Lei e un fiore. (番外編 / プロシュート)
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良い靴を履きなさい
良い靴は履き主を良い場所へ連れていってくれる
Lei e un fiore.
scarpe(靴)
「ボンジョルノ、プロシュート!」
「チャオ、バンビーナ。」
「ちょうど良かった!助けてください!」
「何だなんだ、いきなり…。」
「うん、出勤早々ごめんなさい……ここの電球が切れちゃったみたいで……交換してほしくって。」
「ハイハイ、とりえずスーツ脱いでくるから……脚立用意して待ってろ。」
「ありがとうございます!」
事務所に出勤して早々に可愛い後輩が朝の挨拶に出迎えてくれた…と思いきや、実はそうではなく、出勤早々に雑用の依頼であった。
面倒見が良く、姉御肌ならぬ兄貴肌のプロシュートがそんな彼女の頼みを無下にするはずもなく、身軽に行動するためにその上質な上着を脱いでくると即答してくれた。
それから数分と経たずにインナーのシャツを肩まで捲り上げた姿で電球の場所へ戻ってきたプロシュート。
youが用意した中型サイズの脚立に乗って、切れてしまった電球を取り外す…。
「わぁ、素敵な靴ですね!」
「だろ、これはフェラガモだ。」
「流石プロシュート、お洒落は足元からって言いますもんね。」
プロシュートが脚立に乗った際にその靴に目がいき、その美しいシューズフォルムを褒めると、
案の定、スーツだけでなく彼がチョイスした本日の足元も、例外なく一流のブランドであった。
そのことに対してまた称賛の言葉を贈れば、彼は古い電球をyouに手渡し、新品の電球に取り替えながらひとつ、言葉を零す。
「"足に合った靴を履いている足は年をとらない。足は若さと美しさを保つ"ってな。」
「え?」
「創立者サルヴァトーレ・フェラガモの言葉だ。」
「何か……色んな意味でプロシュートにピッタリの言葉ですね。」
彼のスタンド能力との繋がりを感じるような先人の格言にyouは思わず感嘆し、感慨深い表情をプロシュートへ向けると、
彼はフッと小さく笑みを零し「それは事実である」と彼女に告げる。
「不思議なことにな、実際そうなんだぜ。」
「え?」
「能力使って自分を老化させちまう時、老いて服やベルトはブカブカになっちまうけど……最高の靴は不思議と脱げたりしねぇんだ。」
「へぇぇー!!凄い!!」
「靴にまつわる話は結構多いんだぜ…かの大女優マリリン・モンローも"ふさわしい靴を与えれば、女は世界を征服することだってできる"って言ってた…なんて話もある。」
「女性は特に靴のタイプも多いですしね。」
「そうだなァ……ホレ、終わったぜ。電気点くかスイッチ入れてみろ。」
「あ、はい!」
話ながらも手を休めなかったプロシュートの作業はあっという間に完了し、
彼の指示通り電気のスイッチを入り切りしてみると、問題なく新しい電球に光が灯った。
「ありがとうございました、プロシュート!」
「プレーゴ(どういたしまして)。」
「今日は内勤ですか?」
「ああ、一日中バンビーナと一緒にいられるな。」
「また…そういうことを言う…。」
「とは言うものの……事務所に一日ってのはしんどいモンがあるよな。」
「そ、そうですか…。」
「ああ、一日中室内籠ってて平気とか…お前とリゾットの気が知れねェ…。」
「わたしはそういう職務なので……でも、リゾットも本音を言うと外に出たがってるようですよ。皆さんが外回りされてるので出ないだけで。」
「へーそうだったのか。」
そんな話をしながらリビングへ戻り、その日は事務所内でやるべき仕事を終日こなした2人…。
ただ、youの中では一日中ずっとプロシュートの話してくれた靴の話が脳内を駆け巡っていた。
というのも、イタリアにやってきてしばらく経つが、未だに靴はこちらで購入をしたことがなかったからだ。
履き慣れた靴の方が都合が良いということもあるが、できればそろそろ新調するか、一足追加をしたいと考えていた矢先、タイミングを見計らったかのような靴の話…。
そして結局、その日から数日経過した別の日、プロシュートの靴の話に感化されたyouは、ちょっと奮発して休日に高価な靴を買うことにした。
流石は「お洒落の国イタリア」と称されるほど、凝ったデザインの靴が多数、しかも数多くのお店に置いてあり、
沢山巡って、沢山悩んだ末に、一番素敵だと思った靴を購入したyou。
翌日の仕事に履いて行こうかとも思ったが、折角なので次回の休みの時までおろすのを控えておくことに決めた。
そして、休日…。
その日はとても良い天気で、新しい靴でナポリを歩いて回るには最高の日となった。
どの場所へ行っても楽しく思えて、一人で街をウロウロ。
ショーウィンドウに映る自分の姿は素敵な靴を身に付けているだけで、何故か特別な存在になれた気さえする。
公園、小道、お気に入りのバールとパニノテッカ…。
最後に、数多くあるナポリの広場の中でも、普段あまり行かないところを選んで行ってみることにしたyou。
ジェラートでも食べて帰ろとしたところに、見知った後姿が飛び込んできた。
「プロシュート!」
「?」
「やっぱり、プロシュートだった。」
「バンビーナ!どうしてここに?」
「プロシュートこそ……任務中じゃないんですか?」
「任務なら1時間前に終わった。後は報告書だけだ。」
「仕事が迅速ですね……あれ、ってことは今もしかしておサボり中ですか?」
「・・・いいかバンビーナ、良質な仕事をするには良質な休息ってモンが大事なんだ……オレの言ってること分かるか?」
「はい、明日リゾットに街でばったり会ったプロシュートがそう言っていたとお伝えしときますね。」
「おぉい、待て待て!!バンビーナ、オレのバンビーナよォ……ジェラート奢ってやるからリゾットには黙っとけ?」
「グランデ(3もしくは4種盛り)で手を打ちましょう。」
「お安い御用だ……話が分かる女は好きだぜ、流石はオレの可愛いバンビーナだ。」
言うが早いか、肩に腕を掛けてyouの髪にぎゅっと唇を寄せるプロシュート。
相変わらずスキンシップ度数が高いというか、ペッシ以上に高くなっているのでは…と感じるyouであった。
近くのジェラテリアで希望するフレーバーを数種選び、手渡されたジェラートの乗っかり具合に驚きつつも、広場でそれを堪能する。
「美味しい!」
「そりゃぁ良かった。十分な賄賂になったみたいだな。」
「プロシュートは食べなくてよかったんですか?」
「オレはさっき飯食ったからな。」
「そうですか……はい、じゃぁ、あーん。」
「あん?」
「フィオール・ディ・ラッテ(ミルク)です。」
おすそ分けにしては少し多いくらいの量をスプーンでひと掬いし、プロシュートの口元へ向けるyou。
一瞬戸惑ったものの、状況をすぐに理解してプロシュートはパクリとそれを口に含んだ。
「ん、美味い。」
「ピスタッッキオ(ピスタチオ)とフラゴーラ(イチゴ)も食べますか?」
「いや、今ので十分。グラッツェ、you。」
「はーい。」
その後何度も「美味しい」と繰り返してジェラートを完食し、30分ほど広場で他愛も無い話をした2人。
お互いそろそろ広場を離れるべきかと感じ、youの家へ向かって歩き出す。
少し離れてはいるが、事務所も同じ方向にあるので、プロシュートも一緒にだ。
「そういや、さっき聞きそびれたけど…オメー、今日休みなんだろ?何であの広場にいたんだ?」
「特に理由は無くて…靴の赴くままにと言いますか…。」
「ふーん…。」
「そう、そう!見てくださいプロシュート!わたし、靴を新調したんですよ!」
そう言ってぱぁっと明るい顔でyouはプロシュートの前に歩み出てくるりと一周回って見せた。
長いスカートがふわりと広がった後、きちんと視界に入った小綺麗な靴に、プロシュートは「ヘェ」と軽く口角を上げる。
「イタリアに来てからずっと履き慣れた靴ばかりで、そろそろ新調しようかなとは思ってたんです。」
「いいじゃあねェか……スゲー良く似合ってる。」
「ありがとうございます!あーえっと、それで、靴のことなんですけど…。」
「靴の事?」
「ええ、先日電球を変えてもらった時にプロシュートが靴の話をしてくれたでしょ?その時にすっごく欲しくなっちゃって。」
「ああ、あの時か。」
「折角なので、今回買うなら…とびきりいい靴をって思って…色々見回って…これ!って靴を選んだんですよ!」
「気に入った靴があって良かったな。」
「はいっ!それで今日初めて下したんですが……朝からいい天気でお出かけ日和だし、よく行くバールで初めて「最近よく見かけるね」ってバイトのベッラ(美人さん)に声掛けられたり、公園で可愛い犬を散歩させてる方に会って撫でさせてもらったり、充実した日になったんですよー!そして最終的にあの広場へ行きついたって感じです。なので本当に靴の赴くままに…なんです。」
「・・・。」
今日あった何でもない事を終始嬉しそうに話すyouに、プロシュートは目を細めて愛おしそうに彼女の頭を撫でる…。
それに少し驚いたように目を丸くして、どうしたのかとyouが首を傾げると、彼はとても澄んだ低音の声で言葉を綴った。
「良い靴を履きなさい。
良い靴は履き主を良い場所へ連れていってくれる。」
「え…?」
「古くからあるProverbio(ことわざ)だ。」
「すてきな言葉ですね…。」
「一日が楽しかったようで良かったな、良い靴様様だ。」
「本当!だからプロシュートと会えたんですね。」
「!」
間髪入れずに発されたyouの言葉に、今度はプロシュートが驚く番だった。
自分の眼下で嬉しそうに「そうかそうか!」と一人で頷く彼女にポカンと自然に口が開いてしまう。
「バンビーナ…オメー…。」
「はい?」
「ちょっとマジで可愛いじゃあねーか、どうしてくれるんだオイ、あぁ?!」
「ちょっと何言ってるか分かんないです!!」
「you、you、you、youよォ~~、オメーのその発想と言葉は正直かなりグッときたぜ…。」
「いや、あの、顔近い、顔近い!!//」
2人で道を歩いていたはずが、気付けばいつの間にか道の壁際に追いやられ逃げ場を腕で塞がれていた。
プロシュートの壁ドンは一般的なそれより、かなりハードルが高く、額をくっつけられた状態で話をされることが判明。
逃げ場どころか顔すら逸らせないため、恥ずかしさでyouの顔は真っ赤に染まっていく…。
「…まぁまだ、ちょいと足りねェがな。」
「な、何がでしょう…//」
「ん?バンビーナがオレのオンナになるまでに必要な点数。ちなみに今ので89点まで溜まったぜ。」
「高っ!たっか!!いよいよ90の大台じゃあないですか!!」
「もっとオレ好みの言葉を言ってみろよ、そしたら目出度くバンビーナ改めアモーレに昇格だ。」
「待ってください、わたしの意思の尊重ッツ!」
「んなモン待つかよ。」
「ジャイアン、ダメ、ゼッタイ!」
「何だジャイアンって!」
「ご、ご自分で調べてください!」
真っ赤な顔で放たれた謎の言葉「ジャイアン」。
プロシュートがそれに関心を持ったためか、少しだけ片側だけ腕が壁から離され、
そこにできた隙間から隙を見て逃げ出したyou。
「あっ!テメ…バンビーナ!!」
「ジェラートご馳走様でしたっ!また明日ッツ!!!」
「逃げるなコラ―――!!………ったく…。何なんだジャイアンって。」
このまま彼女を追い詰めてもっと可愛い表情を引き出そうと思っていたのに、と口を尖らせるプロシュート。
何にせよその相手がいなくなってしまったのであれば、こんな道端に突っ立っている意味もないと、諦めて事務所へ帰還することにした。
翌日…。
出勤して早々「ジャイアン」が何たるかをネットで調べたであろうプロシュートが大声を張り上げてyouの元へとやってきた。
「テメー、you、コノヤロー!!オレがジャイアンだと!?オレはあんなに歌は下手じゃあねェぞゴルァ!!」
「気にするトコそこなのぉ?!!」
横暴で我儘で超絶俺様のガキ大将…そんな情報を真に受けるであろうと踏んでいたのだが、
プロシュートの少しズレた感想にツッコミを禁じ得ないyouであった。
scarpe
貴方の元へ
連れって行ってくれる靴
words from:yu-a
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