■Fiori e Vino. (リゾット)
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「遅くなってすみませんでした…!」
携帯のメッセージでも届いた台詞を、もう一度目の前で話された。
Fiori e Vino.
溢れた好きで抑えもきかない
同僚のフーゴに朝から任された領収書の束を処理するのに、ほぼほぼ一日を費やしたyou。
勿論他の仕事もこなしながらなので、定時を少し過ぎての帰宅となってしまった。
遅くなってしまった事を一度メッセージでリゾットへ送り、早く切り上げたかったのに!とボヤきながら駆け足で家に戻ると、バタバタ着替えて化粧を直し、隣玄関のインターホンを鳴らし、出てきたリゾットに冒頭の台詞を告げた。
「仕事大変だったんだな、お疲れ様、you。」
「っ……ありがとうございます、リゾット……!リゾットもお仕事お疲れ様です。」
「ん、ありがとう。」
「えっと、それで……今日はどこに食べに行きましょうか?」
「それなんだが……どこか行きたい店や、食べたいものがあるか聞こうと思っていたんだ。」
「んー特にこれと言ったリクエストはないですよ。」
「そうか……それならその、提案なんだが…。」
「?」
少しだけ言い辛そうな様子で、リゾットが出した提案は「外食」というものではなかった。
「今日はオレが…家でyouに料理を振舞おうと思うんだが……どう、だろうか?」
「え?」
「いや、何の面白味も無い家だし、youが嫌なら遠慮なく断ってくれて構わない!その場合は近くのバールやエノテカにでも行こうと思っているし。」
「リゾットの手料理?」
「う、あ、ああ…。」
「えっ、何それ凄く楽しみ!えっ、いいんですか?いいんですかそんな嬉しい提案!!手料理ご馳走になってしまって!」
「いい、のか…?」
「もちろんです!」
そうと決まれば早速お邪魔したいです!と目を輝かせるyou。
付き合う事になったとはいえ、まだたった1日しか経過していないのだから、お互いの家に上がったりすることは「まだ早い」と拒まれるかと思っていたリゾットは、彼女の反応に心の底から安堵する。
そういうことなら、早速家へどうぞ…と、リゾットは彼女を昨晩のように玄関先へ迎え入れた。
日本とは異なり、勿論イタリアの家屋では玄関先で靴を脱がなくてもいいため、その場で何もモタつく要素は無いのだが、玄関の扉がパタンと閉まった後も2人は玄関先で立ち止まる…。
というのも、それはyouがリゾットに抱きしめられているからなのだが…。
「あ、り、リゾット…?」
「すまない……昨日、夜に別れた後からすぐにこうしてキミを抱きしめたくて……ダメだな、本当に……。」
「一緒ですよ……わたしも今日一日、ずーっとリゾットに会いたいって考えてましたから。」
「そうか……だとしたらとても嬉しい。」
「ふふ…。」
リゾットの広い胸に顔を預けて、you自身も広げた腕を彼の背に回して抱きしめ返す。
微かに聞こえる鼓動の音に安堵を覚えて幸せに浸るyouとは反対に、リゾットはその腕の中に閉じ込めた彼女と自分の体格差や、ふわりと漂う石鹸のような香りに鼻孔を擽られ、じわじわと己が欲望が湧き上がる。
できることなら、今すぐ玄関のドアに彼女の身体を押し付けてキスで口内を掻き荒らした後、性急に寝室に連れ込んでしまいたい…。
そんな情欲をグッと我慢し、そっと身体を離して微笑みの仮面を被った。
「いきなり悪かった……さぁ、中に入ってくれ。」
「はい、おじゃまします!」
綺麗な笑顔をリゾットに向け、彼に促されるようにリビングへと向かった。
昨日来た時と変わらず、とてもシンプルな部屋…。
確かに物が無いため、その部屋の内装に戸惑いは生まれるものの、どちらかと言えば恋人の家にお邪魔しているのだというドキドキの方が大きかった。
「それじゃぁ、早速今から取り掛かる。あまり凝ったものはできないが…。」
「あっ、はい!お手伝いします!」
「いや、youは客人だ。TVでも見て寛いでいてくれ。」
「そういうワケにはいきませんよ、何かお手伝いさせてください!……あまりお役に立てないかもですが…。」
「そう、か……それじゃぁ、お言葉に甘えてしまおうかな……。」
「はいっ!何なりと!」
「ああ、そうだ……ちょっと待っててくれ…。」
「?」
リゾットはそう言ってその場を離れ、別の部屋から何かを手にもって戻ってくるとそれをyouに手渡した。
広げてみるとそれは大きめのエプロン…。
今から料理をするので汚れないようにとリゾットが気遣ってくれたようだったのだが…。
「めちゃくちゃでかい…。」
「はは、本当だな……まぁ、絶対に汚れないということで我慢してくれ。」
「リゾットはお料理する時エプロンを付けるんですね。」
「いや、少し凝ったものを作りたいとか、何時間かキッチンに立つ時には付けるが、簡単な料理の時はしないな……。」
「今日は?」
「しないつもりだ。」
「えー…。」
「不満なのか??」
「不満と言いますか……エプロン姿…見たいなと思いまして…。」
「・・・取ってくる。」
「わーーい!」
好きな相手の望みとあれば、できうる限り叶えてやりたいというのが男の性(さが)というもの…。
しかも、何のリスクも無い願いの一つや二つなら逆に叶えさせてくれというくらいの勢いで頷くのも至極当然。
リゾットはすぐにキッチンを離れ、彼女の望むようにエプロンを付けてその場に戻ってくるのだった。
「わぁー、お料理男子!似合ってます、素敵です!」
「ただのエプロンなんだが…。」
「日本人だけなのかなぁ、男女ともにエプロン姿にもえもえするのって…。」
「日本人は変わってるんだな。」
「そうですねぇ、ちょっと特殊かも。でも男性のソムリエエプロンとかカッコ良くないですか?」
「その辺のバールの店員が着ている?」
「はい!日本ではおしゃれなお店に行かないと、なかなかそんな店員さんいないので、こっちに来ていつも「目の保養だな~」って思ってました。」
「そうなのか……では今度の休みにオレも買ってこないとな。」
「何を?」
「ソムリエエプロン。」
「ええええ?!な、なぜ?!」
「その辺のバールの店員に負けてたまるか……という意味合いで取ってくれ。」
「そ、そんなそんな!だって、普通のダブリエエプロンで既にカッコいいのに……リゾットがそんなの着たら!!///」
別に裸体を想像しているワケでもなんでもなく、ただ恋人のエプロン姿を想像するだけで顔を真っ赤にして「きっとカッコ良すぎて困ります!」と両頬に手を添える姿の何と可愛いことか…。
その一連の動作だけで七面倒な任務さえこなす活力になる…と考えるリゾットであった。
「だがまぁ、言われてみるとエプロン姿というのもなかなかいいものなのかもしれないな。」
「そうでしょう、そうでしょう!」
「オレのエプロンでは大きすぎて可愛さに欠けるが……女性らしい可愛いエプロン姿なら是非見てみたいと思うオレがいる。」
「うーん……リゾットの言う可愛いエプロンがどんなのか分からないです……ので、今度一緒にエプロン買いに行きませんか?わたしのエプロン、折角なので選んでください!」
「ああ、わかった……楽しみにしておく。」
純粋にリゾットの好みを知ろうと、買い物に誘うyou。
そんな彼女の申し出をありがたく承諾するリゾットはというと、購入するエプロンは「それ1枚で着てもらった時に理性が吹き飛ぶくらい似合うものがいいな」などと邪な考えでいっぱいなのだが、そこはそう……彼女に察知されることない綺麗な笑みを向けて「いつ、買いに行く?」と約束を取り付けるのであった…。
「じゃぁ、エプロンは次の休みに一緒に買いにいくとして……リゾット今日は何の料理を作るんですか?」
「アーモンドペストのパスタを作ろうかと。」
「パスタにアーモンド?!凄い~!どんな味になるんでしょう!!」
「食べたことが無いのか?」
「はい!日本ではあまり見かけません!」
「そうなのか……じゃあ、出来上がりを楽しみにしていてくれ。」
「はいっ!」
「では、パスタを茹でるから、youはこれを使ってアーモンドを砕いてくれるか?」
「はーい!」
リゾットに渡された生アーモンドをすり鉢で砕くことになったyou。
どのくらい砕くのか、とかそんなことを話ながら、大きな手で小さな食材を包丁で器用にカットしたりと、キッチンでテキパキ料理をするリゾットについつい見惚れてしまう。
「you、もう終わったのか?」
「・・・。」
「you…?」
「えっ?!あっ、はい!?」
「いや、もうアーモンドは砕き終わったのかと思って…。」
「あっ、ええと!はい!すみません!ちょっとリゾットに見惚れてしまってて!!どうでしょう、こんな感じですか?!」
「あ、ああ……多少食感が残る程度がちょうどいい……っていうか、今サラリと凄いこと言わなかったか?!///」
「だだだだって……お料理してるリゾット……素敵なんです……もん……///」
「っ…///」
どんどん尻すぼみになって消えていく彼女の声と、相反して隠せなくなっている頬の赤らみのコントラストが最高に可愛い…。
そう思った時には既に、包丁はしっかりカッティングボードの上に置いて、火元から離れたところに彼女を連れ出し、その身体をぎゅうっと抱きしめていた。
「り、リゾット?!//」
「可愛い……可愛い、you……好きだ、本当に。」
「はわわわ……あ、ありがとうございます……?わたしも、リゾットが好きです、とても……うん。」
「ゴリラでも好きか?」
「ゴリラ並みの包容力ということですよね?好きですよ。」
「ギャングでもか?」
「わたしも同じ立場ですから、もう気にしません…好きです。」
「お前のことが好き過ぎて、ストーカー並みに常に傍にいたいと思っていてもか?」
「うーん、お仕事に支障が無いくらいなら、いいんじゃないかな……わたしもそうしたいくらい、好き。」
「本当にか?!」
「えっ、う、うん……はい。」
「そうか……youも遠慮なくオレのストーカーになっていいからな!」
「えぇ?ええと……はい、リゾットが浮気してそうだったら、そうしますね(…ていうかyou「も」?)」
「浮気などするものか……もうオレはお前しか見えない。」
「ん……良かった。」
「you……キスをしてもいいか…?」
「ん‥‥してくれますか?//」
しますします、寧ろさせてくださいと、リゾットは心の底から大声で叫んでいるのだが、まず自分のキャラクターとかけ離れていることと、言おうと思ったところで、どうあっても今までの自分ではそれを素直に言葉にはできないようで、小さく「ああ」という言葉を返し、彼女の頬に手を添えて唇を落とした…。
今日の日に会ってから終始可愛い言動や仕草がたまらなくて、歯止めが利かなかった点は勿論のこと、自分の恋人になったという確認も兼ねてリゾットが濃厚なキスをかませば、そういったスキンシップに慣れていないのか、すぐさま腰が砕けてしまったyou。
ガクリと急に足に力が入らなくなって唇が離れそうになったのだが、絶対に離さないとばかりに彼女の
全身をリゾットが余裕でもって支え、何度も何度も角度を変えて深く舌を入れて愛を注ぐ。
最終的に、歯止めの利かなくなったリゾットがyouのシャツの中に手を伸ばそうとしたところで、火に掛けていた鍋が吹き零れてキスは中断…。
ちょっと茹ですぎて柔らかくなり過ぎたアーモンドのパスタが本日の食卓に並んでしまうのであった…。
溢れた好きで抑えもきかない
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