Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「メローネって……不思議。」
「え、何だい、藪から棒に…。」
それは夕飯時、食事を開始した直後に放たれた言葉。
Lei e un fiore.
Mi piace stare con te.(君と一緒にいるのが好きだよ。)
先日、休日を合わせてドルチェを食べに行った際に、ひょんなことからメローネの食生活を心配したyouが
彼の夕飯が確保できない(というより意図的にしない)時には、一緒に夕飯を家で摂りましょうと申し出たことで、
それから何度か一緒に夕飯を食べるくらいには距離感を縮めた2人…。
本日もそのようにして、仕事が終わった後でyouがメローネに夕飯の確認をしたところ、
一人でも、他の誰とも夕飯を外に食べに行く予定はなく、何かをテイクアウトするのも宅配を頼むのも億劫に思っていたと口を滑らせた(最近はわざとらしくなってきた)ため、一緒に帰宅し、夕飯を摂ることになった。
「メローネ、帰りにスーパーに寄りたいんだけどいいかな?」
「それは別に構わないが…今日はバイクだからあまり大量には買えないかもだ。」
「ああ、うん、全然。そろそろお醤油が切れそうだったから買い足すだけ。」
「他には?」
「メローネが必要であれば飲み物くらいじゃないかな…?」
「了解、じゃあ帰ろうか。」
「はい、よろしくお願いします!」
ここで彼女が「よろしくお願いします」などと付け加えたのは、
メローネのバイクの後ろに乗せてもらい、買い物に付き合ってもらうからという理由なのだが、
メローネからしてみれば、憎からず可愛いと思っている同僚に、運転中後ろからぎゅっとハグしてもらう上に、
清潔感漂う彼女の家に上がらせてもらい、おまけに美味い夕飯まで付いてくる(実際はこれがメインなのだが)ため、
内心「こちらこそよろしくお願いします」と思っていたりする。
そんな邪な心は一切顔に出さずに、スマートにyouをバイクにエスコートすると、
エンジンを掛けて颯爽と街中を走り出すのだった。
それからスーパーで目的のものを購入し、そのままyouの家へ向かう。
「今日はメローネにも作るの手伝ってもらおうかなと思っております。」
「お、何か手伝えることがあるなら喜んで。」
「じゃあ、準備ができたら呼びます。」
「ベネ、そうしてくれ。」
そんな話をしながらyouの家に入ると、家電の電源を入れたり、荷物を置いたりして、
youがキッチンで下準備をしている間、
そろそろ彼女の家にも慣れてきたのか、テキパキと2名分の飲み物などを用意するメローネ。
「メローネ、準備できたー。」
「ああ、それで、オレは何をすればいい?」
「まずは手を洗って、このお野菜とかチーズをね……こんな感じでお肉に巻き巻きしてほしい。」
「まきまき…。」
「うん。」
「ただ巻けばいい?」
「うん、ただ巻くだけ。」
「conta su di me!(お任せあれ!)」
すぐにバチっと盛大にウィンクをかましてみるなどしてみたが、
youはもう既に別の作業に取り掛かっており、暫く片目を瞑ったまま制止してしまうメローネであった…。
それから手伝いを終えたメローネがリビングで暫くTVを見ながら待っていると、
今日も今日とて食欲をそそる良い匂いが部屋に漂ってくる…。
「(あ、お腹鳴った。最近ちょっと太った気がするな、オレ…。)」
むかし、よく着用していた片側が大きく露出された服を思い返し
「もしかしたらもう入らないかも」などと口角を少し引き攣らせるメローネ。
入ったとしてもパツパツだったら、上着なんかは不格好過ぎてちょっと…などと考えていると、
youから名を呼ばれて振り返る。
「メローネ、ご飯できたよ。」
「ああ、たとえファスナーが締まらなくても、この食欲をそそる香りに逆らえないオレがいる……。」
「?」
「何でもないよ、今日の食事もスゴク美味そうだ。」
「今日のメインはアスパラとキノコ、チーズの肉巻きです。」
「ベネ!オレが手伝った種がこんなものに変化するとはな…!」
その他のスープやサラダも併せて美味しそうだ、と少し嬉しそうにテーブル席につくメローネに、
youも喜んでくれているようで良かったと笑みを浮かべて着席する。
そして、これもまた慣れてきたことの一つで、
向かい合って座った席で2人で手を合わせて「いただきます」とあいさつをして食べ始めた…
のだが。
「メローネって……不思議。」
「え、何だい、藪から棒に…。」
突然の自分に対する感想を正面で口に出されたので、当然と言えば当然なのだが、
そんなyouの言葉でフォークでチーズの肉巻きを口にしようとしていたメローネの手が止まる。
「ゴメンなさい、何か…改めて変だなって…。」
「いや、急に失礼じゃあないか?!誰が変態だって?他の人間ならいざ知らず、youにだけは言われたくなかったのに!!」
「えぇ?!いや別に変態とまでは言ってないよ?!」
「でも思ってる?」
「・・・。」
「沈黙は否定と取りたいんだが?」
「そこは肯定じゃないの?」
「肯定なのかい?」
「え、う、うーん……いや、違うの、ただ、よく分からなくて、不思議な人だなって思っただけ。」
「オレの、どこが。」
「えーと…。」
自分で言っておいて未だ「変態と思われるのは心外」と、言いたげなくらいの悔しそうな顔をして、
メローネはyouに問い質す。
すると、彼女は少し迷ったり困ったりするような表情で、こう言った。
「すごくモテるのかすごく嫌われてるのか分からなくて、不思議な人だなって。」
「何を急に…。」
「ほら、メローネとよく買い出しに行くでしょう?その時によく綺麗な女の人達に声を掛けられるじゃない?」
「そうかな…?」
「そうだよ、結構な頻度だと思う個人的に平均回数を考えるとプロシュートの次くらい。」
「お、そうなの?ちなみにギアッチョは何番目?」
「ギアッチョはうーん、多分3番目。だけど「チャオ」って女性が声掛けた瞬間に一言「あ゛?」って言うだけでその女性は何事も無かったかのように通行人に戻る…のを考えると多分最後か、最後から2番目…。」
「その光景、目に浮かぶよ。」
「うん、それで、メローネはそうやって沢山声を掛けられるじゃない?」
「うーん、まぁ、キミが「沢山」と言うんなら、そうなのかもね。それで?」
「その後、少し女性と話したら、その後急にビンタされたり殴られたり、蹴られたりするじゃない?」
「・・・。」
「あれ、何を話してるの?」
「・・・。」
「you…。」
「うん。」
「・・・その話、後でもいいか?」
「うん、えっ?」
「正直、今オレはそんな話より先にチーズが固まらない最高の状態でこの料理を食べたいんだが。」
「…それもそうだね!」
メローネの真剣な表情と、眼下の料理を今後に見遣り、youはパッと笑顔でそう答えた。
「(言えるワケないだろ、毎度毎回「観光案内は放棄して遊ばないか」って言われるから「una cortigiana…アンタの観光案内は金を貰ってでもお断りするかな」って殴られてるとかさ…。)」
勿論、普通にサラリと流して断ることもできはするし、そういう時もあるのだが、まぁ何と言うか…。
同性から見た対抗意識もあってか、彼女たちが圧倒的にアジア人への差別発言を付け加えてくるものだから、
メローネとしても、大事な同僚に対しての侮蔑は耐え難いものがある、というところだろう。
「まぁ、どんな話をしてるかは分からないけど…。」
「ん、Buonissimo!(めっちゃ美味い!)」
「ちゃんと一緒に帰ってくれてありがとうね。」
「・・・どういう意味?」
「え、だって…綺麗な女の子にホイホイ付いていって買い出しを放棄されたりしないかとか思うし。」
「youの中でオレってそんなに女にだらしないイメージなのか?!……ショックだ…ショック過ぎる…。」
「だらしないというか…。」
「・・・。」
「単純に女性が好きなのかなと。」
「いや、それはオレだけに限った話じゃあなくないか?!」
「まぁ、そう言われればそうか…。」
「そもそもオレは女性が好きというわけではなくて、どちらかと言うと女性を「尊敬」しているんだ。」
「えっ、じゃあ…………た、多様性の時代だから、そうか…。」
「違う、そうじゃない。」
女が好きというワケでないから、男が好きというワケではない!と、若干声を荒げて否定するメローネ。
「んーでも、じゃあどうしてそんな尊敬する女性に対してビンタくらうような事を言うの?」
「それは…。」
「別に声を掛けてきた女性に優しくして愛想振りまいてほしいわけでもないし、そのまま買い出し放棄してほしいわけではないんだけど……勿体無いと思って…。」
「勿体ない?ナンパしてきた娘と知り合う機会を失ってって意味?」
「ううん、そうじゃなくて……メローネは凄く素敵な人なのに、伝わらなくて残念に思っちゃう。勿体ないなって。」
「?!」
「これはわたしの予想なんだけど、メローネが悪いんじゃなくて、声を掛けてきた皆さんが……何か失礼なことを言ってたりするんじゃないかなって……そうじゃなきゃ、わたしの知ってるメローネは……わざと叩かれたりするような言葉を言わないんじゃない?」
「さぁ…どうだろうね。」
「だから、何を話してるのか気になったの。もし、メローネの方から先に、酷い事言って攻撃されたなら仕方ないんだけど、それでも……わたしは、向こうから一方的に声を掛けておいて、思ってた人と違ったから叩いたり蹴ったりするのなら、それってとても理不尽だなぁって思うの。」
「キミ、聖母マリアの生まれ変わりか何かかい?」
「いいえ。あなたの同僚ですが。」
だとしたら国民性?日本人の気質ってどんだけ寛大なんだ?!と
驚嘆の表情を浮かべるメローネにyouが真顔で返答する。
この質問から逃れることはできないようだと諦めたメローネは、
いったんフォークを置いて小さくハァ…と溜息を吐くと、「これで満足か?」と言うように、言葉を投げやりに放つ…。
「昔はよく、オレの方から先に一方的に失礼な事を言ってビンタされてた。だから「わざと叩かれたりするような言葉を言わない」は不正解だな。言う。オレはそういう男だよ。」
「え、じゃあわたし、正解じゃない?凄い。」
「キミ、オレの話聞いてた?」
「うん。だって昔の話なんでしょ?」
「!!!」
「やっぱり、わざとだったんだね。」
「っ……!」
「理由は何となく分かるよ。話を逸らして、隠そうとしてくれたから。」
「…キミって意外と洞察力鋭いよな……オレ、他の皆からは割と「何考えてるか分からない」って言われるんだが…。」
「うーんどうだろう、わたしに関わることだったからかもしれないね。」
「そう…。」
「だから、もういいよ。」
同じくyouも食事の手を止め、箸を置く。
彼女は、女性達は皆、自分への侮辱の言葉をメローネに耳打ちして声を掛けてきたのだと彼の反応で察してしまう…。
人種差別を受けていたことが分かり、全ての世界の人と話せる能力を持つ彼女としては
ほんの少しだけ「ああ、やっぱり…」と残念には思ったものの、
それ以上に自分を気遣ってくれる優しいこの同僚に(物理的な意味で)傷付いてほしくないと思った。
自分を見つめる綺麗な顔(かんばせ)にふっと柔らかく微笑んで、
youはテーブルに置かれたメローネの手の甲に、自分の手を重ねて言った。
「今度からは、酷いこと言われても、酷い言葉で返さないであげて。」
「だが、オレは…!」
「今までメローネがそうしてくれてた理由が知れただけで十分嬉しいし、何よりメローネが痛い思いするのイヤだし…それを見る方がもっとイヤかな。」
「・・・あぁ、もう!!何だそれは…オレだってイヤだよ!オレ達のことを何も知らない、どっから来たのか分からない、しかも男をナンパする娼婦みたいな行きずりの女に、アンタを貶されて!暴言くらい吐かなきゃやってらんないだろ!」
「酷い言い草我慢してサラッと流せない?」
「あー、あー、嫌だね。我慢したくないし、流したくない。」
「そう、じゃあ、買い出しは今度から別の人と行くね。」
「キミ、それは狡いぞ!?」
思わずガタっと腰をちょっと上げて椅子を動かしてしまうくらいには大きく反応するメローネ。
その反応にyouはくすくすと笑いながら、しれっと食事を再開しながら自然に話し出す…。
「じゃあ、どうしましょう…?」
「どうしましょうって……。」
「できればわたし、買い出しはメローネと一緒に行きたいんだけどなぁ……残念です。」
「それ・・・理由を聞いても?」
「かなり細かいですけど……まず、リゾットは忙しいのでできれば手間を掛けさせたくないですし…。」
「あー、それは分かるよ。オレもだもん、てか多分、皆そう思ってる。」
「プロシュートとホルマジオは外勤が多いですし…イルーゾォはあんまり外に出たがらないので声を掛けにくいです。」
「うん、そうだよなぁ……イルーゾォは内勤だとインドア派っていうか…インミラードア派っていうか…。」
「ペッシとギアッチョは買い出し一緒に行くの楽しいですけどね。」
「そう……ギアッチョと行くのは楽しいのか……そうか…。」
「でもほら、2人は外勤が多いですからね。」
「・・・それってさぁ…オレがいいっていうより…消去法でオレなんじゃ…。」
「まぁ、必然と言われればそうかもですが、皆さんと一緒に買い出しに出た時、メローネと過ごすのが一番楽しいと思うのは本当だから。」
「回数が多いから慣れただけだろ、それ…絶対…。」
「それは勿論そう。」
「なかなか酷いじゃあないか、期待させて落とすなんて……ディ・モールト悪い女だ。」
内勤で一緒になる回数が他のメンバーと比較にならないくらい多いため、
必然的に一番親しくなるポジションなのだから、自然に会話にも慣れ、気心が知れれば
気兼ねなく会話できる相手になるだろうから、そりゃ会話も弾みますよ…と若干拗ねるようにyouを悪女呼ばわりするメローネ。
そんな軽口こそがお互いの距離感が近くなった証だろう、とじーっと目の前の同僚を見つめ返す。
すると、彼女は意外にも困ったように笑い「ごめん」と謝罪の言葉を口にした。
「だってそうだから……メローネだけだよ、わたし自身のことを気遣ってくれるのは。」
「え…?」
「食事中にゴメンだけど、生理中で体調崩してた時とか、絶対無理させないように配慮してくれるし。買う時に選ぶ物だって「オレたちは使い慣れてる物だけど、扱いが難しいかもしれないから」ってわたしにも使いやすい物を選んでくれたり、荷物だってそう。皆は事務所に戻ってきてわたしが困ってると勿論助けてくれるけど…メローネだけだよ、買い物の途中で「これは高い場所に仕舞う物だからオレが片付けるよ」って前もって言ってくれるのは。」
「そうか?……ディ・モールト、気恥ずかしいな…。」
「そんな人、なかなかいないと思う。」
「どうなんだろう……でも、多分それはyouにだけだろうな、とは思うよ……きっと無意識の下心ってヤツだ。」
「ちがうよ。」
「違うのか?」
「下心は意識して意図的にやるものだから、無意識にそうするってことは違うと思う。」
「じゃあ、オレってディ・モールト親切なんだな、褒めてくれ。」
「うん、メローネはディ・モールト思いやりがあって素敵だね。」
「ハハ、プレーゴ。」
「だからわたし、これからもそんな素敵なメローネと一緒に買い出しに行きたいと思ってる。」
「・・・なるほど、そうきたか。」
原点回帰とはこのことか…と、メローネは彼女の意図をここで読み解いた。
空いた片手で後ろ髪を掻き流すと、彼は小さく溜息を吐いて困ったような表情で笑みを見せる…。
「はいはい、分かった分かった。行くよ。」
「メローネ…!」
「誰に何て声掛けられても、口汚く追い払う手段は取りません……これでいいのか?」
「ベネ!!ベネ、グラッツェ、メローネ!」
「・・・。」
メローネが了承してやると、それはそれは嬉しそうな顔で喜びを顕わにするyou…。
しかしながら、メローネにしてみれば、彼女がこうやって喜ぶことは
自分がビンタやパンチやキックを回避することに対してのものだと頭では理解していても、
心はというと、酷い侮辱の言葉を投げ掛けてきた女性達への大いなる許容でしかないため、どうしても我慢が難しいかった様子…。
感謝を伝えた直後、まるで納得できていませんと言うように、
物凄く不満気味な顔でフォークを握りしめるメローネを見て、ギョッと目を見張るyou。
「め、メローネ…?」
「…やっぱり……無理かもしれない……我慢するストレスより……ビンタされる方がマシだ…!!」
「えぇ~!?」
「キミが悪人に優し過ぎるのが納得いかない……いや、オレには特大のブーメランなんだが。」
「さっきも言ったけど、重要なのはそこじゃないの。メローネが痛い思いをするのが…」
「じゃあ聞くんだが……オレの心の痛みのことは?」
「!!」
「目の前でキミを侮辱されて、憤りを敢えて飲み込まなきゃいけないのは、オレには暴力で返される痛みより辛いものなんだぞ?そうは考えてくれないのか?」
「それは…。」
「意地悪な問いかもしれないが……それもまた間違いなく考えるべき問題だろう?」
「…うん……そうだね…。」
「ベネ。」
「じゃあ、どうしたらいいんだろう……メローネが殴られるのも嫌だし、でも心だって痛くて……かと言って一緒に買い出しに出掛けられなくなるのも嫌ですし…うーーーーん…。」
放っておけば、まるでその場で腕組して丸一日考えて、考えすぎて知恵熱でも出しそうな勢いで熟考し始めたyouに、
メローネは口をポカンと開けていたのだが、その口は徐々に口角を上げていき、次第に笑いへと変わっていく。
「あはは!そんな謎解きの部屋に閉じ込められたヤツみたいな顔してる人間、初めて見たよ!」
「え、ひど……一生懸命考えようとしてるのに…。」
「いいよ、分かった、もういいよ、十分だ。ありがとうyou。」
「???」
「そんな顔が見れただけでも満足した。実は少しだけ考えている対策法があるんだ。」
「え!もう、それならすぐ言ってくれれば良かったのに!」
「ただ、それにはyouの協力が必要不可欠で…それをお願いするのはどうなんだろうって悩んでた。」
「それは、メローネの心も体も痛くならない?」
「ならないね。100パーセント声掛けを回避できるワケじゃあないが、頻度はかなり減るんじゃあないかな。」
「協力します!」
「あー即答しちゃっていいの?後悔するかもしれないぜ?」
「え…まさか片側が大きく露出された服とアイマスクのペアルックで街中練り歩いて買い出し行こうねとか、流石にそんなんじゃあないでしょ?それは流石に無理が過ぎるかなって思うけど。」
「ディ・モールトつらい。」
「え?」
「何でもない…。」
何処かで聞いたような…否、寧ろ見たような服装がピックアップされ、半笑いで虚空を見つめるメローネ。
軽く首を左右に振って気持ちを切り替え、改めて提案を行う…。
「じゃあ、次回からキミは観光客を卒業、オレは観光ガイドを卒業だ。」
「はい?」
「あー、あと、たまに言われる「ホストファミリー」もそうだな、ホームステイ先のファミリーとそこにお世話になってる留学生も同じく卒業しなきゃあならない。」
「メローネ、何を言ってるのか分からない…。」
頭に疑問符をポンポンポンと浮べていそうなyouに向かい、
メローネは少し強引そうな笑みを浮かべると、彼女の前に自分の手をスッと差し出した。
当然小首を傾げるyouに、こう言った。
「今度から、手を繋いで歩こう。」
「え…。」
「別に迷子になるのを心配しているとかじゃあないぞ。観光ガイドやホストファミリーに見えないようにする為だ。」
「近くで歩くだけじゃ…ダメなの?」
「手がイヤなら腕でも組むか?」
「い、いや、そういうことじゃなくて!」
「イタリアでは既に恋人がいる相手にはナンパなんてほとんどしないから、これが一番効果的。」
「で、でもあの!わ、わたし手汗凄いし!??!」
「ベネ!汗掻きは寧ろイイッツ!」
「ひぇ……。」
「本気で引かないでくれ…二割冗談だ。」
「八割大きいよ???!」
「拒否する理由はそれだけ?」
「あ、あと……ええと……ええ…。」
「オレと手を繋ぐのがイヤだと。」
「イヤというか……凄く恥ずかしいので…困る…!」
正に言葉通り困っているのだろう、彼女は眉をハの字にして焦っているし、
メローネの視線に耐えられないのか、パッと逸らして数多色んなところに視線を流しに流している。
じっと見つめていると、じわじわと頬が紅潮していくので、
それは最終的にメローネの加虐心を加速させることなった。
「ディ・モールト!スゴク!そそられる!実にイイ表情だ!」
「怖いこわい!」
「そもそも、いつも一緒に内勤をこなしているし、買い出しだって普通に行ってるじゃあないか…。それどころか休みが合えばドルチェを食べに行くこともあるし、こうやって一緒に食事だって摂ってるのに??何が恥ずかしくて困るんだ…こっちこそ意味が分からないよ。」
「あ、あんまりメローネの傍に寄るのは…ちょっと…。」
「急に失礼じゃあないか?!誰が変態だって?他の人間ならいざ知らず、youにだけは言われたくなかったのに!!」
「えぇ?!いや別に変態とまでは言ってないよ?!2回目!!」
「じゃあ何で。」
「・・・今もそうなんだけど……メローネ、顔が綺麗なんで…。」
「か……かお…。」
「あと、バイク乗る時とかも……何か、やっぱり自分の身体と違う~と思うと何か緊張するし…。」
「…っ…ぇ、は?」
「あと何かいい香りするし……!」
「ちょ、っちょっと待って、くれ……!!」
それらは全部自分に対しての誉め言葉というか、自分を男として意識しているという意味ですよね?!と、
全く予想だにしていなかった彼女の言葉の数々に、今度は逆にメローネの顔が熱くなる…。
彼は手でニヤけそうになる口元を隠し、ストップ!と右手を彼女の前に出してそれ以上の言葉を制止させた。
「ストップ、たのむ、ちょっと待ってくれ……はぁ……ああ、うん、いいぞ。」
「・・・。」
「you、それって多分……オレも同じだと思うぞ。基本的にオレはアンタのことは全肯定だし、顔も好きだ。傍に寄った時に石鹸みたいな優しい香りがするのも自然でディ・モールト興奮………落ち着く気持ちになれる。」
「(今興奮って言った…?)」
「身体は…まぁ、見てないから分からないが………見せてくれるならとても見たい。」
「見せませんね。」
「残念だ!」
何故か最後だけ己が欲望を丸出しにするメローネにきつくツッコミを入れるyouだった。
「まぁ、兎に角だ……ずっと繋いでおく必要はないにしても…今までよりも近い距離感で、一緒に歩いてみないか?お互いの香りが分かるくらいの距離でさ。」
「・・・うん。」
「ベネ!」
「手、繋いでくれる…?」
「今?ここで?」
先程とは逆で、急に手を差し出されて自分と手を握ってほしいというyou。
次回からではなく、今なのかと問えば、コクリと頷くので、メローネは「勿論」と言って
差し出された彼女の手をしっかりと握った。
「メローネ、手おっきいね。」
「メンバーの中では小さい方だけどな。youの手と比べると流石に違うだろう。」
「そうだね。」
「キミの手はディ・モールト柔らかいな、それにスベスベしていて触り心地が良い…握るのがクセになりそうだ。」
「そうかなぁ?」
「まいったな…。」
「何が?」
「繋いだら離してやれないかも。」
「!!!」
少しだけ握った手を自分へと引いて動かすと、メローネはyouの手に唇を寄せた。
よく日本人が勝手に抱くイタリアーノのイメージを体現したかのようなメローネの行為に
免疫の無いyouは口をはくはくさせ、顔を真っ赤に染め上げる…。
「じゃあ、you……オレが誰も傷付けず、オレの心と体も傷付かないようにするために、手を離さないでくれるとディ・モールト嬉しい。」
「メローネ、それは狡いよ!?」
その顔が見たくてやりました、とばかりにイタズラな笑みを浮かべるメローネ。
そうして見事、意趣返しを食らったyouは、半泣きになりながら真っ赤な顔で抗議するのであった…。
Mi piace stare con te.
君と一緒にいるのが好きだよ。
words from:yu-a
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