ヨークシン編
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「you、どうしたんだその顔…!」
「…っ…。」
丸一日は泣き続けて、そのまま寝入ってしまったyouの顔つきを見るなり
そうクロロが言った。
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ゴウカクxノxライン
11:After that…
ヒソカが置手紙を残してyouの元を去った次の日、
クロロから図書館への誘いがあった。
鬱に入ってしまいそうな気持を「このままではいけない」という気持ちで奮い立たせ、誰かと会うことで気持ちの切り替えを図ったのだが…。
泣き腫らした瞼
憔悴しきった瞳
なにより、どんよりと気落ちしたオーラが彼女の精神的な動揺や痛みを顕著に示しており、
正面から向き合った時にクロロが驚いて、心配そうな表情で声を掛けてきたので、
youは申訳なさで心がいっぱいになり、また別の意味で涙を零しそうになってしまった。
自分の気持ちにばかり重きを置いて、相手の心持ちのことを念頭に置くことを失念していた…と、クロロに会って初めて顧みるに至った。
「何があったんだ…大丈夫か?」
「うん…。」
「怪我…は無いみたいだな…。」
「うん…。」
「・・・。」
震える声は、今も尚泣きそうになるのを堪えているのだと分かるもので…。
クロロはひとまず場所を移し、ゆっくり話を聞くべきだと判断して、youの手を取った。
「ひとまず場所を移して、落ち着ける場所で話そう。」
「・・・。」
返事は無かったが、youがコクンと小さく頷くのを見届け、
クロロは彼女の手を引いて歩き出した。
待ち合わせの図書館から少し歩いて、広い公園のベンチを見つけると、ちゃんと木陰になっているかを確認して其処へと誘(いざな)う。
「飲み物でも買ってくるか?」
「ううん、大丈夫……ありがとう。」
「そうか……。」
「ごめんね、クロロ……何か…色々と、こんな酷い状態で。」
「オレはいいけど……何があったんだ…。」
「・・・。」
「あー……言いたくなければ言わなくてもいいんだが…。」
「とても……大事な人がいて…。」
「・・!」
ぽつり、と零れた音は単語になり、言葉へと繋がっていく。
クロロはそれを黙って隣で聞き届ける。
「お互いのことが理解できた…そう、思ったら、そう思えたのに、パッと、いなくなってしまったんです。」
「(別離…死別か?…いや、どちらにしても…)…辛いな。」
「っ…。」
クロロの言葉に続く言葉を紡げなくなったのか、
youはぐっと涙を堪えた様子で手を動かす…。
恐らくは無意識に、彼女が左手を庇うような仕草をするので、
相対者の動向に鋭い洞察力を働かせる性質のクロロは「怪我の有無」を確認することを兼ねて其処へと視線を送った。
「(指輪が…無い…。)」
「・・・。」
「(別離した相手は十中八九指輪の送り主……youが泣いていて、指輪が外されたということは相手は生きていて、指輪を外してyouの前から姿を消した…ということか。)」
クロロが辿り着くのは至ってシンプルな別離の理由…。
しかしながら、泣いている女性に向かって「フラれた?」などと軽口を叩けるような人種ではないし、
深くツッコんで尋ねるべき内容でもないだろうと判断。
ただ、言葉なく頭を撫でるようにぽんぽんと叩いてやると、
その気遣いに堪えられなくなったyouはただ、彼の隣で暫くの間、涙を流した…。
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「何か…悪かったな…慰めるつもりが、余計に泣かせたみたいになっちまった…。」
「ううん、ありがとうクロロ……思い切り泣いたらちょっとすっきりした。今からちゃんと、ちょっとでも前向こうと思う。」
「そうか…。」
涙の最後に大きく深呼吸をして、youはベンチから立ち上がる。
大きく両手を天に向け、うーん!と伸びをして、クロロを振り返った。
「クロロ、お願いがあるんだけど…。」
「何?オレにできることなら協力するよ。youには古書読ませてもらった恩もあるし…。」
「うん、あのね…。」
一体どんなお願いをされるのだろう、と少しだけ身構える。
例えば「自分と付き合ってほしい」なんて展開になるのだろうか、
いやいや彼女はそんな蝶や蜂のようなキャラではないはず…と頭の中で首をブンブンと横に振る。
だがしかし、もし、仮にそのようなことになれば…などと、考え、
そして満更でもないような気が湧き出してきたのだが、
その期待は予想通り全くの見当違いだと、裏切られることとなった。
「何か甘いもの、一緒に食べてほしいな!」
「あ……甘いもの…?」
「うん、美味しいケーキとか!甘いもの食べたら、きっと元気出ると思うの!」
「ハハ、そんなんで元気出るの?」
「出る!多分。」
「そう……ならお安い御用だ。youの元気が出るような美味しい店に案内するよ。」
「本当?!」
「って言ってもネットで探すんだけどな。」
「ふふ、それでもいいよ。」
「ケーキもいいけど、オレはプリンが食いたい。」
「いいね、プリン!じゃぁプリンとケーキが美味しいお店にしようよ!」
「はいはい、りょーかい。ちょっと待ってろ、調べるから。」
「はーい!」
ポケットから自分の携帯を出して、ネットでヨークシンのスイーツショップを検索する。
大都市だけあって、かなりの店があるらしいが、
自分たちの今いる場所から近いという条件で数件にまで絞ることができた。
その中で、ネット上の口コミや画像などを見て相談し、
youとクロロは2人で決めた1件を訪れることとなった…。
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「んんっ!!このタルトケーキめっちゃ美味しい!!」
「本当?こっちのプリンもすげー美味しいよ。」
路地裏の、まるで隠れ家のような場所にあったその店は、
内装もシックで趣のある雰囲気だった。
表通りのように賑やかな店内も良いが、
こうして静かに自分の時間を過ごすのも大変良い。
「いいお店だね。」
「ああ、静かだし、コーヒーもプリンも美味いし…。」
「紅茶もケーキも。」
「あとは古書があればなぁ…。」
「お店の迷惑にならないくらいの滞在時間にしてくださいね、本の虫クロロさん。」
「おい、変な名前付けるなよ、オレの名前はクロロ・ルシルフル!」
「ふふ、ごめんなさーい。」
「・・・。」
くすくすと小さく笑い、youが顔を上げると
じっと自分を見て黙り込むクロロと目が合った。
そんなに怒るようなことだっただろうかと、
戸惑いを抱き、徐々にオロオロと表情を崩しだしたyouに向かって、クロロの手が伸びてくる…。
まさか、叩かれる?
そんな懸念を僅かに抱いて、不本意ながら目を瞑ってしまった。
と、そこに感じたのは痛みではなく、あたたかな温度。
「!!」
「やっと、笑った。」
「…ぇ。」
頬に当たる大きな手の感触と穏やかな声で、そっと目を開けば、
そこには困ったような、安堵したような、複雑に…しかし、嬉しそうに笑みを浮かべるクロロがいた。
「スイーツ効果?凄いな。」
「うん……本当に元気になれた。」
「そりゃよかった。」
「クロロのお陰。ありがとう。」
「そっ……そんな感謝されても…何も出ないぞ。」
「んー…プリン一口くらいも出ない?」
「仕方ないな……ほら。」
「あーーん!」
「美味いだろ?」
「うん、すごく美味しい!」
「本当に美味いもの食べたらさ、人って割と元気になれるんだな。」
「そう…かな?そう……かも?」
「あー…別にからかったワケじゃなくて…ちょっと、昔のこと思い出しただけ。」
「昔のこと…?」
ふっと翳りのある笑みを見せて、クロロは「気にするな」と言葉を続けた。
確かに、考えてみるとyouはクロロのことをよく知らない。
過去だけでなく、今現在のことも。
出会ってから数日のうちで仲良くはなったものの、お互い意気投合した点以外の理由はない。
youは成り行きでハンターであることも、今は遺跡に関わる仕事をしていることも話すことになったが、
思い返せば、クロロは自分のことを何も話していない。
前に図書館で、ミステリアスな方が彼のイメージだとは言ったものの、
一度そんな考えを抱くと、気になってしまうのが人間の性というもの…。
youは何の気なしにクロロに関して聞きたいと、言葉を投げかけた。
「昔って……クロロは、昔どこに住んでたの?」
「え、俺?」
「うん。」
「ヨルビアン大陸…?」
「何で疑問系…ていうか範囲広ッ!」
「ハハ、まぁ……ミーティアタウンっていう、とある国の超ド田舎出身だよ。」
「そうなんだ…どんなところなの?」
「んー…何か兎に角自由に生きてられるトコだったよ。」
「そうなんだ……。」
「裕福でもあり貧しくもあり……色々悩ましくはあった、かな。」
「むむ……それじゃぁさっきの「美味しいものを食べたら」っていう話は…。」
「ノーコメント。それでも俺の話を聞くっていうなら、youの事も全部聞くぞ?生まれも育ちも学歴も…あ、恋愛遍歴もか。」
「ちょっ……い…いや、そんな…全然言う程恋愛とかしてない、し…?」
「ヘェー、じゃぁ、遠慮無く「今は外されてる」指輪の相手の事も聞いていいんだ?」
「!!」
「してたでしょ、こないだはさ……。」
「……あーもう、分かりました……これ以上クロロの過去話は聞きませんよー…。」
ムスっと口を尖らせ、彼への詮索に諦めの意を示したyou。
同時に、悲しい気持ちを思い出させたようで、一瞬だけ纏うオーラが揺らいだ…。
そんな彼女の様子に少し空気が悪くなったかと、反省をしたクロロ。
ふっとため息のような笑みを零して、youのふくれっ面の頬を人差し指でぷすっと突いた。
「なにすんですか…。」
「そんなに俺の事を知りたいんだ?」
「そういうワケじゃないですけど…。」
「まぁ、ちゃんと分かってる。youは出会った時に「クロロはミステリアスな感じのままでいい」って言ってたし。」
「そういえば言った。」
「うん。俺の話はあんまりしないけど、俺の気持ちならいくらでもyouに伝えられる。今はそれで勘弁してくれ。」
「どういうコト???」
「俺が思ってる以上にyouは俺にとって大事な人になってるってこと。」
「それは……どうも?」
「何かあったら…いや、何もなくてもいいんだ……とりとめのない話でも、本当、何でも。」
「クロロ…?」
「連絡しろよ、youが悲しくならないように、寂しい時は話を聞くし、困ったことがあれば必ず助けにいく。」
「・・・。」
「あれ……もしかしてオレ…告白してる?」
「分からない!で、でも何だろうそれに近しい気が…!」
「あはは!でも、まぁ…オレはそう捉えられてもいいっていうか…何だろう『仲間』認定?あー…友達になってほしいっていうか…。」
「それなら、もうなってる。」
「え…。」
「わたしたち、もう大事な友達でしょう?」
さも当然、寧ろ違うのか?と、小首を傾げながら尋ね返したyou。
そんな自然で他意の無い様子の彼女の言葉と態度にクロロは一瞬、銃で撃ちぬかれたように目を丸くした。
それは目の前の彼女を初めて見る新種の生き物のような感覚で捉えたからに他ならない。
自分とは違う生き物。
それはとても貴重で、稀有で、自分の元に留めておきたくなるモノ…。
しかして、それを手に入れたところで、その未知の輝きは永久に失われてしまうであろうことも瞬時に理解する。
「(もどかしいほど、欲しくなる…けれども、手には入れたくない……はは、凄い感情だな…。)」
「クロロ…?」
「うん…そうか……ははっ、そっかそっか……いやー………嬉しいもんだね、ちゃんとそう言ってもらうっていうの。」
「うん、わたしもそう思う。」
「じゃぁ、改めて……これからもよろしく、you。」
「よろしく、クロロ。」
穏やかに向けられる信頼の笑みを受け止め、クロロは心に混沌とした感情を抱えつつも笑顔を作った。
差し出された白い手……起こしたい行動や、ぶつけたいその感情に蓋をして、
まるで壊れ物を触るかのようにその手を優しく握り返すのだった。
words from:yu-a
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