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「クリスマス以降は公開終了までに映画行く時間取れなさそうなんだよね……だからタダ券一緒に便乗していいかなぁ、カイジくん…。」
「ゴメンね」と両手を合掌させてカイジを見上げたyou。
最近彼女のコトが気になってしょうがないカイジには鼻血ものの光景であった…。
それから当日に至るまで、きっちりバイトをこなしたカイジ。
「いつもの自堕落そうな態度はどうしたんだ!」と、思うほどの変貌ぶりだったと…
バイト仲間で飲み仲間でもある佐原氏は語る。
そしてデート当日…
「you!迎えにきたぜ!」
「おはよう、カイジくん!」
ドアを開けて顔を出したyouの姿に息を呑む…。
やはり異性と出かけるとあってか、普段よりお洒落をしているyou。
「き、気合入ってんなぁ…///」
「そう、かな?」
「かっ…可愛いと思ったから…///」
「ホント?ありがとー。」
「あぁ!べっ、別にいつもは普通だとか……そんなんじゃないんだからな!?///」
「はい?」
「いっ、いつもちゃんと可愛いから!」
「あははは!!ありがと、嬉しい。」
得意のWボケをかましたカイジだったが、youにはそれが面白かったようだ。
くすくす笑いながら玄関の鍵を閉めている…。
「カイジくんもある意味かわいい。」
「はぁ?!な、何言ってんだよ!」
「何だろうね、こういうの……「萌」?」
「バババ…バカか!///」
「ドジっこ萌えぇ~!」
「っ……ば、バカなこと言ってねぇで行くぞ!///」
「はーい!」
元気良く挙手して返事を返すyou。
福本荘を出たところで思い出したようにカイジが「あ」と声を上げた。
「これからどうすっかな…。」
「んー、まずは映画館で先に券を取って、それからお昼食べようか?」
「そうだな、じゃ、それでいこう!」
そう明るく笑って、youの手を取り歩き出したカイジ。
昼になる少し前くらいに予定通り市街の映画館に到着した2人。
上映時間を確認して窓口に並んだ…。
「いらっしゃいませ!」
「えーと……18:45からの藤原龍也のヤツを2枚で…。」
「大人2名様でよろしいでしょうか、学生の方はいらっしゃいますか?」
「あ、この券あるんで。」
「かしこまりました、お預かりいたします。」
映画の無料券を窓口に差し出し、カイジは指定席の券を受け取る。
「なかなかいい席とれたね!」と嬉しそうに笑うyouと共に込み合う窓口付近から離脱した。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「っし、券も取れたし……飯食い行くか!」
「賛成!どこいこっか?」
「オレはどこでもいいよ、youは?」
「えーっと、私も基本どこでもいいけど……うーん……。」
「じゃぁさ、この近くに美味いラーメン屋があんだよ…そこ行かね?」
「ラーメン好きだねぇ、カイジくん…。」
「あ、クリスマスにラーメンってのはやっぱアレだよな…スマン…。」
「ううん、全然平気!カイジくんの連れてってくれるとこはいつも安くて美味しいし!」
「だろ!」
「じゃぁ、案内お願いね!」
「おう!」
人と接するのが不器用だということはカイジ自身、よく分かっていたし
それが女性ともなれば、好かれるよりは「気が利かない」、「女心が分かっていない」と
呆れられたり、怒られたり、嫌われたりする方が多いだろうことも自覚していた。
しかし、そんなところを露呈しているにも関わらず彼女は…
youは自分といて不平不満を顕にせず、いつも笑ってくれる。
「一緒にいて楽しい」とまで言ってくれるのだ。
その上、女性の知人が少ないとくれば…
カイジがyouを好きになるのも必然といえるだろう…。
「でも知り合いが少ないから好きとかじゃないんだ!!」
「何?!」
「あ、ゴメ…独り言。」
「独り言大きいよ、声が!!」
「あはは…///」
一瞬の苦笑を浮かべて街を歩いていたカイジが、立ち止まる。
その視線の先にはラーメン屋の暖簾。
どうやら目的の店に到着のようだ。
入り口付近から既にいい香りが漂って、食欲を駆り立てる。
「ココだよ」とyouに告げて、カイジはその扉を開いた。
クリスマスで客層が少ないかと思いきや、意外や意外に人気の様子。
ざわざわと騒がしい店内に少し驚いた顔をしながら2人は席に着いた。
「凄い人だね!」
「あぁ、ちょっと予想外だったな。」
「でも座れたし、結果オーライ!」
「だな!よーし、何にすっかなー。」
数分と掛からないうちにメニューを決定して注文した2人。
混み合ってるとはいえ流石にラーメン屋……
ものの4、5分で「おまたせしました!」と元気な声でラーメンが運ばれてきた。
「美味しそう~!!」
「いただきます!」
「私も!いただきますっ!」
そう言って合掌し、食べ始めた。
「おいしい!」
「だろ!?」
「カイジくんが教えてくれるトコは全部美味しいね!」
「安いしな!」
「うんうん。」
「youさえよければ、もっと沢山案内してやるよ!」
「ホント?!嬉しい!」
「他のヤツに教えてないトコも、youになら特別に教えてやる!」
「わー!マジですか!」
「マジで。」
「えへへ、特別って何か嬉しい響きだねぇ。」
「そっ……そうか?///」
「うん、カイジくんといっぱい仲良くなれてるんだなって思えて、嬉しい。」
「ばっ……バカなコト言ってねぇでさっさと食え、麺が伸びるぞ///」
「はーい。」
ラーメンが熱いのと照れくささで体が熱いのとで、やたら水を飲むカイジであった…。
最終的にギリギリのところで何とか汗をかかずに食べ終えることができたカイジ。
youは少しだけ遅く食べ終えて「ご馳走様でしたっ!」と挨拶をした。
水を飲んでちょっとの間だけ話をして、店を後にした。
「ふい~、食った食った。」
「これからどうしようか?」
「うーん、あんま考えてなかったなぁ……とりあえず適当に見てまわるか。」
「うん、ウインドウショッピングも楽しいもんね!」
ということで……特に目的の場所なく歩き始めた2人だったが、
これがまた、思いがけず楽しかった…。
「これ、TVでみたことある!」とか「これ家にあったら便利だよな」などという雑貨に出会ったり、
「このインテリ眼鏡、零くんに似合いそう!」とか「じゃこの鼻眼鏡はアカギだな」と…
福本荘共通の話題で盛り上がったりして、とても有意義な時間を過ごす…。
ふと、雑貨の専門店の一角を通りかかったときに、その歩みを止めたyou。
「かわいー…。」
「ん?」
「ん、…これ、可愛いなーと思って。」
「ぬいぐるみか?」
「と、アクセサリのセットだね。このウサギのが可愛い。」
youが立ち止まった商品は小さなぬいぐるみとお菓子を模った小さなアクセサリ。
どちらもガラスの飾りが散りばめられており、キラキラ輝いている…。
いかにも女の子らしいチョイスのそれを見て、カイジはふっと笑った。
「ほしいのか?」
「うーん、諦めろって言われたら諦められるけど、でも…可愛いし、値段もまぁ…いけるし…揺れるなぁ。」
「……しっかしなぁ…こんなんでいいのか?」
「へ?」
「いや、今日クリスマスだし……こういう感じで何か見てる時にyouがほしがったもんをプレゼントとして買ってやろうと思ってたんだ。」
「えぇ!そうなの!?」
「でもなぁ……あんま予算は無かったけど、これはあまりに安すぎ…。」
「いいの!」
くるっとカイジの方へ向き直り、カイジの大きな手をyouの小さな両の手が包む。
ぎゅっと握ってyouはカイジに告げた。
「これがいいな!」
「そっ……///」
「もしプレゼントしてくれるんなら、これが嬉しい!」
「そーなのか?///」
「うん!」
目をキラキラ輝かせて、頷いたyou。
一方のカイジは、建物の暖房と心拍数の上昇による体温の上昇で汗が噴出しそうになるのだった…。
結局you本人の希望なので、そのウサギとアクセサリの箱をレジへと持って並び、
綺麗にラッピングしてもらったものを「ほらよ」と、you渡した。
「うわぁ!嬉しい!!ありがとうカイジくん!!」
「お前ってホント……。」
「ホントにありがとう!」
満面の笑みで自分を見上げるyouに思わず愛しさが込み上げる…。
カイジは呆れたような顔でふっと軽く笑った…。
「安上がりなヤツ…。」
「安上がりでも何でも、プレゼントって嬉しいもんなのです。」
「そー……かもな。」
「うん!」
「……っと、色々見てたら意外と時間って経つの早いのな…。」
「あ、映画もうすぐだね!そろそろ映画館行こうか?」
「そうするか…。」
そう言ってその場を後にし、映画館へ着いたのは始まる10分程前。
飲み物を購入して指定された席に座った…。
そして座ってすぐに何故かそわそわしているカイジ…。
不思議に思ったyouが質問してきた。
「どうしたの、カイジくん……トイレ??」
「や…何か…映画館と言ったらポップコーンじゃねぇ?!」
「そ、そう…?」
「何か無いと落ち着かねぇ…気がする。」
「あはは!!何か子どもみたい…買ってくる?」
「や、いい!」
「どうして?落ち着かないんでしょ?」
「こっ、こうすれば落ち着くから……っ!///」
少し言葉をドモり気味に、隣にいるyouの手をぎゅっと握ったカイジ。
youは掴まれた手に目を落とし、続けざまにカイジを見る…。
「これ、ホラー映画じゃないよね。」
「な……なんだよ///」
「熱くない?」
「youが暑いんなら、離す…っ///」
「じゃ、私もこのままでいいよ。」
小さな子どもを見て笑うようにクスッと微笑み、
youはスクリーンに視線を移した。
ちょうどいいタイミングで館内が暗くなり、
予告編に続いて本編の上映が始まる…。
youが先ほど言ったように、今回2人が見る映画はホラーではないだが…
彼女手を握るカイジにはゾンビや幽霊がいきなり現れたくらいの心臓の跳ねが上映の間中ずーっと続くのだった…。
なんとか手を離すことなく映画が終了し、映画のエンディングテロップがBGMと共に流れ出す。
「提供の最後の最後まで観てこそ映画だ!」と、カイジが妙なこだわりをみせ、
youはそれに「何か分かる気がする」と言って笑った。
それから照明が再び点いて2人が映画館を出る頃には、他の観客たちはもう去った後だった。
*。゜.*。゜.*。゜.*
そして現時刻…
夕食を済ませ、夜なのにイルミネーションの光で明るく輝く市街を歩きながら、
youは「んー!感動した!」と言ってカイジの前を歩いている。
「特にあの鉄骨渡りは感動した!」
「そーか…。」
「対岸にいる彼女に会う為に地上74メートルの天空の鉄骨渡り!藤龍カッコよすぎた!」
「(あのシーン見たとき物凄い悪寒が走ったのは気のせいだろうか…)」
「どうしたの、カイジくん……顔色悪い。」
「へ!あぁ!大丈夫!!」
「本当かな…。」
「おう。」
イルミネーションの光で彩られた、公園はクリスマスの絶好のデートスポットのようだ。
おそらく恋人であろう男女がカイジとyouと同じように
イルミネーションを眺めたり、ベンチに座って話したりしている…。
一通り公園を飾るイルミネーションたちを見てまわり、
一息つこうと、カイジが暖かい飲み物を買ってyouの元に戻ってきた。
「これでよかったか?」
「うん、ありがとー……あったかい!」
カイジからホットドリンクの缶を受け取り、頬っぺたに当てて暖をとるyou。
じんわり伝わる温もりに、自分の顔が思ったより冷えているのを改めて認識する…。
はた…と、隣にいたはずのカイジがいないのに気付き、後ろを向くと
彼は近くにあったベンチに座ってコーヒーを飲んでいた。
「私も座ろっと!」
「あぁ。」
「……あ!そうそう!さっきからずっと渡そうと思ってたのに…。」
「??」
youはそう言うと綺麗な紙袋をカイジの前に差し出した。
不思議そうな顔をして彼女を見つめ返して、カイジは尋ねる…。
「これは?」
「メリークリスマス、カイジくん。」
「あ、はい、メリークリスマス。」
「これ、大したものじゃないけど、クリスマスプレゼント。」
「ホワッツ?」
「受け取ってくださいな。」
「オレに?」
「うん、カイジくんに。」
「もらっていい、のか…ッ?!!///」
「もちろん。」
「やべぇ……///」
口に手を当ててふいっと一瞬youから目を逸らす。
その反応に、受け取りを拒否されたのかと思ったyouが「あの…」と声を微かに上げた瞬間。
「すっげー……嬉しいんだけど…///」
「え?」
「思いがけず……かなり、嬉しい。」
「ホント?よかったぁ!」
「ありがとな…///」
「いえいえ、どういたしましてー。」
「あ、開けていいか?」
「うん!」
包装を解いて、中身を取り出したカイジ。
「黒の手袋か、うん、やっぱ嬉しいわ!ありがとな、キョウ!」
「よかった、気に入ってくれたんなら。」
ぺこり、と頭を下げて笑うyou。
それから、照れたカイジは何も言えず……暫しの沈黙が続く…。
もうそろそろ熱が下がってきただろうかという頃に、
youがカイジに話しかけた。
「それね、本当は朝渡そうかと思ってたんだけどねー。」
「そうなのか?」
「うん、でもカイジくんといると話が弾んじゃって!ついつい渡すの忘れちゃってたんだ。」
「ハハッ、そうかぁ?ただの物忘れじゃねーの?」
「むっ、それどーいう意味?」
「冗談だよ、じょーだん。」
ふくれっ面になったyouの頬っぺたをぎゅーっと柔くつねって笑う。
それから「もぉ!」とカイジの手を振り払って、話を続ける。
そんなことをしながら、家路に着いた2人。
福本荘の前で「やっと帰ってきたって感じだな」とカイジが苦笑した…。
「そうだねー」とyouも苦笑した後
隣にいたカイジの前に出てきて、その歩みを止めさせた。
「あのね、今日はカイジくんと一緒でよかった!」
「へ…?」
「時間も忘れちゃうくらい楽しかったから。」
「そ、そーなのか?」
「うん、映画以外特に服とか雑貨とか何かを見たりするんだ!って目的もないのに…一日がこんなに楽しかったのは、カイジくんと一緒にいたからだもん。」
「な、何真面目に言ってんだよ…///」
「素直にそう思ったから言ってるの。」
「は……恥ずかしいヤツ…///」
「いいじゃないですか、たまには。」
「お、オレなんかと一緒にいても……いいことなんて一つも無いだろ…?!」
「またそんなこと言う!!」
カイジの言葉に少しだけ怒りを含んだ声でじろりと睨む…。
別に怖くも何ともないが、何かマズイことを言ったと察知してカイジは「う…」と小さく呻いた。
youはベンチから立ち上がって、カイジの前に立った。
それからカバンの中から、今日貰ったプレゼントを取り出す…。
「カイジくんと一緒にいたから、映画タダで観れて…
カイジくんと一緒にいたから、美味しい御飯食べれて
カイジくんと一緒にいたから、このプレゼントに出会えたんだよ?」
そっと、包み込むようにプレゼントの小さな箱を持って
youはそっと目を閉じた。
「少なくとも、私はとても楽しかった。」
「you……。」
「カイジくんはどうかな、私と一緒にいて楽しくなかった?いいこと、一つもなかったかな?」
閉じていたyouの目が見開かれたのは、
カイジが答えを述べる前に……カイジ自身が彼女を抱きしめたから。
今まで冷静にカイジに質問を飛ばしていたのに、
その状況に驚き、戸惑って激しく焦っている。
顔を真っ赤にしてしきりに「えぇ!?」と声を出す…。
「楽しすぎたから困ってんだよ……///」
「はいっ?!///」
「いいことばっかりだったから、困ってんだよ…///」
「それは…よいことなのでは?」
「あーもーそうだよ!……馬鹿、ホント馬鹿…!!」
「だっ、誰がですかっ!!///」
「オレとyou。」
「2人とも?」
「あぁ。」
「どうして?」
「ニブくて馬鹿と不器用で馬鹿。」
「……何それ…。」
「ホラ分かってない。」
「む?!」
「いいさ、まだ……時間はあると思うし。」
「もー、何?」
「少なくとも今日はオレを選んでくれたんだから。」
「……うん…?」
「こっちの話。」
「???」
「あー……あったけぇ。」
「カイジくんのダウンもあったかいよ。」
「(ダウンかよ…)」
カイジの着ているシンプルな黒いダウンジャケットに顔を預けて、
ぎゅーっと身体ごとyouが寄り添った…
と、その時…
「カイジ君っ?!」
甲高い声が道に響いて、カイジとyouは身体を離して
声のした方向を振り向いた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「げっ、み…美心?!!」
「あ、美心ちゃん。」
彼らの後ろにいたのは坂崎美心という少女。
彼女は以前、カイジが世話になったことのある坂崎孝太郎という男の愛娘である…。
孝太郎が家にカイジを連れてきた日から、美心は彼に恋をしているようで…
何かというとカイジの前に現れて自分をアピールしてくるという…。
カイジにとっては何とも有難迷惑な女性……というポジション。
ちなみに近所に住んでいるため、よく挨拶を交わすことがきっかけとなり
youとも顔見知りで友達になっている。
そんな彼女が顔を真っ赤にして涙目でカイジを睨みつけている。
「はっ、破廉恥だわ!こんなところで!!」
「美心ちゃんこそー!どこ行ってたの?もしかしてデート?」
「ち、違うわよyouちゃん!友達とクリスマスパーティしてたの!彼氏なんていないわよ!好きな人はいるけどっ…!///」
youの質問に応え、最後のほうに小さくそう台詞を付け加えて
じーーーーっとカイジの方をみる美心…。
一方のカイジは目を合わせないように必死で星を探している…。
視線がぶつからないのを少し悔しそうにしながら、
こんどは美心がyouに尋ねた。
「youちゃんこそ……カイジ君と…デート、してたの……?2人は付き合ってるの?!」
「んー、考えようによってはクリスマスに2人で出掛けるってデートかもだけど……付き合ってるとかじゃないよ。」
「そ、そうなんだ!?そっかー!よかったーぁっ!///」
「えー?何でなんで、どうして??」
「えっ?!そ…それは…///」
再び顔を赤らめてうっとりとした瞳でカイジを見つめる実心…。
ここで「私、カイジくんが好きだら!」などと言われた日にはもう何もかもお仕舞いだ。
youのことだから「えー、じゃぁお邪魔虫は退散するよー」とか言って、
目の前の福本荘に、自分と美心を置いて帰ってしまうに違いない。
そして一番痛いのが、youの中で『カイジ<美心』の親密度であれば
彼女が自分を好きになるというフラグはこの先立つことはない…。
「(あぁああ!絶望…ッ!これはもう絶望的過ぎる…ッツ!!)」
ぐにゃり…と、脳内から身体から何から何までが揺れ曲りそうになったカイジ…。
ちょっと涙が出そうになったのだが……
youの腕に自分の腕を絡ませてた美心の反応に、震えがピタリと止まった。
「わっ、私はyouちゃんが心配だったの!///」
「わたし?」
「男は皆オオカミなんだからっ!いくらカイジくんがご近所さんで仲良いからって、油断しちゃダメだ・ぞっ☆」
「あはは!大丈夫、それはアカギさんの存在で身に染みて分かってるから。」
「それならいいんだけど……兎に角、youちゃんに手を出したら美心が許さないぞっ!」
そう言ってカイジにバチっとウィンクをして帰っていった美心…。
去った後、カイジが思いっきり溜息を吐いたのは言うまでも無い…。
「(何は無くとも…よかった…本当によかった…っ!)」
「大丈夫、カイジくん…凄い汗…。」
「あぁ、ちょっと……星を数えすぎた。」
「そ、そう…。」
「ま、美心には悪いけど……。」
「え?」
「次は本当に、攫うつもりでいくから。」
びゅっと強い風が吹き抜けて、youとカイジの髪を揺らした。
「なん…///」
「覚悟しとけよ?」
ニッと歯を見せて笑って、youの頭をコツン…と軽く叩いて歩き出した。
はずだった…。
目の前に暗黒のオーラを纏った神と覇王が現れるまでは。
「素寒貧の分際でyouを攫おうってそりゃアンタ……ちょいと覚悟しないとなぁ…。」
「カイジさーん……俺、カイジさんのことは忘れないよ…。」
あまりの殺気に言葉も出ないカイジとyou。
つかつかとyouの前に歩いてきて、アカギと零が彼女背中を押して福本荘に帰宅させる。
「え?!ちょ、ちょっと零くん?!」
「いいの、今から男はちょっとだけ拳で分かり合う時間なの。youサンはもう帰んなきゃなの。」
「あ、アカギさん!!」
「大丈夫ダイジョウブ、腕一本が関の山・・・。」
「はぁっ?!」
「はい、じゃぁオヤスミさなさい!」
「ちょっと、零くん!」
「大人しく寝てろ。」
「アカギさんっ!!」
「「出てきたら犯す。」」
「・・・・はい、寝ます。」
その暗黒のオーラを家のドア越しに感じたyouは、心の底で「許せカイジくん!!」と謝罪し
寝る準備を始めるのだった…。
「ギャァアアアア!!!」
それから2分と経たないうちに、聞こえたのは紛れも無くカイジの断末魔の悲鳴…。
かくして福本荘のクリスマス(イヴだが)は幕を閉じた…。
お約束☆な結末
(か、カイジくん!昨日は大丈夫だった?!)
(……大丈夫に見えるか?)
(はい、見えませんね)
(それでも!!アカギや零のヤツに譲るつもりは無いから!)
(そうなんだ…頑張ってね!)
(おうっ!///)
(あ、じゃぁ昨日のは何か奪いあっての喧嘩だったの?)
(……振り出しに戻る、かぁ…。)
*。゜.*。゜.*。゜.*
『クリスマスですよ福本荘!(ALL)』に戻る