石田三成
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
恋い慕う人を
手に入れる方法を
私は知らない
人は其れを言葉と云ふ
或る人は「恋を囁け」と言う。
また或る人は「愛を囁け」と言う。
そんなこと、言える筈がない。
豊臣家に仕える家臣、石田三成はそう苦悩していた。
三成にとって、今までの自分は秀吉のために生きることこそが全てで、
その為に学んだことといえば武道の業と、秀吉が好む茶を点てる技くらいのもの。
生まれてこの方、恋などしたことは無かった。
恋をする方法など学ぶ余地も無かった。
だが、今、彼には恋い慕う相手がいる…。
それは豊臣の養女、名をyouという。
ある日秀吉に公の場で「新たな養女だ」と紹介されてから挨拶をし、
そこで三成とyouはごく自然に出会った。
その時は別段何の気持ちも抱かなかった。
『守るべき君主の元へ遣って来た娘』
只、それだけだった。
それが変わったのはいつからだっただろうか…。
「(嗚呼、情けなくも確か、私が怪我をして戦から帰って来た時だった。)」
三成が珍しく怪我をして戦から戻った日があった。
彼にとっては大したことのない切傷だったが、彼女にとっては驚くべき事態だったらしい。
軍の帰還を出迎えた後、廊下でばったり出会うと、慌てて三成の元へと駆け寄ってきたのだ。
『いいいい石田さま!ううう、腕っ、腕から血が!』
『…このくらい大した傷ではございません。どうかお気になさらず。』
『だだ駄目ですっ!早く!早く治療をしなければ駄目です!』
『そうですね、なるべく早に致します。』
『そうしてください!は、早く!早く脱いで!』
『は?』
『あっ、えっ、いえ!そうではなくて、えっと鎧を!』
『鎧を…こ、ここでですか?』
『そう…じゃ、なくて…その鎧…鎧…ではなく…それを…。』
『・・・。』
『・・・それ…は…。』
『ああ……籠手のことですね。腕甲とも。』
『む…無知で申し訳ございません……鎧ではなく、その籠手のことです…っ///』
『因みに脱ぐのではなく、外すのですよ?』
『い…石田様!い、意地が悪うございますっ!//』
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて膨れっ面で三成を睨んでいたものの、
結局その後、医師に治療を施されるまでずっと心配そうな顔でyouは傍に付き添っていた…。
そんな光景を思い出すと、自然と笑みが零れる自分は末期なのだろうと、三成は思う。
しかしながら、それはあくまできっかけに過ぎない…。
本質的に彼女を好きになったのは、それ以降沢山話をするようになったからだ。
それ以来、腕の怪我が完治するまで、youは三成の包帯を変えに来た。
本来であれば、家臣の治療を一国の姫がやることではないのだが、
豊臣の養女になる前の彼女の身分は今の三成よりも下級の武家で、
人手も足りない家ではよく、仕える兵士の傷の手当をしていたのだと言う。
『…しかし、今は違います…貴女様は私が敬愛し、仕える秀吉様の大事な娘。血縁無くとも豊臣の姫君にございますれば…。』
『そのお陰でこうやって石田さまとお話ができることは嬉しいことだわ。でも、わたしは…皆と、触れ合っていたいから。』
『はぁ…あの、では私の事はどうか三成と、お呼び捨てください。』
『いいのですか?!』
『勿論に御座います。』
『では、三成さまと!』
『様も必要ございません。』
『いえ…十分です!嬉しいです!』
『そ、そういうことではなく……嗚呼、もう、ではそれで…。』
『はい!』
名前で呼ばれるきっかけとなった会話だ。
そしてその後、三成は確かに恋に落ちたのだ。
『ふふっ…。』
『何が可笑しいのですか?』
『いえ、石…三成さまと仲良くなれた気がして。嬉しくて。』
『はぁ・・・そ、そうでございますか。』
『何もかも、関白殿下のお陰ですね。』
『そうで御座いますね、ですからもっと……you様はご自分の立場をご理解ください…私などの怪我を…態々自ら包帯など換えてはいけません……。』
『それは違うわ。全て、わたしにとって。』
『は…?』
『今まで着た事も無いような、こんな煌びやかな着物が着れて嬉しいと思ってるわ。関白殿下にとても感謝をしている。』
『そうでございますか。』
『でもね、誰かが目の前で血を流していれば、その時はこんなもの…わたしにとって、ただの布に過ぎないの。』
『は?!』
『切り破って、止血布にしてくれて構わない。』
『…このお着物をですか?!』
『ええ、それが豊臣を支えてくれている兵なら、尚のこと。だから、皆が…三成さまが大事なの。』
『(この方は…)』
下層の生まれ上層に生きるからこそ持ち得る、上も下をも思い遣る心がある人だと思った。
同じく秀吉に見出され、成り上がった三成にとって
youはとても親近感の湧く存在に思えたのだ。
『(そうでなくても、隣に居ることが心地良いと思えるのに…)』
自覚したのはその時以降だ。
その感情は何かと問われれば、迷わず「恋」だと答えられる自信がある。
しかしながら、感情を抱いたところで、恋愛下手な三成にはそれを言葉にする術も無く…。
そう、今に至る。
------------------
「(だからといって私にはこの想いを伝える術も無い…。)」
「三成さま…?」
「っ…!?you様ッツ?!」
後ろからふいに声を掛けられて振り向けば、想いの渦中の相手がそこに居た。
慌てて回想を終えて、急に現実と向き合うこととなり内心焦ってはいるが
三成はそれを面に出さないため、相手は全くその動揺に気付かない。
youは微かに小首を傾げただけで、すぐににこりと微笑んだ。
「何をしていたのですか?」
「いえ…特に何ということは…。」
「そうですか…お庭が綺麗なのでそれを眺めているのかと。」
「え、ええ…まぁ、そんなところです。」
「・・・。」
「・・・。」
沈黙が広がり、三成は目配せてそっとyouの横顔を覗き見る。
長い睫に、綺麗な瞳に、淡く白い頬に、柔らかそうな唇に、その全てに口付けたい。
そんな衝動が駆け巡り、握る手にじんわり汗が滲むのを感じた。
思わず首をブンブンと振り、平静を保とうと試みるものの、衝動は中々上手く消えてくれない。
どうすべきかと思い悩みそうになったのだが、
三成の突然のアクションにyouが全く無反応な事に気が付いた。
微かに憂いを帯びた表情で、ぼんやりと遠くを眺めている。
どうしたのかと思い、声を掛けようとしたところで逆に声を掛けられた。
「三成さま…。」
「は、はい。」
「また、戦があると聞きました。」
「え…ええ、暫しの後に。」
「怪我を…しないように…してくださいね。」
「稀有にございますれば。you様は私が秀吉様の左腕と呼ばれていることをご存知のはず。」
「ええ、でも……ほら、三成さまとの出会いは三成さまが怪我をしたからよ?」
「うっ…。」
痛いところを突かれた…と、顔を引き攣らせれば、youはくすくすと笑い出す。
すぐに三成にしては珍しい、ぶすくれた顔で「それ以降は無傷にございます」と反論した。
「そうですね、秀吉様…いえ、義父も三成さまはお強いと…頼りになると申しておりました。」
「秀吉様がですか?!ほ、誉にございます!!」
「ふふっ、三成さまは義父が本当に大好きなのでございますね。」
「だっ…そ、そういう事では…//」
「でも、それで三成さまが義父の力になってくれるのであれば、こんなに嬉しいことはないですもの…。」
「それはもう、揺ぎ無く。秀吉様の恩為に尽力致す所存に御座います。」
「…だけど、無理はしないで?」
「?」
寂しそうな表情を浮かべて、youは三成に向き合う…。
じっと三成を見上げた後、彼女は震える声で言葉を紡いだ。
「三成さまは自分の身体を省みず敵に挑んでゆくと、竹中様にお聞きした事があるの。」
「半兵衛様に…。」
「大谷様もそう仰っていた。」
「刑部も…ですか…。」
「それは勇猛果敢で武士の鑑だと思います。」
「はっ…!」
「ですが、少しはご自分の安全を考えてください。」
「え。」
「三成さまがいなくなれば、優秀な家臣を失って、義父が、軍師の竹中さまや大谷様が困ります。」
「そ、それは…。」
「貴方に付き従う者たちが皆、困ってしまいます。」
「はぁ・・。」
「そして、皆一様に…悲しみます。勿論、わたしも。」
「・・・。」
「だから、時には、退くことをしてほしいのです。周りの者の為にも。」
「you様…。」
「周りを見ていればこそ…決して恥ずかしい事等では無いはずです。皆、それを願っている。」
「・・・・。」
「戦を知らない女が、三成さまほど武芸に秀でた武将に何を言うのかとお思いでしょうが。」
「いえ…そんな事は…。」
「ただ、生きていてほしいの。」
「!!」
「いなくなってほしくないの。」
一言そう言って目を閉じれば、youの目蓋から涙が一筋流れ出た。
それを見た三成は慌ててyouに声を掛ける。
「you様ッ?!」
「ん…ごめんなさい、このところよく戦があるから、不安なの…。」
「…どうか涙を流さないでください…。」
「うん、分かってる…困らせて、ごめんなさい。」
「いえ、そうではなく…。」
「?」
「お約束いたしますから…。」
「え…。」
「私は死にません。必ず、秀吉様とyou様の元に戻ってまいります。」
「みつ、なりさま…。」
「必ず。」
そっと、三成の指がyouの涙を拭う。
視線がぶつかり合えば、今度は三成の思考が「抱きしめたい」という衝動に駆られた。
再び煩悩を消すべく、ぎゅっと目を瞑るものの、その願望は消え失せない…。
どうすれば彼女を抱きしめられるのか分からない。
どうすれば彼女に口付けられるのか分からない。
何を、どう、言葉にすれば彼女にこの気持ちが伝わるのかが分からない。
否、周りに言われたように愛や恋を囁けばいい。
しかし、そんな芸当が口下手な三成にできるはずもない。
ではどうすれば…と考えた時には既に手遅れで。
気付けば三成はyouの身体を抱き寄せていた。
---------------
「み…三成さま…?!//」
「どうか、私を…信じてください。」
「・・・。」
「お願いです、どうか。」
「三成さま………じゃぁ……絶対よ?」
「はい。」
「約束よ?」
「はい。」
「皆と共に…三成さまが無事に戻ってきてくれたら、わたし、何も要らない。皆に何でも差し上げるわ。」
抱きしめたことに拒否をされるかと思いきや、意外にもyouは三成の抱擁を受け入れていた。
その中でそんな台詞を吐いたyouに、思いの外反応を示す三成…。
ゆるりと身体を離して、涙目になっているyouを赤い顔で見下ろす…。
「それは…you様のものを、ということですか?」
「?・・・ええ。」
「…其れが本当であれば、欲しいものが御座います。」
「わたしの差し上げられるものであれば、何でも。」
「youさまにしか持ち得ない物に御座いますれば。」
「わたし…だけ?」
「はい…。」
きょとんとした顔を三成に向けると、彼は本心から困ったような表情で、言った。
「は…晴れて無事…い、戦から戻ることができた暁には…その褒美、に…ッ。」
「・・・。」
「you様を私にください。」
「へ。」
「お嫌でしょうが……私は、あ、貴女が欲しくてたまらないのです…!//」
「えっと…み、三成さま。」
「もう…もう、私にはこの想いを伝える術が一つも見当たらない。どうすればいつもyouさまが…私の隣にいてくれるのか、どうすれば笑ってくださるのか、もう分からない!」
「お、落ち着いて三成さま!//」
「愛も恋も囁けない!けれど私は…。」
「みつ…。」
「この世で一番、貴女が愛しいのです。」
「そっ…//」
支離滅裂で何を言っているのか自分でも分からないといった困り顔で、
三成はただひたすらにyouの肩を掴んで見つめ続ける…。
初めは三成の顔だけが赤かったものの、気が付けばyouも同じくらい真っ赤な顔になっていて
そんな状況で出た言葉と言えば、許可でも拒否でもなく…。
「み・・・みつなりさま…//」
「はい…。」
「人は其れを愛を囁くというのです、よ?」
「…そうなのですか?」
「そうなのです…//」
「…では、私の気持ちはyou様に伝わったのでしょうか?」
「っ……ええ、それはもうハッキリと。寧ろ何故三成様の方が呆けているのか分からないくらいに。」
「よ…よかった。」
「・・・・//」
「あ、あの!では、その……お……お答えを戴きたいのですが!!」
「えぇっ?!い、今ですか?!//」
「はい。」
「それはつまり…その、み…三成さまの元にと…嫁ぐ…ということでしょうか。」
「……そう…なります、ね。」
「・・・。」
「・・・。」
互いに顔を見合わせて、今更ながらその意味を認識し合い、顔を赤らめる。
三成に至っては耳まで真っ赤に染まっているという事態。
そして、今までしっかりと掴んでいたyouの肩を三成がそっと離した刹那、
youが何とも言えない表情で、しかし微かにだが微笑んだ。
「三成さまは…嘘がお嫌いなのよね?」
「あ、え…ええ、はい……そうです。」
「ここでわたしがお断りをすることは「何でも差し上げる」と言ったわたしが三成さまに嘘を吐いた事になってしまうわ…。」
「し、しかしそれとこれとは別のお話です!私の隣に居ても笑っていただけないのであれば、それは私が望むyou様ではございません…。」
「でも…わたし…三成さまの隣だから、笑っていられるのよ。」
「!!」
「いつからか、ずっと三成さまのことをお慕いしておりました。」
「な、な…っ、youさ…!//」
「わたしから言葉にするのは何だか躊躇われて…もし、拒絶されたらどうしようかって…。」
「そんなこと…私がyou様を拒絶するなど、ありえません!//」
「ありがとうございます……でも、これでも一応、女ですもの…。」
「は、はぁ…。」
「だから、もしも三成さまが同じ気持ちだったらなぁって…いつも想っていました。でも、甘い言葉を囁いてくれるような方じゃないからと諦めていたの……。」
「も…申し訳ございません…。」
「なのに、こんなに沢山のお言葉をいただけるなんて…わたし、幸せで死んでしまいそう。」
「い、今しがた死んではいけないと、you様が言われたばかりです!」
「ふふっ、分かってます。喩えのお話です。」
焦った顔を浮かべる三成に、youは綺麗に笑ってみせた。
そして、youは三成の手を掬い取り、ぎゅっと握る。
「ねぇ、三成さま……こんな千載に一隅の好機、逃すことなどできませんね。」
「好機…?」
「三成さまからの求婚です。」
「そっ、あっ、えと…それは……わ、私などの立場でyou様に求婚などっ…お、おこがましい限りではございますが…!」
「わたし、三成さまがいい。」
「っ…!//」
「わたし、貴方に嘘は吐きません…。」
「…you、さま…。」
「戦から皆と無事に帰ってきてくれれば、その時は……貴方にわたしを差し上げます。」
三成の両手に自分の両手を重ね、youは彼を見上げた。
柔らかな陽のような…三成が一番愛しく想う笑みを浮かべて。
「必ずや。」
三成もまた、youに笑みを落とす。
幸せを凝縮したような甘い空気が漂い、三成はくらりと眩暈さえ覚える。
しかしながら、今はそれに浸っていたくて更に貪欲に幸せを求めてみることにした。
そっと、youの手を外して、自由になった手を彼女の背に回す。
「お慕いしております、you様……もう、ずっと前から。」
「溶けてしまいそう。」
「では、溶かしてさしあげましょう。」
「え、っ・・・んっ…!//」
有無を言わさなかったのは、もう気持ちを確認する必要が無かったから。
それは、三成が思い描いた妄想が全て現実になる瞬間。
そっと両頬に手を添えて、youに口付けを落とした。
募る想いは
逢瀬の数か
半兵衛
(秀吉、そんなところで何をしているんだい?)
秀吉
(…半兵衛か。)
半兵衛
(ん?あれは…you姫と…三成君?)
秀吉
(結納の品を用意せねば…。)
半兵衛
(はっ?!)
秀吉
(次の戦はいつであったか。)
半兵衛
(結納の次は戦!?一体どういうことなんだい、秀吉!?)
秀吉
(もうすぐではないか!ううむ…いかん、これでは間に合わぬ…。)
半兵衛
(けっ、結婚なんて駄目だよ、秀吉!駄目だ!)
秀吉
(この城に居残ってくれるものだろうか…。)
半兵衛
(僕は許さないからね!秀吉!)
秀吉
(ええい!止めてくれるな半兵衛!我が直々に白無垢を用意するのだ!!)
半兵衛
(待つんだ秀吉!駄目だ秀吉!秀吉ーーーッツ!!)
・
・
・
you
(あれは…。)
三成
(秀吉様と……半兵衛様…?)
you
(珍しく声を荒げているわ。喧嘩かしら?)
三成
(あのお二人に限って喧嘩など…ございませんよ。)
you
(それもそうね。)
三成
(はい!)
you
(わたしも三成さまと、あのくらい固い絆で結ばれたく思います。)
三成
(久遠の果てにも解けぬほどに。)
you
(・・・//)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*
1/4ページ