■Fiori e Vino. (リゾット)
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はい、これ頼まれてたヤツ。」
「ああ、グラッツェ。」
約束通り、依頼して2、3日後にメローネから睡眠導入剤を受け取ったリゾット…。
Fiori e Vino.
其を教会とカタコンべに譬ふ
リビングで行われたその遣り取りと会話を、同じ空間で聞いていた者がいた。
金細工のような髪に同じ色の長い睫毛、深い海を思わせる青色の瞳を携えた美しい顔(かんばせ)、一見女性と見紛う程美形の、その男性の名はプロシュート。
彼はメローネから渡された小さな紙袋にチラリと目を遣って、すぐに手元に広げていた新聞に目を落とす…。
2人はそのまま少し続けて何かを話した後、恐らくは事務処理を行うため別の部屋に向かうのだろう、リゾットだけがリビングを出て行った。
残されたメローネは鼻歌を歌いながらプロシュートの向かい側のソファに着席し、テーブルに置かれた雑誌に手を伸ばす…。
「おい、メローネ。」
「ん、何?」
「さっき、リゾットに何渡してたんだ?」
「ああ、あれ?気になるの?」
「別にそれほど気にはしてねー……が、しかし、あのリゾットがお前に何を頼んだのかは興味ある。」
「それ気になるってことじゃん…。」
「おう、オレの揚げ足取りとは、勇気あるじゃあねぇかメローネ。」
「わーーー!ちょっと、そんな事でスタンド出さないでよ!!!短気、ダメ、絶対!!」
うっすらとリビングに靄が掛かり、プロシュートの背後に摩訶不思議な井出達の生物の姿が現れる。
それは彼の特殊な能力で、一同が「スタンド」と称しているものであった。
パッショーネの中には多数そのような能力を操るスタンド使いが所属しており、
このプロシュートのみならず、リゾットが率いるチームメンバーやyouの同僚のブチャラティ達…、パッショーネの関係者達はそのほとんどが能力者である。
プロシュートの能力は範囲内の相手を老化させるというもので、些細な失言で枯れ果ててはたまらない!と、メローネは全力で首と両手を左右に振って拒否を示した。
「ただの睡眠導入剤だよ!!病院で処方される、至って合法な!!全くもって面白味のない、ただの医薬品!!」
「睡眠導入剤ぃい?」
怪訝そうに眉根を寄せるプロシュートに、メローネはコクコクと頷く。
「何でそんなもん、オメーに頼むんだよ。」
「市販薬じゃあ効かないんじゃない?最近割と早めに帰ったり、家に帰ってるだろリゾット。休みもちゃんと取るようになってるし…。」
「それがどうしたってんだ。」
「あれ、リゾットなりに休もうと努力してるかららしいよ。」
「・・・。」
「でも、悲しいかな今までの過重労働に身体が慣れ過ぎてて、休もうにも休めないんだって。だから、睡眠導入剤。」
「・・・。」
「オレも最初は何頼まれるんだろうってワクワクしたんだけどねー…。」
「睡眠導入剤、ね…。」
「やっぱリーダーはリーダーだった……って感じ。」
あからさまに「つまらない」という顔をして、メローネは徐に雑誌を広げた。
プロシュートもそれ以上メローネに何を言うでもなく、新聞に再び目を落とし、時間は経過していった…。
・
・
・
・
夕刻、その日の出勤者が次々と事務所を後にし、最終的に残っているのはリゾットとプロシュートの2人となった。
一日の完了報告書をデータでリゾットに送り、プロシュートは使用していたパソコンの電源を落とす…。
「日報、送っといたぞ。」
「ああ、確認しておく。」
「じゃぁ、お先。」
「ああ、ご苦労だったな。」
「そっちこそ、お疲れさん。」
椅子に掛けていた質の良いスーツに袖を通し、デスクを離れるプロシュート。
普段であればそのまま部屋を出ていくのだが、今日は部屋のドアに向かう途中、彼はリゾットのデスクの前で立ち止まった。
蛍光灯の明かりに影が差し、どうしたのか、と……パソコンの画面を見ていたリゾットが顔を上げる。
「……どうした、何かあるのか?」
「リゾットよォ……念のために尋ねるが……メローネに頼んだ睡眠薬はオメーが使うんだよなぁ?」
「・・・どういう意味だ?」
「確かにお前は馬鹿真面目な過重労働者だと思うぜ、チームの誰が見たってな。」
「(そう思うならもう少し………言っても無駄だな。)」
「何だその顔ツラは。」
「何でもない…。」
もう少し協力的に仕事をしてほしいし、大雑把な方法で仕事をするのは止めてほしいと言いそうになったが、再三言って今に至っているため、全ては無駄なことなのだと遠い目になるリゾットであった…。
そんな彼の表情が気に食わなかったようで、チッと舌打ちをするプロシュートだったが、彼もまたリゾットの言いたいことは分かっており、お小言は聞きたくない…と、スルーを決める。
「だからこそ……オメーがそんなヤワな理由でヘバるとは思えねェ。」
「・・・。」
「実際そうだろ……だってよぉ……確実にボスが今のに交代する前の方がしんどかった。」
「・・・。」
「まぁ、仕事の内容や方法がガラっと変わって、肉体的より精神的にしんどくはなったかもだが…。」
「・・・。」
「それでも、オメー程の男が薬に頼らねーと体調が改善に向かわねぇってのはオカシイんじゃねぇかと思ってな。そもそも何錠飲んでも効かねーんじゃねぇのかってハナシだよ。」
「プロシュート……お前、オレを熊か何かと思ってるだろ…。」」
「熊つーか……マウンテンゴリラ…?」
「熊でもゴリラでもない、れっきとした人間だ…。」
「マジか……知らんかった。」
「驚くな!流石に傷付く!!!」
勿論冗談ではあるが、思った以上に演技派だったプロシュート…。
真剣な眼差しでリゾットに「ゴリラだと思ってました」と訴えれば、リゾットは珍しく声を荒げた。
「あー…まぁ、冗談はさておき。」
「(冗談か、よかった。)」
「そういえば、ちょっと前によぉ……お前、オレ達に「堅気のお隣さん」のハナシ、したよなぁ?」
「!」
「手紙を貰ったって話の後は特に何も聞いてねぇが……その後、どうなった?」
「……何故急にそんなことを聞く?」
「いや、ちょっと気になっただけだが……。」
「何も無い。手紙の礼はちゃんと言って、その後、一度食事をした。」
「そうだったのか、ソイツは知らなかった……一緒に食事するってことは、余程いい女なのか?」
「お前のイイ女の基準は知らんが……平凡な、至って普通の女だ。」
「だろうな、何てったって一般人だ。」
「・・・ああ、そうだな。」
「オレ達とは真逆の存在だ。」
「・・・。」
「平凡で至って普通の人間は、オレ達みたいなのからすりゃ、男は聖者、女は聖女みてーなモンだよなぁ、そう思わねぇか、リゾット?」
「…そうかもしれんな。」
「そいつらの居場所は何処だって言われりゃ、それはステンドグラスが輝く美しい教会なんだろうさ。」
「……プロシュート、一体何が言いたいんだ。」
「じゃぁ、オレ達の居場所は何処だ?」
「・・・。」
すぐに返答ができないリゾットを見下ろし、プロシュートは絶対零度の瞳で床を指差した。
「カタコンベ(地下墓地)だよ。」
「・・・。」
「美しい教会の地下の地下、暗くて冷たい枯れた死体と黴の臭いが充満するカタコンベに、オレ達はいるんだ。まぁ、這い上がろうと全力で努力はするだろうさ…。」
「・・・。」
「ここから先は、違ってたら聞き流してくれや。」
「・・・。」
「引きずり込んでいいかどうか、ちゃんと悩め。這出た時、拒否されることを前提に考えろ。それができねぇなら手は出すな。」
「……プロシュート…。」
「オレの愛は浅く広く軽やかだが、どうにもお前のソレは重そうだ。」
「・・・。」
女性の扱いに慣れていることも勿論だが、リゾットの性質や今までの経緯への小さな違和感を拾い上げ、見事な推測をこなしてみせたプロシュート。
仲間内でリゾットの右腕とも左腕とも謳われる存在の、正に本領発揮であった。
「隣人の女」の話を持ち掛けてからというもの、リゾットの底知れぬ牽制と警戒心は凄まじいものだったが、プロシュートは熱暴走しているチームリーダーに淡々と言葉の冷水をぶっ掛けて「リゾット・ネエロ」の意識を軌道修正させた。
その上、全てを察した上で静観してやるというのだ…。
恋焦がれる気持ちは消えないものの、リゾットは久方ぶりに自分の心の中からyouへの執着心の炎が鎮火されるのを感じた。
「普段何にも執着しねェヤツってのは、これだから怖ェんだ……おお、違ってたんなら謝る、スマン。」
「はぁ…。」
「だから、メローネにもらった薬を何の為に、誰に使おうが、何も文句はねェ……オレはお前が「賢く使う」と分かってるからな。」
「・・・。」
「じゃぁ、そういうことで……アリーベデルチ。」
ヒラヒラと、無気力そうに手を振って部屋を出ていくプロシュート。
彼の背に向かってリゾットが小さく「グラッツェ」と呟けば、彼はそのまま振り向かず「ボーナスの査定に期待」とだけ大声で言い放ち、退勤していった。
其を教会とカタコンべに譬ふ
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*