your palm, my cheek (DIO)
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それはまだ
序章に過ぎなかったのだけれど
your palm, my cheek
僕らは進化をやめたのか、
youが死の淵から目覚めて、約一週間が経過した頃…。
「あ、ヴァニラさんだ……あんな暗いトコで何して……ッツ!!?」
DIOの部屋へ向かっていたyouが廊下の先で見たもの…。
それは確かに彼女のよく知るヴァニラ・アイスその人であったのだが、
声を掛けようと歩を進めた矢先、突然に彼…ヴァニラの傍に何か得体の知れない何かの姿が浮かび上がった。
ぞわり、と…その物体の姿を目にした瞬間、youの全身が総毛立つ…。
「・・・!!」
「・・・you…。」
「あ…え…っ……ばに…ヴァニラさん、そ…それ…!!」
「それ?」
youが指差すものが分からず、ヴァニラは「?」と小首を傾げる。
しかしながら、彼女の恐怖と驚嘆の顔付きと、差し示す方向にある「それ」を自分で振り返り、
彼女に起こっている現象に気付いたヴァニラもまた、同じくらい大きく目を見開いた。
「見えて…いるのか。」
「み…っ…!!」
上手く言葉を紡げないyouをスルーし、ヴァニラは廊下の先にある館の主の部屋へと向かった。
「DIO様、よろしいでしょうか。」
「構わん、入れ。」
部屋の中から聞こえた主の了承の言葉を聞き、「失礼します」と丁寧に入室する。
大体部屋の中にいる時はベッドの上で寛いでいる事が多いDIOだったが、
今日は、窓際のソファでワインを片手に月見をしているようだった。
グラスをサイドテーブルに置き、突然の部下の訪問に「どうした?」と尋ねるDIO。
「それが…DIO様、youが…。」
「…youが、どうかしたのか?」
「先程、廊下で…。」
その先を告げる前にヴァニラの後を追って到着したyouが其処へやってきた。
「っ……DIOさんッツ!!」
「…you……??」
バタバタと駆け寄ってきたかと思えば、ヴァニラを横切ってDIOの胸へとダイブしたyou。
勿論、何の問題もなくDIOはその身体を受け止めたのだが、
受け止めた後ですぐに彼女が小刻みに震えていることに気付いた。
「・・・何かあったのか?」
「あれが…「そう」なんですか…?」
「あれ?アレとは何だ…?」
「ヴァニラさんの……隣に、いた!!」
「ヴァニラの隣?」
「まるで髑髏みたいな……っ……あれは、あれが…!!」
「you、お前……見えたのか…ヴァニラの……。」
『スタンドが』と、確かにDIOは言った。
ああ、やはりそうなのかと…youはゴクリと生唾を飲み込む。
見えるということは、自分もスタンドに目覚めたということだと、以前から教わっていた情報を思い出す。
ただ、こんなにも恐ろしい…まるで怪物のような物体がヴァニラやDIO…引いては自分自身の傍に常にいるのかと…。
まるで悪霊に憑かれたようだと、考えを纏めた瞬間に泣き出したいほどの恐怖に駆られた。
「どうしよう、怖い……わ、わたしの傍に……いるんですよね?」
「・・・見えるならいるのだろうが……姿はまだ見えないようだ…。」
「あんなに怖い……それが、ずっと…?」
「・・・怖い…だと?」
「怖いです!」
「ヴァニラ!!まさかお前…クリームをyouにけしかけたのか?!!」
DIOの怒気を含んだ言葉にギョっと目を広げるヴァニラ。
ブンブンと首を振って「そのようなことは!」と訴える。
「クリームで「処理」した直後です。youに見られたのは。」
「そうなのか…?」
「はい!」
「・・・では、怖い…というのは…。」
「恐らく…私のスタンド…の見た目……ではないかと。」
「・・・そういうことか。」
それなら頷ける…と、DIOはフム…と、自分にしがみ付く小動物を見下ろした。
「you、お前が見たのは確かにヴァニラのスタンドだ。」
「・・・や、やっぱり…。」
「しかし、その姿形は千差万別で、スタンド使いによって変わる…。」
「・・・え…。」
「顔を上げろ、you……わたしのスタンドを見せてやる。」
「・・・怖い?」
「…感受性は人によって変わる。故にお前にとって恐怖の対象かどうか、わたしには分からん。」
「うぅ…。」
「しかし……まぁ、わたしの『ザ・ワールド』は…能力に反して、そう恐ろしい見た目ではない…とは思う。」
「う……ぁう。」
未だDIOにしがみ付いたまま、そっとそーーーっと顔を上げるyou。
視界を少しずつ上へずらしていき、DIOの背後に黄色い影を見た。
たくましい体つきに無機質な表情。
言葉で説明できないような形のヘルメットをすっぽり被ったようなDIOのスタンドは『ザ・ワールド』というようだ。
その後、タロットの『世界』を根源とする存在なのだと教えられた。
「怖いか?」
「いえ…怖くは……何だか不思議な…ロボットみたいですね。ターミネーター的な。」
「そう見えないことも無いな、確かに。」
「中に誰か入ってそう。」
「誰も入っていない。」
「分かってますよ…。」
「まぁ、恐怖心が拭えたのならいい。」
「はい……まだ、ちょっと怖いですけど…。」
ヴァニラをチラリと見遣り、フーと大きく息を吐く。
すぐに視線をDIOに戻してyouは質問を投げ掛けた。
「わたしのスタンド…スタンドさんは、見えないようですが…いないんでしょうか。」
「どうだろうな。エンヤ婆はスタンドの矢で必ずスタンド使いとして覚醒すると言っていたが。」
「・・・・。」
「まぁ、そう急ぐ必要も無いだろう……そのままでも構わん。」
「はぁ……DIOさん…?」
以前、ンドゥールやホルホースらに聞いた話では、DIOは有能なスタンド使いを沢山探しており、
その関係で彼等もDIOの仲間となったのだということだった。
しかし、今のDIOの反応は全くもってその気配がない様子…。
ひょっとして自分はスタンド使いに向いていない…というかやはり目覚めておらず、
スタンド使いとしてのDIOの眼鏡に適わなかったのだと思い込むyou。
「それはつまり…わたしには何も期待してないってコトですか…?」
「は?」
「今は見えても見えなくても不安なのに…。」
「うりっ?!」
「どうして……聞き流そうとするんですか!?
「いや、聞き流そうなどとは…。」
「わたしは真剣にスタンドについて悩んでるのに!DIOさんのバカ!!」
軽い暴言にDIOは叱咤しようとするも、youの泣き出しそうな表情に言葉を噤んだ。
彼女はそのままDIOから身体を離し、部屋を飛び出して行く…。
追いかけようと立ち上がったDIOより先に、後ろで控えていたヴァニラが鬼の形相でyouを追っていった。
「ぬおぉおお!DIO様への暴言!こいつはメチャ許さんぞぉおおお!!youッツ!!」
「ヴァニラ!待て待てまて!お前が行くとyouがまた死んでしまうだろうがっ!!」
「ぉおおおおお!!」
ガオン!と…スタンドを発現させてDIOの部屋の壁を抉り抜いて出て行くヴァニラ…。
youを保護するべく後を追うDIOだったが、
いくら自分に忠実な部下とは言え、ただの痴話喧嘩にブチギレるこの側近のバーサク状態&KYっぷりに「人選ミスかな…」と、軽く泣きたくなった…。
廊下に出ると、もう既に2人の姿は無くなっており、下の階からyouの悲鳴が聞こえてきた。
彼らのあまりの俊足っぷりに感嘆したいところだが、今はそんな場合ではない。
DIOはすぐに悲鳴のした場所へ向かった…。
一方、こちらは壁に背を付けて逃げ道を失くしたyouと…。
それを追い詰める鬼人化したヴァニラ…。
「どどど、どうしてヴァニラさんが追いかけてきてるんですか?!そこはDIOさんでしょ!?」
「煩い…DIO様の事を少しでも貶す輩は許しておけん…まぁ、軽く見積もって腕の一本は覚悟してもらおうか…。」
「予想以上の対価ッツ!!」
「覚悟しろ!」
「っ…!!」
ヴァニラがクリームを放つべく構えたところで、彼の背後から誰か…恐らくDIOの声が響いた気がしたのだが、
youがハッと気を取り戻した時には何故かDIOに抱きかかえられており、しかも、ヴァニラの背中を見つめていた。
一体、何が起こったというのか…。
混乱した表情でひとまずDIOを見上げるyou…。
「え、あ…えっ?…で……でぃおさ、ん??!」
「ふむ……残り1秒程か……間に合ったな。」
「わたし……腕……ありますね。」
「腕をもっていくなど、軽い冗談だろう……なぁ、ヴァニラ?」
背後からDIOに声を掛けられ、ビクリと肩を跳ねさせるヴァニラ…。
ゆっくりと振り向き、君主と……その腕に抱かれる先刻までのターゲットを見る…。
「・・・・・・・はい、DIO様。」
「嘘だーーッ!!今!今、凄い間があったんですけど!やっぱり絶対殺す気でしたよね?!」
「嘘ではない!」
「もう誰も信じられないーーっ!」
その場でワーッと声を上げて両手で顔を覆うyou…。
すると、何故かそこで急にDIOの腕が放されて彼女は地面に盛大に落下することとなった。
「いいいいっったぁあああい!!」
「・・・。」
「で、DIOさん?!ちょっと、急に放さないでくださいよぉ……重いならそう言ってくれれば…。」
「・・・・。」
「DIOさん…?」
見上げたDIOは、ジッと無表情で自分を見下ろしていた…。
youがそのまま呆気に取られた顔をしていると、頭上のDIOが落下させた、その説明を始める。
「つまり、そういうことだ。」
「え…?」
「お前がスタンドに目覚めていないことが分かった。ということだ。」
「・・・え、と…。」
「ヴァニラに…攻撃されそうになっても、お前のスタンドは発動しなかった。そうだな?」
「・・・。」
「命の危機に瀕しても、現れなかったのなら、それは…。」
「目覚めてない?」
「そういうことだ。今も、わたしが手を放しても何も起こらなかったしな……まぁ、それは確認のオマケのようなものだが…。」
「・・・・。」
DIOの言葉に嬉しいような、嬉しくないような…複雑そうな表情をしながら立ち上がるyou…。
「スタンド……。」
「スタンド使いになりたかったのか?」
「…分からない。でも……少しでもDIOさんの力になれるなら、怖くてもがんばるつもりでした。」
「・・・。」
「そっか、違うのか。何だか残念なような…ホッとしたような…。」
「わたしは心底ホッとしている。」
「どうしてですか?」
「何故だろうな……ただの人間、いや…正確にはyouは異邦人だが。」
「まだ言うか。」
「ただの人間の女であるお前を好きでいる理由は……わたしにとって有益になるという理由の物差で測りたくなかった。」
「DIOさん…。」
ぽす…と、youの後頭部に手を伸ばして己が胸の中へ引き寄せるDIO。
視線の先にいたヴァニラに目配せをすれば、彼はすぐにDIOの意図する事を悟ったのか、
深々と一礼し、無言でその場を立ち去った。
「わたし、ずっと成長しないままですね……ここに来てから。」
「そうか?」
「進化をやめたのか、素質なんてなかったのか……やっぱり後者かな。」
「そんなことはない……素質はあった。だからお前は矢に射抜かれても蘇ったのだ。」
「…DIOさん…。」
「なんだ?」
優しい声色で尋ねてくるDIOの背に、そっと腕を伸ばして抱きついた。
「わたし……やっぱりスタンド使いになりたいです。」
「・・・何故、そう思う?」
「何ができるか分からない。役に立てるかも分からない…。」
「けれど…?」
「だけど……。」
DIOの顔は見ずに、youはそっと目を閉じて言う…。
「そんな風に言ってくれる、大好きな人のために……がんばりたいから。」
「・・・you…。」
「たったそれだけの、でもわたしにとってはそれが理由のすべて……かな。」
「そうか…。」
「うん…。」
「スタンド使いは惹かれ合う……お前がここにいるのは必然だったのかもしれないな。」
「それは…後天的でも?」
「過程や方法などどうでもいい。」
「えー…。」
「youと共にいるこの現実が何より大事だ。」
「それは、わたしもです。」
「惹かれ合っただけのこと。」
「うん……。」
それは最早スタンド能力開花の話からは凡(おおよ)そかけ離れていたが、
そんなことは今の彼等にとって別段大きな問題ではないだろう…。
DIOの言葉に少しだけ頬を赤らめて、youは俯きがちに微笑んだ。
そんな折、DIOがふいに口に出した提案。
「you…。」
「はい…?」
「一つ、賭けをしよう。」
「賭け…事?」
「ああ、そうだ。」
「どんな…?」
「わたしの『ザ・ワールド』の能力についてだ。」
「ワールドさんの…?」
「ああ。」
一体何をしようというのか…。
youはよく分からない…と、首をしきりに横に傾げる。
「今から『ザ・ワールド』の能力を発動し、何が起こったのか理解できればお前の勝ち。分からなければわたしの勝ちだ。」
「何を賭けるんですか…?」
「…お前が勝ったら、わたしも覚悟を決め、スタンドについてお前に付きっ切りで教えよう。お前がスタンドに目覚めるまで。」
「え!ほんとですか?!」
「ああ。そして、わたしが勝ったら…。」
「勝ったら?」
「…負けた時のお楽しみというヤツだ。」
「あ、ずるい。」
「さぁ、どうする?やるか?」
「やります!」
youはぎゅうっと両拳を胸の前で握り、鼻息荒く意気込む。
そんな彼女の潔い態度にフッと軽く笑いながら、DIOはその場から少し離れてザ・ワールドを発現させる…。
距離にして約1メートルといったところだろう。
すると、先程DIOの部屋で見た時と同じ、黄色いスタンドが彼の背中を守るようにして現れた。
ここまでは確かにyouにも理解できる範疇だ。
しかしながら、その先は未知の領域…。
まさかDIOが自分に殴る蹴るといった危害を加える事は無いと分かっていても
どうしても心拍数はドキドキと早鐘を打ち、固唾を飲んで構えてしまう…。
「スタンドは…見えているな?」
「は、はい!」
「ではいくぞ…。」
「う、うん…。」
「・・・『ザ・ワールド』!!」
と、DIOが高らかに叫ぶ。
勿論、言葉にせずともスタンドを操るのはDIO自身…。
そこは無言でも能力を発動することができる。
今回口に出して名を叫んだのは「今から能力を使いますよ」と知らせる…所謂サービスというやつだった。
だが…そんな気遣い等、あっても無くても正に「無駄」だったワケで…。
現状を説明すると…youが我に返った時にはDIOに唇が塞がれていた。
確かに、スタンドを発現させた時は多少なりとも距離があったはずなのに、今はゼロ距離という状態。
両肩に手を添えられ、顔を覗きこむようにして首を下げたDIOとキスをしている。
最後に小さくリップ音を立てて唇が離された。
「さぁ、何が起こったか理解できるか?」
「え…と……DIOさんに…キスされた。」
「・・・まぁ、そうだが。」
「どんな能力か…分かったか?」
「いえ……まったく、さっぱり。」
「クク……わたしの勝ちのようだな?」
「何…が、起こったの…?」
「それは秘密だ。」
「だって、DIOさんさっきはもっと向こうに……もしかしてわたしの意識一瞬飛ばしました?!」
「ほお…なかなかいい推察だな……だが違う。」
「う~…。」
くしゃり、と…youの髪を撫でて、DIOは満足そうに笑う。
「フフ……さぁ、敗者には何をしてもらおうか…。」
「決めてなかったんですか…。」
「ああ、実はな。今…何かいい案がないものかと模索中だ。」
「ふーん……じゃ、決まったら教えてくださいい。わたしそれまで部屋で休んでますねー。」
「そんな暢気な事を言うようだったら、今すぐ裸踊りでもさせてしまおうか。」
「すみませんごめんなさい申し訳ありませんもうそんな他人事みたいに言いません許して。」
「よかろう。」
「うう…。」
「よし、決めたぞ…。」
「は、はい…。」
DIOの裸踊り発現が余程恐怖だったのだろう…。
先程とは打って変わって、ビクビクしながらyouは命を下すDIOを覗き見る…。
「もう、スタンドのことで悩むな。」
「え…。」
「矢に射抜かれたり、死の淵を彷徨ったり、腕を抉られそうになったり……お前がスタンドに関わると碌な事が無いようだ。」
「(確かに・・・)」
「故に。もう、スタンドに目覚めようとするな。関わろうとするな。」
「・・・・。」
「いいな?」
「・・・ぅ…。」
「返事は。」
「……ハイ。」
「声が小さいぞ、you。」
「うー…分かりました!!」
「よし。」
そんなにも彼女にスタンド使いになってほしくなかったのか…。
DIOはホッと安堵したような柔和な表情でyouの頭をくしゃくしゃと撫でる…。
喜ぶべきか否か…困惑するyouは、ただただDIOの大きな手を受け入れるだけであった…。
進化などしなくていい
苦しみを背負うことなど
このままずっと、しなくていい
DIO
(スタンドを学ぶなと言っておいて何なのだが…you。)
you
(ん?)
DIO
(もしもスタンドを使えるようになるなら、お前はどのような能力がいいのか気になってな。)
you
(スタンドって、自分の思い描いたのような能力になるんですか?それってハンターの念能力みたい!)
DIO
(いや…どんな能力かは自分では決められないが。ハンターとは何の?)
you
(そっか、決められないのか。あと、ハンターは流していいです。)
DIO
(・・・。)
you
(うーん…いきなり言われても思いつかないけど…。)
DIO
(けど・・・?)
you
(ん、やっぱりずっとDIOさんの傍にいられるようなものがいいな!)
DIO
(漠然とし過ぎだろう……しかも、そんな事はスタンドに開花せずとも叶えてやる。)
you
(ほんとう?)
DIO
(ああ、本当だ。)
you
(DIOさん…だいすき。)
DIO
(フフ…現金なヤツだな…。)
words from:yu-a
title by:Fortune Fate様
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