Lei e un fiore. (番外編 / リゾット)
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「領収書ラスト2枚!」
事務所の一角にyouの声が響いた。
Lei e un fiore.
salga le scale(階段を上る)
「ええと…こっちの領収書がメローネので…これがプロシュートの…用途はうん…経費で落ちるね。」
「すまないな…残業させてしまって…。」
「気にしないでください、そんなに頻繁にあるワケじゃないですし。それに、この作業が最後だから、もうすぐ終わります!」
リゾットにニコリと笑みを向け、申請書や諸々の用紙を取りまとめながらyouは言った。
そう、今日はリゾットがブチャラティに呼び出され、外出していたのだが、
その帰りが遅くなってしまったことで、事務処理に遅延が生じてしまったのだ。
電話でyouにその旨を伝え、処理は後日で構わないと伝えたのだが、
翌日がリゾットもyouも休みとなっていたため、それならば今日中に完了させた方がいいだろうということで残業をする運びとなった。
幸い、連絡をしてすぐにリゾットが事務所に戻って来れたため、そこまで何時間も残業をすることにはならなかったのだが、
自分の所為で彼女を居残らせてしまったということで、先程からずっとリゾットはすまない、申し訳ない…という言葉を連呼している。
「よーし!あとは日報書いて終わりです!リゾットはどうですか?」
「ああ、オレも今資料をまとめ終わった。完了だ。」
「ん!ということは日報不要なリゾットの方はもうお仕事終わりですね、お疲れ様でした!」
「ああ、お疲れ様。」
「・・・。」
「・・・。」
仕事が完了した…と言い切ったものの、リゾットはデスクから動く気配が無い。
帰宅の準備さえも行っていない様子だったもので、不思議そうにyouはそのことを尋ねた…。
「帰る準備しないんですか??」
「キミを置いては帰れない。それに日報だけだろう、そのくらい待つさ。」
「あわ……あ、ありがとうございます!」
「you、この後、何か予定は?」
「特に無いですよ、まっすぐ帰ります。」
「それなら……どこかで食べて帰らないか?待たせてしまったお詫びにご馳走させてくれ。」
「えっ!マジですかっ!」
「ああ、マジだ。」
「やったーー!リゾットと一緒にご飯!」
「そっちか。」
「え?」
「いや、てっきり奢りだから喜んだのかと思って…。」
「それも嬉しいですけど……リゾットとご一緒できるのがうれしいです。」
「破壊力EX。」
「え?」
「いや、何でもない。」
破壊力やスピードといったステイタスの判断は、主に仲間内のスタンド能力に関して用いられる表現なのだが、
ことyouに於いては放たれる言葉に対して適用される…と、
いつだったかメローネやホルマジオが言っていた気がするが、正にその通りだとリゾットも心の中で同意するのであった…。
「何か食べたいものはあるか?」
「特にこれと言って……強いて言えば日本食が恋しい…。」
「・・・日本食か…あるには勿論あるが…どうしてもスシがメインのところが多い…。」
「ですよね……お寿司かぁ…。」
「微妙そうだな…。」
「好きですけどね……イタリアに来てからホーム食シックに掛かった時に散々行ったので…ちょっと飽きちゃって。」
「食シック……確かに、オレたちイタリア人もそれに掛かる可能性は大いにあるな。不味い飯はありえない。任務で行ったが、イギリスなど論外だ。」
「(流石イタリア人……食への執念が半端ねェ…)」
十中八九過去の任務で海外遠征した時の食事を思い出したらしい。
リゾットはこれでもかという程に固く拳を握りしめ、怒りを顕にしている。
「あ、あの…リゾット…。」
「ハッ!すまない…。」
「いえ…。」
「それで、結局何にする?」
「それなんですが…今、話をしたら凄く気持ちが和食に傾いてしまって…。」
うーんと悩む仕草をしているyouに対し、説得するように「まぁ、スシ以外にも何かしらあるだろう」と声を掛けるつもりだったのだが、リゾットのその言葉は彼女自身の提案と結論によって遮られた。
「よし、家で食べよう。出汁あるし、卵あるし、鶏肉あるし…ネギないけど…。」
「そうか…それは残念だ。ではまた次回夕飯を誘わせてくれ。」
「あ、そっか……リゾットの家はこの近くだから、わざわざわたしの家に来てもらうのは申し訳ないですよね…。」
「家?」
「うん、一緒に食べようと思って…。」
「何処で…?」
「わたしの家で…。」
「・・・。」
「はっ!やっぱりそれは駄目ですよね!リゾットの奥様に失礼ですよね!!」
「いや、未婚だが!!」
「そうだったの!!」
確かに自分はいい歳ですけど!!と、発言したくなるリゾットだったが、
何となく切なくなって二の句が告げられずに落胆してしまった。
色々と申し訳ないことをしてしまったと、youはあたふたと顔を真っ赤にして「ごめんなさい!」と大きく謝罪する。
「そう謝らないでくれ…何かこう……逆に辛い。色々と…。」
「そういうつもりでは、決して!わ、わたしだっていい年ですけど恋人もいないですしお寿司!ヤバイ、自分で言ってて泣きそう!」
「お、落ち着け!何でお前が泣きそうになるんだ!あとスシは今関係ない!」
「予定変更…!!予定変更ですっ!!」
「お、おお…?」
「今日は飲みましょう……どうせ明日は休みなんです!お酒が美味しいオステリアに決定ですっ!」
「わ、分かった…そうしよう。」
イタリアで簡易的に例えるならばオステリアはそこまで敷居の高くないレストランだったり、居酒屋のようなものである。
お酒を飲むにしてもエノテカ(ワインを主体にしたレストラン)を選ばなかったということは、今回は自棄酒の類…ということなのだろう。
「飲む!」という勢いがそのまま続き、youはあっという間に残っていた日報をパソコンで打ち込み、超スピードで帰り支度を整えてリゾットの前に立った。
「お待たせしました!!」
「(全然待っていないが)…ああ、じゃぁ行こうか。」
「はいっ!」
事務所を出て、ちょうどyouの家の中間地点あたりのオステリアで乾杯の盃を交わすと、
何がそうさせたのか、そこそこのペースでお酒を進めるyou。
流石に少しの驚きもあり、リゾットは彼女にそれとなくセーブを掛けるよう進言する。
「you、少しペースが早いようだが…大丈夫か?」
「これくらいなら、問題ないと思います。」
「そうか…ならいいんだが……いや、以外と冷静な返答で安心した。」
「リゾット、ちょっと尋ねてもいいですか?」
「ああ、何だ?」
「リゾットは……本当に結婚してないの?」
「またその話か!?」
たった先程の話ではあるが、その話を深くされると古傷をフォークで抉られたような気持ちになることは必須。
できれば避けたい話題だ、これ以上聞いてくれるなと、リゾットは微妙に嫌そうな表情を押し出した…のだが。
「……お付き合いしている人もいないんですか?」
「それも…今はいないが……。」
「そっか……なら、ちょっと良かった…。」
「オレとしてはあまり良くはないんだが…。」
「わたしは良かった。」
「どうして?」
「今度、お家にお誘いできますもん。」
「行っていいのか?」
「超絶に親子丼が食べたくなったんですよ、今日。だからもう作るって決めたんです!なので、リゾットにも食べてもらおうかと!」
「ハハ、それはオレも食べてみたい……楽しみにしておく。」
「あ、あと…あとね……お休みに一緒に出掛けたり、こうやって一緒に食事したり、飲みに行ったりしたいので!」
「ああ、そういうことか……それならオレも思うところはあるな、youに恋人がいなくて良かったと。」
「うぐ……嬉しいけど悲しい。」
その為の質問だったのなら、それはそれで良かったと…。
構えていたような話ではなく、精神的に傷付くことはなかったことでリゾットは安堵する。
(ついでにブーメランがyouに返ったので。)
心が少し軽くなったことで、相手を気遣う余裕ができたため、
そこで改めてyouを見遣たのだが、彼女は少し躊躇うような表情で何かをモゴモゴと言い噤んでいる。
「you…?」
「リゾット……でも、迷惑じゃないですか?」
「何がだ…?」
「わたしと色々……ご飯とか、出掛けたり…とか。」
「迷惑に思うワケがない。youと過ごせる時間は楽しい。要らない心配だな、全く…バカなことを…。」
「よかった……。」
「少なくとも、オレやチームの奴らは何とも思わない女を夕飯に誘ったりしない。一緒にいたいと思うから誘うんだ。」
「うう……やだ、泣きそう……ありがとうございますぅ…。」
「そんなことで泣くヤツがいるか…。」
お酒が入っているから感情の起伏が激しくなっている様子のyou…。
泣き上戸というワケではないが、何故かリゾットのささやかなフォローにまで感極まっている。
思わぬ反応に少し目を見開いたものの、やれやれと少し呆れたように苦笑しながらリゾットはyouの頭をわしわしと撫でた。
それからは彼のフォローで心を落ち着けたのか、youの飲酒スピードも落ち着きを取り戻す。
1件目のオステリアの後、youの希望でドルチェのために別のバールへ寄り、
そこでリゾットはもう一杯だけデザートワインを頼み、youは甘いクレープに舌鼓を打った。
バールではそこまで長居はしなかったが、時計を確認すればなかなかにいい時間…。
家路に着く際には明日が休みで良かったと2人して頷いた。
「あー、明日はお昼まで寝ちゃいそうです…。」
「それもいいんじゃないか、誰も咎めない。」
「リゾットは明日何をするんですか?」
「ん?そうだな……特に何もないな。お前は?」
「わたしは……お昼までに起きれたら街の探索です!まだまだ知らない場所が沢山あると思うので!ちょっと静かな場所を探してるんですよね……ジェラート食べたりパニーニ食べたり本読んだりできる感じの…。」
「静かな場所か……少し広めの公園があるが、そこはどうだ?確か、近くにはジェラテリアやバールもあったはず…。」
「えっ!何ですその素敵空間な予感!!」
「行ってみるか?」
「行きたいです、是非!」
「では案内するが……明日か?」
「いい、ですか?」
「ああ。」
「わぁい!うれしい!!またリゾットと一緒に過ごせます!」
「またお前はそういう…。」
「あ……っでも、やっぱり今度でいいです…。」
2度目の破壊力EXの言葉に何と反応しようか思考していると、youがまさかの発言撤回を申し出てきた。
テンション高めで盛大に喜んだ後のこの盛り下がり…。
やはり酒の入りが今日はおかしかったのだろうかと、リゾットが彼女を心配したところで、おずおずとyouは断る理由を話し出す…。
「今日、リゾットとたくさん一緒に時間を過ごしてすごく楽しかったから……。」
「楽しく過ごして何か悪かったのか…?」
「勿体ないって思ったのです!!」
「も…勿体ない…?」
コクコクとyouは頷き、立ち止まってリゾットを見上げる。
「だって、明日も会えたら勿論嬉しいですけど、今日の分があるから、嬉しい時間、もうちょっと先にしとかないと勿体ないなぁって。」
「・・・。」
「それに、今日の明日じゃリゾットにもやっぱり迷惑掛けるなって。」
要約すると、仕事でも顔を合わせているのに、そう毎日毎日会うのは面倒で嫌だろうと…。
折角の休みであれば、仕事を彷彿とさせる要因は視界に入れない方がいいだろうと彼女は言いたいようだ。
リゾットはその意を理解するや否や、盛大に溜息を吐いてyouの額を人差し指でトン、と小突く…。
「何度言えば分かるんだ……迷惑ではない。迷惑なら断る。」
「うう、でも…。」
「今日も明日も会えばいい。また別の日に出掛けたくなったらそうすればいい。いつだって、youに誘われるのは迷惑ではない。」
「ほ、ほんとうに…?」
「ああ。」
「……じゃぁ……明日も…リゾットと一緒にいていいですか…?」
「ッ……そこまでこちらを立ててくれると有難いを通り越して、よからぬ期待をしてしまうだろう……日本人の美徳かもしれんが、そういうところがオレ達としては押しにいってしまう起因だぞ?」
「?」
反対に、リゾットの言いたい事があまりよく分かっていないyou…。
恐らくはもう少し単純化して分かりやすい言葉が降ってくるのを待っているようだ。
じっと自分を見つめてくる丸い瞳を、リゾットの深紅の瞳が見返す。
「つまり…だな…。」
「つまり…。」
「…明日は共に休みだろう?」
「はい!」
「なら……このままyouの家に泊まって、明日一緒に出掛けるというのはどうだ?」
「ふぉっ?!!///」
「・・・という事をこちらは言いたくなる。」
「し、心臓が…!」
「成程…キミの言葉の選択がいつもとても…そうだな、嬉しいから、その度にこちらも投げかける言葉の糖度が上がっているのかもしれない。」
「そ、そういう仕組みなの…?!」
「そういう仕組みだろう、愛だの恋だのというモノは。」
「そう、なん、だ…?」
今はまだお互い優しい言葉や誘い文句の類を言い交わすだけの存在だが、
それは発展する可能性もあるのだと、至って単純な恋愛論を分かりやすく説明するリゾット。
一方のyouは情報過多過ぎて混乱をきたしている。
脳内でリゾットの言葉を頑張って理解しようとしているようで、目が何処か分からない一点を見つめて動かない…。
「ひとまず、明日は街の探索と公園…で、いいか?」
「は…はい…。」
「起きたら連絡してくれ。迎えに行こう。」
「は…はい…。」
「・・・・。」
「はい…。」
「you。」
「はぃ…。」
「先程のは、迷惑だろうか?」
少し残念そうな声色が頭上から降り注ぎ、ずっと生返事をしていたyouはハッと意識を戻して、慌ててしっかりした返事を返す。
「は……っいいえ!その……ありがたいけど、困ります…。」
「何が困るんだ?」
「リゾットに掛ける言葉を……考えないといけないじゃないですか…。」
「いつも通りじゃダメなのか?」
「い、いつも通りじゃどんどんハードル上がるんでしょう?」
「上がるな。」
「そしたら、わたし、どんどん翻弄されるんじゃないですか?!」
今まで冷静に場を判断してくれていたリゾットであれば、今後の対処方法を教えてくれるのではないか?と、そんな期待を込めた目で訴えかけるyou…。
が、しかし。
リゾットに於いては…というか一般的に考えてリゾットの考え方に何の間違いも無いワケで…。
寧ろ、敢えて「分からぬ」と言葉にした時点で彼女は過ちを犯しているのである。
一人動揺するyouに、彼はただありのままの答えを出す。
「そうだな……オレと同じだ。」
「っ…!//」
とどのつまり「お互いに同じ立場だ」と、彼は言う。
だが、その表情や声色は彼女を困惑させたり、からかったりするようなものではなく、リゾットの誠実さを模したような穏やかなもの。
それがあまりに意外だったのと、youにとってはとても好ましかったので、思わず、困った表情でありながらも大きく頷いてしまうのだった。
salga le scale
階段を上りましょう
words from:yu-a
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