番外編
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※ヒソカ長編『passing mark』の番外編ですが単体でも読めます
「借り物競争(レンタルリクエスト)!!」
「「?!」」
構えた時には既に遅し…
You Are Special!
passing mark番外編
それは天空闘技場で修行中のとある日…。
その日フリーだったyouが、買い物でもしようと200階クラスで与えられている自室から出て、廊下を歩いている時だった…。
「あれ、ゴンくん?」
「ん、あ!you!おはよう!」
「おはよう、何処かへ行くの?キルアくんは一緒じゃないの?」
「うん、ちょっと外の空気を吸いに。キルアはまだ寝てると思う。」
「そうなんだ、わたしもちょっと買い物に出ようかと思って。」
「そうなんだ!じゃあオレ一緒に付いて行ってもいいかな?」
「うん、勿論!」
「ありがとう!」
ぱぁっと明るい笑顔を見せるゴンに、思わず口元が緩む。
何と素直で綺麗な瞳なのだろうと、あどけない少年の真っ直ぐさに感心さえするyou。
1日のはじまりに、朝から出会えたのが彼で良かった、とも。
そうして2人でエレベーターで下層まで一気に下り、そのまま闘技場の外へと出たのだが…。
「わっ、何か朝から凄い人!」
「そういえば今日は祝日だったわね……闘技場のイベントみたいなのを開催してるのかも…。」
まだ朝の9時頃だというのに、闘技場の前ではキッチンカーやら露店のテントなどが並んでおり、大いに賑わっていた。
天空闘技場自体がバトルマニアのメッカでもあるため、基本的にいつも賑わっているのだが、
それを前置きしても、本日は親子連れやご年配の方々など…凡そ観戦目的だけでなく、イベント目的での人出でごった返している様子…。
ゴンとyouは口をあんぐり開けて、闘技場のエントランスで暫し立ち尽くすのであった…。
「ふぇ~…凄い人の多さだなぁ…。」
「ハッ!呆けてる場合じゃないか……ゴンくん、行こっか。」
「そ、そうだね…!」
別段目的も無いため急いではいないのだが、このまま入口付近に立ち尽くしているのも意味が分からないし、
邪魔になるだろう…と、早速の移動を決める2人…。
天気も良いため、近くのマーケットでお菓子やお弁当でも買って外でピクニックでもしようかと話しながら歩いていると、後ろからポンポンっと優しい手つきで肩を叩かれた。
背後に誰かが近付いていることは2人とも気付いてはいたし、別段敵意を向けられている様子でもなかったため、
恐らくはそこまで危険性の無い、闘技場の周辺でよく見かける腕自慢の一般選手のあたりだろう…と思っていたゴンとyou。
そもそも、200階に到達した時点で初心者狩りのターゲットにされた際の敵意などを思えば、
「それ」は確かに全くと言っていい程「無害な気配」だったのだ。
故に、2人はほぼ同時に、叩かれてすぐにくるりと振り返ったわけで…。
「「!!」」
だが、そこにいたのは男性でも女性でも子どもでも大人でもなく…。
「クマ…。」
「クマさんだ。」
風船を持ったクマの着ぐるみだった。
恐らくはこの賑わい…イベントの一環で雇われたのだろうクマのキャラクター…。
幼いゴンと共に歩いていたため、姉弟とでも思われたのだろう。
彼(彼女かもしれないが)は、愛らしい笑みの表情を浮かべたまま、手に持った風船を1つずつゴンとyouに渡すと、そのままモコモコした手を左右に振って去っていく…。
「風船もらっちゃった…。」
「うん……。」
「あっ、ありがとー!クマさん!」
「は!あ、ありがとうございますー!」
そうして2人して雑踏に紛れていくクマの着ぐるみに手を振って感謝を伝えた時だった…。
『借り物競争(レンタルリクエスト)!!』
「「?!」」
声は正直聞こえるか聞こえないかのものであったが、瞬間、2人が手に持った風船から異様なオーラが発された。
youがすぐに注視してオーラの元を辿れば、どうやらそれは風船そのものではなく、風船の下に紐でくっ付けてあるメッセージカードから放たれていることが判明する…。
「ご、ゴンくん……オーラはメッセージカードからだよ!」
「…何か書いてある…!!」
カードに記載されたメッセージを読み上げる2人…。
「えっと…『明日のPM5:00 天空闘技場前公園の噴水広場にて 今一番特別に思っている相手に その理由を伝える』…?何これ…。」
「オレも同じ事書いてある……や、待ってyou、裏にも何か書いてある……『課題を事前に当事者に伝える 時間を間違える 課題に適さない者を選出するなど 失敗した場合 以降1年間 念能力が発動できなくなる』……。」
「・・・。」
「・・・。」
「「ええええええ!!!」」
とんでもない事態に陥ってしまった…。
何故、あの時敵意を感じずともオーラが念能力者のものではないかと警戒をしておかなかったのか…と…。
いくら後悔しても時すでに遅し…。
晴れ渡った青空の下…2人の念使いの悲痛な叫びが響き渡るのだった…。
・
・
・
・
「っどどどどどうしよう!」
「おおお、落ち着こうゴンくん!キルアくんにとりあえず連絡を………しー…ちゃダメだ!これもしゴンくんの特別な相手がキルアくんだったらその時点で詰む!!」
「はっ!そうだよね、ダメじゃん、言えないじゃん!どうしよう…今一番特別っていう範疇だとキルアは勿論だけど、ハンター試験で友達になった皆や、念を教えてもらってる師匠や故郷のミトさんだってもしかしたら該当しちゃうかもしれない…!!」
「わ、分かった…とりあえず今から部屋に戻って渦中の相手を熟考しよう!該当しそうな人から連絡があったら「体調が良くない」とか「今日は一人で集中して修行しようと思ってる」って返そう!」
「そ、そうだね…!一人で集中したい、っていうのは通りそう…!!っていうか…他に手はないかな……さっきのクマを探して何とかする、とか…。」
「それはわたしも考えた……けどダメ、もう円に引っ掛からない……脱兎のごとく逃げてるよ…。」
「わぁああ…エン…はわかんないけど、どうしよう!折角念を覚え始めたのに、もう1年も禁止されたら困るよ!」
「わ、わたしもだよ!一体何のためにここに修行に来たのかと!!!」
先程までのピクニックにでも行こうなどという能天気で朗らかな会話は何処へやら…。
一転して、パニックののち、絶望と悲嘆に暮れる表情を浮かべ、
意気消沈した顔で天空闘技場の自室へとUターンさせられることとなったゴンとyou…。
「ごめんねゴンくん……わたしが買い物行くなんて言わなければ…。」
「…一緒に行くっていったのはオレだし…オレの方こそごめん…you1人ならクマも声掛けなかったかもしれないのに…。」
「それならわたしも、完全に油断してて…!」
「オレだって…もっと警戒してれば…!」
「・・・。」
「・・・。」
「「はぁぁ~~~…。」」
再びエレベーターで200階フロアに戻り、廊下に出た後でお互いに言葉を交わすも、
結果的に、タラレバをいくつ出したところで現状が変わるわけでもないため、2人は盛大な溜息を吐いて項垂れる…。
「じゃあ……ゴンくん……明日…17時ね…。」
「いや、17時だと遅いよ。」
「あ、そっか……17時が指定の時間だから…16時50分頃には噴水広場にいないとダメなのか…。」
「じゃあ……そのくらいに、またね…。」
「うん……。」
「……あのさ……オレ、特別な相手が沢山いるんだ……この国にいない人だって沢山……だから、もしかしたら明日に間に合わないかもしれない……そしたらオレ……おれ…念…使えなくなっちゃうのかなぁ……。」
「ゴンくん……。」
「youは…?youは大丈夫?」
「わ……わたしは………わたしも、どうかな……分からない、ダメかも…。」
「「ぜ……絶望的過ぎる…。」」
ガックリと肩を落とし、それ以降言葉も交わさずに2人して各々の部屋へと戻って行くのだった…。
自室に戻り、扉を閉めた後…。
youは深い溜息を吐いて、その場にしゃがみ込む…。
「(わたしの特別は……きっと決まってる、だけど……。)」
あの日、ハンター試験の時から、今日に至るまでの間…。
出会った人は多くいる。
言わずもがな、故郷の友人や家族も大事だ。
だがしかし…メッセージカードの課題に書いてあるように「今一番」と前置されている点を考えると、相手は1人しかいない。
「(ヒソカさん…。)」
だがしかし、だがしかし…なのだ。
「何処にいるんですか~~~!!!」
そう、渦中の相手の居所が分からないのである。
数日前、部屋を訪ねて来たヒソカから「ちょっとイルミに呼び出されたから出掛けて来るね」と言うだけ言って去り、
その後、市街や森林、山岳や夜景など……全く位置情報不明な背景で撮られたヒソカ本人や、
嫌がって怪訝な表情をしているイルミとの無理矢理撮った2ショット写真などが携帯へ送られてきており、
恐らくは私用船であちこち世界中を飛び回っているであろう状況が、絶賛ありありと理解できる状態なのだ…。
「明日の17時までなんて……絶対間に合わない…。」
だがしかし、間に合わずに念能力が1年封印された場合に、ヒソカから詰問に合うだろうことは必須…。
その際に「貴方が近くにいなかった所為です」など、どうして言えようか…。
そもそも、自分が油断していた所為で陥った状況を彼の所為にはしたくない…と。
そうなると、諦めるより先にやることは足掻くことしかないワケで…。
youは眉根を寄せながら、携帯を取り出してヒソカへと電話を掛けた…。
『もしもし、you?どうかしたのかい?』
「ひ……。」
『ん?』
「ひそかさ…。」
『んーー……?(さてはまた何か面白い災難に遭って自己嫌悪中…?)』
二言三言交わしただけで、何らかのyouの様子の異常を察するヒソカと…
絶対的な余裕を感じさせるヒソカの声を僅かに摂取しただけで、多大な安堵感と、更なる自己嫌悪に陥って胸がいっぱいになり、言葉に詰まるyou…。
『何かあったのかな?それとも、寂しくてボクの声が聞きたくなっちゃった?』
「~~っ!!」
『あらら……えーっと……ウン、どうしたの?何か言ってくれないと分かんないよ…?』
「ひ、っそかさ……ごめ…わたし…色々、や、やらかしてしまって…ッ!」
『ウン、そんな気がした…♠』
「うぅ~~…!」
『ハイハイ、で……何がどうなってる感じかな?』
「い、言えなくて……。」
『えぇ~~…♦』
それじゃ何も解決できないでしょ…と、少し呆れたような声色で感情を表すヒソカ…。
しかし、言えないものは言えないワケで…。
youはグズりながらも、課題より何より、一番尋ねたかったことを電話越しの彼に問うた…。
「ひそかさん……わ、わたしの…念っ、が…。」
『ねん?うん、念がどうしたの?』
「つ……使えなくなっても……とも…友達でいてくれますか…ひぐっ…っく…。」
『は?』
瞬間、電話越しであるにも関わらず、感じたヒソカの怒りのオーラ。
だが、それもまた真実から出た問いであるため、引くことはできないyou。
ヒソカから感じた怒りより、その後の答えが彼女にとっては重要だった。
『それは何の冗談?』
「冗談じゃなくて……まだ、if(もしも)の話…です、けど…も…ぅ…。」
『ああ、成程……うん、それなら話が早い……you…「ボクは何をすればいい?」』
「っ…!!」
『可能な範囲でいいから、話してみてごらんよ…何かできることがあるんだろう?』
「あ、ぅ……ヒソカさん……。」
『うん?』
話の流れを即座に察し、お互いにとって最悪な事態をまだ回避できると察し、その術を探るヒソカ…。
「ヒソカさんに……あいたい……うぅう…。」
『おやおや……♥』
「ごめんなさい…すみません……でも今忙しいの、分かって…ます…ひっく……だから…!」
『ウン、それは大丈夫♥、ここでボクが抜けても多少イルミの手間が増えるだけでそんなに痛くもないだろうし…そも、ボクだけじゃなくてイルミにとってもキミが念能力を使えなくなる方が色々困るし♠』
「うっ…ぅ…。」
『今から戻るよ、多分明後日かその翌日頃には…着…』
「うわぁああん~~!!」
『?!!?』
「ヒソカさ…ヒソカさん、ごめんなさい、間に合わない、ですぅ…。」
『…♠』
「次にお会いする時は一般人ですね……また1年後……お会いしましょうね…うっ、うっ…。」
『大分情報が足りないし多い……♥』
先程まで深刻でナーバスでメロウな雰囲気だった会話が、急に一転…。
ちょっと大分面白い反応なんですが…と、不謹慎ながら一瞬吹き出し掛けるヒソカ…。
コホン…と、咳払いをひとつして、改めて彼女にどうすれば助けられるのか、と尋ねてみる。
『じゃあ、いつまでなら間に合うのかな?流石に今、この瞬間…というのは難しいんだけども…♣』
「明日の、17時までに……天空闘技場前公園の噴水広場なんです…。」
『場所の指定もあるのかい……たった数日の間で大分面白い事になってるみたいだねェ…♦』
「お、面白くないです…っ!ぜんぜん、ぜんぜんおもしろくないぃ…っ!」
『ゴメンごめん……とりあえずイルミに話して、そっちに行くから♣』
「うぅ……ひそかさん、ごめんなさい…。」
『ハイハイ、もうゴメンはいいから……どうせまた会った時にも沢山言われそうだし…♠』
「お、仰る通りかと思われます…。」
『はーい、じゃあね……あ、そうだ!』
「?」
『youの声聞けて良かった、電話ありがとう……何より、ピンチの時にボクを頼ってくれて嬉しいよ…♥』
「っ……ぁ、ち…ちがくて……いや、違わないかもなんですけど……ピンチだからじゃなくて……ヒソカさんじゃないとダメなんです……他の人じゃダメで…わたし……ごめんなさい、ご迷惑をお掛けして……で、電話、切ります…!」
『ん゛・・・・ッ…♥』
そして最後にこの殺し文句かい…と、ぎゅっと目を瞑り、空いた方の拳を握るヒソカ…。
「頼るではない」という彼女の言い分はどうだか分からないが、
泣きながら自分しかいないと電話をくれる事は「頼る」以外の何でもないのでは…と思いながらヒソカは電話を切ってポケットに仕舞う…。
すぐにでもイルミに状況を話して帰路に着かせてもらおうかと思ったのだが…。
「…うーん……流石にこの状態で行(イ)ったら、イルミに刺されそう(針とか針とか…)…♥」
勃ちのぼった自身をチラッと見て、てへ…と舌を出すヒソカであった…。
・
・
・
・
翌日……時刻は夕方、16時を40分程過ぎた頃…。
まだ少し人通りがあるが、もうじき迎える夕飯時にはその殆どが1人2人と姿を消すであろう時間帯…。
場所は天空闘技場の近くにある大きな市民公園の広場…。
相対するゴンとキルア…。
そしてyou…。
そこにヒソカの姿は無かった…。
「you、相手はちゃんと来る?大丈夫?」
you自身よりも不安そうな表情でそう尋ねてくるゴン…。
自分も不安だろうに、こんな状況でも他人の心配をしてくれる彼の心遣いが嬉しくて、
youは「ありがとう」と苦くも笑った。
「間に合わなくても仕方ないの、すごく遠い場所にいるみたいで……寧ろ無茶を言ってしまって、仮に来てくれても申し訳なくて…。」
「好きな子に指定された(待ち合わせ)場所に時間通り来るだけのことは無茶なお願いとは言わない…♣」
「ひ、ヒソカさん?!」
「やぁ♥……16時55分……ウン、間に合ってるね?」
背後から声を掛けられ、後ろを振り向けば、そこには昨日恐らく遠い場所にいたであろう奇術師の姿…。
「ど……ど、して…。」
「どうしても何も……キミがボクを此処に呼んだんでしょ…♦」
「でも、でも……間に合わないって…!」
「何度も言うけれど、奇術師に不可能は無いの……♥」
「~~!!」
途端、ぶわっと溢れ出した涙を拭おうと手を動かせば、
その手を掴まれてyouはヒソカの胸に引き寄せられた。
さて、再会も果たしたことで、今から色々と彼女を問いただしてもいいだろうか…と、
ヒソカが眼下のyouに目を向けたところで、はた……と、自分達に向けられている視線に気付く…。
「おや……誰かと思えば…(気付いてはいたけど)…♥」
「「ヒソカ?!!」」
ゴンとキルア…。
2人して声を揃えて、2人して指さして叫ばれた。
その後、すかさずキルアが猫のように警戒心剥き出しで、その銀髪を逆立てて捲し立てる…。
「何でお前がここにいるんだよ?!」
「youに呼ばれたからだよ……キミ達こそ、どうしてこんなトコにいるんだい?」
「オレはゴンに呼ばれたんだよ!」
「ゴンに…?」
「そうだよ…。」
フンっと鼻息荒く腕組をするキルアを他所に、ヒソカはyouを抱きしめたままの状態でゴンに視線を送る…。
その視線に気付いたゴンがヒソカ越しに公園に設置されている時計を見て、慌ててyouに呼び掛けた。
「you!時間!!!」
「ハッ!59分!!」
「もう17時になるよ!5,4,3…!」
「いけないッ!」
ゴンのカウントダウンを聞くや否や、youはヒソカからバッと距離を離し、彼に向き合った。
そして、17時きっかりになったとことで…。
「あのねキルア!オレさ、キルアのこと特別大事なんだ!いっぱいいっぱい色んな人のこと考えてみたけど、今一番特別な人って誰だろうって思ったら、ミトさんでもクラピカでもレオリオでもなくて、やっぱりキルアだった!前にも言ったけど、初めてできた同年代の友達で、ここで念を知って、修行できて、ずっと、毎日、一緒にいるのが楽しいんだ!だからこれからも、オレと友達でいてほしい!」
「ヒソカさん!わたしにとってヒソカさんが今一番特別な人なんです!今一番というか…ハンター試験のあの日から、多分…ずっとです。わたしのこと褒めてくれたり、ダメなところは指摘してくれたり、今だってこうしてわたしを助けようとしてくれて…言葉にできないくらい感謝してます…念が使えなくなっちゃったらわたし、傍にいられないかもしれないけど……もし、そうなったとしても、また修行を頑張るので…そしたらまた…た、たとえ…1年後でも、もっと後だったとしても…また…わ、わたしと……友達になっていただけますか…っ?」
「・・・。」
「・・・。」
「「何て?」」
とりあえずゴンはキルアに、youはヒソカに対して何らかの言葉を伝えたかった…というところまでは察せられたが、
如何せん17時になった瞬間、ゴンとyouが同時に何かを喋り出し、ほぼほぼ同時に何か言い終わったため、
全く何を喋っているのか理解できなかった様子のキルアとヒソカ…。
「え……えーっと……。」
「じゃ、じゃあ……ゴンくんから、どうぞ…。」
「えっ?!いや、youから!」
「やだ、じゃあジャンケンしよう!負けた方が先ね!」
「わ、わかった!せーの…ジャン、ケン、ポン!!」
「あ、勝った…じゃあ、ゴンくん、どうぞ…。」
「あー……えっと…じゃあ…あの、キルア…あのね…。」
謎の譲り合いが発生したのち、ジャンケンが発生…。
それを経て、ゴンがおずおずと話し出した…。
「あ、あのねキルア!オレさ、キルアのこと特別大事なんだ!いっぱいいっぱい色んな人のこと考えてみたけど、今一番特別な人って誰だろうって思ったら、ミトさんでもクラピカでもレオリオでもなくて、やっぱりキルアだった!前にも言ったけど、初めてできた同年代の友達で、ここで念を知って、修行できて、ずっと、毎日、一緒にいるのが楽しいんだ!だからこれからも、オレと友達でいてほしい!」
「はぁ?」
「いや、だからね…キルア、これからもオレと…。」
「いや、そーじゃなくて!」
「何、それ!何でお前そんな急にこっ恥ずかしい台詞言い出してんだよってハナシだよ!」
「こ、こっぱずかしくない!オレの素直な気持ち!」
「~~~意味分からんん!!何だ、何があった!絶対ェ~何かあっただろ!いや、ゴンだけじゃない!youだって同じだ!何か変な事があったんだろ、そうだろ!言え、何があったか言え~ッツ!!」
「わぁあああ!!ちょ、ちょっと待ってよキルアぁ!!」
キルアに胸倉を掴まれてガクガクと揺さぶられるゴン…。
そんな2人を珍しく微笑ましく見ていたヒソカだったが、ふとyouに目を向けると、
彼女が顔を真っ赤にして頭を抱えていることに気付き、声を掛ける。
「you、どうしたんだい?大丈夫?」
「ひゃい?!」
「…そういえばキミも色々話をしてたけど……あれはボクにだよね?」
「・・・。」
「you…?」
「こっ恥ずかしい台詞……言いました…多分…いや、絶対…。」
「・・・♥」
「い、言えない…!今更言えない!」
「うん、でもあれ何となく理解できた…♥」
「なん…?!」
自分の素直な気持ちを吐露することは大事なことであると思っていたのは間違いないし、
わざわざ自分の為に間に合うように駆け付けてくれたヒソカには、それをちゃんと伝えるべきだとも…。
ただ、キルアに「素直な言葉はこっ恥ずかしい」と言い切られてしまい、
この場に於いて珍しく羞恥心で言葉が紡げなくなったyou…。
そんな風に、その場で悶絶したい気持ちに駆られた刹那…。
シュゥゥゥーッ…という音がyouとゴンのポケットから鳴り出した。
2人して瞬時にハッと真顔になったかと思えば、同じような動作でポケットから1枚の紙切れを取り出し、見つめる…。
そして…。
「消えた……!」
「き、消えた…文字が消えたよゴンくん!」
「うん、うん!消えたよ!解放されたよオレ達!!やった、やったぁああ!!」
「良かったぁあああ!!!」
涙目で飛び跳ね、抱き合い、また飛び跳ねる…。
そんな2人を暫し呆けた表情で見ていたキルアとヒソカだったが、
いつまでもそうしている彼等が、一向に何の説明も行わないのに対して憤ったようで
ツカツカと歩み寄り、ゴンの頭上から強力な拳骨を喰らわせた。
「い゛…ッ…っつぁ~~!!!」
「お前らいい加減に説明しろ!」
「「あい……。」」
キルアの喝に「すみません…」と言ってシュンと俯くyouとゴン…。
そして2人はキルアとヒソカに前日から今日までの経緯を説明した…。
「……というような事がありまして……お2人に大変ご迷惑をお掛け致した次第でございます…。」
「以後、敵意が無いからって油断しないように注意しますッツ、絶対、ぜーったい!!」
「己の未熟さを省みて修行に励みます…。」
言い訳をするでも、各々を庇い合うわけでもなく、
自分の注意力や判断力など、兎に角の力量不足を認識して反省の色を滲ませるのであれば、
もう何も指摘することも無いだろう…と、キルアもヒソカも小さな息を吐いた。
「厄介な技掛けられやがって……兎に角まぁ……無事に解放されて良かったよ…。」
「そうだね♦2人とも念を封印されなかったようだし、キミ達の熱い友情を語り合う姿も見れたし…ボクとしては結果オーライって感じ♥」
「ヒソカ~~!お前いつか殺すッ!!!」
「本当?待ってるよ♥」
「っだぁああ!!」
そういえばこういう奴だった!と、行き場の無い怒りを自分の髪にぶつけ、ガシガシと掻くキルア…。
ひと段落ついたところで、安堵したのか…ゴンのお腹の虫がグゥウウ~っと鳴り出して、一同同じ方向を向く…。
「あはっ、安心したらお腹すいちゃった……ねぇ、皆でご飯食べに行かない?」
「そうだね、もうそろそろ夕飯時だしね…。」
ゴンの誘いに乗るように、コクリと頷いたyou。
そうして先頭を切って歩き出したゴンがくるりと振り向く…。
「じゃあ行こうよ、キルア、you!」
「どうしてそこにボクが入っていないんだい、ゴン…♥」
「え、ヒソカも……まぁ、いいけど…。」
「つれないなぁ……♥」
と言いつつも満更ではない様子のヒソカ…。
しかしながら、彼はその場を動かず、同じく移動を始めずに横に立っているキルアに目配せする。
「だって、どうする?ボクはどっちでもいいんだけど……?」
「~~~ッツ!!」
ニコっと胡散臭い笑顔を浮かべると、キルアが猛ダッシュでゴンを追い抜いて叫ぶ…。
「変態ピエロと飯なんか食うかよ!ばぁあっか!!!行くぞ、ゴン!!」
「え?え?!あ、ま、待ってよキルア!!!」
キルアは流石の足の速さで、どんどん距離に差が出てしまう。
そんな彼にに追いつくべく、走り出したゴンだったが、後ろを振り向けば追いかけては来ないであろう様子のyouとヒソカの姿…。
「ごめんね、you、ヒソカ!オレ、キルアを追いかけなきゃ!」
「うん、またね、ゴンくん!」
「うん、またね!今度はちゃんと、ピクニックしよーね!」
「はーい!」
ブンブンと大きく手を振って別れの挨拶を済ませると、すぐに前を向いて全力疾走を開始するゴン。
あっという間に小さくなった2人の背中を見つめyouは感心したように「早いなぁ」と呟く。
「ボク、ピエロじゃなくて奇術師なんだけどなぁ…♠」
「ふふ、そうですね。」
「一緒にご飯行けなくて残念だったねェ…♠」
キルアがゴンから言われた言葉が嬉しくて、破顔してしまいそうになっていること、
それを誰かに見られることが恥ずかしくて、プライドが許さないことを察したヒソカ。
一緒に行動して必死に表情筋を守るキルアの涙ぐましい努力を見たかった気持ちも勿論あるが、
それ以上に優先したいものがあった…。
「ボクらも夕飯にしよっか?」
「はい、そうしましょう!」
そう言ってにこりと笑って歩き出そうとするyouだったが、
その歩みはガッシリと掴まれたヒソカの大きな手によって阻止される…。
「ヒソカさん…?」
「ご飯に行く前に少しいいかい?」
「?」
「さっきのヤツ、改めてちゃんと聞かせてくれるかい?」
「さ…さっきの…。」
「そ♥」
「う…。」
「もうあの2人もいないし……いいだろう?それに、ボクはキミからその言葉を聞く為に、イルミの依頼を中断して戻ってきたんだから…♣」
「そ…その節は大変申し訳ございませんでした…。」
「はいはい、謝罪はもういいから……キミの言葉でボクに「ここに来て正解だった」って思わせてよ…♥」
カツ…と、靴音を鳴らしして1歩、また1歩と距離を縮めるヒソカ…。
本日何度目かの至近距離まで近付いたところで、じっと眼下のyouを見つめる。
「ぅ…。」
「you……ボクは未熟なキミを責めないし、今回だって振り回されたとも思ってないよ?何ならさっきキルアの面白い様子も見れたから、ボク的には満足してるし…♦」
「・・・。」
「課題、何だっけ『明日のPM5:00 天空闘技場前公園の噴水広場にて 今一番特別に思っている相手に その理由を伝える』……『課題を事前に当事者に伝える 時間を間違える 課題に適さない者を選出するなど 失敗した場合 以降1年間 念能力が発動できなくなる』…で、合ってる?」
「…合ってます…。」
「それでキミは昨日ボクに電話して、17時までに天空闘技場前公園の噴水広場に来てほしいって伝えた…♦」
「は、い…。」
「こうも言ったよね、他の人じゃダメ、ボクじゃないとダメだって…♥」
「い……言いました…ね。」
「それはつまり、キミにとっての「今一番特別に思っている相手」はボクって事?」
「・・・。」
「you…?」
「ぃ…ます。」
「え?」
「違います!いや、違わないんですけど!」
「えぇぇ…?!」
「ヒソカさん!わたしにとってヒソカさんは確かに今一番特別な人です!でも、今一番なだけではなくて…っ!」
「うん…?」
「ハンター試験のあの日から、多分…ずっとです。わたしのこと褒めてくれたり、ダメなところは指摘してくれたり、今だってこうしてわたしを助けようとしてくれて…言葉にできないくらい感謝してます…。」
「それはまぁ、いつも言ってるけど、キミはボクのお気に入りだしね…♥」
「お、お気に入りだったとしても……今回ので、例えば……念が使えなくなっちゃってたら、わたし、傍にいられなくなってたかもしれないじゃないですか…。」
「うーん…♠」
「仮にもし、そうなってたとしても、また修行を頑張ったら…そしたらまた…た、たとえ…1年後でも、もっと後だったとしても…また…わ、わたしと……友達…ううん、仲良くしていただけますか…?」
「勿論いいよ♥」
「あ…あり…」
「ちゃんとボクにとっての見守りたい存在(青い果実)として戻ってくるんだったら、全然構わないし、寧ろ探す手間が省けてありがたい♦」
「なる、ほど…?」
深刻に悩んだことが馬鹿バカしくなるくらい、あっけらかんと許容してくれたヒソカに、
肩透かしを喰らったように脱力するyou…。
何は無くとも、一先ず見放されることはないのだと…仲の良い関係でいてくれる気があるのだと安堵したのだが、
彼女に対して並々ならぬ歪んだ感情を抱いているヒソカにとってはそんな単純な話ではない。
ホッと小さく息を吐いた眼下の彼女の様子に眉根をピリッと歪ませた後、
ヒソカは「けど、それでいいの?」と言葉を落とした…。
「キミのことをいつも「特別だ」ってのたまうボクが、念が使えなくなったからキミを突き放して、また念を使えるようになったら会いに来ればいいよ…って、それでいいの?納得できちゃうの?」
「それは…。」
「それだとさぁ、ボクにとって他の相手と同じで…全然「特別」なんかじゃないですよね?って、言わないの?」
「っ…!」
「ボクは……そういう言葉がキミの口から聞きたいんだけど?」
youの頬に流れる髪をサラリと人掬いして、唇を寄せる。
そのままその耳元で「言ってごらんよ」と、彼女の内に溜めてる言葉を引き出そうと囁いた。
途端、再びぶわりと溢れ出したyouの涙…。
そうして震える指先でヒソカの服を少しだけ抓むと、彼女は泣きながら彼に尋ねる。
「ひ…ヒソカさ……わたし…っ、念……使えなくても……傍にいたいです…っ…。」
「ん♥」
「ずっと、じゃなくてもいいから……こんな風に会ったり、お喋りしたり、っ…お茶して、ご飯…行ったり……仲良くしてもらいたい、です…っ。」
「仲良く、ねェ…♣」
「おともだちで……いてほしいです…っ!」
「却下!!」
「!!!」
トドメの言葉は秒殺だった。
寧ろ少し怒り(念)を含んだ力で、ヒソカは彼女の頬をぎゅうっと抓った。
「いひゃい!すごく!!」
「もう、キミ、いい加減にしないと、流石に温和なナイスガイ奇術師のボクも怒るよ?」
「も、もう…(怒っているのでは…?)あ、いえ…すみません…。」
「そもそもただの友達は「今一番特別な人」の枠じゃないし、ボクも普通の友達の依頼で、理由も教えられずに「すぐ会いたい」なんて言われても飛んでかない……それに、キミだって…」
確かに、一般的な「友達」という言葉を使うのは、先程のゴンとキルアの関係性を挙げても適切ではない…。
彼等は「友達」ではあるが、もうその関係はそれの1歩上をゆく「親友」のそれだ。
であれば、ヒソカの言い分は尤もで…youは自分の発言を省みるほかなかった…。
「キミだって……ボクじゃないとダメなんて言わないはず…だろ?」
「仰る通りです…。」
「確かにキミとの関係性は恋人ではないし、まだ肉体関係も持ってないけど(まぁ、それはいつか絶対持つからイイんだけど)……抱きしめたりしたいし、されたい…キスだってしたいし、されたい、大事にしたいし、されたい……そういう感情がお互いにあるよね?ボクはあるよ…♥」
「あ……あると思います…。」
「声が小さいなぁ……でもやっぱり、それは……軽く考えられるような「友達」という間柄ではないと思うよ…違う?」
「相違ございません…。」
「だったら、それを踏まえてもう1度、ハイ、どうそ♥」
「友達」でも「親友」でも「恋人」でもない、なかなか難しい言葉選びを強いられたyou…。
だがしかし、これに応えてこそのヒソカと自分との関係性だ…と、彼女は息を飲む…。
そして…。
「ヒソカさん…わたし……わたし、ずっと…これからも…。」
「ウン?」
「毎日がんばろうと思うけど、挫けそうになったら…頼りたくなっちゃいます、きっと…。」
「構わないよ♥」
「美味しいものは一緒に食べたいなって思うし、素敵なものを一緒に見たいです。」
「いいね、それ、一緒ならきっと楽しいよ♥」
「っ……あ、明日も、明後日も……きっと、会いたい…!」
「♥」
「ヒソカさんに会いたい…。」
「you…♥」
「わたしにとって、ヒソカさんはずっとそういう特別な人です……それでもし、ヒソカさんにとってわたしもそうなら……これからも特別な存在でいさせてほしいです。」
「ん……まぁ、及第点…かな♥」
毎度毎回、相変わらずボクはキミに甘い…と、自嘲気味に笑いながら、ヒソカはyouを抱き寄せる。
「欲しい言葉も貰えたし、そろそろ許してあげるとしよう…♦」
「あ、ありがとうございます…。」
「さて、今日は何を食べようかな…?」
「あ、あのヒソカさん!」
「ん?」
「バタバタしてて言うの忘れてました!!」
「何…?」
「おかえりなさい。」
「!」
ありふれた言葉だが、自分を迎えてくれる彼女が改めて愛おしく感じたらしい…。
そっと身体を離すや否や、目にも止まらぬ速さで彼女の唇にキスを落としたヒソカ。
「ウン、ただいま♥」
ゴン達と夕飯を共にするものレアな経験として楽しいかもしれないと一時は思っていたが、
矢張り、自分の定めた特別な相手と交わす言葉や、その時々で目にする表情…
何より、お子様がいてはできない行為などを考えれば、
傾く天秤は決まっていたな…と感じざるを得ない。
「ま、お子様がいてもシたければスるんだけど…♥」
「何をですか?」
「ううん、何でもない、コッチのハナシ♥」
「?」
さ、行こうか…と、自然にyouの手を掬い取り、歩き出すヒソカ…。
気付けばもう日は落ちそうな夕暮れを迎え、オレンジに染まる公園に2人分の影が長く伸びていくのだった…。
これからも
どうしようもなく
特別なままなんだ
「んー…夕飯、何がいいかなぁ…。」
「ああ、そういえばキミ達に念を仕掛けた相手だけど……闘技場でつい最近200階に到達して念の洗礼を受けた選手だったみたいだよ…♣」
「え。」
「能力に目覚めて、色々試したかったみたい…youとゴンの話を聞いた感じだと特質系かな……敵対した時に瞬時にノックアウトできれば全く怖い事無いけど、一度相手の土俵に上がったら結構厄介そうな能力だよね…♥」
「た、確かに…でも、ペナルティは大きいですが、課題自体が平和的な内容だったのは何故でしょう…もっと酷い内容だったらと思うとゾッとします…。」
「憶測の域を出ないけど①相手が愉快犯②ペナルティと課題はランダム③ペナルティの大きさと課題の難易度が反比例する能力……なんかが有力かなぁ…?ボクの所感だと彼は①だと思うケド……♠」
「え?」
「ん?」
「ヒソカさん……もしかして……わたしとゴンくんが置かれてる状況……最初から知ってました…?」
「♥」
「ヒソカさん!!?」
「大丈夫だいじょうぶ……殺してないから♥」
「そうじゃなくて!ていうか物騒ですよ!?」
「ゴンの状況までは知らなかったけど……だって、他でもないyouが陥ってるピンチなんだから…ちゃと調べておかないとと思って…だからちょっと時間ギリギリだったんだけど…♥」
「(相手を探して状況把握して…と、いうことは……念解除させることもできたって事…なんじゃ…)」
「…だって、ボクを想って泣いちゃうyouが見たかったんだから仕方がないだろう…?」
「さ、最低だ…!!」
「そう?ボクは最高に嬉しかった♥」
words from:yu-a
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