ヨークシン編
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このボクは
この世の誰も
出会った事のない姿
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ゴウカクxノxライン
08:The Ferris wheel
「うわー…人がゴミのようだー!」
「それ何かの台詞だよね?もうちょっと可愛い感想お願い…◆」
「…夕暮れの観覧車、綺麗です。」
「そうだねー……もうあちこち外灯が点き始めてる♣」
「遊園地、夜も入れればいいのに。」
「…そうだね、大人の時間の遊園地なんて…ウン、素敵な響きだ♥」
「ふふっ…。」
「♠」
もうすぐで頂上だ…と、一人言のようにそんな話をしているyou。
ヒソカはそれをとても愛おしそうに見つめ、一度深く目を瞑った。
そっと、目を開き、目の前に座す彼女の名を呼ぶ。
「you…◆」
「はい?」
「…左手を貸してくれるかい?」
「はい…?」
よく分からないながらも左手を差し出すと、その上に重ねられたヒソカの手…。
大きな掌は、まるっとyouの手を重ね隠した。
「ボクはね、本当にキミのことが大好きなんだと思う。」
「ヒソカさん…?」
伏し目がちにそう言ったヒソカの雰囲気が、いつもとは違う。
怪しい中に飄々とした空気を感じさせるオーラが、今は「無」というに相応しいくらい消え失せている。
「だから、いつもするような打算計算無しに…ありのままを何もかもyouに話したい、いいかな?」
「・・・はい。」
「じゃぁ、いくよ?」
「え?」
「3,2,1…★」
「あ…。」
「0」と、言うと同時にヒソカの手が離され、それに続いてyouが「指輪が無い」と発言した。
どうして?と少し不安気にヒソカに視線を向けると、彼はにっこり笑って話をし始める…。
今までの話を。
「youとは突然出会ったよね♠」
「え、ええ……昨年のハンター試験でしたね。」
「その時は正直…キミがこんなに成長するなんて思ってなかったから、実を言うと、弱そうなキミにはあまり興味が無かったんだ…♣」
「ヒソカさんは、最初から念も使えていらっしゃいましたし…凄くお強かったですもんね。」
「ウン……だから、関わった事自体、声を掛けた事自体が本当に気まぐれだったんだ…◆」
「緊張しましたけど、お声を掛けてくださって嬉しかったです…ハートのエースも!」
嬉々として語るyouに、ニコリと笑みを向け、ヒソカは話を続ける…。
「再会は偶然だったね…その時、あの時の子がたった一年でこんなに美味しそうに育つなんて…って、驚いたよ♥」
「青い果実?」
「ククッ、そうそう♥」
「それは…有難いような…有難くない、ような…。」
「その時、キミはボクの合格のラインを飛び越えた♥」
「えへへ…。」
「嬉しかったよ……新しい玩具が増えた、って思った#mtr12」
「お、玩具ですか…。」
「ウン♥でも……そうじゃなかった…そうじゃなくなった◆」
「・・・。」
「天空闘技場で一緒に過ごして…色々あったね、200階クラス初勝利、不戦勝、キミの無防備さにボクが怒ったりしたね♠」
「はい…怒られました。」
「あと、イルミに会ったり、一緒に旅行したり…★」
「わたしはカストロさんと出会った事も大きな成長のきっかけだったかな。」
「2人で見送ったね…♣」
「はい…。」
「ああ、終盤はゴンやキルア、マチとも出会ったんだっけ?」
「はい!」
「そして、ボクはキミに好きだと言った♥」
「……ほんのひと月前のことなのに…何だか凄く懐かしいです…。」
「そうだね……そして、キミといた時間の…そのどれもが、ボクを魅了していったんだよ。」
「ヒソカさん…。」
「ボクは、過去に興味は無いけれど…キミとのことなら全部想い出せる。」
「すごいデショ」と、作ったヒソカの笑み。
まるで子どもが母親に「褒めて、褒めて」と強請るように、あどけない笑顔だった。
意外すぎる光景ののち、すっと開かれた目。
ヒソカのそれは自分の掌で鈍く輝くリングへと向けられており、
youも同じように彼の掌に視線を移した。
「最後に渡したこの指輪はね…キミへのプレゼントというより、束縛の鎖だったんだよ…◆」
「束縛の…鎖…?」
「そう、この裏を見てごらん?」
「これは…神字…?!」
デザインリングにしては少しだけ太めのリング…。
その裏にはびっしりと…神字で製作者の念が込められていた。
神字で掛けられた念は使用者が自ら用意した場合、思い思いの効能を発揮する。
しかし、誰かにその使用を強制する場合の多くは、その殆どが制約や制限を強いるものであるため、
ある種、呪いのようなそれを素直に受け取って使用する者は少ない…。
恐らく、youも神字を目にしていたら、嵌めるのを躊躇っただろう…。
今明かされた真実にゴクリと唾を飲むyouに、
ほんの微かに罪悪を感じたような声でヒソカが言った…。
「まず、それを作ったのはボクではなく、それ専門の職人。それはキミにはめるため、ボクが依頼した品。」
「ヒソカさん、が…。」
「そ♠…じゃぁ、内容を白状するね…。」
「・・・。」
それはおぞましい程の、ヒソカの歪んだ感情そのものだった。
「掟を破った場合、キミには死が訪れるようになっていた。」
「!!」
「発動の条件は、ボク以外の男と体液を交換するコト。」
「たいえき…?」
「性行為、って言ったら分かりやすいかい?」
「せっ…?!//」
衝撃の言葉に顔を赤くするyouだったが、
ヒソカは至って真剣な顔で、いつものように彼女をからかうこともなく淡々と説明を続ける…。
「キミのパーソナルスペースへの進入を条件にしようかとも思ったんだが、それだとホラ、キミは無防備だからね…あっさり人にハグしたりしそうだから、やめたんだ。」
「・・・は、ぁ…。」
「それで、その掟を破った場合……約ひと月弱かけて、念の呪縛が身体を巡り、死に至る。それが神字に込められた念。」
「・・ッ…。」
「どうして、ひと月かけて…だと思う?」
「それは……わたしが、ヒソカさんに会いに行かなければ、生かす価値が無いから…ということ、ですか?」
「30%正解ってトコロかな。」
「・・・。」
「あとは……もしも約束を破った場合……ヨークシンで再会して、弱って死んでいくキミを見届けたかったからさ。」
ニコリと、純粋に綺麗な笑みを浮かべたヒソカ。
それは今までの「謎」を含んだような笑みの真反対の性質のもので、
ただ、ありのまま、虚偽無くそう言っているのだと…。
そして、その気持ちが真実なのだという意味だった。
何より残酷な笑みだと、youは背筋が凍る。
それと同時に、今見ているヒソカが本当の彼自身だと確信した。
今まで接してきたヒソカとは似て、全く否なる姿。
しかし、その姿もまたヒソカなのだと…。
youを前にして、隠しきれない自分自身が現れてしまっている…。
その間、ほんの十数秒…。
そんなヒソカを見て、youはスッと目を細め、全て受け入れることをしようと…人知れず決意した。
「ボクのものにならないなら、この手から離れていくなら…いっそ失くしてしまおう……そう思っていたんだよ
「・・・っ…。」
「酷い男だろう、ボクは…。」
「・・・。」
「そういう生き方しか、できない、そういう方法でしかキミを愛せない…人として逸脱した…」
「ヒソカさん!」
「mad conjure(気狂い奇術師)なんだよ。」
「・・・。」
皮肉るように自分を揶揄したヒソカ…。
ただ、今はもう、それは彼女にとって取るに足らないただの形容でしかない。
youは、一度閉じた目をゆるく開いてヒソカへと微笑った。
「そんなこと、ないです。」
「・・you…。」
「わたしの間違いを諫めてくれたヒソカさんの言葉はいつも、すごく痛かった。でも、いつも、すごく…あたたかだった。」
「・・・。」
「わたしの成長を喜んでくれたヒソカさんの笑顔はとても素敵でした…頑張ろうって思えた。」
「・・・。」
「わたしのことを好きだと言ってくれたヒソカさんの気持ちが……切ないくらい胸に響いた。今も。」
「・・・。」
呆然とyouを見つめるヒソカの…力無く下ろされた手を、彼女はそっと両の手で掬い取った。
掌に収められている指輪を包むように手を重ね、ぽつり、言葉を落とす…。
「ヒソカさんの示す全ては凄くすごく歪んでいます。」
「・・・。」
「でも、その答えはとっても…まっすぐなんですね。」
「・・・。」
「だから、ヒソカさんは綺麗です。」
そう、柔らかに笑いかける。
「とってもきれいな、奇術師さんですよ。」
「・・・you…。」
「はい。」と、返事をするや否や、伸ばされた腕にyouは抱きしめられる。
彼女の肩口に顔を埋めるようにして、ヒソカはただひたすらにその名を呼んだ。
「you…。」
「はい。」
「you、you……you…っ…!!」
「はい、ヒソカさん。」
抱きしめ返すために回した両腕でぽんぽん、とヒソカの背中を叩く。
ぎゅう…と、一層強く抱きしめられたのち、少し身体を離された。
「ボクは、キミを好きでいていいかい…?」
肩口から離した顔を正面へと向け、至近距離でそう尋ねるヒソカ。
すると、youはいつぞやの彼の言葉で、気持ちを返した。
「好きでいてくださいよ……わたしも…ヒソカさんが大好きなんですから。」
「you…。」
「・・・ひとつ、聞いてもいいかい?」
「はい。」
「どうして…キミみたいなきれいな女(ひと)が、ボクなんかと一緒にいてくれるんだい?」
今度もまた、ヒソカは純粋に嬉しそうな笑みを浮かべた。
ただ、それは先程とは違い、幸せが溢れていただけのこと。
「それは…ヒソカさんのことを愛してるからですよ。」
「そうだったんだ…。」
「はいっ。」
同じくらい幸せそうに笑みを返したyou。
それからやっと、狭い観覧車の中、2人は密着した身体をようやく離した。
もうあと何十秒かで地上に着いてしまうだろう…。
「それからね、ひとつ……お願いがあるんだ。」
「なんですか?」
「今夜……キミを抱きたい…。」
「ん…と………よ、よろしく、おねがいします…//」
「ウン……ありがとう、you…。」
そうやってヒソカがにっこりと、まるで普通の青年のように礼を述べた後、
ちょうどのタイミングで観覧車の扉が開かれた。
words from:yu-a
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