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「実は凄~~く行きたかったんだよね、夢王国……と、いうことで24日は零くんと遊ぼうかな!」
「やったぁ~!楽しみだねー!」
「花火も見れるなんて、ちょっと期待しちゃうなー。」
「晴れるといいね!」
「そうだね!」
憎々しげに零を見つめるアカギとカイジの視線を無視して
「じゃぁオレの部屋で24日の予定立てよう!」と、youの背中に手を添えて零の部屋へと誘う。
前を向いて歩いていたyouは分かっていないが、
零は一度くるっと後ろを向いてアカギとカイジに対して不敵な笑みを浮かべた。
当然怒りを顕にする2人…。
「「あのクソガキ…!!」」
悲しくハモった2人の台詞は、冷たい北風に吹かれて消えた…。
そして12月24日、クリスマスイヴ。
恋人達で賑わう夢王国ことドリームキングダムに到着した零とyou。
場内への入場券を手に入れるためにチケットブースに並び、
零は受付の女性に特別会員用のカードを見せた。
「大人2枚で!」
「かしこまりました、特別会員カードご利用で、こちらフリーパスになります。」
チケットを手渡され、入場のゲートへと向かう。
入り口付近は込み合っていたが、広い園内に入ってしまえば視界はかなりひらけたものになる。
おそらく普段の入場者数よりも遥かに多いのだろうが、あまり気にならないのはおそらく園内が広いからだろう。
「何のアトラクションに行こうか?」
「零くんはどれがいい?」
「とりあえずジャックルームとクオータージャンプと魔女の館とザ・アンカーは却下かな。
迷宮トライアングルは水に濡れたyouさんが見れるんなら行ってもいい。」
「何かよく知り尽くした感じがするけど、じゃぁ、それ以外をまわろうか…。」
youは苦笑して、広げたマップに目を落とした。
沢山のアトラクションがある中で、どれにしよううかと悩んでいると
零も一緒にそれを覗き込んで「これにしようか」と一箇所指を差した。
「これ?これは謎解きアトラクションじゃないみたいだけど……。」
「うん、普通のジェットコースターだね。」
「これにするの?」
「うん、絶叫系苦手?」
「ん、一応大丈夫だよ。」
「チッ…。」
「え。」
「ううん、なんでもないよ!ただ、嫌がるyouさんを無理矢理マシンに乗せて、結果的に怖くて泣いちゃう姿が見たかっただけだから!」
「あはは、乗れてよかった、切実に。」
顔は笑っているが声は笑っていない2人。
とりあえずそこを目的地に定めて歩き始める…。
「youさん、手ぇ繋ご!」
「う、うん///」
零のスマイルパワーに気圧され気味なyou。
照れた様子で差し出された手を握った。
「youさん手ぇ冷た!」
「そ、そうかな??零くんがあったかいんじゃないかな?」
「そうかなぁ……まっ、いいや!だったらこうしてれば丁度いいよね!」
「ふふっ、そうだね。」
小さな子どものような彼の発想に思わずyouの顔が緩む。
その嬉しそうな顔を自分の視界に捉えようと、彼を見上げるyou…。
しかし、見上げた先にあったのは子どもっぽい笑顔を浮かべる男の子の顔ではなく、
綺麗に整った顔立ちをして凛と前を向いて歩く青年の姿。
一瞬、別人と歩いているのではないかと思って、思わず左右を見回してしまう。
それほど驚いたyouだった…。
「(零くんって……いつもこんなんだっけ?背、伸びたのかな…?///)」
「ん?」
「え?!何?!」
「今何か言った?」
「なっ、何も言ってないだよ!」
「あはは!「だよ!」って何!」
「き、気にしないで……ちょっと挙動不審になってるだけだから///」
「どーして?知り合いでもいた?」
「い、いないけど。」
「ふふっ、変なyouさん。」
「・・・///」
再び会話が途切れ、前を向いて歩き出す。
youは自分の思ったことが伝わってないことで、ちょっとだけ安堵の溜息を吐いた。
そんなことを思っているうちにジェットコースターのある場所へ到着し、
列に並んでマシンを堪能した2人…。
その他にも今乗ったもののように絶叫系のマシンや
零の得意とする謎解きのアトラクションをいくつか攻略して楽しんだ。
それから園内のレストランで昼食を取り、再びアトラクションを回る…。
楽しく過ごしているのだが、繋いだ手や先ほど目にしてしまった大人っぽい零の顔や隣を歩く自分との身長差に
どうしても零を福本荘の隣人ではなく男性として意識してしまって、始終自然と顔が赤らんでしまうyou。
「youさんの手、あったかくなってきたね……って、大丈夫!?顔真っ赤!!」
「な、何でもないのです!マジで!ホント!でも何かずっと熱くって、何でだろ///」
「……うーん?」
立ち止まって「うーん」と唸りながら空を見上げる零。
その間、youは未だおさまらない熱を冷まそうと、片手でパタパタと顔を仰ぐ。
ちょっとの間悩んで、何かピンとくるものがあったようだ。
「あ!」と声を上げてyouに向き直った。
「オレの想いが移っちゃったとか!」
「・・・寒いよ、零くん///」
「そぉかな…でもますます顔が赤いよ?youさん。」
「くっ……///」
「あー嬉し!youさんの色んな表情、今日はオレが独り占めだもんね。」
「もーやだ、勝てる気しない…///」
「当然!勝つ気でいるもん、オッサンらには悪いけど。」
「おっさん?」
「アカギさんとカイジさんね。あと、ご近所にもちらほら。」
「何の勝負?」
「はぁ…そうきたか…本当に中々手強いよね、youさんって。」
「え、私勝負事弱い方だよ!何の勝負で?」
盛大な溜息を吐いたかと思うと、すぐに「ククク…」「アハハ!」と笑い出す零。
行動の真意が理解できず、youは頭に疑問符を浮かべて彼を見た。
もう一度「はぁーー」っと溜息とも深呼吸とも取れる息を吐き出して、
youの髪を一掬いして、耳元で呟いた。
「強いて言うなら、0ゲーム。」
「……?!///」
そっと顔を離して、youを見る零…。
彼女の表情は零の思惑通りに真っ赤に染まっている…
と、思っていたが違った(大いに)。
「零くんが総攻め…ってこと?!///」
「んー、何想像した?」
「ち、違うのね、違うのね?!」
「違うよ、怒るよ。」
「ごめんなさいっ!だってアカギさんとカイジくんたちに勝つって言うし…ラブゲームって言うし…///」
「ちょっと黙ろうか、you。」
「はっ、ぅ……裏零くん?!」
言葉の通りハッとした顔でyouが零を見上げると、
怒りを堪えて笑顔を作る例の「あの」零がいた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「裏零ねぇ……そんなけったいな名前付けなくてもいいでしょ…。」
「ご、ごめんなさい…。」
「たまに本気で言いたいことがある時はどうしてもこういう言い方と態度になっちゃうの。別に二重人格とかじゃないんだよ?」
「そ、そうなんだ?」
「うん、俺がこういう感じになったら「あ、零くん本気なんだ」って思ってくれたらいいかな。」
「そっか……そうだよね。」
「ん?」
「零くんは零くんだもんね、それだけのことだよね。」
零が不思議そうな顔つきでyouを見つめると、彼女は嬉しそうに笑った。
ちょっとだけ目を丸くした後、急に顔を近づけてそのままyouに軽く口付けた。
さて、唇が離れると今度はyouの目が大きく開く番だった。
「ちょっ、いっ…なっ、ぜろくん?!!///」
「「ちょっといきなり何するの零くん」?」
「~~!!///」
「youが可愛かったから。」
「お、怒るよ!?///」
「ゴメンごめん、嬉しかったからさ……「オレは俺でいいんだ」なんて、笑って享受してくれる人なんて今まで一人もいなかったから。」
「零くん…。」
「いや、俺は普通にしてるつもりなんだけどねー。」
「え?」
「何か皆「オーラが違う」とか言うんだよー、本当にもう、失礼しちゃうよねー!」
「う、うん…そうだね……。」
「オレはこんな感じな人間だけどさ……youさんとは一緒にいたいんだよね…ずっと…。」
先ほどの強気な態度とは打って変わって、少し俯き加減に翳りのある表情でそう呟いた零…。
そんな彼にyouはきょとんとした顔で首を傾げた。
「うん、私も零くんと一緒にいたいと思ってるよ?」
「…ほんと?」
「うん、だって零くんといると楽しいし、笑顔になれるし、それはとっても零くんの存在が大事だからだと思うんだ。」
「だいじ…?」
「いなくなると寂しいじゃない、だから私も零くんとずっと一緒にいたいな。」
「you…さん…。」
ふんわりと…温かい笑顔で零を見上げてくるyouに
何故かとても泣きたくなるような気がした零だった…。
自分の良い所も悪い所も素直に認めて包んでくれるような…
彼女はそんな類の人間なのではないかと思ったのだ。
「零くん?」
「youさんはさ、綺麗だね。」
「はいっ??!///」
「純粋で素直な……子どもみたい、何か…。」
「それ、褒めてるかなぁ?///」
「うん、褒めてる。何だろう……youさんって「あったかい」。」
「あ、それは何か嬉しいかも。」
「どうして?」
「あったかいって何か優しいイメージするから、かな。」
「うんうん、そうそう、そんな感じ。」
「ありがとう、零くん。」
「どういたしまして……なのかな?」
顔を見合わせて「ふふっ」と笑い、オレンジ色に染まった夕日を背にして歩き始めた。
「やっぱり冬は陽が落ちるのが早いね!」
「そうだね、暗くなると寒いよね。」
「あ、夕飯何食べる?」
「零くんは何がいい?」
「んー…何か暖かいもの。ていうかyouさんの作ったご飯。ていうかyouさんそのもの。」
「じゃぁうどんとか蕎麦とかパスタとか、何か麺類にしようか。暖かいし。」
「あ、じゃぁパスタがいい。ていうか、いい感じのスルーだよね、今の。」
「そう?」と、笑って少し前を歩くyouの手を掬い取り…零も並んで歩き出す。
地図で確認したパスタ屋へ入って注文をする頃には、辺りはもう夜の色に染まっていた。
頼んだ料理が運ばれてきて、零が席の周りを見回す…。
「わー……予想はしてたけど、カップルばっかしだね。」
「そうだね、皆花火目的かな。」
「だろうねー……じゃぁさ、オレたちも恋人に見えてるよね!」
「ど、どうかな…///」
「……あのさー、ズバリ聞くけど……youさんって好きな人いるの?」
「福本荘のみんな。」
「有難いけど、そういう意味じゃなくて「気になる男」のことね。」
「気になる男の人?」
「うん。」
「アカギさん…かな…。」
「うっそ、マジで、結論出ちゃった。」
youの口から即座に飛び出した答えに驚きを隠せずに目を丸くする零。
そんな彼とは裏腹にyouは真剣な面持ちで「あのね」と言葉を続ける…。
「アカギさんって、人間じゃないと思うのね。」
「っし来たよ、セーフ!まだ立ってるッ!オレのフラグまだ立ってるッツ!」
「零くん?」
「ん、こっちのハナシ。」
「アカギさんって……気配が無いんだよね…。」
「それ何か「人間」とか「宇宙人」とか「機械」とかそんな域超えてるよね。「生死」の問題だよね。」
「いや、勿論生きてるけど!何かこう…鬼とか悪魔とか…。」
「それについては賛同する。」
「うん、でしょ?だから気になる人はアカギさん。」
「うーーーん……違うんだよね、俺が言いたいのはさぁ…。」
サクっとパスタソースの具にフォークを刺して、零がそれを口の中に頬張る。
それ以降黙った零に、youはその話題が途中で途切れたのかと思って
クルクルとフォークに麺を巻き付けていく…。
最終的にその話題は変わったようで、そのまま他の話題で楽しみながら2人はパスタを食べ終えた。
食後に水を少し飲んだ後、零が思い出したように再びその話をし始めた。
「はぁー、まさかyouさんがそこまでニブいとは思ってなかった。」
「何、唐突に失礼な事言ってるの、零くん。」
「だってさぁ……もう…もういいよ!youさんのバカ。」
「???」
「もう花火始まる、そろそろ出よう。」
「う、うん…。」
ほんの少し不機嫌そうな顔をして、店を出た零。
youも後に続いて、追いかけるように外に出た。
先を歩き始めている零を呼び止めようとした時、ドンドンッ…と音がして夜空が光る…。
どうやら花火が始まったらしい…。
その合図で立ち止まった零と、それに追いついたyou。
youは零の服の袖をぎゅっと掴んで顔を見上げた。
「ごめん、零くん……私何か怒らせちゃったかな…。」
「……別に、怒ってはないよ……花火がよく見える場所知ってるから、そこに行こう。」
「う、うん…。」
そう言って零が案内した場所は『クオータージャンプ』のアトラクション入り口。
もう既に運行終了しているアトラクションなので、入り口には鍵が掛けられて係員もいない。
花火の場所からも離れている為、零が案内した理由が分からないyou。
入り口を通り過ぎて裏に回りこんでいく彼の背に向かって尋ねた。
「零くん、花火…。」
「ちょっと登るよ、おいで、youさん。」
「登るって…。」
「このフェンス。」
そう言って零が指差したのはアトラクションを囲むフェンス。
軽々と金網に足を掛けて登りきり、youに手を差し出す。
「youさんも早く、花火が終わっちゃうよ。」
「え!う、うん…分かった…登る。」
「大丈夫?」
「大丈夫!大体の大人は小学生の時よくこういうの登ってたはず!私もそうだった!」
「う、うん…その気合の入れ方はよく分からないけど、そうかもね。」
有刺鉄線は無いので、上まで登ってしまえば後は反対側に降りるだけ。
登ったときよりも遥かに簡単にアトラクション内に着地することができた。
「youさん、あとはこの階段を登るだけ。」
「いいのかなぁ…こんなことして…。」
「真面目だなぁ、youさんは……別に見つかっても叱られるだけだよ、警察呼ばれるわけじゃないんだし。」
「そうだけど…。」
「ホラホラ、早く。」
「ちょ、階段で押さないでよ!」
ぐいぐいと零に背中を押されつつ辿り着いた頂上。
そこは園内を見渡せる空中の休憩場だった…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「すごい…!」
眼前に広がる景色に目を輝かせながら呟いたyou。
零の連れてきた場所は、以前自分が(命懸けで)挑戦したことのある『クオータージャンプ』のアトラクション会場。
「会場」と言っても特殊なもので、中央に位置する挑戦者の立つスペースと
そこから1メートルほど離れた東西南北にある挑戦者以外が立つスペースの
計5つのスペースで成り立っている会場だ。
零が挑んだ時は目隠しをしたまま身一つで、その東西南北のいずれかに位置する
「壁が無く着地できる正解のスペース」に飛ばなければならなかったのだが…。
今現在彼が見たところ、そんな危険な要素は無くなっている様子。
壁はぶつかっても怪我をしないような素材に変えられているし、
挑戦者スペースの中央にはバンジージャンプのような紐をセットする場所が設けられている。
何より、階段を上がってくる途中で一面にネットが張ってあったので
万が一にも命を落とす危険性は皆無……そんな風に一般アトラクション化されたいた…。
その非挑戦者が立つ東西南北スペースのうちの花火がばっちり見える1箇所を選んで登ってきた零。
眼下に見えるネットを見つめながらポツリと呟いた。
「チッ、やっぱり商用化されてんのな。」
「何が??」
「ん、何でもないよ。座ろうか。」
「うん。」
ほんのちょっと悔しそうに、でも安心したような顔でyouに笑い掛けた。
先ほどの様子から、もう不機嫌そうなオーラは感じ取れなかったので、
youもちょっとホッとした様子で零の傍に歩み寄った。
パァン…と打ち上がっては消える眩い光。
ピンクに青に緑に黄色……色鮮やかに空に映し出され、
youは感嘆の溜息を吐いた。
「きれー!」
「うん。」
「夏よりも冬の花火のほうが綺麗に見えるって、本当なのかな?」
「まぁ、理論上はね。冬は夏に比べて湿度が低く、空気が乾燥してるから打ち上げた時に発生する煙が少ないんだ。
だから夏に比べて花火がはっきりと色鮮やかに見えるんだって。」
「そうなんだ?零くんって博識なんだね。」
「……別に、何の役にも立たない…無駄なことだよ、頭なんて…良くっても。」
「零くん……?」
「ううん、何でもない。」
ふるふると…力無く首を横に振った零…。
それを見て、youは何故かその場に立ち上がる。
彼女の行動が理解できない零は「危ないよ」と座るように呼びかけたのだが、
youは花火を背にして零を振り返った。
「無駄なことじゃないよ、だって私は答えが分かって感動したもん。」
「youさん…。」
「湿度が低く、空気が乾燥してるとどうして煙が少なくなるのかは分からないけど。」
「うーん…まぁ、要は冬の花火は空気が澄んでるからキレイに見えるんだ。星がキレイに見えるようにね。」
「なるほど!そうだね、冬は星もキレイに見えるよね!あ!何かプラネタリウムに行きたくなってきた!」
「ふふっ……何なら今度は星座の話でもしようか、youさん?」
「うんっ!聞きたいな!零くんの話、私好きだから!」
「…!!」
「零くん?」
「いや……ううん、どうしたらいいかなーと思って。」
「?」
困ったような顔で笑いながら、youと同じように零もその場に立ち上がった。
一歩前にいた彼女に歩み寄り、そっと手を伸ばした。
頬に伸ばしてくる零の両手を享受し、そのまま彼を見つめる。
「どのくらい恋愛の理論を教えれば、君がオレに恋してくれるのかな?」
「へっ…?///」
「怒るなよ、これはまずその一歩なんだから…ね、you。」
「なん…っ?!」
顔を引っ張られたかと思うと、一瞬にしてyouの視界は零でいっぱいになっていた。
ぱちぱちと目を瞬かせて固まっていると、頬にあった零の手が背中に回されるのを感じた。
背中に移動した手がぎゅっと自分の身体を抱きしめている。
未だ離されない唇と手と身体…。
やっと自分が彼にキスされているのだと判り、顔が赤くなる。
そのタイミングが良かったのか悪かったのかは……(恐らく後者だろうが)分からないが、
そっと唇が離され、頬が赤く染まったyouの顔を零が覗きこんだ。
「怒った?」
「…ちょっと。///」
「謝らないよ、youはまだ答えを出してないんだから。」
「答え?」
「…誰が好きなのかっていう答え。出してないから、オレがやったことが正解か間違いか分からないだろ?
だから間違ってるか分からない今は……まだ、謝らない。」
「それって…。」
「youの好きな男が、オレになるといいな!」
「!!////」
満面の笑みを浮かべてyouにそう告げる零…。
その笑顔は彼が見せるいつものそれなのに、youは何故かいつもと違うように感じた。
「(いつもの零くん…だよね?///)」
「you、いつの間にか花火終わっちゃってる。」
「(何で今日はこんなに零くん見るとドキドキするんだろう…///)」
「皆帰ってるねー……混まないうちにオレ達も帰ろうか、you!」
「(うーん……2回もキスされたから??///)」
「you…?」
「(零くんといると、あたたかかったから…?///)」
『オレの想いが移っちゃったとか!』
『youさんって、何か純粋で素直な子どもみたい』
『何だろう……youさんって「あったかい」』
『あったかいって何か優しいイメージ』
「そっかぁ!!」
「うわ!何、急に!!」
「私が熱かったのは、零くんもあったかい人だったからだったのね、きっと!」
「うっわー、すっげーヤな予感。」
「よし、帰ろう!」
嬉しそうに階段を降り、フェンスを越え、夢王国の出入り口へと向かうyou。
零の顔が暗いのは決して夜闇の所為ではないだろう…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
夢王国から、電車を使って最寄の駅で降り、福本荘へと帰る道…。
口数の激減した零にyouが心配そうに声を掛けた。
「大丈夫、零くん……さっきから、元気ない…。」
「うん、今日のオレの頑張りがさっき花火と一緒に打ちあがって消えたから。」
「詳細な説明だけど的を得なくて分からないかも。」
「もういいよ、また明日から頑張る。」
「うん、今日はゆっくり休んでね。」
「うん…。」
「あ!ごめん!!」
「??」
いきなりの謝罪に零が首を傾げていると、youは立ち止まってカバンを漁り始めた。
「あー、よかった」と安堵の声をもらしてカバンから出したものを零の前に突き出した。
「メリークリスマス、零くん。」
「は、あ。」
「これ、大したものじゃないけど……クリスマスのプレゼント。」
「オレに?」
「うん、零くんに。」
「わざわざ買ってくれてたの?」
「え、うん……だって、今日誘ってくれたし、夢王国。」
「いや、誘ったのはオレだから逆に……こっちこそ…一緒に過ごしてくれてありがとうなのに。」
「私も、一緒に過ごしてくれてありがとう。色んな零くんが見れて、零くんのこと、今まで以上に好きになれたよ。」
「っ……///」
「私、恋愛ってちょっと疎くて……でも、零くんが言いたいことは理解したつもり。」
「!!」
「零くんが求めてるその答えはまだまだ私、出せないと思うけど……その時間の中で、私、一緒にいて沢山の零くんを見るから。」
「うん…。」
「だから、零くんも沢山私と一緒にいてやってね。」
「まだ友達の域は脱しないか……うん、でもいっか!オレの気持ちは伝わったみたいだし、ね?」
「……ど、どうだろうね///」
お互いに向き合ってにっこり笑う。
「はい!」という声を出し、youは今一度零にプレゼントを差し出した。
その袋を「ありがとう」と受け取り、包装を解いて中身を確認する…。
「綺麗な青いマフラー…。」
「どうかな……?」
「ありがとう、凄く嬉しい……!」
「よかったぁ!」
「大事にするね。」
「うん、お願いね。」
「さて、じゃぁ次はオレの番だよね。」
「ん?」
「はい、これはオレから……メリークリスマス、you。」
「えぇ!?私に?!」
「うん。」
「うわー…サプライズ……ありがとう!」
彼女も零と同じようにその場で中身を確認する…。
包装された中に入っていたアクセサリ用のケースを開くと、
中央に飾りのあしらわれたヴェロア生地のチョーカーが現れた。
「うわー…うわー!かわいい!///」
「気に入った?」
「うん!うん、凄くっ!!///」
「よかった、喜んでくれて。」
「ありがとう、零くん!///」
「つけてみてよ?」
「うん、ちょっと待ってね…。」
「あ、オレが止めるよ。」
youの後ろに回り、チョーカーの止め具部分を引っ掛けて止めた。
彼女のうなじの部分からほのかに香る香水が自分好みで、
思わずにやけるのを零は必死で我慢した。
「どうかな?」
「うん、似合う似合う。」
「えへへ…ありがと。」
「……やっぱりチョーカーにしてよかった!」
「何で?」
「ん、だって何か首輪みたいでしょ?」
「零~く~ん~~~?///」
「あはは!でも本当に可愛いよ!」
「もう恥ずかしい!早く帰るよ!///」
「はーい、あ!帰ったらyouの家であったかいお茶飲みたいなー。」
「はいはい、分かりました。」
「やった!」
そんな小さな約束を交わしたのは、やはり少しでも長い時間彼女といたかったからだろう…。
嬉しそうな顔をして、youと手を繋ぎながら福本荘へと向かう。
途中でコンビニに立ち寄って、お茶のお供にプリンとケーキを買って、
帰宅した頃にはもう夜中の12時を切っていた。
「思ったより遅くなっちゃったね。」
「うん、零くんは明日お休み?」
「まぁね、youは?」
「えへへ~、実は私も休みなのです。」
「そっか、よかったね!」
「うん!」
二階へ続く階段を登りきり、youが自宅の鍵を取り出していると…。
ガチャッ
ガチャッ
と、同時に201号と203号の扉が開いた…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「お早いお帰りで、2人とも…。」
「「アカギさん!」」
「零!!youに何も変なことしてないだろうなッツ!?」
「「カイジさん(くん)!」」
氷のように冷ややかな目線で見てくるアカギと、
烈火の如くに怒り狂って飛び出してきたカイジ。
2人を前にオロオロして「何、どうしたの2人共?!」とうろたえるyouと、
白けた顔で「ヒマな人達だなぁ」と毒舌を吐く零。
互いのコントラストが何とも絶妙である…。
アカギ+カイジVS零…。
バチバチと火花が散る錯覚が見えるyouが「あの~」とか細く声を掛けた。
「ただいま、アカギさん……。」
「……おかえり、you。」
「カイジくんも、ただいま。」
「おう…///」
「アカギさん、今日は何してたの?」
「寝てた。」
「カイジくんは?」
「え、パチンコ。」
「2人共、ご飯は?」
「「食ってない。」」
そう声をハモらせて答えたアカギとカイジ。
youは苦笑にながらも「じゃぁ」と、人差し指を立てて提案をする。
「今から皆でファミレスにでも行きましょうか!」
「「「は?」」」
全員がきょとん、とした目で彼女を見つめる。
2、3秒の沈黙ののち、食事は済ませたじゃないかと…零が物申した。
「いや、だってオレ達はご飯食べてきたじゃん、youさん!」
「うん、でももう結構時間経ってるし……ファミレスでデザートとかもいいなーって思って。」
「えぇ~!」
「じゃぁ、ちょっと待っててね、買ってきたのを冷蔵庫に入れてくるから。」
「ちょっとyouさ…!」
2人っきりで団欒の予定が崩れ、落胆する零…。
そして、そのがっかり顔を見てほくそ笑むアカギとカイジ。
「ま、誰に転んでもyouの場合、最後は結局こういうオチなんだよ。悪いな、零。」
「ザマミロや~い、インテリ小僧~!」
そう零に言い放って、階段をご機嫌で降りていくアカギ達。
言いようのない怒りをどこにぶつけようか悶々としているところに、youが帰ってきた。
「あれ、2人は?」
「もう下に降りたよ。」
「そっか、じゃぁ私達も行かなきゃね。」
「……。」
「も~、零くん、そんなに膨れ面しないで!」
「だって…折角2人きりだと思ったのに…。」
「明日もお休みだから一緒にいれるでしょ?」
「!!」
「プリンとケーキは明日にして、今日は2人でパフェでも食べよ?」
「うんっ!youダイスキっ!!」
「ちょ、ぜ、零くん!///」
手放しで喜んだかと思うと、いきなり首根っこに抱きつき
ちゅ、とyouの頬に口付けた。
しかしそこは流石に頭がきれるようで、あまり浮かれて現れると
アカギとカイジに勘繰られると悟った零…。
何食わぬ顔で2人の前に現れ「仕方ないからオッサンの夕食に付き合ってやるよ」と、
不機嫌そうに市街へ向かって歩き出した。
「でも奢ってよね、アカギさん。」
「だってよ、カイジ。」
「ちょ、何でオレぇ?!オレはyouの分しか払わねぇぞ!!」
そんな3人の遣り取りを見ていて、後ろでくすくすと笑うyou。
今日一日、零に恋愛の何たるかを説かれて「恋する方法」を自分なりに探していこうと思っていたのだが…
前を歩く3人と自分をやはり、家族のように錯覚してしまうのであった…。
「(そしたら誰が「お父さん」役になるのかな?……なんてね。)」
「you、何ボケっとしてんのさ。」
「you、電柱ぶつかんなよー?」
「youさん、置いてくよー!」
「うん!今行くー!」
まだまだこの家族ごっこが続くような気がした、
そんなクリスマスなのでした。
まだ、友情>恋愛。
(youさん、プリンだよ!あ~ん。)
(何か零くんにされると恥ずかしいんだけど…///)
(なんで?さっきyouさんもこれでケーキくれたじゃん?)
(私がする分にはいいの!何か…逆は照れる///)
(ふ~~ん?)
(な、何よぉ……ニヤニヤして///)
(別に……ちょっとは意識し始めてくれてるんだなーって。)
(してないもん!///)
(ふ~~~~ん?)
(~~~!!///)
*。゜.*。゜.*。゜.*
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