■Lei e un fiore. (本編 / 暗殺チーム)
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「you、すまないが買い出しに付いてきてくれるか?」
そう、リゾットが自分を指名したのは敢えてのことだと、察していた。
Lei e un fiore.
11:Sorbet & Gelato(ソルベとジェラート) 2
組織の決定で、ソルベとジェラートの2名が特殊任務依頼チームの元で生活することが決まり、youの時と同様に歓迎会を行う事となった。
外食も考えたが、当日で10人もの予約を取るのは難しいだろうということで、オードブルを買ったり、足りない分の料理は作ろうということで、事務所で歓迎会をする流れに…。
メローネとプロシュートがソルベとジェラートを連れて近くのピッツェリアやパニノテッカに行き、
ホルマジオとペッシは事務所の冷蔵庫にあるもので料理を担当し、イルーゾォはエノテカに酒だけを買い出しに行った。
そしてyouはというと、リゾットと共にスーパーへオードブルや追加の食材、ソルベとジェラート用の飲み物を買いに来ていた。
「コーラとアランチャとお水と……追加食材も結構買ってますし、これくらいの量で問題ないですよね。」
「ああ、プロシュート達がピッツァやパニーニも買ってくると言っていたし、十分だろう。」
「では、そろそろ戻りましょう!」
「ああ。」
購入した物を車のトランクに詰め、買い忘れなどが無いかを確認した後、2人は車に乗り込んだ。
事務所からそう遠くないスーパーだったため、車で移動すればものの10分と掛からずに戻れるのだが、リゾットがいつも通る道を少し外れたため、youは不思議そうに声を掛ける。
「あの、リゾット…?」
「まだ時間がある……少しだけ寄り道をしよう。」
「はい。」
そう言ってリゾットがyouを連れていたのは、事務所から少し離れた場所にあるこじんまりとした、しかし清潔感のある小綺麗な教会であった。
駐車場に車を停めて、リゾットはyouと足並みを揃えて建物の中へと入る…。
高い天井を感嘆して見上げるyouをよそに、リゾットは赤いカーペットの敷かれた身廊を少しだけ進み、左側の側廊の長椅子に着席した。
夕焼けが強い時間帯で、横に取り付けられているステンドグラスから差し込む光を浴びるリゾットの姿はとても美しい。
それは一瞬、息をするのを忘れてしまう程で、じっと見惚れていたところ「どうした?」と声を掛けられて、やっと意識を取り戻すに至った。
「い、いえ!何でもないです!ステンドグラスが綺麗だなって…。」
「……ああ、そうだな……夕焼けか……閉め出されないうちに話をしようか。」
「ええ、はい。」
リゾットの言葉に、確かにもうすぐ教会も閉まってしまうなと、納得したyou。
自身もリゾットの横にそっと着席した。
「何から話せばいいものか……難しいな、知らない相手に大事なことを掻い摘んで話すというのは…。」
「そう、ですよね……特に皆さんはパッショーネで、わたしの所属はあくまでのSPW財団ですし…。」
「……元々、オレたちのチームメンバーは9人だった。そこまで言えば何となく分かるだろうが、今はいない2名……それが「ソルベとジェラート」だった。」
「それで皆さんはリゾットが彼らをそう名付けた時に驚かれていたんですね…。」
「自分でも何故2人の名前を付けたのか不思議だ………だが、少し彼らに重なって見えたのはきっとオレだけではないはず。」
「似ていらっしゃるんですか?」
「今のところ似ている部分は髪色くらいだな。歳だって全然…オレ達の知っているソルベとジェラートは大人だったし、内面は……オレ達はまだあの子達のことをよく知らない。」
「ん…。」
確かにそれはそうだ、とyouは頷く。
そして、話しの途中ではあるが、先程の事務所での遣り取りで彼女自身が疑問に思ったことをリゾットに尋ねてみることにした。
彼らを預かる任務を直接伝えられ、直接迎えに行った彼ならば…と。
「あの……少し気になることがあるんですが…。」
「何だ?」
「ジェラートのことです……彼は、どうして親元……というか、教会の孤児院に戻れなかったんでしょうか、リゾットは何か知っていらっしゃるようだったので……お聞きしてもいいですか?」
「ジェラートは………。」
「?」
事情を把握していることは間違いないが、リゾットは何とも彼女の質問に答え兼ねる……というよりは言い淀んでいる様子。
しかしながら、それも併せて説明するために彼女を買い出しと称して連れ出したこともあり、小さく溜息を吐いた後、その事情を語り始めた。
「ジェラートはな、元いた孤児院で性的虐待を受けていたそうだ。」
「!!」
「それが発覚し、ボスの意向で敢えて孤児院には返さなかった。ギャングの道を歩かせることを強いるのはボスにも葛藤があったようだが、何よりも孤児院に帰ることを彼自身が拒んだ。」
「そう……だったんですね…。」
「すまない、この手の話はあまりキミに聞かせたくはなかったが……。」
「いえ、気遣ってくださってありがとうございます……。」
「名前もそうだ……元いた場所で使われていた名前など捨てたいと思っていたんだろうな、その名前で呼ばれたくない……その名前で呼ばれると孤児院での事を思い出すから…。ソルベはジェラートのそういう気持ちを察して、オレに名前を付けろと頼んだのだろう……口は悪いが仲間想いの良い子だと思ったよ。」
「はい……とても、そう思います…っ!」
自分の使っていた名前に執着が無いのだろうとはいえ、知合ったばかりの友達のために自分も一緒に名前を捨ててやろうとは普通であれば思わない…。
そして、その真意を周囲に悟られることなく、自然に「自分が名を変えたいのだ」とジェラートを庇って発言するソルベの心意気に今更ながらに感心してしまうyouだった。
「そんな彼に比べてオレは……どうにも女々しいと言うか……情けないというか…。」
「何故です?」
「名前のことだ……ソルベとジェラート。」
「あの、昔いらっしゃったソルベさんとジェラートさんについては……お尋ねしてもいいんでしょうか…?」
「そうだな……それについても話をしなければならないんだ……。」
ハァ~っと大きな溜息を吐いて、それもジェラートのことと同様に彼女に伝え辛い話なのだということを体現するリゾット。
彼を困らせることになるのであれば、それは大変申し訳ないとは思ったが、知らないままでいてもいいような状況ではないと思ったこともあり「言いたくなければ言わなくていい」とは告げなかったyou。
ただ、謝り、それでも話してほしいとリゾットの言葉を待つことにした。
「す、すみません…。」
「いや、youが謝ることじゃあない………ええと、ああ……元いたソルベとジェラートのことだが………2人はな……既に亡くなっている。」
「そう、なんですね……いえ、すいません……皆さんの反応で何となくそうかなとは思ったんですが…。」
「よく2人で任務に行くことが多くて、仕事帰りに飲みに行ったり、休みに一緒に過ごしたり、とても仲が良かった。」
「ふふ、何かその時点でちょっとあの2人に重なっちゃいますね。」
「そうだな………それで、オレ達のチームは、旧パッショーネの時代に冷遇されていたこともあって、与えられる任務も報酬の割にリスクの高いものが多くてな……………色々あって、結果的に2人ともその延長で命を失ってしまった。」
「・・・。」
本当は、その冷遇に不満を抱いた彼らが、旧パッショーネの時代にボスの正体を探るという禁忌を犯したため、制裁として殺されてしまったという経緯なのだが、悩んだ結果、リゾットはその内容を伏せることにした。
ただ、端折っているだけで、告げた内容も嘘ではないため、特に違和感も抱かずにyouは「矢張り、ギャングの世界には生と死が隣り合わせに存在するものなのだ」と、全身を慄かせながらも納得するに至った。
「だから、オレの選択は間違いだったんじゃあないかと……そう思ってしまった。」
「え?」
「身代わりで付けただけだったのかもしれない……戻って来てほしいという願望だったのかも…。」
「リゾット…。」
「不甲斐ないリーダーの所為で、命を失うことになってしまった部下への懺悔だったのかも………駄目だな、こんなことを口にしては……どちらのソルベとジェラートに対しても、これは侮辱だ…。」
「リゾット!それは違いますよ!」
静寂が蔓延する教会の中にyouの怒気を含んだ声が反響する。
思わず衝動的に立ち上がってしまったのと、この場に似つかわしくない大声を上げてしまったことで、youはハッと我に返って静かに、再びリゾットの隣に着席した。
彼女が叫んで立ち上がり、再び席に着くのを驚いた顔で見つめていたリゾットに、youは眉をハの字にして申し訳ないと、すぐさま謝罪する。
「すいません、わたし……いきなり大声を…。」
「いや……うん、少し驚いたが…。」
「だって……それは違うと思ったから…。」
「・・・。」
「ソルベさんとジェラートさんが命を落としたのは、リゾットの所為なんですか?違いますよね?……そりゃ、冷遇されている環境を変えたいけど、なかなか部下の要望を上に伝えられなくて改善できなくて、もどかしいという立場ってあると思いますよ?でもリゾットはリゾットなりに最善を尽くしてきたんじゃないですか?昔も、今も!」
「勿論、そ、それはそうだが…。」
「今の……今の、リゾットを見てたら分かります……ああ、この人は一人でずっとこのヤンチャなメンバーをしっかりまとめてきたから、こんなに彼らからの信頼があるんだろうなって…!だから、名前を付けたって身代わりになんてなれないって分かってるけど、そんな仲間想いなリゾットや皆がソルベさんとジェラートさんに戻って来てほしいって思ってしまうことだって、当たり前に思っちゃうことだし、何よりリゾットが不甲斐ないリーダーだなんてチームの皆、誰もそんなこと思ってないです!なのに、なのに…どうして………懺悔だとか、侮辱とか……そういうこと……リゾットが言うんですか……っ…!!誰もそんなこと………思ってない…っ…!」
感情的になりながら、リゾットに意見するyou。
最初はしっかりと伝えたいことを言葉にしていたが、次第に声が震え始め、ボロボロと泣きながらの訴えとなってしまった様子。
全身全霊で「貴方は悪くない」と伝えられ、それでも自分を卑下する卑屈な人間が、もしかするとこの世界にはいるのかもしれないが、こと、リゾットに於いてはそれには当てはまらなかったようだ。
彼は困ったように眉を寄せたものの、その口角は僅かに上に向いており、少し穏やかな笑みを見せた後、彼女の頭をポンポンと撫でた…。
「グラッツェ、you……オレをそんな風に評価してくれて。」
「っ……う…っ…。」
「だが、矢張りオレは自分で思っていたよりも女々しい性格なのかもしれない。」
「どうして…?」
頑張って涙を止め、youが首を傾げて尋ねれば、リゾットは彼女の涙を指でそっと掬い取り、申し訳なさそうにクスリと笑った。
「ソルベとジェラートの話をするというのは建前で………本当はオレの懺悔を聞いてほしかったのかもしれない…。」
「リゾット…。」
「心の何処かで、キミならオレを肯定してくれるんじゃあないかって……浅ましくも思っていたのかもしれない。」
「どこも、浅ましくなんてないですよ……それに、わたしだって賢者でも聖女でも何でもないんです……誰も彼も庇えるワケじゃないですよ………リゾットだから、です。」
「you…。」
「いいところも悪いところも見つけられる距離にいるからです……って、新参者のわたしなんかより、きっとチームの皆さんの方がもっとずっとリゾットのことを肯定するし、庇うと思いますよ!そうですよ、寧ろ一周回って「何でそんな馬鹿な事言うんだ」って怒られちゃいますよ…。」
「そう、かもしれないな………。」
「そうですよ。」
youの言葉があまりにしっくりき過ぎて、本当に一周回って怒られるだろうな…と、思わず納得してしまうリゾット。
そして「自分は新参者」と自称したものの、このチームへ遣って来て暫く経った彼女が、思った以上に自分や周囲の人間の性質を理解して、歩み寄っていることに感心してしまった。
「気休めかもしれないですけど、わたしがもしソルベさんとジェラートさんなら……うれしいです。」
「何故、嬉しいんだ?」
「え、だって………何年経っても皆さんが覚えていてくれること、大事な仲間だったって思ってもらえてること、全部、嬉しいじゃないですか。」
「!!」
「それに、あの子たちも古い名前より気に入ってくれてましたし。」
「だが、真実を知ったら傷付くんじゃあないだろうか…。」
「自分たちにその相手を重ねていたんじゃないかって…?」
「ああ、そうだ。」
「そうじゃないって思ってもらえるために、これから仲良くなるんですよ……わたしたち。」
「・・・・。」
「わたしがいますよ、リゾット。ソルベさんとジェラートさんを知らない、ソルベとジェラートしか知らないわたしが、傍にいます。それではダメでしょうか…。」
「いや、いい………それで十分だ……。」
夕焼けで明るかった教会の内部が少し暗がり始めた頃、youの言葉に頷き、リゾットは席を立つ。
youもそれに続いて立ち上がり、身廊に出た。
「そう、そして……ちょうど、この教会で葬儀を行って、あいつ等と一緒に見送った。」
「えっ、ココでですか?!」
「ああ。」
「そんな……大事な場所に………すいません、わたし……何も知らなくて、リゾット、ここに来るの辛かったんじゃないですか…?」
「いや……寧ろキミと一緒に来れてよかった……話しを聞いてくれてよかったと思う。」
「そう、なんですか…?」
「この寄り道で、オレの心がどれだけ救われたか……本当に。感謝するよ、you。」
「そんなに大層なことはできてないと思いますが……少しでもリゾットの心に寄り添えたなら、良かったです。わたしでよければいつでも話を聞きますよ。聞くだけで、何の役にも立たないかもですが……あ、でも、愚痴は誰かに聞いてもらうとスッキリしますし、そんなことならドンドン話してください!」
「そうだな、それにかこつけてyouとの時間を独り占めできるなら、それもいいかもしれないな。」
「ま……またそんなことを言う…//」
途端に顔を真っ赤にして、同じ色をしたカーペットに視線を落とすyou。
つい先程まではリゾットに食って掛かるように持論を強く述べてボロボロ泣いていたのに、今は自分の言葉に顔を赤くして恥ずかしそうに俯いている。
コロコロ変わる表情は相変わらず見ていてとても面白く、またそのように表情を変えさせる要因が自分の言葉や態度だと思えば、無意識に口角も上がろうと言うもの…。
リゾットはふっと笑みを浮かべて、彼女の手を掬い取って歩き出した。
「り、リゾット…?!」
「駐車場までだがな………今はお前と手を繋いでいたいと思った。」
「ええと…。」
「帰ろう、you……皆が待っている。」
「ん……はい、一緒に帰りましょう、リゾット。」
それはまるで恋人のようにも、家族のようにも思える感情で、2人は車までの短い距離を手を繋いで歩いた。
少し寄り道をするつもりが、事務所に到着する頃には夕焼けはしっかり沈んでしまっており、
そのドアの向こうから聞こえてくるガヤガヤと喧しく盛り上がっている気配に既に宴会がスタートしていることを悟ったリゾットとyouは、顔を見合わせて苦笑するのだった。
Sorbet & Gelato
(ソルベとジェラート)
words from:yu-a
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