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食べ物の恨みすら
相殺されるのは…
my moderate brown
KISSES CHOCOLATE
「わー!何あれ、凄い建物!あっ!あの人の洋服可愛いね!」
「どれです…?」
「あの道の向こうの……ってああっ!美味しそうなお菓子がっ!アルジュナ、買いに行こう!」
「はいはい、分かりました。」
出掛けた先、初めての街で浮足立つのは仕方ないとは思うものの、
あれやこれやと注目を移し、思ったことを口にする彼女の話題に追いつくのはなかなかどうして大変だ、と軽く溜息を吐くアルジュナ。
興味のあるものに目移りするのは、女性特有のものなのか…。
はたまた、ただ、彼女がそういう性質なのか…。
どちらにしても、最終的結論として「はしゃいでいる彼女も可愛い」と思ってしまうあたり、
自分も大概だと…アルジュナは呆れるように自嘲するのであった。
「ワッフルのようだ。わっふるわっふる。」
彼女に手を引かれ、連れていかれた先にあったのは移動販売のカフェ。
メニューの看板も出ており、どうやら営業中の様子。
「何ですかそれは……で、何にするんです?お食べになるのでしょう?」
「やっぱりチョコレート!あ、でも…ストロベリーチョコが可愛いなぁ。プレーンもメイプル捨てがたい……2個はカロリー高そうだなぁ…でも美味しそう!」
「せめて二択まで絞りなさい。」
「うぅ……二択……なら、やっぱりチョコとストロベリー…かな。」
名残惜しそうにプレーンとシュガーの写真を眺めるyouをまるで無視し、
アルジュナは淡々と店員に注文をこなす。
「すみません、チョコレートとストロベリーをお願いします。」
「ああっ!即決ッ!!」
店員もアルジュナのゆるぎない注文に明るい声で「かしこまりました!」と返事をしている…。
会計を済ませ、商品を受け取る。
そして「ありがとうございましたー!」という声に見送られ、その場を後にした2人…。
「どちらをお食べに?それともお2つ食べられますか?」
「いや、1つでいいよ…どっちにしよう……えと、じゃぁ、チョコレート!」
「はい、どうぞ。」
「ありがとう!」
「あ、あのねアルジュナ…!」
「どうぞ。」
「え?」
「食べたかったのでしょう?こちらの味も。」
「う…ん。」
完全に見透かされている…というより、
アルジュナが元々そういうつもりで2つ頼んでくれたのではないかと、実のところyouも感じ取っていた。
だがしかし、いざそのように紳士的なアクションを起こされると、
何となくだが、無理をさせているようで申し訳なくなってくる。
そのため、「ありがとう」と感謝を言葉にして、
アルジュナの分のワッフルを遠慮がちに小さくひと齧りさせてもらった。
「んん!ストロベリー美味しい!」
「…それだけでよろしいのですか?」
「うん、ありがとうアルジュナ。」
「そうですか…これはまた随分と可愛い口で遠慮をアピールしましたね。いつもはこの2、3倍あるでしょうに。」
「そ、そんなことないもん!ていうか3倍は言い過ぎだと思う!//」
「そうでしょうかねぇ…?」
「そうです!」
プイっとアルジュナから顔を逸らすと、
そのまま手に持つ自分のワッフルに齧りつくyou。
「んんっ!!」
「?」
「チョコレートも美味しいー!!」
「・・・。」
「はい、アルジュナ!アルジュナもチョコ食べてみて!美味しいよ!」
「では、遠慮なく。」
やられた!と思った時には既に遅し…。
ざっと見積もっても全体の2/3弱程の面積が一瞬にして消え去った。
思わず目を見開いて、youはアルジュナと己の手に持つワッフルを交互に見やる。
遠慮なくとは言うものの、ちょっとくらいは遠慮するだろう!と叫ぶ寸前だ。
「ひひひひどい!!」
「んむ、確かに美味しいですね、チョコレート。」
「アルジュナが殆ど食べた!ひどい!あんまりだ!」
「何言ってるんです、誰かに何かを施された時は遠慮なくもらっておかないと相手に失礼でしょう。」
「うわぁぁん!そこ、授かり体質の所為にする?!」
「大変美味しかったです。ありがとうございます、you。」
「どういたしましてちくしょう!」
こんなことならば軽い気持ちでワッフルを齧らせるのではなかった…と、メソメソ泣き言を零すyou。
一方のアルジュナは大変満足した表情で自分の分のワッフルを食べ歩いている。
その表情はyouを拗ねさせて面白がっているというよりも、
寧ろ、ワッフルの美味しさに綻んでいるように見え、思わずyouは質問を投げかけた。
「ねぇ…アルジュナ、もしかして結構甘いもの好き?」
「…そうですね、割と好きです。」
「なぁんだ、そっかぁ!そういうことか…。」
「何がです?」
「ん?いや、わたしがチョコとストロベリー食べたいって言ったから、アルジュナが頼んでくれたんじゃないかって……我儘言ったようで申し訳なく思ってたの。でも、それってアルジュナも食べたかったからなんだね。」
「我儘とは全く思っていませんが、この2つにしたのは勿論、youが食べたいと言ったからですよ?」
「え…。」
「私の好みとしてはシュガー一択ですし。」
「あるじゅな…。」
「何です?」
アルジュナの淡々とした返事の中に垣間見えた優しさと気遣いに、思わずyouはその場に立ち止まる。
隣を歩いていた彼女の姿が横目に映らなくなり、
思わずアルジュナも足を止めて振り返った。
「you…?」
「ありがとう、アルジュナ…。」
「いいえ。」
「わたしのワッフル2/3食べたのは許せないけど…。」
「貴女、意外と食い意地張ってますね。」
「食べ物の恨みは怖いのです!!」
「分かりました。そこまで言うのならもう1つ買って…」
「要らない。」
「おや。」
買い足そうと言うアルジュナの言葉を遮り、
その否定の言葉から本格的に拗ねてしまったのかと思われたが、どうやら違う様子…。
彼女は空いた手でアルジュナの手をぎゅっと握り、彼の顔を見上げた。
「他のものがいい。」
「他のものですか…?」
「うん。」
「何が良いのです…ケーキですか?プリンですか?それともアイスか何かでしょうか?」
「ううん。」
「やれやれ……そんなに拗ねないでください…次からはもう意地悪しませんから……教えてください何が良いんです?」
「はぅうぁうんぃー。」
「何言ってるかさっぱり分かりません。そして食べながら喋るのはおやめなさい。」
ぺしっと額を軽く叩かれ、youは口をモゴモゴさせながら「ぁぅ」と小さく呻く。
それからごっくんとワッフルを飲み込むと、アルジュナを見つめ、繋いでいる手にぎゅっと力を込めた。
「アルジュナがいい。」
「・・・。」
パサっと音を立てて、ストロベリーのワッフルが地面へと落下する。
「ああっ!勿体無いっ!てかもう欠片か…アルジュナ、意外と食べるの早いんだね、やっぱり甘いの結構好きなのはガチなのか…。」
「っ……you、貴女…今、何と?」
「え?」
「何が食べたい…と?」
「えー…と…えっと……。」
「何がほしいと、仰ったんですか?」
「それはですねそのー…あの…。」
「よく、聞き取れませんでしたので、もう一度お願いします。」
ブン!と、youと繋いでいた手を振り解き、
アルジュナは自由になった両手で彼女の両腕をガッチリと掴む。
そのため、逃げることは適わず。
しかし、正面からの物凄い目力には耐えられず、youは明後日な方向へ顔と視線をを逸らした。
「you…今一度、お願いします。」
「……あるじゅなが、いい。」
「ッ…!」
「ケーキでもプリンでもアイスでもなくて……わたしはアルジュナがいい…。一緒にそれを食べてくれるアルジュナがいればそれで…いっ!!?」
最後まで言い終えないうちに、アルジュナがyouの手首を掴んで走り出す。
少しよろめいたものの、なんとかバランスを取り戻して彼に付いて行くと、細い路地裏に連れ込まれた。
息を整える間もなく、背中を壁に押しつけられ、
アルジュナの両腕に逃げ道を遮られるyou…。
「かか、壁ドン両腕バージョンだと!」
「何ですかその技は…これはただ貴女を逃がさないためです。」
「そうなんだけど…そして逃げないんだけど…。」
「どうして貴女はいつもいつも……ッ!!」
「え、何?!ごめんなさい、わたし気付かないうちにアルジュナを怒らせることしてたんだね…うう、ごめんなさい…。」
「怒ってはいません……ただ…。」
「あ、怒ってないのね、よかった…。」
「ただ……公衆の面前で抱きしめたり口付けたりするのは貴女が恥ずかしいのではないかと思ったので…自制したんです…。」
「それでここに…。」
「余計なお世話でしたか…?」
「そんなことはない…けど……その、じゃぁ…これはつまり…。」
「率直に申し上げますと、抱きしめて口付けるためです。」
「ど、どうして急にそんなこと…//」
「貴女が誘ったのでしょう!」
「はぁぁ?!//」
自分が誘ったという意味が全く理解できず、
頭の上に疑問符をいくつも浮かべ、アルジュナの言葉に「何故!?」と驚きの声を上げるyou。
「貴女が……私(アルジュナ)がいい、などと…言うから…//」
「だって……素直にそう思ったんだもの…//」
「甘味よりも私が食べたいなど……そんな言葉で誘われたら、私でも街中でも衝動に駆られます!」
「たッ、食べたい?!違うよ、食べたいとかそういうんじゃなくて…!//」
「ではどういう!」
「優しいアルジュナが傍にいれば、十分だから…態々ワッフル買い足さなくていいっていう…//」
「却下!」
「えええええ!!?」
照れ臭さで恥ずかしそうに俯いて先刻自分が伝えたかった言葉をyouが説明すると、アルジュナは真顔でNOと物申した。
それどころか、顔を一層近付けてくるので、逃げ場のない彼女は益々顔を赤らめて仕舞いには泣き出しそうな表情を浮かべる他無くなってしまう…。
「食べたいという意味で取りました。欲しているという意味で捉えました。なので、却下です。」
「それはアルジュナの感想でしょ!!」
「それならば!!」
「!!」
低く、大きめのアルジュナの声にyouの肩が一瞬ビクリと跳ねた。
もしかして怒らせたのだろうかと不安になったyouだったが、
続く彼の言葉に目を丸くして動揺することとなる。
「私を欲してください。私を食べたいと!」
「なな、なに言って…!?//」
「チョコレート、好きでしょう?」
「それは好きだけど…。」
「貴女の為なら、チョコサーヴァントでも何でもなってさしあげますよ…もう、本当に。」
「ちょこ…さーばんと…。」
「・・・//」
少しの沈黙の中、自分で言っておいて少し照れているアルジュナを見て愛しさが込み上げる。
ついでに言うと、チョコサーヴァントという比喩表現があまりにもしっくりきてしまい、
笑いを通り越えて「成程、言いえて妙だ」と感心してしまっていたyouだった。
最終的に、照れ臭さや羞恥心よりも愛しさが勝り、
彼女は嬉しそうに笑みを浮かべて文字通り、眼前の恋人にゆっくり抱きついた。
「ありがとう、アルジュナ……だいすき。」
「それはどうも。で、どうなんです…?」
「アルジュナが食べたいです。」
「よろしい。」
その言葉を待っていたとばかりに、落とされた口付け。
重ねてみれば御互い、微かにチョコレートの香りが漂うので、
思わず顔を見合わせてくすくす笑い合うのだった。
まぁ、食べるというか
貴女は私に
食べられるんですけどね。
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*
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