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「皆で喧嘩になっちゃうなら、私はその日に一条くんのバイトを入れるよ……年末は忙しいって言ってたし。」
『ガーン』という効果音がピッタリな顔をしたカイジと零。
顔色こそ変わらないものの、一瞬眉がピクっと歪んだアカギ。
止めようと奮闘すればする程喧嘩になることは満場一致で分かっていたので、
それ以上何もいわずに解散するしかない…。
結果的にアカギ、カイジ、零の考えていた
彼女と過ごすクリスマス計画は儚い夢と化した…。
そして、その日…クリスマスはヘルプに出ることが可能だとyouは一条に電話で告げた。
「実はかくかくしかじかで……クリスマスはヘルプに出ようと思うんです。」
「凄く助かるよ!でも……クリスマスだよ??本当にいいの?」
「うん、次の日に皆で一緒にご飯には行こうねって話にはなったので…。」
「そっか……じゃぁ……お願いしてもいいかなぁ?」
「はい!こちらこそ!戦力になるか分からないけど。」
「とんでもない!助かるよ!……じゃぁ、24日、出勤で。」
「了解です!」
ピッ…と通話終了ボタンを押して携帯電話を閉じた。
一条のカジノは評判も良く、客入りも盛況のようで基本的にスタッフはいつも忙しくしている。
youはというと、一条に誘われてバイトに入るようになり
最近やっと仕事内容が理解できてきた…という状況。
仕事の場所はフロアではなく、常に事務所。
その内容は書類関係の整理。
youは知らないが、裏カジノということで公に認可されていない部位がある為
事務所には事務員が常在しておらず、基本は一条が事務一切を引き受けている。
几帳面できっちり資料管理や会計管理、整理整頓はできる彼だがいつも裏方で仕事をしているわけではない。
客層を確認したり売り上げを予想するため、一日何度かは自らフロアに顔を出す。
(それによって女性客が増えることも計画の一つなのだろうが…)
一条一人で手に負えない部分のサポート…。
youのポジションは今はそんなところだ。
「そうか……クリスマスは彼女と会えるのか…。」
ディスプレイに映った着信履歴の画面を見つめながら、一条は「ふむ…」と悩むのだった…。
そして24日の夕方…
「お疲れ様です、一条くん!」
「お疲れ様、youちゃん。」
「やっぱりお客さん多いですねー!びっくりしちゃった!」
「聖夜だっていうのに……みんな暇人だよね。」
自嘲を含んだ意味でくすくす笑いながら、一条は呟いた。
「それって私もですか?」と、youも笑い返す。
「それじゃぁ、オレはフロアの客入りを見てくるから…。」
「了解です!じゃぁまずは掃除してから書類の整理に取り掛かりまーす!」
「頼むね。」
綺麗に作った笑顔でyouを振り返り、一条はフロアに出て行った。
youはそれを見届けると「よーしやるぞ!」と腕まくりをして、掃除道具のロッカーへと向かった。
もう年末ということで、掃除を少し念入りにしようと考えたyou。
寒いのを我慢して窓を開けて掃除をし、事務所にあるデスク周りを徐々に綺麗にしていく。
掃除が終了したところで、一条の部下が事務所に戻ってきた。
「あ、村上主任!今からパソコン使われますか?」
「あぁ、youちゃん?今日出勤だったんだ?」
「あはは、暇人ってヤツでして。」
「彼氏とかいないの?」
「いたらここにはいないかと。」
「あははっ、そりゃ失礼!じゃぁ…店長相当喜んだろ?」
「年末は忙しいって言ってましたしね、結構喜ばれてました。」
電話で「助かるよ!」と喜んでいた一条の声を思い出し、嬉しそうに答えたyou。
逆に村上は自分の言わんとしていることが伝わらず、ちょっとだけ苦笑を浮かべた。
「そういう意味じゃないんだけど…まぁいっか……えーっと、パソコンだっけ?」
「はい!」
「今は使わないけど何かするの?」
「はい、クリーンアップとかしようかと思いまして。」
「あぁ、やっててもらうと助かるよ、多分誰もしないし。」
「じゃぁ、一応何かあったらいけないんで復元ポイント作って作業しますね。」
「うん、店長にはオレから伝えておくよ。」
「よろしくお願いします。」
youがやろうと思っていた一条への報告をさりげなく引き受けたところからも
村上が気が利く人間だということは読み取れる。
事務所での用事を済ませ、再びフロアに戻っていった村上を見送り、
youは人知れず彼の人間性に好感が持てると感嘆するのだった…。
「村上主任いい人!私もあんな風に自然と気が利く人間になりたいなぁ!」
などと、思ったことを言葉にしながらパソコンで作業を進めていく。
コンピューターは自動的に作業の処理をしてくれるものの、どうしても完了までに時間が掛かってしまう。
youは事務所のパソコンの作業が終わるまで、次の作業に取り掛かった。
それから伝票類をまとめたり、資料をファイリングしたり、
システムチェックの完了したパソコンの動作確認をしたり……
一条の机に置かれている書類の整理を完了する頃にはもう夜の10時を回っていた。
そして、ちょうどのタイミングで一条が事務所へ戻ってくる…。
「…ふーっ、あ!一条くん…おかえり!」
「わ…何か事務所キレイ。」
「うん!年末だし、気合入れて掃除とかしてみた!!」
「ははっ、凄いな…清掃業者要らずだね。」
「そ、そこまではナイけど…///」
「いやいや、十二分でしょ。ありがとう!」
「どういたしまして。」
「村上に聞いたよ、PCのチェックもしてくれたんだってね。」
「うん、しておいて損はないしね。」
「本当に助かるよ、ありがとう。」
やった作業を細かに説明し、特に目立ったミスや間違いは無かったようで
一条は改めてyouに笑顔で「ありがとう」と告げた。
「さて…じゃぁ後は遅番に任せて、そろそろ帰ろうか。」
「うん、じゃぁ帰る用意してくる。」
「あぁ、youちゃん!」
「?」
一条が荷物を取りにロッカーへ向かうyouを呼び止めた。
「なに?」と首を傾げてyouは彼に尋ねる。
「今日はこれから時間あるかい?」
「…うん、大丈夫だけど。」
「ご飯奢るよ、何食べたい?」
「マジっすか!何でもいい!一条くんのオススメで!」
「分かった、じゃあ先に駐車場に行ってる。準備して降りておいで。」
「はーい!」
仕事場には車で出勤している一条。
バイトに入る日、youはいつも一条に送ってもらって家まで帰っている。
youは「ただでさえ高額なバイト代をもらっているのに、申し訳ない」と断ったのだが、
彼曰く、youの貴重な自由時間を無理矢理自分のカジノに費やしてもらっているので
せめて送るくらいはさせてほしい……とのこと。
やっと最近それに慣れてきて、今のように「はい」と素直に乗車するようになったようだ。
今日もそれと同じようにして帰る準備をして、youは一条の車へと向かった。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「さて、どこに行こう……。」
「何でもよいよ!」
「じゃぁ……オレがよく行く店があるんだけど、そこでもいい?」
「うん!」
youが頷くと、一条はその店に「今から行っても大丈夫か」と一本電話を入れる。
遅い時間であるが、どうやら一条はVIPらしく受話器越しに
「はい!勿論!」と店主らしき男性の感極まった声が漏れた。
ピッと通話を終了させ、携帯を閉じて車のエンジンをかけた。
しばらく車を走らせて、目的の店に到着したようだ。
駐車場に車を止め、一条に一件のフレンチの店を案内された。
「ここだよ。」
「うわー……おいしそうな予感がする。」
「何か、店ごと食べそうな勢いだね。」
「そ、そこまで飢えてないもん!」
「ふふっ、そうかなぁ?」
とりあえず…と、youの為にドアを開いた一条。
流石にファミニストっぷりが板についている。
店に入って、一条が店主らしき男性に挨拶をする。
「閉店間際にすまない。」
「いえいえ、一条さんにはいつもご贔屓にしていただいて……これくらい当然ですよ!では、ご案内いたしますので。」
「メニューはいいから、いつものようにお任せしますね。」
「かしこまりました、すぐ取り掛かりますので。」
店主は恭しく一礼すると、案内をフロアの係りに任せて厨房へ入っていった。
キャンドルライトがふんわりと輝くテーブルに着席し、youは一条に話しかける…。
「素敵なお店だね……。」
「うん、騒がしくなくていいところでしょ、ランチも美味しいよ。」
「へー!いいないいな、ランチも食べてみたい!」
「youちゃんの時間さえ大丈夫なら、いつでも連れてってあげるよ。」
「わーい!嬉しい!」
満面の笑みを浮かべて喜ぶyouを見て、一条も自然と笑顔になる。
彼女をここに連れてくることで、その笑った顔が自分にまた向けられるのならば
ランチの代金くらい安いものだと……本気で思う一条だった。
綺麗に飾り付けされた料理が次々に運ばれて、その都度感動を顕にするyou。
「きれい!」「おいしい!」という、よく聞くありふれた言葉も彼女のものであれば特別嬉しく感じることができる…。
何となくだが、一条はそう思った…。
そして終始楽しく会話をし、食事を終えた2人。
去り際に出てきた店主に「また2人でランチにでも来ますね」と告げ、店を後にした。
「もうすぐ今年が終わるねー。」
「そうだね……youちゃんにとって今年はいい年だった?」
「うん!とってもいい一年だったよ!」
「そっか、よかったね。」
「だって一条くんに会えたじゃない?」
「え…。」
「福本荘に越してきて、皆に出会った仲良くなって……それだけでも嬉しい一年だったけど、
偶然か必然か……あの時一条くんに会えて、仲良くなれた……しかもカイジくんと友達だったりもして……。」
「それは腐れ縁ね。」
ハンドルを操作しながら、そこだけは強く言い切った一条…。
youは苦笑しながらも言葉を続ける。
「だから、今年は素敵な出会いがあった……とてもいい年でした!」
「じゃぁ、オレもだね。」
「ん?」
「youちゃんに出会えた素敵な年だった。」
タイミング良く車が赤信号で停止し、ブレーキを踏んだ一条がyouに微笑む。
「うん!」と大きく頷いて、嬉しそうに答えた。
そんなほんわかした雰囲気が車内を包み、良い気分で福本荘に到着した。
「今日はどうもありがとう、ご飯までご馳走になっちゃって…。」
「こちらこそ、来てくれて助かったよ……。」
「あ、そだそだ……メリークリスマス、一条くん!」
「メリークリスマス、youちゃん。」
「それじゃぁ、また次のバイトで!おやすみなさい。」
そう言ってyouが車のドアを開き、外に出ようとした時…。
一条が「あ、ちょっと待って」と、声を掛けた…。
もう既に片足を外に出していたyouはそのまま外へ出て一条を待つ。
すると、彼も車を降りて後部座席のドアを開けた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
youが不思議そうな顔をしていると、一条が顔を上げて車越しに笑う…。
「youちゃん、ちょっと目を瞑っててくれる?」
「え?はい、分かりましたー。」
「(それは流石に素直過ぎなのでは……。)」
あまりに無防備過ぎると思いながらも、今の状況では好都合と考えて
一条は何もツッコミはせずに彼女に近寄った…。
「もういいよ、目をあけて。」
「はい、じゃ、オープン!…………!!」
目を真ん丸くして一条と……一条が手に持っている「それ」を交互に見る。
「メリークリスマス、youちゃん。」
「は…っ、え?これ…。」
「アイディアが乏しいのかな、何も思いつかなくて……こんなものになっちゃったけど。」
「すごい!///」
「24日に会うことになるって聞いてから、折角だから何かプレゼントしようって思ってね。」
「ええ!どうしよう!私ただヘルプの日って思ってたから、何にも用意してないよ!」
「必要無いよ、オレが渡したかっただけ。」
「どうしよう、凄く嬉しい……ありがとう、一条くん……///」
youは瞳をキラキラ光らせて、一条が手渡したバラの花束を見つめる。
そんな彼女の嬉しそうな表情に少しホッとしたように一条が軽く笑いながら言った。
「薔薇の花束とか…ちょっと……イタイ感じかなぁとは思ったんだけどね。」
「ううん、全然!!嬉しい!!すっごくうれしい!///」
「そっか、よかった。」
「一条くんだから似合うのかもしれないけどね。」
「そうかなぁ?」
「うん!花束なんてプレゼントが似合う人なんて……早々いないよ、本当に一条くって素敵だね。」
「何だろう…君に面と向かって言われると、凄く照れるな…///」
「ふふっ、めずらしいね。」
「それはオレが君を……。」
「ん?」
「特別に想ってるからだよ、きっと。」
「……ふっ?」
目を細めて優しく笑った一条に不思議そうな顔をするyou。
ただ、その目があまりにじっと自分を見つめるので思わず顔が熱くなるのを感じた。
さっと俯いて目を逸らしたyouに一条が声無くふっと笑い、彼女の頭を優しく撫でる…。
そうすることでyouがまた自分を見上げることを知っていてのこと。
予想通り少し赤らんだ頬。
それは一条が今日一日でyouのことを一番愛しく感じた瞬間だった。
「一条、くん?」
「うん、それじゃぁそろそろ帰さないとね……これ以上は流石のオレでも送り狼になりそうだ。」
「ま、またそんな…///」
「ふふっ、じゃぁねyouちゃん。」
「うん……あ!プレゼントありがとう!今度私にも何かお礼させてね!」
「必要ないよ、本当。」
「で、でも…やっぱダメだよー!」
「うーーん……。」
腕を組んで暫し唸った後、一条が「あぁ!」と何かを閃いた様子。
youと話しながら運転席へと向かう。
「今度、youちゃんの時間をオレにくれないか?それがいいな。」
「じかん…?」
「ランチ、食べに行こう。」
「!」
ぱぁっと、花のような笑顔を浮かべてyou「うん!」と頷いた。
その表情をしっかり見届け、一条は車に乗り込む。
助手席の窓が開かれ、そこから覗く一条が「それじゃ」と別れの挨拶をする…。
「おやすみなさい、一条くん。」
「おやすみ、youちゃん。」
車がゆっくり走り出し、隣マンションの駐車場に入っていくのを見届けてから福本荘の階段を上る。
自分の家の前に辿り着き、鍵を取り出すために玄関で立ち止まると
抱えた真紅の薔薇たちと目が合う…。
youはにっこり微笑み、そっと一条のことを思い出すのだった…。
素敵な貴方と知り合えて、うれしいです。
(一条くん、この間はお花ありがとうね)
(どういたしまして)
(あのね、これ…お礼)
(いいって言ったのに!)
(だーめ!だって、私もあげたいと思ったから!)
(…じゃぁ、お言葉に甘えて…いただくね)
(よかったぁ!)
(あ、ネクタイ!ありがとう、しかもオレの好きなブランドだ…。)
(ぅん…)
(うれしいな……有難う、大事にするから)
(うんっ!!)
*。゜.*。゜.*。゜.*
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