■Fiori e Vino. (リゾット)
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「(何て失礼なことをしてしまったのだろう…。)」
朝から何度もその言葉を脳内で繰り返した。
Fiori e Vino.
銃と柔の憂いと方法
新居へ引っ越したその日、挨拶をしたお隣の男性に菓子折りを渡した際、戻れない祖国を褒めてくれた彼の言葉に涙してしまったyou。
そのまま、逃げるようにその場から立ち去ってしまい、自己紹介すらできないままで何がご挨拶だ…とても申し訳ないことをしてしまった…と、その日からずっと自己嫌悪に陥っていた…。
結局それから1週間以上経過しても、お隣の男性と顔を合わせることがなかったこともあり、完全に謝罪するタイミングを失っていた。
そういう理由で、仕事中に大きな溜息を吐き出したところ、事務所にいた同僚であるグイード・ミスタからツッコミを入れられてしまう。
「おいおい、何だそのスゲー溜息はよォ~……一気に幸せが逃げちまいそうじゃあねぇの…。」
「ミスタ…。」
同僚と言っても立場的にはyouより随分上…。
更に付け加えるとすれば、ミスタはyouが別のギャング組織に売り飛ばされそうになったところを、危機一髪、助けにきてくれた張本人でもある。
自分以外にも捕らわれていた者が幾人かいたが、その殆どは戸籍を抹消されることを免れ、自国に帰ることができた者ばかりであった。
何故自分は…と嘆いたyouに「日本のパスポートは世界最強であり、諸々の情報も高く売れる…。そのため、貴女の情報が一番に抹消されたのでしょう…」と、そういった理由を教え、「貴女はボクの動かす組織で保護する」と道を作ってくれたのが、現在youが所属しているギャング組織「パッショーネ」のボスであるジョルノ・ジョバァーナその人。
ミスタはそんな彼の右腕だとも左腕だとも称されるほどの立場の男なのだが、明るく人懐っこい性格のため、よく話し掛けてくれる。
ついでに言うと、ミスタ自身がyouに対し、直接助けてやったことからの庇護欲のようなものを感じているから…というのもあるのだろう。
「悩み事なら相談に乗るぜ?なんなら今日にでも一緒に飯食いに行くか?」
「心配してくれてありがとう、ミスタ……うん、でも大丈夫。」
「本当にかぁ~?その割には最近ちょっと元気ねェじゃあねぇの…。」
「大した事ではないですけど…実は、引っ越しで失敗をですね…。」
「引っ越しで失敗???」
言葉の意味が分からない…と、頭の上に疑問符を浮かべたミスタに「実はかくかくしかじかで…」と、引っ越し初日に出会った隣人との遣り取りについて、最後に泣いてしまった事に関してだけを伏せて説明をするyou。
「戻れない故郷を想って泣いてしまった」などと言えば、イタリア人ギャングであるミスタや他の皆が、要らぬ罪悪感を抱いてしまう可能性があると踏んでの事だった。
きっと優しい彼らは、違うギャング組織が行った悪事も、同じ国で活動するギャングとして「youがこんな目に遭ったのは、彼等を統括できていない自分達の所為だ」と、考えてしまうだろう…。
悪いことをしたのは別の組織であって、「パッショーネ」ではないのに…。
寧ろ、悪いことどころか、youに今の居場所を与えてくれた彼等に感謝こそすれ、罪悪感など1ミリも抱いてほしくないワケで…。
「ふ~ん…で、つまり「あまり周囲の人間を信用するな」と言われたことが尤も過ぎて、自己防衛力の乏しさに自己嫌悪に陥り、そのまま挨拶せぬまま、しょんぼり退散しちまって、相手に悪いことをしたと思った……?」
「はい…ざっくり言うとそんな感じです。」
「いや、別にそこまで気落ちする問題じゃあねーと思うが…。」
「でも、最後の方は何というか……自分の事で精一杯で…謝ったりする余裕もなくて……次回会った時に謝ろうと思っていたんですが、なかなか機会が無くて…。」
「ま、隣人なんてそんなモンだって。」
「でも……何かモヤモヤするんです、だからどうしても謝っておきたくて……ああ、会わなくても謝れる方法があれば!」
「そりゃお前……無理だろ。お隣さんとは言ったって、名前も知らなきゃ、電話もメッセージ送るための情報も無ぇんだろ?」
「うう…はい。」
youの言葉にミスタが「諦めな」と告げようとした矢先…。
涼やかな声で素晴らしい回答が2人の背後から聞こえてきた。
「お隣さんなら、手紙を書いたらいいんじゃないか?」
「「ブチャラティ!!」」
声を掛けてくれたのはブローノ・ブチャラティ。
彼はボスであるジョルノの側近で…とはいえ、ジョルノよりもパッショーネに在籍していた経歴が長いため、彼とほぼ同等の立場に位置している最高幹部の一人である。
パッショーネのボスがジョルノになる前から、自分の部下だけでなく、統括する地区の人々からも慕われていたブチャラティは、
立場が変わろうとも変わらずに人に寄り添う考えを体現してくれる人物で、変わらず皆から信頼されている誠実な人物。
そんな彼もyouの置かれた境遇に心を裂き、いつも優しい言葉を掛けてくれるので、ミスタや他の同僚の皆と同様に、youも彼の事が大好きであった。
「おかえりなさい、ブチャラティ!」
「ああ、ただいまyou、それにミスタも。」
ブチャラティに挨拶され、ミスタは「おー、おかえり」と軽く挨拶を返す。
そのやり取りが終わると、話は本題へ戻ってくる。
「ブチャラティ、いつ戻って……さっきの話、聞いてたんですか?」
「いいや、たった今だよ。だから「お隣さんにメールや電話以外で謝るにはどうしたらいいか」という悩みしか聞けていないが…。」
「それで「手紙」か……うん、うん……すてき!とても良い案です、ブチャラティ!」
「そうか?」
「はい!わたし、今日早速お手紙を書いてみようと思います!!」
「うん?ああ、じゃぁ、もう今日は今から直帰か……頑張ってな。」
「あっ、本当だ…もう定時!日報書いて早く上がろうっと!!」
ブチャラティに言われて時計を確認すれば、彼女の定時を少し過ぎた時間を示していた。
仕事は全て完了させていたため、本日行った作業を日報に記入し、彼女はバタバタと帰り支度を整える。
「ミスタ、相談に乗ってくれてありがとう!ブチャラティも、素敵なアイディアをどうも!では!!Arrivederci!」
「「Arrivederci!」」
一年程経過してもまだ抜けない、日本人の性か……youはペコっと2人にお辞儀をして事務所を後にした。
事務所のそのドアが閉じる音がして、ミスタが大きな大きな溜息を吐いてブチャラティの名を読み上げる…。
「ちょ~…ブチャラティよぉ~~!!」
「な、なんだ?どうした、ミスタ??」
「何だじゃぁねーですよもぉ!!」
「何故怒っているんだ??」
「怒りますよそりゃあ!!折角諦めさせようと思ってたってぇのに!」
「youがお隣さんに謝るのをか?」
「そうです。」
「どうしてだ?」
「アイツ……お隣さんが「女」だって一言も言ってないんだよ。」
「な、え……あ!!しまっ……!!」
「ブチャラティ、ちょいと、暫く交代でyouにメッセージ送るってことでいいか?」
「そうだな……返信が無かったり、出勤してこなかった場合はすぐ駆けつけよう。」
「「そういうとこ」をお隣さんに注意されたんじゃあなかったのかってハナシなんだけど……本当、アホ過ぎて放っとけねぇわ…。」
「それに関しては同感だ。」
そうして、本日youが吐き出した以上に大きな溜息を、大の男2人が揃って夕暮れの事務所の中でもう1度繰り返した…。
銃と柔の憂いと方法
words from:yu-a
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