Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「you、ちょっといいか?」
「え、あ、はい!」
それはyouがこの特殊任務依頼チームで働き始めて数日と経たないうちのこと。
定時になって帰宅するぞという頃に、同僚…となったメローネに呼び止められた。
Lei e un fiore.
Andiamo a mangiare!
「今から帰りかい?」
「そうです。」
「そうか、オレもなんだ。そういえば、もうこの事務所には慣れた?チームのメンバーには?全員と話せたかい?オレの名前とか、憶えてるか?」
矢継ぎ早に質問され戸惑ったが、目の前の男は質問を終えた後ちゃんと黙って待っており、
彼女が全ての質問に1つずつ答えを返すのを待っているようだった。
「えっと……まだあの…働き初めて数日なので仕事も皆さんと話すのも慣れた…とは言えないかな、です……あ、でも、皆さんが最初に歓迎会を開いてくれたので話すきっかけはいただけましたし、ちゃんと全員の名前も憶えてますよ、メローネ。」
「ベネ!ちゃんと全部の質問に答えてくれてありがとう。」
「いえ…。」
「さて、もう帰るだけのキミを呼び止めたのはその質問が目的じゃあないんだ。実は他に目的がある。」
「目的…ですか?」
「you、キミ、今夜の予定は?」
「え?」
「予定はあるのか、って聞いてるんだ。」
「…家に帰ってご飯食べて寝る…?」
「そうか、それはつまり?」
「ええと……特に特筆して何処かへ行く予定は無い…です。ナポリの夜は特に物騒と聞いているので…。」
「Essato(その通り)!」
英語で言うところの「That's right!」の言葉と同時に両手の人差し指をビシッと彼女の方へ向けて正解の意味合いを示すメローネ。
だがしかし、それもまた彼の目的を意図するものとは異なるものであったため、最終的にメローネはストレートな言葉をもって彼女へ伝えることとした。
「だがそこは問題無い。例え遅くなったとしてもちゃんとキミを無事に送り届けるよ、オレがそうするからだ。」
「はい??」
「そう、だから…もし、許してもらえるなら、今日の夕飯はオレと一緒に食べてくれないか?」
「え、っと……。」
「おっと……言葉に詰まる、か……悪かった、いきなり距離を詰め過ぎたかな?初手から2人きりは急過ぎるか。」
「あっ、ううん、そうじゃなくて!ちょっとびっくりしただけ。」
アプローチの仕方を考え直すべく、顎に手を当てて唸るメローネに
youは両手を軽くブンブンと振り、誤解であると答えた。
「皆さんともっと仲良くなるきっかけを探してたけど、自分からはどうにも声を掛けづらかったから……誘ってくれて嬉しい、ありがとうメローネ。」
「そう、なのか…?……それ本気で言ってる?」
「うん、本当。」
逆に怪訝な顔で疑って掛かるメローネに対し、youがふわりと優しい笑みを向ける。
その表情には恐れや疑いの感情は含まれておらず、メローネと食事に行くことは全く持って問題ないと理解できるものであった。
「それは良かった……ベネ!ああ、良かった!なら決まりだ、2人で行こう、オレとキミ、2人っきりで!」
何故2人きりと言い直したし…と思ったものの、メローネの表情が自分の言葉を信じてくれて大変嬉しそうな表情になったため、
それに水を差すのもどうかと思い、敢えてツッコミはいれないでおくyouであった…。
「you、何か食べたいものはあるかい?好きな料理とかドルチェとか……キミの好みが知りたいな!」
「わたしはまだこっちに来て間もないから、イタリアの料理はスパゲッティとかピッツァくらいしか知らないんだよね…。」
「Oddio(なんてこった)!イタリアに来てそのラインナップしか味わってないなんて…キミ、人生の半分以上を損してるぞ…!」
「そこまで言う。」
「言う!よし、行こうyou!キミのイタリア料理の好みを知るためにも、オレが美味い店を紹介してあげようッツ!」
「わ、あ、ちょっと!メローネ!!」
ガシッとyouの手を掴み、メローネはずんずんと事務所の玄関まで歩き出す。
そのまま事務所の外へ出て、広めの通りに出てもその手は離されることはなく…。
「色々な専門店もあるが、ここは矢張り色んなものを食べてもらいたいから…そうだな、キミの家から比較的近いエリアのトラットリアがいいだろう。」
「わ、すごくありがたいかも!家から近ければ通えますもんね。」
「ああ、美味い店を紹介するよ。ただ…。」
「ただ?」
「もし行くなら一人じゃあなく、是非オレを誘ってくれよ。」
「ふふ、そうですね。」
そんな会話をしながら夜の帳が降り始め、オレンジの街灯がぽつぽつと灯り始めた頃、
2人は賑やかな1件のトラットリアの前に到着する。
さりげなく店のドアを片手で開き、もう片方は共に来た女性の背に添えて
レディーファーストで入店を促すメローネ。
「凄い賑わってるね、人気のお店なんだ…。」
「ああ、だけど結構広くて回転も速いからそんなに待たずに席に着けるんだ。しかも料理も美味い。」
「人気なワケだ…。」
「お、早速空いたみたいだ、行こうyou。」
「はい!」
店員の男性が軽く手を挙げて2人を呼んだので、メローネが2名で、予約はしていないということを伝える。
予約なしでも特に問題は無いと、男性はコクリと頷いて席へと案内してくれた。
着席してメニューを開くと、それをyouの方へと向けて差し出す。
「念のために尋ねるけど……イタリアに来てトマトが嫌い、なんてことはあるか?いや、全てはキミの好みだから嫌いなものは致し方ないんだが…。」
「食べれるよ。」
「ベネ!では定番ではあるがまずは本場ナポリのカプレーゼから始めよう!他にはどんなものが食べたい?って言ってもどんな料理が出てくるかキミには分からないよな…メニューを見ても…。」
「そうかも…メローネのおすすめでいいですよ。」
「フム……それでもいいけれど、そうだな……まずはナポリならコレ!というものを食べてみるのはどうだろう?」
「あ、それがいいな!」
「決まりだな、じゃあアランチーニは外せないとして、ラグーやパスタ エ パターテなんかは食べやすい味だからキミも食べれるんじゃあないかな……ドルチェは後で考えるか。とりあえずそんなんでいいかな?」
「はい!楽しみです!!」
こちらに住むことになってまだそう日数も経過していないyouにとっては、
全てが新鮮で、楽しみとなるため、ニコニコしながらメローネの判断を全肯定する。
そんな彼女の反応にメローネもニコリと気分良く店員を呼んで注文を行った…。
そうして待つこと十分程…。
2人のテーブルには注文した飲み物や美味しそうな料理が並び、ようやく食事の時間となった。
「凄い、全部美味しそう!!」
「フフ……皿ごと平らげそうな表情もディ・モールト可愛いよ、you。」
「そ、そんなに餓えてないです!」
「ハハ、そうかい?でも食欲がそそられたのは事実だろう?さ、遠慮せずに食べるといい、どうぞ。」
「ええ…じゃあ、いただきます!」
ぱむ…と、小さな音を立てて両手を合掌し、食事の挨拶をしてフォークを握ったyou。
それが何の動作か分からないメローネは不思議そうに首を傾げたが、
カプレーゼを口に入れたyouからすぐに感嘆の唸り声が聞こえたため、そちらへ意識が移る…。
「んんんん~~!美味しい!え、これモッツァレラチーズですよね?どうしてこんなに美味しいの?!やっぱり日本のとは全然違う~!」
「そうなの?ああ、でも確かにイタリアの中でもモッツァレラチーズはナポリが一番かもね。」
「そうなんですか?」
「ココの店のカプレーゼは鮮度が良い水牛モッツァレラなんだ。他の地域では保存方法の問題で、なかなか出せなかったりするから、カプレーゼでも結構味が違ってくるんだ。」
「ふえぇ~……そうなんですね…ナポリ凄い…。」
「うん、ピッツァもナポリが一番だと思うよ。」
「それは聞いたことがあります!わたしも流石にこちらに来てピッツァは食べねばと思って何度か食べましたが、どのお店に行っても全部美味しかったです!」
「うんうん、もっと褒めてもいいんだぞ。」
まるで自分を褒められているようだ、と調子良く誇らしげに頷くメローネに対し、くすくす笑うyou。
「ピッツァもカプレーゼも文句無く美味いが、こっちもおすすめだ。」
「これは…?」
「これはアランチーニと言ってナポリやシチリア島発祥のライスコロッケみたいなものだ。それからこっちの料理は…。」
そんな様子で、メローネが丁寧に料理の説明をして、youはそれを実食してその都度その味の美味しさの感想を彼に伝える…。
注文したものは全て平らげたし、その全てのメニューがyouのお気に入りとなった。
そのことを告げればメローネは何度も「ベネ(良し)!」と繰り返し、嬉しそうに笑うので、
終始楽しい食事の時間を過ごすことができた。
そして今は、食後に注文したドルチェを堪能している真っ最中だったのだが…。
「大いに……大いに期待はしていたけど、本当にドルチェまで美味しいなんて……ッツ!」
「ハハ、実に良い反応だ。youは甘いもの、好き?」
「うん、大好き。」
「お・・・おお……も、もう1回…もう1回言ってくれないか…?」
「え?ん?好き?甘いもの、好きですよ。」
「ディ・モールト!」
「わぁ?!」
「そういう事なら、今度はイタリアの美味しいドルチェを沢山紹介しなきゃあな。」
「えぇ!そんな……そんな、素敵過ぎる…!」
「仕事で物品の買い出しに一緒に行った時にってのもいいけれど、できればちゃんと時間をとって紹介したいな…。」
「時間を取る…?」
「ああ、うん……そう、時間。休みの日にでもってハナシだ。」
「いや、それはちょっとダメですよ!」
「うわぁ、瞬殺…。」
さり気無く休日を一緒に過ごさないかというメローネの誘いを秒で断るyou。
しかも手をブンブンと横に振って身体でも拒否を体現してきたので、流石のメローネもちょっと泣きそうになる…。
「そんなに全力で拒否しなくてもいいじゃあないか……ディ・モールト悲しいよ…。」
「えっ?拒否っていうか……うーん、拒否っていうか…。」
「?」
「わざわざメローネの休みをわたしの所為で潰させるワケにはいかないし……流石に申し訳ないから…。」
「申し訳、ない…?」
「え、ええ……だって、わたしにお店を紹介するためにメローネの折角の休みが潰れちゃうんだよ、休日にしたいことができなくなっちゃうでしょ。」
「ああ~~~……そう、そうか……成程…キミは「そういう」女性なんだね…そうか…フム…。」
「?」
「・・・。」
youの言葉をしっかり聞いて、ゆっくり脳内で噛み砕いたであろう後、
メローネは一瞬だけ頭を抱えるような仕草をして、すぐさま何か閃いたように両手をパッと横に広げる。
何やら唸って黙り込んでしまったメローネを見て、何か自分は失礼な事を言っただろうかとyouが不安そうな目を向けたのだが…。
「ちょっとだけ、真面目な話をしてもいいか?」
「え、あ、はい、ドウゾ…。」
いつも比較的笑顔(たまに怪しい笑みも含む)で接してくれる人員としてyouの中で認識しているメローネが、
その印象が書き換わる程の真剣な表情でこちらを見ている…。
彼はテーブルに両肘をついた状態で軽く腕を交差させ、話を始めた。
「もし、これからオレが言うことに拒否や否定や同意しかねる場合は、全く、全然、ハッキリそう言ってもらって構わない。だってそれがキミの、youの意志であり、考え方だから。」
「は、ぁ…。」
「オレはそれを尊重するし、それがキミの考え方であれば変えるべきだと無理強いすることは絶対にしない。大事なのはキミの在り方であり好みだからね。だけども…。」
「・・・。」
「だけど少しでも……オレの考えを「いいな」と思ってくれたら……ディ・モールト…嬉しいかな。」
そう言ってフッと笑った顔は関わった短い時間の中でも一番自然なもので、
ありのままの自分の考え方と向き合ってほしいという思いが、言葉を使わずにも理解できるものだった。
「つまりだな、you……他の誰かに対してはさておき……このメローネ相手には遠慮や謙遜…ああ、あとついでに敬語も不要だってことだ。」
「えぇ?!」
「そんなに驚く程のことでもないと思うんだが……。」
「いや、だって、わたしはここに来たばかりで、まだ右も左も分からないひよっこの役立たずですし、メローネは確かに敬称無く呼んでいいと言ってくれたり、わたしに優しいですけど…先輩ですし!」
「その先輩がいいって言ってるんだが。」
「だけど…!」
「なぜならばオレは「キミと仲良くなりたい」、「キミのことがもっと知りたい」って思ってるからだ。そんな理由を聞いたら納得してもらえるかい?」
「それは……それは勿論、わたしもですけど…。」
「ベネ!じゃあ、親しく接するのは構わないんじゃあないか?」
「…敬語やめちゃったら…馴れ馴れしいって……思わない…?」
「思うもんか。ただただ嬉しいだけ。」
「そう、なの…?」
「そうだよ。」
「・・・。」
「いい?」
「分かり、ました……わか、分かった。」
「Brava(よくできました)!」
そう言うと、メローネは途端にぱぁっと明るい笑顔をyouへと向けた。
「それから…。」
「えぇ、まだある…。」
「あるさ。大事な事がある!キミがオレの誘いを断った理由についてだ。これも大きな問題だぞ、you!」
「も、問題…!」
「そう!「オレの休みが潰れるのが申し訳ないから一緒に出掛けるのを遠慮する」って、これキミの本心か?」
「え、う、うん……そうです…そうだけど…。」
「逆じゃあなくて?」
「逆?逆って何???」
「休みの日までオレに付き合うのが面倒。」
「まさか!!!」
メローネの言葉に、否定の言葉を放つや否や、すぐさまガタっと腰を上げて驚きと少しの怒りを含んだ態度を取ったyou。
その反応で彼女の全てに嘘が無いことが瞬時に理解できたため、彼はすぐに「すまない」と彼女へ謝罪した。
「そうか……じゃあ、オレと休みの日に出掛けるのは吝(やぶさ)かではない、と取っていいんだな?」
「それは……メローネが迷惑じゃなければ、だけど…。」
「you、オレは自分が面倒だとか嫌だとか思うことは自ら口に出さないし、行動も起こさない。というか、それは誰だってそうだろ?勿論仕事は別だが。」
「それはそう…です、はい…。」
「つまりだ。キミが休みの日をオレと過ごしてくれるなら、是非ドルチェを食べに連れて行きたい。オレがそう思ったから誘ったんだ。思わなきゃあ、そもそも誘っていない。そういうことだ、分かるか?」
「・・・。」
「相手のことを気遣って謙遜したり、忖度したり、遠慮するのは決して悪いことじゃあないし、キミのその優しさや丁寧な対応は凄く、ベリッシモ好感が持てるし、素晴らしい精神だと思う。
日本人的というか…特にオレ達みたいな大雑把で自分本位な奴等からすれば見倣うべきだとさえ思える程だ。」
「(大雑把で自分本位なんだ…。)」
「けど、オレが知りたいのはキミの本心。キミの本心を聞いた上で、その時にオレは自分の考えと言葉を選ぶんだ。」
「!!」
「特に「此処」はそういう国。優しいキミの本心が掻き消されるのはベリッシモ、良くないことだ。」
「…メローネ…。」
「だから、少しでもオレの考えに共感が持てたなら、これからはその時その時で「キミの本音」を語ってほしい。可能な限りでいい、そうしてくれるとオレはディ・モールト嬉しい。」
「・・・。」
「それでもキミが相手を気遣って遠慮するというなら、それはキミの考え方で、在り方なのだから、オレはそんなyouも尊重するよ。」
それは文化の違いを自覚させると言う意味でも、メローネという人物の考え方や気遣いを知るという意味でも、
youにとっては目の覚める言葉……というよりは説教であった。
怒っているでも、笑っているでもなく、ただ穏やかな表情で。
恐らく本当にどんな答えを選んだとしてもメローネは「それがキミの在り方なんだな」と、
個性として享受するのだろうということが理解できた。
ここまで丁寧に、真剣に向き合ってくれる相手の言葉に心が動かされないワケもなく…。
youはコクリと頷いて小さく口を開いた。
「ありがとう、メローネ……なんて言うか……凄く優しいんだね。」
「ん?オレは別に普段からこんなんじゃあないぞ?youが相手だから真剣に話してるだけで…。」
「そうなの?」
「当然だろ、つまりこれが「下心」ってヤツだ。単純にいい顔したいんだよ、youに。」
「そんなところまで素直に言わなくても…。」
「ハハッ、だってそう言った方がキミがオレの誘いを断りやすいだろ?まだもう少し、一緒に過ごす時間が必要かなって。」
「ええと…それは…。」
「焦らせて悪かった。キミがオレ達と過ごす環境に慣れてきてから、また誘う事にするよ。」
「え…?」
「分かるからな、まだ緊張してるのが。」
「!!」
「しかし、ベッラとのデートをそう簡単に諦めるオレではないからな……また誘うから、その時までに考えておいてくれ。」
最後の最後にどんでん返しというか…。
てっきりその場での答えを求められるかと思いきや、もう少し距離感をお互いに掴んでからで構わないという
メローネの判断に、思いっきり肩透かしを食らうyou…。
目を点にして何度か瞬きをしてメローネを見つめるが、彼はこの話はもう終わったものとしているのか、
先程からテーブルに置き去りになっていたドルチェを再び食べ始めている…。
それこそほんの先程までのyouであれば、空気を読んでこの状況を享受し、
自分も同じようにドルチェのスプーンに手を伸ばしたのだろう…。
だがしかし、今はほんの少し、メローネの言葉で彼女はその考え方が変わってしまった。
youはコクリと一度唾を飲み込み、すっと息を吸うと、
それを彼の名前にして口から吐き出した。
「メローネ。」
「ん?」
「ちょっとお願いがあるんだけど……言ってみてもいいかな…。」
「勿論、オレが叶えられるものであれば。」
「メローネの都合の良い日でいいんだけど……休みの日が合えば、わたしに美味しいドルチェのお店を紹介してほしいです!」
「・・・・・。」
「ご、ごめんなさい……や…やっぱりもう少し仲良くなってからの方がよ…」
「ディ・モールト!!ディ・モールト、いいぞ!ああ、勿論だとも!最高の提案じゃあないか、youッツ!!」
「わぁ!声おっきいよ!!」
先程youが中腰で立ち上がるのを抑えた時とは比較のしようもない…
というか、最早テーブルに両手を付いてしっかり立ち上がっているメローネ。
その表情は至極嬉しそう…と言うよりは寧ろ興奮気味で、歓喜の表情といったところ…。
「いつの休みがいい?一緒の休みが無いならオレが有給を使ってでも合わせよう!ナポリ中のパスティッチェリアを回らないとな、ああ、それじゃあ1日じゃ足りないな…困ったな、何度デートしたって足りないじゃあないか…!!」
「め、メローネ……勢いが…すごい。」
「当然だ、だってキミの本音でオレを誘ってくれたんだから……それとも、オレが一歩引いたから慰めのために誘ってくれたのか?」
「まさか……わたしが、メローネと出掛けたいと思ったから、だよ。」
「ああ、だからディ・モールト嬉しいんだよ。」
ニコニコと笑みを浮かべて、着席するメローネ。
youもふっと笑みを浮かべて再び同じ目線になった彼を見つめる。
「わたしの気持ちを知ろうとしてくれてありがとう、メローネの言葉、全部嬉しかった。」
「ベネ…!いや、気持ちだけじゃあないぞ…キミの事は何だって知りたいと思ってるよ、誕生日や星座、血液型とか好きな物や嫌いなもの……好みのタイプや好きな体……ぃ…タイ料理。とか。」
「タイ料理?!ごめん、タイ料理にはあまり詳しくないかも。」
「ああ、うん……いいんだ、そこは拾わなくていいところだ、you。」
「はぁ?」
「兎に角、これから少しずつでもいい、キミのことを知っていきたい。」
「うん、わたしのこと、知ってくれると嬉しいな。わたしもメローネや皆のこと、沢山知りたい。」
「ああ、皆は余計だな。」
「またそんなこと言う…。」
「まぁ、本心だから。」
「でも、そう……本当に、メローネのことも教えてね。」
「ッ……!」
「どうしたの?」
「すまない…キミがあまりにも可愛いもので言葉に詰まった。あと今オレ、鼻血とか出てないか?」
「で、出てないけど…。」
「ベネ。」
youは「可愛い<鼻血」に気を取られたが、改めて思えばサラリと相手への好感度をぶつけてくるあたり
本当にイタリアの男性だなと思ってしまう。
「それじゃあ、明日にでも一緒に事務所で休みを確認して日程を決めるとしよう!ああ…ディ・モールト楽しみだ。」
「わたしも、ディ・モールト楽しみ!」
「ああ、you…ッ!」
フルフルと悦に入る表情で感極まって「キミってばまたオレを喜ばせるような言葉を…!」と口を突いて出そうになったメローネの台詞は、すぐさまyouによって遮られる。
「一体どんなイタリアンドルチェとエンカ(ウント)できるのか、もう今から既に楽しみでしょうがないよ!!」
「・・・。」
「美味しいお店沢山教えてね、メローネ!」
「あ……あぁ…。」
今までの甘い遣り取りは何処へやら…。
急に花より団子の精神が開花したようなyouを見て呆気に取られるメローネ…だったが。
「はぁ……マリトッツオにティアミスにズッコット…パンナコッタ…本場のジェラートやスフォリアテッラ…はぁぁ…イタリアンドルチェには夢があるぅう…!」
「ディ……ディ・モールト!ディ・モールト良い表情だッツ!恍惚というか、艶があるというか……これがヤマトナデシコ的な儚さ!!ああ…キミってばやっぱり最高じゃあないか、youッツ…!オレの目に狂いは無かった!!」
「よく分からないけど、楽しみにしておくね!」
「勿論だとも!これ以上ないくらいに美味いドルチェを案内するさ!そしてそれを口に含んだ時に浮かべるキミの顔を想像するだけで……っ…ディ・モールト…興奮する…!」
「よく分からないけど、楽しみにしておくね!」
最終的に興奮気味に変態的な台詞を吐き続けるメローネのことはスルーすることに決めたyouであった…。
その後、2人して食べ掛けだったドルチェに舌鼓を打ち、店を出ることになったが、その際の代金はメローネの奢りとなった。
youは自分も出すと強めに伝えたが、本日の食事自体が突発的に誘ったことや
更にはデートを了承してくれたことが嬉しかったという理由もあり、メローネはそれを受け取らなかった。
そうして完全に夜になったナポリの街を歩きながら、メローネはyouを家へと送り届ける。
「流石に近かったな…あっという間に着いちまった…ディ・モールト残念だ。」
「本当、家から凄く近いところにあんなに美味しいトラットリアがあるなんて、メローネに教えてもらわなきゃ知らないままだった。」
「キミが気に入ってくれたなら良かった。」
「本当に美食の国は伊達じゃないなぁ…。」
「そうさ、他にもおすすめの店は沢山あるから、紹介したいな。」
「是非!!沢山、色々教えてほしいです!」
「勿論だとも……だけどそうなるとアレだな…きっと向こう数十年はキミ、オレと一緒に休みを過ごすことになるぞ?」
「そんなにあるの?!」
「そりゃあ……ナポリの紹介が終わったら次はローマに行かなきゃあ!それが終わってもまだまだ!」
「ローマ!いいですね、凄く行きたいです!」
「おっ!?いいじゃないか、乗り気だな!オレもディ・モールト紹介のし甲斐がある!」
「でも、流石に数十年メローネの休みをわたしが占領するワケにはいかないから、ゆっくり、長く教えてもらわないとね。」
「ん、オレは数十年占領されたって構わないが……ゆっくり、永く…か……それもいいかもしれないな。」
「ええ、ずっとわたしと仲良くしてk…。」
「つまりオレと結婚したいと。」
「言ってないけど?」
「末永くよろしくの意味では?」
「言ってないけど。」
「おかしいな。オレにはそう聞こえたが。」
「ううん、言ってないね。」
段々とメローネ節が顕現してきたため、割と強めにツッコミをする必要があると判断したyou。
真顔で否定の意を示す…。
「冗談はさておいて、本当に、今日はありがとうメローネ。凄く楽しかった。」
「こちらこそ、オレも今日はyouと食事ができて嬉しかった。また行こう。」
「うん、是非。」
「名残惜しいが今日はここまでか…でも、また明日すぐに会える。」
「そうだね、明日も…ううん、明日からもよろしく。」
「ああ、それじゃあオヤスミ、you。」
「Buonanotte(おやすみなさい)、メローネ。」
ヒラヒラと手を振って、メローネから離れたyou。
メローネもまた、彼女に手を振り、家路を歩き出したのだが、
数歩歩いてすぐにyouに名を呼ばれ、振り返る事となる。
「あっ、メローネ!言い忘れてた!!」
「?」
「今日はずっとわたしのことばかり話してたけど……わたしもメローネのこと、知りたい。」
「!!」
「誕生日や星座、血液型とか好きな物や嫌いなもの。」
「you…!」
「わたしも知りたいな、今度教えてね。」
「~~ッツ!!」
「おやすみなさい!」
そう言うと少し照れくさそうにはにかみながら笑い、youは今一度で手を振った後、
パタパタとアパートの中へと入っていった。
残されたメローネはというと…。
その場でわなわなと震えながら、そっと口元を手で覆う…。
「い……今のは反則だろ…!」
実のところ…。
単純に、チームに来た紅一点にアプローチを掛けるのはイタリアの男としては礼儀のようなもので、
その延長で自分に好感を持ってもらえれば有難いし、仲良くなれれば自分も楽しいし嬉しい…。
そのくらいの感覚で今回彼女を誘ったメローネ…。
『ちょっとお願いがあるんだけど……言ってみてもいいかな…。』
『わたしが、メローネと出掛けたいと思ったから、だよ。』
『でも、そう……本当に、メローネのことも教えてね。』
『わたしも知りたいな、今度教えてね。』
それがどうだ、たった1日の食事会で自分が掴んだのは彼女の胃袋だけで、
当の自分はこれほどまでに彼女への好感度が上がり、心を掴まれてしまった。
これは反撃に出ねばイタリアーノの名折れ…。
明日からは自分が彼女の顔を赤く染めてやらねばと、ぐっと真顔で拳を握った後、
ではどうやって顔を赤く染めるべきかを逡巡…。
だがそこは流石というべきか…。
ほんのりと優しく輝く月の下…よからぬ想像ですぐに破顔し、
ペロリと厭らしく舌なめずりをするメローネなのであった…。
Andiamo a mangiare!
食事に行こうよ!
words from:yu-a
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