リゾット
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※なんやかんやトリップ設定です
キミしかいらない!
「ぎゃぁああ!!」
「どうした、you?!」
とてつもない悲鳴が部屋に響き、バタバタと大きな足音を立てて家主であるリゾット・ネエロが悲鳴の元へと駆け付ける。
悲鳴の根源はバスルームで、勢い良く扉を開けると、其処にはバスタオルに身体を包んで蹲る恋人の姿があった。
「敵襲か?!」
「敵襲デスッ!」
「ッ!?無事なのか?怪我は?!」
「無いですッ!」
「敵は何処に!?」
「バスルームの中デスッツ!!」
「youは後ろへ下がっていろ!オレが片付ける……!」
「リゾット…!」
何と頼もしい台詞だろうか…。
チームを纏めるリーダーでもあり、メンバー一ガタイが良く、高身長…。
スタンド能力の強力さに驕ることなく、常に冷静で、洞察力も鋭く、大変博識。
しかも仲間を思いやる懐の深さで、暗殺者でありながらも人望まで厚いときたものだ…。
そんな非の打ち所がない人物が自分の恋人であることに、未だに戸惑ってしまうほど。
自分を庇うように素早い動きで前に立ち、すぐに臨戦態勢に入るリゾットの背中を、まるで怖い思いなど全て忘れてしまったかのように、熱い視線で見つめるyou。
「敵は1人か?」
「・・・//」
「you、敵は一人なのか?!」
「えっ、あっ!はい!一匹です!」
「・・・・。」
「・・・・。」
「you…。」
「はい!」
「敵は「1人」なんだな?男なのか?女か?」
「一匹です!流石に雄か雌かは……!」
「you………敵の生物学的名称は?」
「イヤです!名前を口にしたくありませんッツ!」
「もういい、ただのゴキ●リだな?」
「やぁあああ!!!言わないで!!!」
バッと耳を塞いで呆れた顔で自分を振り返ったリゾットから目を逸らすyou。
一方のリゾットは自分が懸念したような切迫した状況でなかったことの安堵と、たかだか虫一匹のために臨戦態勢で構えていた徒労と、心の底から害虫を怖がる恋人の可愛いさとで、大変に複雑な心境となっていた。
「you……ゴ●ブリくらいであんな大声を出すんじゃあない……敵襲かと思ったぞ。」
「敵襲ですよ!ただでさえお風呂に入る時は装備品無くなるんですから!」
「シャンプーや石鹸などの武器もあるだろう…。」
「飛ばれたら無理……気絶します多分…。」
「そんなことで気絶するな……大体それで気絶する方が怖いんじゃあないか?」
「な、何で…?」
リゾットの問い掛けに「よく分からない」と首を傾げるyou…。
小さく息を吐いたリゾットは一度スタスタとリビングに戻り、すぐに殺虫スプレーを手にしてバスルームへと戻ってきた。
それから先はあっという間で、リゾットは無表情で普通に扉を開いて、普通に逃げ惑う害虫に向かってスプレーを振り掛け、事切れた後に普通にティッシュに包んで潰して死骸を捨てた。
一連の動作を全て見終えて、リゾットが呆れたような表情で「これでいいか?」と呟けば、まるで神か何かを崇めるような反応で大いなる感謝の言葉を叫ぶyou。
「リゾット!ありがとうございましたぁあっ!」
「このくらい普通にできないと、後々怖い思いをするのはお前自身だぞ。」
「う……う……でも…。」
「1匹逃がせば100匹増える。」
「ひぃいい!!」
「目の前で気絶なんてしたら……お前の身体の上を這い回るかもしれんぞ。」
「あqwせdrftgyふじこlp!!!!」
声にならない声で恐怖を訴えるyouに、リゾットは先程の徒労で受けたストレスを晴らすかのように意地の悪い笑みを向けた。
しかも、報復はそれだけには留まらず、リゾットはyouの傍にしゃがみ込むと、その長い指先をツ…と、彼女の二の腕から首筋に掛けてなぞり、こうやって虫が這うのだと嫌な比喩表現を施す。
素肌の上を滑る感触も然ることながら、ふいに脳内で自分の身体を虫が這いまわっている様子を想像して背筋がゾワリと総毛立つ…。
「ひっ…!!」
「それを回避したいのなら、自分一人で害虫の1匹や2匹…駆除できるようになっておくことだな。」
「でも……だって……っ…。」
「流石に毎度毎回オレが殺虫スプレー片手に現れることはできんぞ。次に見掛けたらお前一人で対処するんだ……いいな?」
「ううっ……それはそう、なんだけど…っ!」
「それとも何か?害虫退治の度にお前がオレに何か褒美でもくれるのか?」
「えぇ~!リゾットがさっきみたいに助けてくれるなら、わたしにあげられるものなら何でもあげますよ!!」
「む……そ、そう切り返されるとは…。」
「だって「youは後ろへ下がっていろ!オレが片付ける……!」って!!もう、すごくカッコよかったですし……はぁ…。」
先刻の恋人の雄姿を思い出し、一人恍惚の表情を浮かべて悦に浸るyou。
そして、目の前の当事者は小さな溜息を吐いて、呆れ顔で彼女を見つめる。
「分かった分かった。オレがいる時は助けてやる……その代わりなるべく一人で駆除できるようになる努力をしろ。」
「…できる限りは…努力します…ハイ…。」
「よし。」
少し前向きに考え始めたことを彼は「良し」としたらしい。
コクリと頷いて、youの頭をよしよしと撫で、その場から立ち上がる。
リゾットがバスルームから出て行って、再度浴室に行こうと思っていたyouだったが、何故か彼はその場で立ち上がった後、徐に着ていたシャツを脱ぎだした。
突然何をし始めたのだろうかと、youは頭の上に疑問符を浮かべてリゾットを見上げて問いかける…。
「リゾット…何で上着を脱いだんですか?」
「…上着だけじゃねぇ、下もだ。」
「なんで?」
「何でって……風呂に入るからだ。」
「んん?わたし、まだお風呂入ってないんです。さっきアレが出て時はまだ入る前で…。」
「そんなことは知っている。」
「んんん??じゃぁ、先に入りたいって事です……k…?!!」
着用していたズボンを洗濯籠に放り込み、鍛え上げられた見事な肢体を晒してパンツ一丁になったリゾットを見上げて会話をしていると、いきなりグイッと細腕を引かれて強制的に起立させられたyou…。
「り、リゾット…??」
「一緒に入るぞ。」
「えぇっ?!な、なんで…!?」
「特に理由はねェ……いや、ある……まぁ、害虫退治の報酬とでもしておくか。」
「そ、そんな!」
「『助けてくれるなら、わたしにあげられるものなら何でもあげます』とか言ってただろ、ありゃあ嘘か?」
「うっ……嘘…ではないですけど、こ、こういう意味じゃ…。」
「では聞くが……家も無い、戸籍も無い、金も無い、役立つスキルも無い、他にお前が持ってるものって何だ?何をオレにくれるつもりだったんだ?」
「泣いていいですか?」
リゾットの畳み掛けるような用無し認定に思わず涙目になるyou。
確かに、訳の分からない状態(俗に言う異世界トリップ)にあるyouはリゾットに世話になることになり、彼の恋人という名の家事手伝いのポジションに納まった今でも、その立場は「持たざる者」なのだ。
リゾットにあげられるものどころか、自分一人で生きていく術さえ持ち合わせていないワケで…。
「うう、でも、改めて考えても何もない…わたし、何もリゾットにあげられない……。」
「オレは別にお前から金品を貰いたいと思っちゃいねェ……そもそも、そんなの求めてるんならお前をココに置いたりしない。」
「デスヨネー。」
「オレはお前自身がオレのモノであればそれだけでいい。」
「おや……意外と独占欲強いですね、リゾット。」
「当然。誰かに何かを奪われるのは我慢ならない性質でな。」
「そこまで言ってくれるなら……わたしの全部、リゾットにあげないとですね…。」
「全部、とは?」
「えっ、ええと……頭の先から足の先まで?」
「身体は勿論だ。」
「あっ、前提なんですね……そうですよね…臓器は高く売れますしね……。」
「売ることはしねェが……オレが一番欲しいのはyouの心だ。」
「えっ…。」
「あ?」
「ええと……。」
「何だ、渡せねェのか?」
「う、ううん……そうじゃなくて…!」
ブンブンと首を横に振って、リゾットへの反応に誤解があると示すyou。
だったら…と、黙った彼に対して彼女は頬を赤らめながら、おずおずと唇を開く…。
「わたしの心なんて……とっくの昔にリゾットに奪われてしまって……もう既にリゾットの元にあるので、わたし……今持ってないんです……//」
「ッツ……?!!!///」
「そういう意味でも今はその……本当に何も持ち合わせていなくて……だから…っ!?」
立ち上がらせた時に掴んでいた彼女の腕を勢い良く引き、リゾットはyouの身体を思い切り抱きしめた。
突然のことで一瞬驚いた顔をしたものの、好いた相手に隙間ができることすら惜しむように強く抱きしめられて嫌がる理由など何処にもなく…。
youはふっと嬉しそうな息を漏らして、リゾットの逞しい身体に腕を伸ばした…。
「どうしたもんか……本当に……お前の事が好き過ぎる…。」
「嬉しいです、わたしもですよー…。」
「絆され過ぎだな……アイツ等には絶対見せられない姿だ……。」
「ですねー。」
「you、何処にも行くなよ。」
「はい、ずっとリゾットの傍にいます。」
「オレ以外の男に靡くなよ。」
「リゾットが一番です。」
「心も……渡すなよ。」
「リゾットに返されない限り、誰にも渡せませんよ。」
「・・・。」
「もう無いです?」
「無ェ……。」
「じゃぁ、お風呂入りましょうか。」
「・・・ん。」
ゆるりと腕を解き、身長差で見事に上下の位置からお互いに見つめ合う。
そうして引き寄せられるように口付けて、2人は最後に纏う布に手を掛けるのだった。
欲しいのはキミの全て
ただ、それだけ。
words from:yu-a
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