■Fiori e Vino. (リゾット)
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「本当にすみませんでした&ありがとうございました…。」
「アンド…。」
それが映画終了後、シアターを出て最初の会話であった。
Fiori e Vino.
惹かれ合う方法など知らず
つい先ほど、イタリアでの戦慄の映画館デビューを果たしたyou。
内容は面白かったものの、絵面的に目を伏せたくなるシーンが多くあったため、上映中後半はずっとリゾットの腕を借りてしがみ付いていた…。
それゆえ、腕にしがみ付いていたことへの「ごめんなさい」と、腕を借りたことに関しての「ありがとう」をリゾットに伝えたのだが…。
彼はそれを聞いて何を思ったのか、ふわりと笑みを浮かべながら、youの頭をポンポンと撫でた。
その行為に少し驚き、彼女は何事かと上を見上げる。
「え、と…?」
「いや、よく耐えたなと思ってな……偉いぞ、you。」
「はわーーー!!//」
「ん?」
「い、いえ……な、何も!//」
「あと、すまなかった……オレは本当に楽しかったんだが……確かに絵的に酷いシーンが多かったと思って……知らなかったとはいえ、酷だったなと…。」
「うーん……でも、リゾットが楽しかったなら……わたしはそれが良かったと思います。」
我慢して見た映画が面白くなくて、ただ単に無駄に恐怖しただけ……ということにならずに済んで良かったと、苦笑する。
それは確かに…と、リゾットも納得してしまった。
「グラッツェ、you。お陰でとても楽しかった。」
「いいえ、こちらこそ……映画なんて久しぶりだったので、それだけでも来てよかったです!」
「何より、オレ個人としては、キミの怖がる姿がどうにも……。」
「うっ……滑稽で情けなくてスミマセンねぇ…。」
「とんでもない。怖がる姿が可愛かったから、それだけでも映画館に来て良かった。」
「うわぁぁ……恥ずかしいぃ……もう絶対映画館でホラー映画観ない……家でしか見ない…。」
「はは、その時は是非お邪魔させてくれ。」
「絶対イヤですっ!」
「手土産に美味しいパニーニとドルチェを差し入れるって言ったら?」
「・・・。」
「・・・。」
「ようこそわが家へ。」
「チョロいな……じゃあなくて、グラッツェ。」
「ちょっとー!!」
そんな遣り取りが楽しくて、お互いに顔を見合わせてクスクスと笑い合う。
「さて…そろそろ良い時間だし、食事に行こうか。何が食べたい?」
「ええと……そうですね……うーん……基本的にイタリアは何でも美味しいからなぁ…。」
「では、とりあえず家に近いトラットリアかオステリアに入ろうか。」
「そうですね!」
特定の食べたいものもなければ、とりあえず色んなものがあるところに…というアイディアは全世界共通のようで、ピザやパスタ、海鮮料理の専門店などでなければ、一般的なレストランや居酒屋でいいだろうとリゾットが提案を出した。
それであっても流石はイタリア…。
勿論、地元民ということで美味しい店を知っていてリゾットが選んだ…というところもあるのだが、「とりあえず」で入った食堂にしては十分過ぎるほど美味しい料理が提供される。
「こちらのお店も美味しいですねぇ……。」
「そうだな。」
「そういえばこの間、職場の方が行きつけのタベルナに連れて行ってくれたんですけど、そちらもとっても美味しくて、内装もお洒落で素敵だったんですよー。」
「……そうか。」
ニコニコと嬉しそうな表情でそう話すyouだったが、それが先日のアバッキオとの会合だったと知っているリゾット…。
内心モヤモヤと嫉妬心が湧き上がってきたものの、何とか自制を試みる…。
結局、当たり障りない返事をして、ゆるやかな笑みを返すだけに留めた。
苛々はしないものの、盛大に溜息を吐いて不機嫌を表現したい気持ちだったが、
その心持ちはyouによって一瞬で払拭されることとなる…。
「もしかしたらリゾットも知ってるお店かもしれませんが、今度一緒に行きましょうね!」
「ああ………え?」
まさかの誘いに、一瞬何を言われたのか理解できずに目を点にするリゾット。
何度かぱちぱちと瞬きをすると、リゾットは不思議そうに聞き返しを行う。
「オレと…?」
「はい、是非一緒に!」
「一緒に…。」
「素敵なお店だったので、是非リゾットと一緒に行きたいなと思ったんです!」
「い…いいのか?」
「はいっ、リゾットが良ければわたしと一緒に行ってくれませんか?」
「も……勿論だ……よろしく頼む。」
もしかして、アバッキオとそのタベルナで食事をしている時も、オレを連れてきたいと思ってくれていたのだろうか……だとしたらもう、言葉にできないくらい嬉しい……と、心の中で感涙するリゾット。
それなのに自分ときたら、1度だけ夕飯の誘いを断られただけで相手(先日はアバッキオ)を刺し殺すくらいの勢いで恨んでいたなんて……なんと器の小さな男であったのかと、盛大に己を省みた。
やはり、プロシュートの言うように、少しはいつもの自分らしく余裕で構えていようと思うリゾットであった…。
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そして夕食後、ゆっくりと歩きながら家路に着く2人。
時刻は夜の10時頃といったところなのだが、背の高いアパート群には沢山の明かりが灯っており、そのにぎやかさに反して、外の人通りは殆ど無い。
ナポリはイタリアの中でもかなり治安の悪い地域と称されているが、ギャングの根城もあるため、実際そうだとリゾット自身、そう思う。
それ故、本来であれば、このような時間帯に外を出歩くことは、彼女の身の安全のためにも避けるべきだと分かってはいるのだが、如何せん一緒に過ごす時間が嬉しくて、毎回ついつい遅い時間の帰還になりがちになっている。
まぁ、例え銃やナイフを持った不良やギャングが現れても、彼の実力からすれば返り討ちにすることくらい造作もないのだが…。
「すっかり遅くなってしまったな……毎度外歩きが危ない時間帯まで付き合わせてしまって、すまない。」
「確かに、一人なら絶対に外歩きできないです。」
「まぁ、襲って来られても勝てる自信はあるし、キミのことも守る自信もあるがな。」
「ふふ…それは……頼もしいです。」
「本当に思ってるか?」
「思ってますよ、リゾット筋肉凄いもん。」
「筋肉だけか…。」
「背も高い!」
「それだけか?」
「えぇー……。」
他愛も無い会話を続け、2人は住んでいるアパートに辿り着く。
防犯のため、多種取り付けてある鍵を解除しつつ、エントランスを抜けて、2人は階段を上がる。
「手も大きいです!」
「成程、他には?」
「えぇ?!欲しがりますね…。」
「youからの賛辞は耳障りが良い。」
「目も綺麗ですよ……って、これ強いの関係ないか…。」
「グラッツェ、嬉しいよ。」
「あと…髪の色もすごくきれい…。」
「寝しなに全部youの声で思い出すよ……今日はよく眠れそうだ。」
くしゃくしゃっと彼女の髪を掻き撫でて、嬉しそうに笑うリゾット。
今まで、数多くの女性に同じような誉め言葉を面と向かって言われたことがあるが、どれも心動かされることはなかった。
それなのに、どうだ……今の彼は惚れた女にちょっと褒められただけで、同じチームメンバーが絶句するくらいの、締まりのない笑みで幸せそうに「今日はよく眠れる」と言葉を漏らす。
「リゾットだけずるい…。」
「ん?」
「リゾットはよく眠れるかもしれませんけど、わたしは今日きっと眠れないです。」
「どうして…?」
「だって………ホラー映画観た。」
「・・・。」
そう呟いて、口を拗ねたように尖らせて、俯くyou。
一瞬、目を丸くして過去を振り返り、終始自分の腕にしがみ付いて怖がっていた可愛い姿を思い出す。
ぼんやりと「あれは可愛かった」と今一度感想を脳内で述べたところで、youが吹っ切れたように喋り出した。
「でもいいもん、明日も休みですし!たとえ今日眠れなくても明日も惰眠を貪れます!!」
「ああ、明日は祝日だったな。」
「ええ、なので、場合によってはお昼過ぎまで眠ってるかもですよね。」
「成程な……だが、眠れないのも辛いだろう。布団の中で目を閉じていれば自然に寝ているよ、きっと。」
「うう……そうだといいんですけど…。」
「どうしても怖いことがあれば、オレを呼べばいい。」
「ふ…?」
「電話でもいいし、ドアでも、ベランダの窓でも。何なら壁を叩いてもいい。隣にいるんだから、すぐに駆け付ける。」
「リゾット………グラッツェ……。」
客観的に考えるとそれはもう恋人同士のやり取りに他ならないのだが、当の本人たちは至って純粋に友人関係として言葉を放ち、享受している。
ただ、優しく甘い言葉であることには変わりないため、youはほんのり頬を赤らめて、嬉しそうにリゾットを見上げるのだった。
それからお互いに「おやすみなさい」と言葉を交わして、各々の家に入って解散となった。
惹かれ合う方法など知らず
words from:yu-a
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