルチェ付で夕飯を奢るという誘惑は無碍にできず、了承することにした。
メローネとyouの家は近いため、2人同じ帰り道の間に手頃な店を見つけて入店。
そこでいくつか好きな料理とお酒を注文し、夕飯を摂る事となった。
「今日は災難だったな…。」
「災難?」
「そうじゃあないか、ちょっとふざけただけでプロシュートにスタンド攻撃食らいそうになるし、ペッシからは軽蔑の眼差し向けられるし…何よりyouの「初めて」のバーチョをホルマジオなんかに奪われて…!」
「最初の2つはメローネが悪いと思うけど…ていうかそれまだ言うの…。」
「言うさ。」
「わたしは今後の為になったと思うから、プロシュートとメローネが教えてくれて良かったと思ってるよ。」
「そうかなぁ…。」
「うん。またこの国の事を知れて良かったって思ったし。」
「ふーん…。」
そんな会話を続けていると、注文した料理が一斉に到着。
毎度の事ながら、美味しい料理に目をキラキラ輝かせながら舌鼓を打つyouを見て、
メローネは「ベネ!キミのそのうっとりとした表情、いつ見ても飽きないねェ」と、
こちらもまた恍惚の表情を浮かべ、料理ではなく、目の前の女性を見つめる。
「あぁ、でも…ちょっとだけ残念な気もするな。」
「何が残念なの?」
「うーん……上手く言えないが…キミのそのピッツァを美味しそうに食べる表情だったり…、
少し緊張しながら交わすバーチョの挨拶だったり…そういうのがさ、何て言うか…いつか「消えちまうのかな」って思って。」
「・・・どういう事?」
「今、スゴク…ベリッシモ…いい表情だったり、反応をするyouが、この国でオレ達と過ごすうちに、次第に慣れてきて、普通になって、見れなくなっちまうのかなと思ったら……残念というか…寂しいというか…。」
「…メローネ…。」
「なんて、ディ・モールト繊細な発言をしてみるオレだ。」
「えー、何それ。」
そうして無意識の本心を自分で茶化すメローネに、youは少しだけそのノリに付き合った後、
穏やかな笑みを浮かべ、嬉しそうに言葉を紡いだ。
「うん、うん……わたし、分かるよ、何となく、メローネの言いたいこと。」
「そうかい?」
「うん……でも、わたし…やっぱりもっと沢山のことを知りたい。」
「ほぉ。」
「今感じている新鮮な気持ちや不安な気持ち、嬉しい気持ちが薄れても、新しい事を知ればその時にまた同じ事を繰り返すでしょ?わたしはそれを皆と共有できれば、すごく嬉しいし楽しいと思う。」
「成程。」
「だから知りたい……この国のこと、色々。その上で更に皆と沢山の話しをしたい。」
「うん。」
「そうしてもっと、皆のこと……メローネのことも知りたい。」
「…っへ?」
国の文化の話かと思いきや、そこに急に固有名詞…しかも自分の名前が飛び出し、
良そうもしていなかったメローネは不意打ちを食らって素っ頓狂な声を上げた。
「この国にはどんな物があって、皆はどんな物が好きなのか…どんな事があって、皆はどんな事が好きなのか、知っていきたい。その中でわたしも話に語れたら……きっと嬉しいと思うから。」
「you…。」
「だから、わたしは皆に……メローネに、これからも色んなことを教えてほしいです。」
「キミって……何か……色々と凄いよな…。」
「はて?」
「いや、気にしないでくれ………でも、ああ、そういうことなら勿論だとも…沢山、色んな事を教えてあげるよ。」
「本当?」
「ああ。」
「嬉しいです、ありがとう、メローネ!」
そう感謝の言葉を口にして、ぱぁっと花が開くような笑みを浮かべるyou。
そんな純粋な心根をぶつけられ、内心穏やかでいられないのは、自分の感性が他とは異なるからだろうか…。
歪曲した思考に至る自分のような汚れた存在に向けられて良い笑顔ではない、と思ってしまう。
「キミが教えてほしいと言うなら、イタリアーノとのセックスを真っ先に経験してみないか」と。
「キミの純粋で温かい言葉を汚れた意味合いで受け取って、ディ・モールト興奮している変態です」と…。
いっそ今すぐに本性を曝け出して、今後一切関わりたくないと思わせてやる方が彼女の為なのではないか。
そんなドロドロした感情が沸き上がり、メローネは彼女に見えないよう、キュッと唇を噛んだ。
「さぁ、you、食事もそろそろ完食に近付いてきたが、ドルチェは何がいい?何でも好きなのを頼んでくれ。」
「グラッツェ、メローネ!えー…何にしよう…!」
「そうそう、今はまだ……慣れないでいてくれ……そのキラキラした瞳はドルチェだけに向けておいてくれよ。」
「うーん、どうかな……これは無くならないかも、ずっと毎回かも。」
「ハハ、それはディ・モールト!ベネ!」
『だって、それなら、これから先、オレの事をもっと知った時に、絶望した目を見なくて済むだろう?』
だからオレに慣れないでくれ
オレを知らないでいてくれ
このまま程良い距離感でいて、キミが知るのはオレの上澄みの部分だけ、それでいい、そうしてくれ
これ以上キミを…
「Insieme a te non ci sto piu’ nella pelle….」
「え?」
「え?」
「ごめんなさい、今何て言った?お店が騒がしくてちょっと聞こえなくて…。」
「ああ、ゴメン…この店はパンナコッタが美味いよって。」
「そっか!じゃあ今日はパンナコッタにしようかな!」
「ベネ、オレもそうしよう。」
無意識に口から零れた言葉にメローネはゾッと背筋が凍った。
しかしながら、賑わっている店内の雑音でその微かな声は彼女の耳には届かなかったようで、
綺麗な微笑み、流れるような嘘で真実を誤魔化したメローネだった…。
そして、食事を終えた2人は、店の外へ出る。
「はぁ…今日のご飯もとっても美味しかったです……ご馳走してくれてありがとう、メローネ。」
「どういたしまして。」
「今度はわたしが奢らないとね。」
「いいよ、だってキミにはこれまで何度か家でご馳走になっているしね。」
(※「salute(健康!)」参照)
「それはそうかもだけど…。」
「ぶっちゃけ、お邪魔する度日本食への興味とリスペクト度数が上昇していくよ…。」
「それは良かった!」
「残念ながら今後は暫く…行けそうにないけど…。」
「え?そうなの?」
「ん、ああ……ちょっとね、色々と用事で…というか仕事の都合で。」
「そっか……仕方ないね……来れなくても、ちゃんとご飯食べてよね?」
「ああ、分かった。」
本気で心配そうな顔を向けてくるyouに、嘘を吐いた罪悪感でメローネの胸がチクリと痛む。
用事も仕事も特には無く、ただ彼女との距離を置かねばと思ってのことだった。
彼がそんな事を考えていることや、嘘を吐いているなど、露程も思っていないyouは
「皆に聞いてまた不摂生な食生活になってたら強制的にご飯食べさせますよ」と笑いながら、家への道を歩き出す。
そうして他愛も無い話をしながら2人で歩き続け、気付けばもうyouの家の前に立っていた。
「あ、もう着いちゃったね。」
「本当だ。」
「今日はありがとう、メローネ。また一緒にご飯行こうね。」
「…ああ、そうだな。」
ふっと笑みを作った刹那、トン…とメローネの胸に白い手が添えられる。
「え」と音が出たのかどうかも分からないが、兎に角驚いた事は確かで…。
エメラルドの目を丸く見開いた先にはyouの姿ではなく、街灯に照らされる夜道。
次いで右、左の順番で小さく響いたリップ音で、自分が彼女にバーチョの挨拶をされたのだと気が付いた。
「どうかな……自然にできてた?」
「・・・。」
「え、失敗かな…?」
「いや……全然問題ないぜ。」
「良かった!」
これまたパッと明るい顔で小さくガッツポーズを作る姿の何と愛しいことか…。
この1日で気付いてしまった自分の感情への懸念を思うと、一瞬抑制が掛かったが、
ホルマジオの一件に関しては、自分の複雑な感情を抜きにしても憤ったままの状態が続いているようで、
気付けば全く意識せずにメローネはyouの腰に手を添えて、至近距離に引き寄せていた。
「なぁ、オレもいいか?」
「はい。」
ホルマジオに「挨拶は一方だけでなく、交わすもの」と言われたこともあり、
youはどちらかと言えば、メローネから挨拶を返されるのを待っていた様子だった。
同じように挨拶を交わしてくれるのをじっと待つ眼下のyouに、
メローネは目を細めると、彼女の耳に髪を掛け、ホルマジオがやったのと同じように直接頬にバーチョする。
右と左と両方口付けた後、そっと身体を離して向かい合う。
「・・・イヤだった?」
「そんなことはないけど…。」
「けど?」
「・・・ええと…何ていうか……右はホルマジオだったけど…。」
「え。」
「左のバーチョはメローネに奪われちゃいましたね。」
くす、と小さな笑いを零すyou。
「そうだな。キミの「初めて」を貰えて嬉しいよ、you。」
「だからそれはやめて…。」
「だがこれ以上、キミの大事なもの奪ってしまわないようにしなければな…。」
「メローネ…?」
「何でもない、気にしないでくれ!それじゃあ、帰ろうかな。」
「あ、うん…。」
「…おやすみ、愛しい人。」
「わ…っ?!」
メローネは軽くyouの額にキスをすると「Ciao!」と+αで投げキッスをして走り去る。
今までの自分であれば、彼に抱き寄せられたり、至近距離で頬を寄せたり、キスをされれば、
顔を真っ赤にして「イタリアーノ凄い」とテンパってしまっていたはず…。
それが今や少し緊張こそするものの、ちゃんと目を見て挨拶をしたり、
その行為について問うたりすることができるようになったのは、他ならぬ彼のお陰だろうと考えている。
他のメンバーより怪しい発言やスキンシップは多いものの、
ちゃんと自分の気持ちを汲んでくれている…そんなメローネの背中向け、感謝の意で彼女は一礼をする…。
この日以降、徐々にメローネと自分の関係性が変わってしまうことも知らずに…。
Insieme a te non ci sto piu’ nella pelle…
キミと一緒にいると、嬉しくて仕方がないんだ…
words from:yu-a
※「piu’」は「u」の上に「`」が正しい表記となります。
*。゜.*。゜.*。゜.*