番外編
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「ねぇ、you、ちょっとお願いがあるんだけど…♣」
「はい、なんでしょう?」
「これ、一緒に行ってくれない?」
「?」
差し出されたのは
金の縁取りが豪華な
1通の封筒だった
Passing mark
ゴウカクxノxライン
celebration party!
番外編
「これは…招待状、ですか?」
「そ♠ ホラ、今ボク天空闘技場にいることがメディアにバレてるでしょ?だから、こういうの…そういう期間にたま~に届くんだよね…♠」
「はぁ…?」
溜息交じりに半端な説明をするヒソカに、少し小首を傾げるyou。
つまり、普段は一定の場所に留まらず、根無し草のように様々な場所へ戦闘を求めて移動を繰り返しているため、通知物の類が自分宛てに届く事などほぼ皆無なのだが、
今回のように一定の場所に暫く留まっている場合は、これこそ機会!とばかりに、宿泊先のホテルだったり、天空闘技場の受付や事務所宛だったり、
その場所目掛けてファンレターやら何らか依頼などが届く期間があるのだという…。
本音を言えば、上記の理由から面倒ごとを避ける為、こういったものが届きだしたら早々に闘技場を撤退することも考える時期なのだが、
今回の滞在はヒソカにとっても有意義なものであるようで、その選択肢は先延ばしにされている…という状況。
「(youとはもっと一緒にいたいし……何より今回はゴンと戦うまでは出ていかないつもりだしね♥)」
そんなこんなで数多届く手紙の中にはスルーできる老若男女問わずからのファンレター(デスレターもあるが)もあれば、
たまに、全く知り合った覚えのない各界の著名人からの有償の暗殺や殺人の依頼や、何らかの招待状などもあるようで…今回は後者に該当するパーティの招待状が届いていた…ということらしい。
「…あの、一緒に行くといわれますと…。」
「このパーティにだよ♦」
「でも、招待されているのはヒソカさんでは?」
「ウン、1名同伴可能だから、一緒にと思って♥」
「えーっと……他の方は…ほら、イルミくんとか…。」
「彼、確かにそういうの慣れてるからね、ボクもそう思ってもう頼んだよ…でも、その日は予定が入ってるって言われた…♣」
「そうですか…えーっと…じゃあ、他には…。」
「ボク人見知りだし、友達そんなに多くないし……youと一緒に行きたい…♥」
「えぇ~……うーーーん…。」
実のところ、ダメ元でイルミに頼んだところ「ヒソカの同伴とか1億積まれても行かない」と秒で断られたのだが、その事実はそっと隠しておくヒソカであった…。
「参加を辞退されたり、あるいは…おひとりで行かれる…という選択肢は…。」
「無いね♠ さっきも言ったでしょ、ボク人見知りだって♦」
「(人見知りかなぁ…)」
「あ、今「絶対人見知りじゃないよね」とか思ったデショ…?」
「い、いえ……。」
「行かないって選択肢もあるにはあるんだけど……誰かと闘いたいって時に会場や仕込みとかの膳立てをしてくれたりする可能性もあるから、できれば行っておきたい…カナ♦」
「要はパトロンになってくれる方からの招待、ということですか…。」
「大正解♥」
「でも、わたしそんなところにお呼ばれなんてしたことないですし、マナーも作法も分からないですし、一緒に行ってヒソカさんの格が下がっちゃうかもしれないから、ありがたいお申し出ですが、遠慮させていただきますね…。」
「そっか…残念…♠」
「すみませ…」
「今後ボクが誰か気に入った相手と闘う舞台を整えてくれるような奇矯なお金持ちとの繋がり……youが断ったせいで1人失うことになるのか……あーあ、凄く残念…×」
「それはズルいですよ?!」
「♥」
そんな詰められ方したら、断ることなどできないではないか!と、憤るが、
当事者のヒソカ本人は飄々と「(ボクが可哀想だと思わなければ)断ってくれて全然構わないよ?」とのたまう…。
結局、盛大な溜息を吐き、いつもの如くヒソカの我儘に付き合わされる運命を享受してしまうyouであった…。
・
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「ボクが巻き込んじゃったからね…衣装やヘアメイクはボクに手配を任せて♦」
「大変助かります……パーティードレスとか全く縁遠いし、持ってませんので…。」
「当日、宿泊するホテルに来てセットしてもらうよう頼んで、現地で何処かで何か調達したりもしなくていいようにしておくよ♥」
「至れり尽くせりですね…どうも。」
「そう不貞腐れないでおくれよ……出資者(パトロン)探しもそうだけど、それ以上に着飾ったキミが見たいな~って思っちゃったんだよね♥」
「もう!思い付きで巻き込まないでくださいよ!」
「機嫌直して、you……何でも好きなもの買ってあげるから~♥」
「要りません。」
「どこでも、キミの行きたい場所に付き合ってあげるし…♦」
「結構です。」
「じゃあ美味しいご飯とかスイーツ奢るから♥」
「…い、要りません。」
「んー……♠」
自分の不慣れな、畑違いの世界に連れていかれるという不安が大きいのか、
いつもは無茶な依頼に少し怒りながらも、最終的には呆れて付き合ってくれる彼女の反応が、今回は頗る良くない…。
ヒソカは「どうしたものか」と少し唸って、冗談交じり、ダメ元でもう1つ宥める案を出してみた。
「…youのためにカッコ良く変身するボクの姿、見たくない?」
「み…っ……見た過ぎます…。」
「えー、聞こえない~♠」
「何ですかそれは!ずるいですよ!見たい!見たいです!」
「♥」
なかなかに頑なだった彼女の心が、まさか己を出汁にするだけで斯様に、いとも容易く動かされるものかと、ヒソカは嬉しくなってクスクスと笑う。
「youはそんなにボクの事好きなんだ?嬉しいねェ…♥」
「ヒソカさんは今みたいに鍛えられた肉体美が垣間見える戦闘向きの奇術師スタイルも、そうじゃない時に見る、そもそも素の造形が良いんだなって分かる姿も、どっちも魅力的ですからね。」
「えー、具体的ですっごく嬉しい…♥」
ちゃんとしっかり、自分の事を見てくれているのだと知れるyouからの言葉に、
どうしようもない嬉しさを滲ませるヒソカ。
これで内面まで曝け出して、それも好きになってもらえればこの上ない幸せなのだが、
流石に現時点で自分の性癖やら趣味・趣向など、己が何やらの全てを開示して受け入れてもらえる自信は持てないわけで…。
「(語る事は吝(やぶさ)かではないけど……ボクの在り方を徐々に、彼女のナカに浸透させていきたいんだよねェ…♥)」
いつか逃げられないくらいの沼に落として、抜けられなくなった事を確認した上で、
「ボクの手を取って」と悪魔のように耳元で囁いて、手を差し伸べたいのだ、と。
youに対して綺麗な笑顔を浮かべながら、心の中で歪んだ笑みを浮かべる…。
「じゃあ、ボクも頑張ってyouの為にオシャレするから、付き合ってね♥」
「わ、分かりました…不肖ながらヒソカさんの隣にいて失礼のないよう頑張ります…。」
「前のりも考えたけど、飛行船使えばそこまで遠い場所じゃないから、当日参加して、1泊して帰って来ようと思うんだけど、それでいい?」
「そこはヒソカさんにお任せします。」
「オッケー、じゃあその方向でいくね♦」
色々手配しておくよ…と言うヒソカ。
任せっきりになるのは忍びないなぁと思いながらも、いやいや、できれば行くことすらしたくないのだから…と、youは必死に心の中で自分に言い聞かせる。
そもそも、自分とヒソカでは色々と格が違いすぎて、ホテルや衣装を手配しようにも、彼が基本望むような準備ができるとも思えず…。
大人しく、お世話になることを決めるのであった…。
「あ、そういえば…。」
「ん?」
「あ、いえ…そのパーティーって…何処の、誰の何の招待なのかなって…。」
兎に角パーティーに参加するかしないかでモメていたが、
そもそも何のために自分が駆り出されるのかくらいは知っておきたい…と、
遅くなりはしたが、youがふと思い出してヒソカに尋ねた。
「ええと……本の出版記念とかって書いてあるね…某大物政治家の名前だ…♣」
「それはまた……ちょっとヒソカさんとは縁遠いと言いますか…。」
「ホントにね……格闘家のノウハウ本でもなかろうに…♠」
「あはは、さすがにそれだと呼ばれるかも…!」
ヒソカが冗談交じりに放った言葉に、楽しそうに笑う。
「内容はきっと面白くも何ともない祝賀会なんだろうけど……まぁでも……youとちょっと遠出できるのは楽しみかな…♥」
「はい、こうなったら美味しいものを食べて飲んで、ヒソカさんと楽しんで帰ります!」
「ん…♥」
「あ、後ででいいので日付とか時間とか…教えてください。」
「ウン、分かった♦」
流石にもう腹を括ったのか、それ以上は文句も不満も零さずに
祝賀パーティーに同行する方向で話やその条件を飲むyouだった…。
・
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・
そうして迎えた当日…。
ヒソカの私用船で目的の空港へ降り立ち、手頃な時間に昼食を摂った後、
宿泊先のホテルにチェックインすることとなったのだが…。
「ヒソカ=モロウ様ですね、ご予約確認できました。2名様で、エグゼクティブスイートルーム ダブルのお部屋でお間違いないでしょうか?」
「ウン、間違いないね♦」
チェックインカウンターでホテル職員とのやり取りを耳にして、
思わずヒソカの腕をガッと掴んだyou…。
「ヒソカさんん???」
「ん?」
「2名1室って、どういうことですか?」
「どうもこうも……ないけど…♣」
「いや、あるよ?!」
「you、そういう野暮なことは此処でする話じゃない…♠」
「うっ…?!」
「後でちゃんと話そう、それでいいよね?」
「う、え、は……はい……すみません…?」
「うん、イイ子♥」
内心この場で「一体どういうことか」と突き詰めたい気持ちでいっぱいだったが、
これまた体よく言いくるめられて口を噤んでしまう…。
確かに、このランクの高い一流ホテルのロビーでギャーギャーと騒ぎ立てる者がいれば、
それはかなり場違いで、品の無い行為と見て取れるだろう…。
故に、ヒソカの注意はある意味正しいのかもしれないが、冷静に考えると、明らかに罠…。
場所と自分の品性を人質に取られた感が否めないワケで…。
この場を離れたら思いっきり騒ぎ立ててやろうと心に決めるyouであった…。
そうして、あれよあれよという間にチェックインを済ませ、荷物をスタッフに運んでもらい、
宿泊する部屋へと通されてしまった…。
「ひーそーかーさーんんん!!」
「あ、見てみてyou、凄い景色だよ~、夜景とかすっごくキレイに見えそうだよね♥」
「ヒソカさん。」
「そうそう、そろそろ衣装とヘアメイクが部屋に来るから準備しておいてね?」
「ヒソカさん!誤魔化さないの!」
「えー…♥」
「えーじゃない!どうして部屋分けてないんですか?!」
「youが諸々の手配をボクに任せてくれたから、かな?」
「チクショー!そうだった、この人そういう人だった!!確認しなかったわたしが馬鹿だった!」
「残念だったねェ…(ま、確認したところで絶ー対、1室しか取らないつもりでしたけど)…♥」
どのみち予約し間違えたとか何とか言って、一緒の部屋にするつもりだったヒソカ…。
そこまで察しているのかは分からないが、ひとまずyouは自分の落ち度は認めてしまうのだった…。
「しかも何ですかこれ!部屋はだだっ広いのにベッド1つじゃないですか!絶対意図的ですよね!?」
「あっれ~、オカシイなぁ……ツインで予約したハズなんだけどなぁ~?」
「白々しい!!」
「ククク…♥」
踏んだり蹴ったりの状況に、怒りよりも自分への情けなさが勝る…。
youはヨロヨロと力なくよろめきながら、頗る座り心地の良いスイートルームのソファに座り込んでしまった。
「あぁ、このソファ十分心地良いんで、もうここで寝ればいいですね…ヒソカさんは大きなベッド、独り占めしてください…。」
「そんな寂しい事言わないでおくれよ…♥」
「・・・。」
「大丈夫、きっとパーティーが終わったら2人とも疲れてるだろうし、お風呂入ったらきっとバタンって寝ちゃうよ…♣」
「……。」
精神的にも慣れない場所で神経を擦り減らしてしまうだろうし…と、後付けて言われて、
確かにそれはありえるかもしれないと押し黙ってしまうyou…。
「何よりyouが嫌がることはしたくないしね…無理矢理、なんてことは絶対しないと誓うよ♦」
「・・・。」
「本当だよ…♥」
「ヒソカさん…。」
「…あ、でも寝てる時に大きい物音とか声がしても気にしないでね…♥」
「えぇぇ…。」
何をするつもりですか…と横に立つヒソカをジト目で見つめるも、
当の本人はその真意をほぼ隠そうともせず胡散臭い笑みを返してくる…。
そんな遣り取りを続けていると、各部屋に備わっているインターホンが鳴った。
開けて出てきると、先程ヒソカが言っていたように、衣装とヘアメイクの担当が到着したようで、
いいよ本日のメインイベントに向けての準備をすることとなった…。
・
・
・
・
「それでは、レンタルの衣装はお部屋にそのままで、チェックアウト時にホテルにご報告だけお願いたします。お代は前払いでいただいておりますので、そのままご帰宅されて問題ございません。」
「ん、どうも♦」
「他にご質問等ございませんようでしたら、こちらで失礼いたします。」
「ハイハイ、ありがとう♥」
引継ぎを終わらせてヘアメイクの担当が部屋を出る。
パタン…と、ドアが閉まったのを確認して、ヒソカはyouの元へと向かう…。
「you、お疲れ様♦」
「ヒソカさん、すみません、お待たせしました…!」
「!」
くるりと自分を振り返ったyouの姿を見て、一瞬だけ目を見開くヒソカ。
youが着替えと諸々のメイクを施してもらっている間、
ヒソカもまた洗面台に籠って色々と準備をしていたため、ちゃんと顔を合わせるのは今が初めてという状況。
「ほうほう」と顎に手を当ててドレス姿のyouを前から後ろからじっくりと眺め、
至極満足そうに熱量の込んだ溜息を吐いた。
「はぁ…っ、イイ、すっごくイイよ……ウン、いつものyouも好きだけれど…こうして特別に着飾ったキミの姿もまたとっても魅力的だ……♥」
「・・・。」
「そのドレスもね、ボクが選んだんだよ♥絶対youに似合うと思って…♥」
「・・・。」
「…you…?」
「・・・ぇ?」
「you、どうかした?準備に疲れちゃったのかな、大丈夫かい?」
「ハッ!え、いえ、ちが…違くて…!」
「??」
「ヒソカさん……綺麗過ぎて…!まともに見れない…!!!」
「おや…♥」
それで放心状態だったのか…と、目を点にするヒソカ。
それもそのはず…。
彼女と同様に恐らくはオーダー仕様であろう…。
シルエットの見栄えが格段に良い来賓用の特別なスーツを身に纏い、
いつもの重力に逆らったオールバックではなく、髪を下ろしているヒソカ。
いつもとはまた違う余所行き用といったところのメイクをナチュラルに施して、
荒事よりも社交界に精通していそうな雰囲気を醸し出している。
「褒めてくれて素直に嬉しいよ、どうもありがとう、you♥」
「本当の事ですから…。」
「ウン、だけどそれはキミだけじゃない…ボクだった同じくらいの感想を今、この瞬間、キミに抱いているよ?とっても素敵だって♥」
「あ、ありがとうございます……衣装のチョイスも、他の手配も全部ヒソカさんと先程の方のお陰なので…感謝してます。」
「じゃあ、さしずめyouはボクの着せ替え人形といったトコロかな?ううん、それはそれで……イイ響き♥」
「は、はぁ…??」
「穴も使わせてくれるお人形なら言う事無いくらい最高なんだけどねぇ…」
「え、何……聞こえない…。」
「ううん、コッチの話だから気にしないで♥」
「??」
「本音を言えばもっとお人形さんをじっくり愛でる時間が欲しいところだけど……そろそろ会場へ向かわなくちゃ…♦」
「あっ、本当ですね!」
油断してました…と、ハッと我に返って近くに置いていた携帯で時間を確認するyou。
それをそのまま小さなパーティー用のバックに仕舞い、立ち上がると、
既に部屋を出ようとしているヒソカの背中を追いかけた。
バタン、とオートロックのドアが閉まったところで、
ふいにyouがヒソカを見上げて「あ、そうだ、ヒソカさん」と声を掛ける…。
「ん?どうしたの、忘れ物?」
「いいえ、たださっき「本音を言えばもっとじっくりこの姿を愛でたかった」って言われたじゃないですか。」
「うん、言ったね♥」
「あれ、わたしもだな、って。このままカッコいいヒソカさんをずっと眺めてたかったな~…なんて。まぁ、パーティー行きたくない言い訳というのもちょっとだけ含まれるんですけどね。」
「っ……!」
「まぁ、ここまで来たら腹を括りましょう…!」
そう言って笑いながらエレベーターホールへ向かうyouの肩に後ろから手を伸ばすヒソカ…。
本当はそのまま抱きしめて、驚く彼女に無理矢理口付けた後、
今一度部屋に戻って、ベッドに引きずり込みたいくらいの衝動を、グッと堪える…。
伸ばした手を、反対の手で掴んで力を込める…。
そうでもしないと、割と容易く本能のままに行動してしまう自信しかなかったためである。
最大限にセーブしたものの、一瞬だけ微量に漏れ出た念のオーラに、youは反応してくるりとその場を振り返った。
「…ヒソカさん?」
「もう……ダメだよォ?そういう嬉しい事を言われると、ボクも我慢というものができなくなる…♠」
「がまん…?」
「ウン…まぁ、今鎮火したからいいんだけども…♣」
「???」
「まぁいいや、ひとまず会場に向かおうか…♦」
「はい!」
ポン、と優しく彼女の背中を押して、再び歩き出すように促す。
そうして、ヒソカの真意に気付くことなく、朗々とした声で返事をし、
到着してエレベーターに乗り込むyouであった…。
・
・
・
・
「うぅ……いざ到着してみると…煌びやか過ぎて無理…場違いが過ぎる……やだ、もう帰りたい…。」
「泣き言が早いなぁ…♠」
ホテルのフロントに手配を依頼していたタクシーに乗り合わせ、会場へと到着した2人…。
受付で手続きを済ませて、会場の中に入ると飛び込んできた非現実世界…。
高い天井に吊るされたキラキラと輝くシャンデリア。
小規模ではあるが、BGMはスピーカー音源などではなく楽隊の生演奏。
立食パーティーなのだろう、中央に何列も設置されている料理も普段お目にかかることのない食材やメニューばかりだ。
何より、ガヤガヤと賑わうパーティーの雰囲気を作り出している角界の著名人らの顔ぶれに気おされ、
youは早速、ここに来たことを後悔し始めたという流れである…。
「はい、you♥」
「い、いつの間に…!」
「乾杯★」
「か、乾杯…。」
いつの間にスタッフから受け取ったのか、食前のウェルカムドリンクで配られているシャンパンを手渡してきたヒソカに、
困惑しながらも誘われるがままグラスを受け取り、グラスを合わせた。
「くっ…流石に上級国民用のシャンパン……悔しいけど美味しい…。」
「ククク、流石に卑屈過ぎるでしょ…面白いなァ、youは♦」
「だって…。」
こうなったら高い料理とお酒をたらふく飲み食いして帰ってやる…と心の中で思ったことを口に出そうとした刹那、
会場が突如として暗転し、その後、ステージ上にパッとスポットライトが当たった。
先程までガヤガヤと騒がしかった会場が一瞬で鎮まると、司会の紹介を受けて壇上に祝賀会の主役である大物政治家が登壇。
ヒソカが受け取った招待状の案内通り、この会が出版された本の祝賀会であることや、
招待客への感謝の言葉を述べると、少し本の内容に触れた後開会の挨拶を終了させた。
その後、数人の来賓者のスピーチなどを経て、歓談の時間となる…。
「…何か、意外にあっさりしてましたね…もっと色々長々と本の話をするのかと…。」
「どうせゴーストライターありきの自伝本だろうからね、自分が語ったことを編纂して本にしてもらっただけなんじゃないかな?」
「なるほど!」
「あ、今の本人の前で言っちゃダメだからね♥」
「い、言いませんよ!」
「そ、じゃあ行こうか♦」
「い、行くって…。」
「招待状もらったからには、挨拶しておかないと♥」
「う…。」
「youは後ろにいるだけでいいんだから、楽なモンでしょ?」
「それはそう…。」
「さっさと挨拶済ませたら、後は自由に動けるよ?沢山料理食べるんでしょ?」
「食べます…飲みます……行きます…。」
「うん、じゃあ……はい、どうぞ♥」
そう言って左の腕を少し浮かせてyouの方へと向けたヒソカ…。
youは腕とヒソカを幾度か交互に見た後、おずおずと自分の腕を絡ませた。
「本日はご招待いただき、感謝申し上げます♥」
「君は…。」
「ヒソカです、ヒソカ=モロウ……天空闘技場に招待状が届いていたので♦」
「おおお!ヒソカ!あのヒソカか!!いや、TVで見た様子と全く違うから気が付かなかった!そうか、来てくれたのかヒソカ君!」
「ええ、よく別人と……あぁ、自伝本のご出版、おめでとう…じゃなくて、おめでとうございます♠」
「自伝本にも書いたがね、私は昔っから天空闘技場の試合を見るのが好きでね!バトルマニア…と言ったらいいのか…他にも幾人か招待状を送ったくらいだ。いつも血沸き肉躍るような試合を魅せてくれてありがとう!」
「お褒めに預かり光栄の限り♦」
「フロアマスターまでもう少しだな…いや、君ならそのくらいは容易かろう!バトルオリンピアで戦う姿を楽しみにしているよ!」
「…♠」
「わざわざ来てくれてありがとう、TVではなく、いつか実際に試合を見に行かせてくれ!」
「是非♦」
「それではな、時間が許す限り楽しんでいってくれ!」
会話内容から、大物政治家からの暗殺や殺人の依頼などではなく、
単に格闘マニアだからお気に入りの選手に会いたいという軽い理由での招集だったことが判明し、少しだけ安堵するyou。
挨拶を済ませて、また別の招待客との会話に入っていった政治家を見つめていると、ヒソカに声を掛けられた。
「さて、挨拶も終わらせたし……あとはご飯食べて帰ろうか♥」
「はいっ!あ、そういえば…。」
「ん?」
「ヒソカさん、めちゃくちゃ頑張って敬語使ってましたね……ちょっとおもしろかったです。」
「酷いなァ……youじゃないけど、ボクも慣れない事して大分疲れたカモ♣」
「ふふ…。」
そんな会話をしながら、立食スペースの方へと向かう途中、
youが手洗いに抜けてもいいかと言うので、ヒソカはそれを見送る。
一人になってしまったので、戻って来るyouのために
何か料理でも取っておこうかと、料理の並べられたテーブルを眺めていると…。
「あの!さっき偶然聞こえちゃったんですけど…貴方もしかして……あの、天空闘技場のヒソカ?さん?」
「そうだけど…♣」
「嘘うそっ!本当?!本当だったよ、皆!全然違うんだけど!え、めっちゃイケメン!!」
「・・・♠」
先程の主催者の政治家との挨拶を聞いていたのか、来賓の女性に声を掛けられた。
自分が本物のヒソカだと告げると、恐らく戦闘時の奇術師メイクとのギャップに兎に角驚嘆し、今の状態に好感を抱いたのか、
周囲で距離を取っていた他の女性陣に声を掛け、呼び寄せる。
こういった事態には今までも幾度となく遭遇したことはあるものの、
それが少なくとも彼が好む空間になったためしは一度も無い。
今までは会話に飽いたらスパッと切り上げてしまっていたが、
今回はどうだろうか、少なくともyouが戻れば解決することか…と小さく息を吐く…。
「髪下ろした方がカッコいいのに~、何で普段からそうしないんですか?」
「別にいいだろう、ボクの好きにしたって…♠」
「えー、勿体ない!絶対今の方がモテるのにー!」
「でも、それは別にボクにとって何の得にもならないからね……髪を下ろしただけでボクの望むような強者(ヒト)が現れるなら、そうするだろうけど…♥」
「望むような女(ヒト)って?えー、どんなタイプが好みなんですかぁ?ここ、皆立候補者でーす!」
「ねー?」と声を掛ければ、周囲の女性陣も「そうでーす!」「立候補します!」などと、次々に賛同の言葉を重ねていく…。
恐らくはお酒が入っているのもあるのだろう、そういったノリもあって
ちょっと面倒臭いことになってきたな…とヒソカが大きな溜息を吐いた時…。
「…you?」
「!!」
手洗いから戻って来たyouが、大分距離を取って女性陣に囲まれる自分を見ていることに気付いたヒソカ。
近付こうとしたところで、youが右手の指をピンと立てて、
左手をGood!のポーズにしていたため、凝で指先を見てみると…。
『ヒソカさん、ファンサしててえらい!もう少し後で会いましょうね!』
「(ちょっと、勘違いも甚だしいんですけど!?)」
彼女は自分をアイドルか何かと勘違いしているのではなかろうかと…。
眉間に皴を寄せ、若干だが握った拳の血管も浮き出ているヒソカ…。
これはファンミーティングでも何でもなく、ただ酒に酔ったセレブの女性陣にダル絡みされているだけですが?!と、不機嫌なオーラを滲ませるも、youは既に足早にバルコニーの方へと出ていっており、それに気付くことは無かった。
尚もずっと、話し掛けてくるこの女性陣をひとまずどうかしないことには…と、ヒソカは彼女らに声を掛けた。
「あー、悪いんだけど…ボクちょっとトイレに行ってくるから、またね♦」
「あっ、もう!まだ話終わってないのに~!」
気に食わないからと、サッと殺すなり気絶させるなりという対処も無くはないのだが、
そんな姿を彼女に見せたいとは思わず…、渋々ながらありきたりな「トイレに逃げる」という手段をとる事にするのだった…。
・
・
・
・
ヒソカが女性陣らからどうやって解放されようか考えている時、
静かなバルコニーに出て外の空気を吸っていたyouに、一人の男性が声を掛けてきた。
「こんばんわ、お嬢さん。」
「あ、こ、こんばんは…。」
見たところ初老とまではいかないくらいの壮年の男性だった。
身形の良いスーツを身に纏い、ブランドもののネクタイとチーフを胸ポケットに飾っているところから、
明らかにこの祝賀会に呼ばれるべくして呼ばれたのだろうと分かり切ってしまうお金持ちオーラ…。
youが一瞬「う…」とたじろいだのを見て、彼は慌てて自分は何者なのか、と話し始めた。
「ああ、怪しい者ではない。少し夜風に当たろうと出てきたら、可憐な先客がいたものだから…つい声を掛けてしまったよ。」
「は、はぁ…。」
「そう警戒しないでくれ…、こういった場所に呼ばれはするが、ちょっとだけ苦手でな…どちらかと言うと一人で家で古代遺跡や秘境や魔境の映像を見る方が性に合うというか…。」
「遺跡…ですか?」
思いがけず、自分の所属する仕事に関わる単語が出てきたもので、一気に警戒心を解いてしまうyou…。
その雰囲気を察したのか、彼も「ああ」と答えた。
「私はそういった過去の遺物が結構好きでね、遺跡や秘境、魔境なんかで探索をするハンター達のスポンサーになっていたりもするんだよ。」
「えっ、そうなんですか?!」
「そうなんだよ。まぁ、実際に興味があるのはそういったところで発見される遺産や財宝の方だったりするがね、報酬(見返り)ありきで考えているよ。あくまでもスポンサーなのだから。」
「い、いや、それでもお世話になっていることに変わりはないかと!」
「お世話になっている…?」
どういう意味だい?と問えば、youは真剣な眼差しで自己紹介を始めた。
「実はわたくし、新米ながら遺跡ハンターを生業としております!youと申します!」
「ハンター?!君がかね?見えないな…。」
「分かります、よーく言われます。見えなくてもそうなのです…!」
「成程…。」
「わたしの担当する遺跡へのバックアップではないかもしれませんが、協会に多大なるご協力をいただいていることに変わりはないので……折角なので、この場を借りて感謝の言葉をお伝えさせてください!ありがとうございます!」
「・・・・。」
ドレス姿で深々と礼を述べるyouを、じっと無言で見つめる男性…。
ゆっくり顔を上げると、予想もしない反応が待っていた…。
「you君…と言ったかね。」
「は、はい…。」
「君が発掘を担当している遺跡を教えなさい。」
「え…。」
「私が資金を援助しよう。」
「え、いや…でも…。」
「その代わり、と言っては何なのだが…。」
「?」
静かなバルコニーに、紳士靴のコツ…という音が響き、
youの方へと一歩ずつ距離を縮める男性…。
目の前までやってきたところで、彼はyouの手を掴んで腰を引き寄せた。
「?!」
「今夜、部屋に来なさい。そうすれば無条件でいくらでも……分かるね?」
「い、いえ、いえ、分からないです!そういう事はちょっと…!」
「何か勘違いしていないか、君……私はね「資金を出す」と言っているんじゃあないんだよ。」
「え…?」
「遺跡ハンターのスポンサーを降りてもいい……つまり「資金を出さない」と言っているんだが…。」
「そ、それって……打ち切るって……!」
「君が断る、ということは……今この瞬間から、つまり、そういう意味合いを持つわけだ。」
「そんな、そんなの!」
「いいじゃないか、たった1日でいいんだ。偶々だ。偶々出会ったのが遺跡ハンターの君だった。私の気まぐれに付き合ってくれたら、それで…。」
「…ッ?!!」
首筋に顔を埋められ、腰より下に手を這わされて、言葉が詰まった。
同じことをヒソカにされた時は一切抱かなかった、悍ましい程の嫌悪感と恐怖心で身が強張る…。
明らかに念能力者である自分の方が、この相手より遥かに強いことも、
能力を発動させずとも、ほんの少し力を込めて突き飛ばすだけで相手が壁に激突するということも頭では理解ができている…。
しかし、身体が恐怖心に支配されて動けない…。
それは、明らかに自分を人格のある人間として見ていない、傲慢な「男」という存在から向けられる性欲への恐怖と、
自分が断った所為で、遺跡発掘に従事する仲間たちが多大なる迷惑を被ってしまうかもしれない…という恐怖…。
状況を打破できない己の何と情けないことか…と、自分で自分を責めたくなったところで、
男性の行為が段々とエスカレートし始める…。
肌に掛かる息は荒くなり、ドレスをゆっくりとたくし上げられそうになったところで、
youはゆるゆると首を振り、蚊の鳴くように小さな悲鳴を上げた…。
「ゃ……っ、ヒソカさ…んっ!!」
「あ?」
何か言ったか…と、男が顔を上げると、恐怖心で震え、涙を流すyouの顔を見て…。
「泣き顔も気に入ったよ、さぁ、もう…」
「こんばんわ♥」
「だっ、だ、誰だッツ?!」
突如として背後から聞こえた声に、驚嘆の声を上げる男性。
バッとyouから身体を離して振り向くも、其処には誰もおらず…。
不思議に思って周囲を見回し、再度元の方向へ向き直ると、
youの肩を抱いて彼女を見つめる長身の男性……基、ヒソカ。
「ひ…ヒソカさ…っ…!」
「大丈夫、you?あんまり大丈夫じゃなさそうだけど……ね、色々と…♠」
「わ、わたし……どうしたら…ひっく…。」
「んー…?」
「わたしが行かなきゃ、遺跡発掘してる皆に迷惑掛かっちゃ…う、って……資金、打ち切られ…て…っ…。」
「あー…成程、そういうことね♣」
この場所が富裕層が集まる場であることや、先程見た状況と、彼女の発言で、凡そ何があったのかを察したヒソカ。
「また変な事に巻き込まれて、キミも懲りないねェ…♦」
「うぅぅ~~!!!」
「それで、皆の為に、youは行きたいの?」
「いっ、行きたいワケないじゃないですか……っ、わ、わたし……この方を好きなワケじゃないし…なっ、名前すら知らないのに…。」
「ねェ、そこは「わたし、ヒソカさんが好きなんですから」じゃないの?まぁ、いいけど…♠」
はぁ~っと盛大な溜息を吐いたヒソカ。
彼女の言葉が自分の思い通りにいかないのはいつものことなので、この際許容するとして、
一切として許容できないのは、目の前の男…。
youの身体に触れるのも、彼女を泣かせるのも、追い詰めるのも、
全ては「お気に入り」を管理する自分でなくてはならない…。
そもそも、自分より弱い人間が自分のお気に入りにちょっかいを掛け、
あまつさえ、傷物にしようなどという行為自体が彼にとって地雷に他ならない。
あらゆる禁忌(タブー)を犯しつくしたこの相手を、どう料理してくれようか…と。
相手の男を上から下まで吟味するようにじっくり眺め、陰湿なオーラを滲ませる…。
「ひ、ヒソカさん…。」
「何?」
「わ、わたし…行きたくない……、ヒソカさんといたい…。」
「ウン、りょーかい♥」
自分のスーツを奮える手で掴みながら、涙ながらに訴えてくる姿と、欲しかった言葉に、
腹の内に渦巻いていたドス黒い嫌悪の念が、秒で昇華される。
つい一瞬前まで、どんな手法で冥土に送ってくれようかと思考していた回路は、
そのまま怒りではなく、通常モードに接続されることとなった。
「どこの誰だか知らないけど……ボクの大事な婚約者(フィアンセ)を泣かせないでくれるかなぁ…?」
「お、男がいたのか…!」
「いてもいなくてもアレはダメでしょ…♠」
「う、煩い!私は、遺跡ハンターであるyou君の支援をしようと…」
「あーー……止めて、気安く名前とか呼ばないで、この子、ボクのだから♥」
「何なんだ貴様…さっきから無礼な口を…!」
「そう、じゃあ慣れない敬語でも使ってみようかな…♥」
「はぁ?!」
「彼女への支援は結構ですので、お引き取りを♥」
「んなっ…?!」
「ボクが十分、稼いでますので♥」
「きさっ…ま…この若造…ッ!」
「資金援助を取り下げられてもyouのためならボクが援助して構わないケド……こういうの、世に出ると貴方が困るんじゃないかなと思って♥」
「何だ…そっ、それは!」
ヒソカが徐(おもむろ)に取り出して、見せた携帯の画面には
先程、youに抱き着いていた男の写真…。
いつの間にだろうか、振り向いた瞬間を撮影していたらしい。
このご時世、何処にでも簡単に情報を流せますというのは、
富豪にとって最も不都合な、弱者の強みだ…。
無論、ヒソカは弱者でもないため、これはほぼ資金援助を打ち切らせないようにして
彼女を安心させたいだけなのだが、効果は抜群だった様子…。
男は「分かったから消しておけよ!」と、先程の傍若無人ぶりが嘘のように、
顔を真っ赤にして情けなくもバルコニーから撤退していった…。
「ん、行ったね♦」
「っ…?!」
「お…っと、大丈夫?」
途端、糸の切れたマリオネットのように、ガクンっと膝が折れてその場に崩れ落ちそうになったyouをヒソカがしっかりと腕を回して抱き留めた。
恐らくは緊張の糸が切れたからだろう…。
「ごめ、なさ……わたし、びっくりして……何であんなことになったのか…今もちょっと理解追い付いてなくて…。」
「そう…♠」
「あ、挨拶をしただけだったんです……ここにいるより家で遺跡や魔境なんかの映像を見たりする方が好きだって、そういうのに出資してくださってるというので…遺跡ハンターとしてお礼を言ったら…。」
「此処は基本、人でもモノでも、金で何でも買えるって思ってる人間しかいないからねェ……倫理感は皆無なんでしょ……知性や品性はお金で買えないのにね…♣」
「・・・ヒソカさん…。」
「ん?」
「…ありがとう、ございます…。」
それは「助けてくれて」とも取れうるが、恐らくは「キミは何も悪くない」とフォローしてくれる言葉を掛けてもらえたことに対してであると察するヒソカ…。
社会的地位を盾に、仲間を引き合いに出されていたこと…。
また、それが無かったとしても、初めて経験した男性の情欲からの恐怖心が、自分の反撃の意思を上回っていたこと…。
要するに、存在全てに於いて舐めた態度を取られた…という一連の流れ…。
そんな、様々ある理由から、実力行使を取れなかったことを理解した上で、
そういった弱さは別の話であり、そもそもこの状況で小賢しい悪事を働こうとする相手にこそ、まずは非があるあるのだと、遠回しに伝えてくれたことに対しての、感謝の言葉だと…。
「次からはもっと慎重に人と相対した方がいい…キミは誰でも信用し過ぎ…(まぁ、その最たる例がボクを惹き付けたことなんだケド…♥)」
「気を付けます…。」
「そもそも、キミがボクを置き去りにするから、こういうことになったんだよ……大いに反省してほしいものだね…♣」
「そ、それは…。」
「何かファンサだい……どう見たらそう見えるのか教えてほしいものだよ全く…!そもそも、ボクはアイドルでもなんでもない、ただの戦闘狂の奇術師だよ?」
「うぅ…。」
そんな自分がファンにくれてやるものがあるとすれば、血の雨を降らすか、はたまたオーラを込めた鋭いトランプで首を狙うことくらいだ…とぶすくれるヒソカ…。
そういった自分の勘違いから、ヒソカとの合流が遅れ、自分がこんな目に遭ったとすれば
もう自業自得の何物でもない…と、youは深く反省するのだった。
「まぁ、これ以上此処でキミを叱っても意味の無いことだから…」
「はい…すみません…。」
「続きはホテルに戻って説教するとして…♠」
「えっ?!」
「何?」
「い、いえ……何でもアリマセン。」
先程の富豪の男性とyouのどちらが悪いかという点に於いては、論争にもならなかったが、
youの取った行動に関しては矢張り別問題で、指摘する点があり過ぎる、ということらしい。
今回の件は、余程ヒソカを怒らせてしまったようだ…と、今になって気付くyou…。
結局、早々に主賓への挨拶を済ませてゆっくりパーティーを楽しむ予定はご破算で…。
会場に長居すれば、また先程の輩と鉢合わせる可能性もあり、そうなればお互い居心地は最悪だろう、と。
美味しそうな料理やスイーツ、多種多様な飲み物を横目に、早々と会場からの撤退を余儀なくされることとなった…。
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