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「ごめんなさいっ!やっぱり自分から誘った手前、約束を破れないや……!」
パシッと両手をあわせてゴメンナサイのポーズを取るyouに目を丸くするアカギたち。
「実はこの間平山さんとちょっと約束をしちゃってですね…。」
youいわく…
12月に入った頃に道でばったり出くわした平山と歩いて帰っていた時、
クリスマスは何をして過ごすのかが話題になったとのこと…。
『平山さんはクリスマスは何して過ごすんですか?』
『あぁ?何もしねぇよ、多分。寝てるか代打ちしてるかだろ。お前はどうなんだ?』
『私は……好きな人と一緒にまったりご飯とか食べてー…』
『は、お前…付き合ってるヤツいんのか?!!』
『過ごせたらいいなぁという願望を持っていました。』
『願望かよ。』
『うぅう~!!ゆっき~!!』
『げっ、この呼び方…。』
『ヒマならクリスマス一緒に過ごそうよぉ~!』
『やめろ!アカギに殺される!!』
『もう予定無いって言ったもん、もう決定!ハイ、デートしようねー、ゆっきー!』
「やめろー!死にたくないーーッツ!!』
「と、いう約束をしちゃったんだよね……だからゴメンなさい!」
ペコっとお辞儀をして、その場を立ち去ったyou。
唖然とする3人だったが、暫くして沸々と怒りと悔しさがこみ上げる…。
「なるほどね、あの凡夫…。」
「(平山幸雄…オレの敵ッ!)」
「(平山幸雄…オレの敵ッ!)」
平山を知るアカギは黒い笑みを浮かべ、
隣人として接していたカイジと零までも彼を敵と認識するのだった…。
そして24日、当日…。
「平山さーん!」
「……。」
「ゆっきー!出かけますよーーー!」
ピンポーン…ピンポンピンポンポンポーーーン
「うっせー!!」
ガチャッと…平山が勢い良くドアを開くと、インターホンの横ににっこり笑ったyouがスタンバイしていた。
「もうお昼過ぎちゃいましたよ、平山さん。」
「・・・。」
「今日はどこに行きましょうかっ?」
「……行かない……家から出たら危険だからな。」
「えー!!」
「オレと一緒にいるとお前だって危ないんだからな。」
「どうしてですか?」
「イルミネーション輝く中、893な人らと追いかけっこしたいってなら話は別だけどな。」
「それはいやですけど。」
「じゃぁ、オレのことは放っておいてアカギとでも一緒にいてやれ。」
「ダメですよそんなの!平山さんと最初に約束したからって思ったからアカギさんたちのお誘い断ったのにー!」
「…何てことしてくれたんだ!これで1週間は引きこもり生活じゃないか!!」
「いいじゃないですか、どうせ年末年始なんだし。」
「……人事だと思いやがって…。」
「この間私をアカギさんの生贄にした罰ですよ。」
「うっ…。」
「そういえばそうでした」という顔で一瞬苦い顔をした平山。
それを見逃さなかったyouがズズイっと平山に顔を近づける。
「外がダメなら中でお祝いしましょ!近所のスーパーで何か買って、平山家で地味にお祝いくらいなら、問題ないですよね?」
「まぁスーパーくらいなら……っていうか何でオレの家なんだよ!!」
「そんなの決まってるじゃないですか!」
「え・・・?」
「この高級マンションのお部屋を拝みたかったからです!」
「あっそう。」
ぎゅっと拳を握り締めてそう宣言したyouを尻目に、
平山は盛大に溜息を吐き、渋々とコートを着用して外出準備を整えた。
家の鍵を掛けたところで、後ろからyouに話掛けられる…。
「平山さんは、今日もお洒落スーツが決まってますね。コートも高そう…。」
「そうか?普通だろ…。」
「毎日スーツなんて会社員だけですよ。」
「・・・。」
「きっちりしてて素敵です。」
「ほ、褒めても何も出ないぞ///」
「はい?」
「お、お前も……///」
「はい?」
「……に、似合ってる///」
「?」
「今日の服、似合ってる…っ///」
「わぁ、ありがとうございます。」
そう素直に喜びを表現して平山に礼を述べる。
アカギに似ているというだけでも、かなり容姿も整っていることが伺える平山。
勿論、女性にモテることにはモテるのだが……
しかし、彼の意外に控えめな性格の為か女遊びはさほど激しくは無い。
更に言うなれば「代打ち」という職業柄、どうしても声を掛けてくるのが
夜の商売の女性が多いというのも、誘いを断っている理由の一つのようだ。
youのように一般の生活を送っている人間とは中々に無縁。
故に新鮮でもあるが、どう対応していいのか分からないというのが
youと相対した時の態度に出ているといって過言ではないだろう…。
兎にも角にも、本日はそんな微妙な関係(?)の彼女と過ごすことになった平山…。
渋々ではあるが、ある程度は嬉しそうに並んで歩き始めるのだった…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
二十分もかからないくらいに、スーパーへと辿り着いた2人。
カートを押して食材調達をしながら夕食のメニューを決め始める…。
「平山さん、何か食べたいものとかありますか?」
「急に言われてもな……思いつかねぇ…。」
「平山さんは自炊よくします?」
「たまにな。」
「何が得意ですか?」
「得意とは違うが……やっぱカレーとかシチューとかの簡単なやつが頻度は多いな。」
「私、茶碗蒸しが食べたいです。」
「オイ、人に聞いといてその反応はお前……酷いだろ。」
「ゆっきー、茶碗蒸し嫌い?」
「嫌いじゃないけど、茶碗蒸しってメイン料理には成り得な……。」
「私、ビッグサイズのプリンに以前から憧れておりまして……。」
「頼むからそれ以上言うな。」
一瞬、よくパーティーグッズのコーナーで売られているバケツサイズのプリンを想像して気持ち悪くなった平山。
しかし、youはしょんぼりした顔で平山を見上げた。
「でも茶碗蒸し食べたい…。」
「…好きにしろ、ただし普通サイズ。」
「うん!わかった!」
自分の提案が通り、嬉しそうにスーパーで茶碗蒸しの具材をチョイスしていく。
レジに並んで、金額は2人で割るといくらいなるのかを計算しようと思っていたyouだったが
平山に「オレが払うから、お前は作れ」と……サッと支払いを済まされてしまった。
「ゆっきー、私も払うよ。」
「いい、面倒だ……その代わり、不味かったら倍返しってことにするからな。」
「な!なんですと!」
「ッハハ!!冗談だよ、ホラ…早く荷物詰めろ。」
「う~!ハイハイ!!」
youは少し不機嫌そうな顔で購入したものを袋に詰めていき、
平山はそれを横目でみてくすっと鼻で笑う…。
全てを詰め終わった袋は思ったより大きく、youにはちょっとばかり重そうなサイズに…。
だが、そんなことは全く別に気にしないといった感じで平山は彼女の手から荷物を取って歩き出した。
「わ、ありがとう、ゆっきー!」
「なにが?」
「荷物。」
「礼なんていらねぇよ……男が持つのは当前だろ。」
「ゆっきー……紳士だわ!ジェントルメンだわ!」
「「マン」な、オレは一人だから。」
「むー!何でそこスルーしないかな…///」
「youがボケるからだろ、お前らの所為でオレは最近ツッコミ体質なんだよ。」
「「たち」って?」
「アカギとお前。」
「やーだ!一緒にしないでー!アカギさん私より遥かに性質わるいから!」
「ハハハ!ま、そう言われりゃそうだな……アイツと比べるとyouはまだまだ全然可愛いモンだな。」
「でしょ?」と同意を求めながら、スーパーを後にした…。
そして、家の方向に歩き出した平山に「あ、待って」と声を掛けて制止させる。
どうしたのかと尋ねた彼にyouはピンと人差し指を立てて答えた。
「クリスマスといえば……帰りに白いおじさんのお店で鷄でも購入して帰りましょう!」
「普通にチキン買うって言えよ…。」
「よく分かりましたね!」
洞察力が鋭いというよりは、youの人間性を何となく理解してきた平山だった…。
そんなこんなで某フライドチキンの店に買い物終了。
ついでに近くにあったケーキ屋で好きなものをいくつか購入し、帰ることとなった。
そして、その途中…
「平山さんは彼女とかいるんですか?」
「いねぇよ、女なんて…。」
「欲しいとか思わないんですか?」
「別に…。」
「今までは?」
「いたけど、どれもそんなに長くなかったな……職業柄、出会う女は水商売多かったから。」
「そういうのダメなんですか?」
「ダメっつーか……仕事かもしれねーけど……やっぱいい気分しないだろ、他の男と仲良くしてたりするのは。」
「なるほど…しかし……。」
「あ?」
「かわいいです、ゆっきー…///」
「な、何でだよ!!!」
「だって独占欲っていうか……クールっていうか、人に興味無さそうっていうか…イメージ的にもっとスレてると思ってたから…。」
「そこまでアカギに似てたまるかよ。」
「あはは!そうですよね。」
「お前みたいなヤツがいいんだろうな、きっと。」
「ん?」
「次に好きになるなら。」
「ふぇっ……?///」
思わぬ平山の発言に、暫く考えた後に顔を赤くするyou。
そして平山はその反応を見て、自分の言った台詞の重大さに気付く。
同じような赤い顔になり、弁解を始めた。
「ふっ、深い意味は無い!無い……ッツ///」
「は、はい…///」
「お前は気兼ねなく話せるし、一緒にいて自然に笑えるから……そういうのがオレはいいって思って…って、なんだこれ、これって告白じゃね?」
「あははは!!本当だー!」
「兎に角ッ、オレはお前のことは……好ましくは思っている…ッツ///」
「英文の訳みたいですね。」
「……普通に好きだってコトだ。」
「……それは逆に誤解が生まれそうです…///」
「じゃぁどう言えっていうんだよ!!///」
ムキになりながらyouに食って掛かる平山に、
youはしばし「うーん」と悩んだ声を出す…。
そしてすぐに彼を覗き込み、笑った。
「何も言わなくていいんじゃないでしょうか。」
「は。」
「言わなくてもゆっきーが私を好ましく思ってるのは伝わるから。」
「……。」
「今日だって私が嫌いなら一緒に過ごしてくれなかっただろうし…。」
「まぁ、そうだな。」
「ゆっきーだってそうだよね、私がゆっきーを嫌ってたらこうやって休みに一緒に過ごしたりしないって……分かるよね。」
「だな。」
「結局、それなりに両思いなんですよ……私たち。」
「ハハッ……それなりに、か。」
「ハイ!だから、もっともっと両思いになれるといいですね!」
「っ……///」
「?」
「もういい、分かったから…///」
「うん!」
どうやら彼女が無意識で使用したであろう言葉は平山にクリティカルヒットした様子…。
本当に、逆に誤解が生まれそうだと……頭をかかえたくなる平山だった…。
前を歩き出したyouの背を眺めて、ハァーっと困り顔で溜息を吐いて
ポツリと地面に向かって呟いた…。
「オレ、マジでアイツとは戦いたくないんだけどなぁ…。」
もしかしたら訪れるかもしれないアカギとの対決を考えると、
それはもう……限りなく重たい気分になる平山だった…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
そして夕方の6時頃、平山の家に戻ってきた2人。
家では流石にトレードマークのサングラスを外すらしく、
それを目にしたyouが騒いだり……。
買ってきたものを冷蔵庫に入れたりキッチンに運んだりなんだり……としているうちに
夕食の準備がほとんど整い、テーブルに皿やグラスなどを準備するに至った。
「オレはワイン飲むけど、youは?」
「じゃぁ…ちょっとだけ。後はお茶とかでいいです、明日はちょっぴり早く起きないといけないので。」
「分かった。」
平山が飲み物をテーブルに持ってきて、全ての準備が整った。
開けたワインで乾杯をし、食事をし始める…。
「ワインに茶碗蒸しってどうだよ。」
「チキンもありますよ。」
「いや、いいんだけどな……うん、この茶碗蒸し美味いし…。」
「わーい、褒められた。」
「……うま。」
「明日の分も残ってるから、温めて食べてね。」
「ん、サンキュ。」
「だがケーキが残ったら私がいただくっ!」
「あぁ、オレはこっちのがいい。」
そう言って、スプーンに掬った茶碗蒸しをyouに見せて口へ運ぶ…。
思った以上に気に入ってくれたようで、youはそんな平山を見て嬉しそうに笑った。
それから一通りの食事を済ませ、デザートにケーキを食べた2人。
平山家のソファにもたれ掛かりyouが「もうお腹いっぱい」と満足気にのたまう。
そのままゴロンと横になろうとした瞬間、窓を見ていた平山が驚いた声でyouを呼んだ。
「おい、you!見ろ!」
「なになに、何ですか?」
「これ。」
カーテンを目一杯広げて、窓の外の景色をyouに見せる…。
ヒラ…と、何か白いものが彼女の視界を通り…そして落下していく…。
youは目を丸くしてそれを見た後、感嘆の声を上げた。
「わぁ!雪っ!」
「ホワイトクリスマス…ってやつか。」
「きれーーい!!」
「結構降ってるな。」
「ね、窓開けていい?」
「あぁ。」
平山の許可を得て、窓を開いて外界の世界に手を伸ばす…。
youの手のひらに当たっては溶けていく雪の欠片…。
吐く息は白く空に昇って、外の気温の低さを教えた…。
そんな折、更に大きな塊で降ってきた雪がyouの手に乗った。
溶けないのを確認して、彼女はそれを平山の着ているスーツの開いた胸元にペッタリと押し付けた。
当然飛び退く平山…。
「冷てっ!!?」
「あはっ、凄く大きかったから。」
「理由になってねーっつの!」
「ごめんなさ……あれ?」
youは平山に近寄って、その胸元で輝くアクセサリに手を伸ばした。
「外ではマフラーしてたから気付かなかったけど、付けてたんですね。」
「あ?これか?」
「うん、私もこのブランドのデザイン、かわいくて好きです。」
「……欲しいのか?」
「え?ううん、そんなんじゃないよ!?」
「やるよ、元々ちょっと女向けのデザインだったしな。」
「いやいやいや、いいです!そんなつもりで言ったんじゃないし、それに高いし!」
「オレにとっては、女にやるモンにしては安いくらいだ……。」
「中古だしな」と笑って、平山はアクセサリを外す。
そして、困惑するyouの首にそれを付けてやる…。
「似合うじゃねぇか。」
「うう……あの…わたし…本当、そういうつもりじゃ…。」
「いいんだよ、お前のお陰で今年はいいクリスマスになったからな。」
それは今までで初めて見る平山の表情だとyouは思う。
楽しい話題で一緒に笑うそれとは違う……優しい笑顔。
その言葉が本心であると確信できるようなその表情に
彼女の顔も嬉しそうに変化する…。
「ほんと?そう思う?」
「あぁ、そう思う。」
「……よかった、私だけかと思ってたから…。」
「茶碗蒸しのポイントが思ったより高かったしな。」
「あはは!そんなに気に入ったんだ?」
「わ、悪いかよ…///」
「ううん、気に入ってくれたんなら嬉しい。」
「……///」
「でも、これ……本当にもらってもいいの?」
「あぁ。」
「本当に?」
「しっつこいな、今日の礼にyouに貰ってほしい。そういうことだ。」
「っ……うん!ありがとう、ゆっきー!」
ぎゅーっと、平山に抱きついたyou。
突然の衝撃に、一瞬怯んだ平山だったが……状況を把握して徐々に顔が熱くなる…。
そして案の定慌てて身体を離そうと試みる。
「な、な、何してんだ!///」
「心の友よー!」
「……はいはい、ジャイアンは分かったから…///」
身体が密着していてもムードがないのは、
youがまだ平山を友達だと思っており、彼もまた
youのことを妹か学校の同級生のように思っているからだろう…。
しかし、平山には確信にも似た懸念があった。
『同級生は恋愛に発展する可能性がある』
そして、これもある意味で確認にも似た予想なのだが…。
その先に待つライバルたちの存在を考えると、
胃を痛めそうだと思う平山だった…。
「メリークリスマス、平山さん!」
「あ、あぁ…///」
抱きついたまま平山を見上げてそう笑ったyouを見る…。
『もう、なるようになれ』
平山はその結論に至った。
オレも参戦……か…。
(平山さん!)
(あぁ、youか…)
(遅くなってすみません!これ、プレゼントのお返しです!)
(オレに?わざわざ?別に……よかったのに…へぇ、サングラスか…ありがとな)
(全然値段とか釣合わないけど……気持ちの問題だと信じてます!)
(それはお前が言う台詞か?ま、オレもそう思うけどな)
(あとはまた茶碗蒸しとか何か作るんで、それで!)
(お、それいいな!)
*。゜.*。゜.*。゜.*
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