Lei e un fiore. (番外編 / リゾット)
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「うぅーん……こっちも捨てがたい…。」
そう言って左右に持ったハンガーを交互に動かした。
Lei e un fiore.
colore(色)
「やっぱりこっち!やっぱり白がいい!」
「you…。」
「ん?」
「その……色々と選んでもらって申し訳ないのだが、この色は……オレに似合わないのではないか?」
「えっ?!そうですか?!白色が?」
「いや、白もそうだが…もう片方のライトグレーも……明るすぎるというか……黒や、もう少し濃い灰色の方が…。」
「だって、リゾットの服…黒っぽいのばっかりじゃないですか…。」
「うっ…!」
なので、たまにはもう少し別の色を着てみてはどうか…と、youは言う。
「流石にメローネやプロシュートみたいに濃いピンクとか凄い柄のヤツとかはどうかと思いますけど…。」
「2人とも着る者を選ぶ服ばかり着てるな、確かに。そして選ばれているから不思議だ。」
「リゾットも何でも似合いますよ、カッコイイから。」
「いや、流石に「ああいうの」は無理だ……そも、好みでもないしな。」
「ふふ、それは分かってますよ……でも、いいじゃないですか……白、嫌いですか?」
「いや、寧ろ好きだが……そんな色が似合う爽やかな人間でもないというか…。」
「そんなこと、ないです……実際当ててみて凄く似合うし…。」
「何故そこまで明るい色にこだわるんだ??」
「それは……ただのワガママです……。」
「でも何か理由があってそれを勧めているんじゃないのか?」
「無い…と言ったら嘘になりますけど……でも、本当に似合うので……リゾットに着てみてほしいのが一番の理由です…。」
「分かった……では、とりあえず羽織ってみよう。」
「リゾット…!」
ぱあっと明るい表情を浮かべ、youは嬉しそうにハンガーから白いシャツを取り外した。
試着も渋々…といった様子のリゾットだったが、youが甲斐甲斐しく脱いだ自分の上着を預かってくれたり、試着のシャツの袖通しを手伝ってくれるのが可愛くて、徐々に機嫌が良くなっていく…。
「そうやって……youが世話を焼いてくれると、何ともむず痒い気持ちになるな。」
「え?」
「いや、何でもない……これでいいか?」
「っ……!」
ネイビーのTシャツの上に、白いシャツを羽織っただけの大変シンプルな姿だが、
基本的に普段は黒や紺などのダーク系の服を着用することが多いため、リゾットのその姿は物凄く貴重に見えてしまう…。
youはワナワナと小刻みに震えながら、感動を抑えている様子…。
「やだ……カッコいい……無理…モデルみたい……いつもの黒もクールですてきだけど、白シャツ……カフェオレ系男子……やばい…好き…。」
「何をブツブツ言っている…。」
「白シャツのリゾット最高。」
「……そうか。」
「鏡、見ましたか?すっごく似合ってます!」
「まぁ……シンプルだし、おかしくはないと思うが……こう…個人的な違和感というか…落ち着かないというか。」
「確かに、黒とか茶色とか紺色をよく着てますからね……でも、本当に素敵ですよ!欲目無しに惚れ直すくらい!よっ、イタリア一の伊達男!あっぱれ!」
「上司を接待する部下かお前は……。」
「立場的にはあながち間違っていないかと…。」
「・・・。」
「まぁ、それは照れ隠しなんですけどね…。」
「というと?」
「あーもう……本当のこと…言います!!黙っててごめんなさい……理由、ちゃんとあります…。」
俯き加減で、視線だけを所在無く動かし、youはぽつぽつと小さな声で「リゾットに白いシャツを着てほしい理由」とやらを語りだした。
「リゾットの服、いつも黒いので、明るい色を着てほしいと思ったってところも勿論あるんですが…。」
「いつも黒い…か……確かにな…。」
「その……何と言いますか……リゾットの穏やかでどんな色も包んでくれるみたいな感じが凄く白をイメージさせるというか…。それで、着てほしいなって…。」
「・・・。」
「ついでに言うとそれで後ろからぎゅっと抱きしめてほしいとかそういう願望があったり無かったり……。」
「ま、待て待て待て……!」
「?」
「そんな理由でオレに白いシャツを着せようとしていたのか?」
「うう……ごめんなさい…。」
「そんな可愛い理由でか……。」
「え?あ、いいんですか……問題無いんですか…。」
「白いイメージというのは意外だったがな。」
「あ、勿論大人かっこいい黒もリゾットのイメージですよ……。」
「ああ、そうか………そうか、白か…。」
「そう、白…!」
youの伝えた「着てほしい理由」に何故か引かれるものがあったようで、リゾットは暫し何か物思いに耽るような表情で沈黙した後、徐(おもむろ)に試着した白いシャツを脱いだ。
それはyouに無言で返却し、元々着用していた黒い上着を羽織り直す。
ああ、やはりお気に召さなかったのか…と、しょんぼり俯くyouの頭をポンポンと叩き、リゾットは微かに微笑んだ。
「そういうことなら、白いシャツを買うし……これからも着ないとな。」
「ふえっ!」
「youを包むための存在になれるなら、白いシャツを着るのも吝(やぶさか)かじゃあない。」
「ほ、ほんとうに?」
「ああ。」
「う、うれしいです…!」
本当に心の底から嬉しいのだろう…いつものように、へにゃりと表情筋を緩ませ、リゾットから戻された白いシャツをぎゅっと胸に抱きしめるyou…。
その行為が可愛くて、リゾットとしては、できればその場でガッチリ顔をホールドしてキスをズキュゥゥゥンとかましてやりたい気持ちでいっぱいだったのだが、そのようなことをやってのけようものなら、文化の違いで公共でのスキンシップに免疫が無いyouのことだ…丸一日自分とは口をきいてくれない可能性もあると予測して、ぐっと堪えることにした。
だがしかし、この終始愛らしい仕草や行為や言動に素直に心動かされて、白でも何でも着よう!と新境地に突入するところもあれば、その絆されっぷりに自分でもどうかと思ってしまう…そんな僅かな葛藤も生まれるワケで…。
基本的にチームをまとめあげるリーダーとして日々を過ごしてきた彼にとって、賛辞と叱咤の両方が部下に必要だという自論がある。
甘やかすだけでは成長に繋がらないという、管理職らしい一般的な考え方でもあるが、心をちょっとだけ鬼にして、それを今も適用すべきだろうと決意する。
主に…邪(よこしま)な意味で…だが。
結局、リゾットはyouと共に会計へ向かい、彼女のリクエスト通り白いシャツを購入。
その後は何処で何をしようかと、市街を歩きながら#nam1#に尋ねられた際に「そうだな…」と口を開いた。
「ちょっと寄りたい店があるんだが……付き合ってもらっていいか?」
「勿論です!」
「じゃぁ、この通りを少し行ったところにあるから……そこまで、手を繋ごうか。」
「はいっ!」
手を繋ぐという行為は、彼女を追い詰めることなく享受してくれる愛情表現だと心得ているリゾット。
小さな表現ではあるが、文化の違いで暗黙の制限がある彼にとっては、そういった些細なことでも「きみが好きだ」とか「傍にいたい」ということを伝えたいのだろう…。
その気持ちが伝わって、好きを伝えたい時にキスをしたら、人目を気にせずそれを返してくれる日がくるのだろうか…と思う事も日々あるが、もしもそうなった場合、それはそれで、彼女の持つ奥ゆかしさというか…照れたりする表情が見れなくなって、有難味が薄れるのかもしれない……そうも思うリゾットであった。
「ところで、寄りたい……ということは、何か欲しいものがあるんですか?」
「ああ、ちょっとな……オレにというよりは、youに……なんだが。」
「わたしに?」
「・・・。」
一体何を買うつもりなのだろうと思うyouだったが、自分も先程同じように「リゾットに着せたい」という理由で服を見に行ったところもあったため、もしかするとそういった類なのかもしれないと考える。
そういう事なのかと尋ねるべきか考えあぐねていた矢先、リゾットが少し違う話題を持ち掛けてきた。
「youは先程、オレを黒にも白にも例えてくれたが……オレも同じように思うよ……youは「真っ白」だって。」
「えぇ?!そうですか?わたしそんなに綺麗な色じゃあないですよ…。」
好きな色とイメージの色は異なる…というところもあり、自分にとってとても崇高な存在だと表現したリゾットの「白」が自分にも適用されるなんて、恐れ多い!と、youは困惑する。
だが、リゾットは少し寂しそうな表情を浮かべて、その理由を話し出した…。
「ずっと……自分という存在は「真っ黒」だと思っていた。」
「・・・。」
「きっと、普段無意識にそういった色を選んでいたのも、自分の存在に後ろめたさとか、そういう負の感情があってのことだったんだろうな。明るい色が似合うはずがない、似合っていいはずがない…と。」
「リゾット…。」
「だが、youに言われて気付いたよ……それはもう過去の話なんだって。」
「ん…。」
「オレが例えば真っ黒な存在であったとしても、youは溶け合ってくれる……「真っ白」な存在だ。」
「そういうことなら、はい……リゾットがたとえどんな色だったとしても……わたし、きっと受け入れます。」
「ああ、こうして一緒にいる限り溶け合うことができるから、もう二度と自分が真っ黒な存在だとは思わないことにするよ……。」
「はいっ!是非、そうしてください!」
思わず泣きそうになってしまう程のリゾットの話に、youは目頭を熱くしただけに何とか留め、大きく頷いた。
そういうことであれば、今度はリゾットの白いシャツに並んで絵になるような白いワンピースでも買ってみようかと、心の中で考えたところで、不意にリゾットが歩みを止める。
「着いたぞ、ここだ。」
「はい……ええと、ここは……………下着屋のようですが。」
「そうだ。」
「ここ、メンズも併せて販売してるんですか?」
「いや、それは知らんが…。」
「…サイズってあるんですかね……下はまだしも、リゾットの胸筋に耐えうるブラは流石に……!!」
「誰がそんなモン付けるか!!」
「違うんですか!?」
「当たり前だ!!」
というか驚くな!と、お叱りを受けるyou。
そう言われてみれば、先程リゾットは「自分にというよりは、youに」と言っていた気がすると思い出す。
素で勘違いしたことは申し訳ないと謝罪しつつ、しかし、何故此処へ来たのか…を問うてみる。
「す、すみません……じゃぁ、ええと……何故、ここへ…?」
「youに似合う白色の下着を探しに来た。」
「なんで…ワンピースとかじゃなくて…。」
「それはそれで似合うものを買うにしても、だ。」
「いやいやいや……。」
「実は白色でもう1つ思うことがあって……。」
「なに…。」
「youは真っ白なキャンバスみたいだろう……だったら、オレが最初に絵を描きたい。」
「っ……!//」
「だから白い下着…というのもちょっとマニアックな気もするが……。」
「そう思うなら何故…!!」
「では聞くが、youがオレに白いシャツを着てほしいと願うことと、どう違うんだ?」
「・・・!!!」
瞬間、リゾットと服を選んだ時の会話がフラッシュバックする…。
『何故そこまで明るい色にこだわるんだ??』
『それは……ただのワガママです……。』
『でも何か理由があってそれを勧めているんじゃないのか?』
『無い…と言ったら嘘になりますけど……でも、本当に似合うので……リゾットに着てみてほしいのが一番の理由です…。』
ハードルの違いこそあれ、本質は全く変わらないと自覚したyou…。
サーっと青ざめた顔でリゾットを見上げるも、目は口程に物を言う…。
youが何を考えているのかを察したリゾットは、白色のシャツが似合いそうな爽やかな笑みを浮かべ、言った。
「youはどんなものが似合うだろうか……色々見ないとな。」
「おっ、鬼ーーーーッツ!!!//」
手首を掴まれ、否応なしに入店をさせられるyou。
入店3秒後、女性店員の「チャオ!」という明るい声を耳にし「ああ、もう逃げられない」と観念するのだった…。
colore
二度と黒に戻ることはない
words from:yu-a
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