garb of love.
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「サーヴァント、ランサー。真名、カルナ。宜しく頼む。」
第一印象は神々しい。
そして…
そんな装備で大丈夫か?
だった。
garb of love
今から始まること
「はじめまして、ええと……わたしの名前はyou。まずはそう……応えてくれてありがとう…かな?」
「ああ、よろしくたのむ、マスター。」
「よろしくお願いします。」
そう言ってyouが恐る恐る手を伸ばすと、
彼はその手と彼女の顔を交互に見たのち、綺麗な笑みを浮かべてしっかりと握り返してくれた。
それから約ひと月…。
出合頭に真名を名乗ってくれたのは大変有り難い事だったが、
なかなかに聞き覚えの無かったその英名。
彼がインド古代叙事詩「マハーバーラタ」の大英雄という事実に辿り着くまでにそう時間は掛からなかったが、
如何せん専門外の分野な上に、登場人物と転生人物が多すぎて、
彼の生まれてから死ぬまでの経緯を理解するのにはかなりの時間を要した。
しかし成程、知ってしまえばこのカルナという男がどういう人物(というか神だが)なのか、
日々の観察を続ければ、読み物通り。察するに余りあった。
一言でいうと、あらゆることを「それもあり」と受け入れる、極めて寛大なサーヴァントである。
彼は万人に対して平等であり、また、万人を“それぞれの花”として敬っている。
多くの偏見から決して公には認められなかった武術の技量と高潔な精神を持つカルナは、格と言う点でも全サーヴァント中一、二を争うだろう…。
「聖人君主とはこのことか…。」
「マスター、それを言うなら聖人君子だ。間違っているぞ。」
「え…あ、やだ、わたし口に出てたの…そして間違っているっていう…!」
わたわたと両腕を上げ下げし、体全体で気恥ずかしさを表現するyou。
カルナはそんな彼女の行動をきょとんと、不思議そうな顔で一瞥すると、すぐに率直な疑問を問いかける。
「なんだ?その行動に何か意味はあるのか?」
「な、なにも無いです!けど……恥ずかしいなぁって…。」
「間違いは誰にでもあること、気にするなマスター。もしもやる気があるのなら、文明の利器に頼りすぎず、自ら筆を持つよう琢磨すればいいだけの話だ。」
「真面目か!」
ビシッツ!と、ツッコミの合いの手を入れる。
勿論その手はカルナに触れてはおらず、あくまでもツッコミの仕草だけなのだが…。
「マスター…。」
「…はい…?」
「その行動に何か意味はあるのか…?」
「うん、うん…えっとね…今のは漫才の……いや、もういいです…気にしないで…。」
「・・・。」
もうどこからツッコめばいいか分からない、とばかりに意気消沈して俯くyouだった…。
自分が実直すぎて、またボキャブラリーに乏し過ぎると自覚しているカルナは、
暫し彼女の横顔を見つめて、ぽつり、「すまない」と呟いた。
「嫌いではないのだが、コミュニケーションというものは苦手だ。」
「え…。」
「可能であるならば相手が…例えば君が、期待する答えを与えてやりたく思うが、どうも上手くいかない。」
「カルナさん…。」
「人は言葉で分かり合えるのだろうか…。」
穏やかだとも、寂しそうに、とも取れる声色でカルナは言葉を零す。
ちらりと覗き見たその横顔はとても綺麗で、悲しげに見えた。
「そうだね、難しいですよね、言葉って。」
「マスター…。」
「どんな言葉を欲しがってるか、なんて相手の心が読めない限り絶対無理ですし…。」
「そうだな、本当にその通りだ。」
「でも、下手な言葉じゃ相手を傷付ちゃったりしますし…。」
「ああ、どうやら俺はその類らしい。」
「あはは、確かに。初見だと傷付くかもー。」
「そうか…やはりそうなのか…。」
「うん、でも……大丈夫だよ。一緒に過ごせば、分かってくる。分かってきた。」
「・・・。」
自覚はあったが、まさかこうもハッキリと肯定されるとは思っておらず、
らしくなく凹んでしまったカルナだったが、
彼女はすぐに「but」と、反意語を用いて笑みを返してくれた。
「いや、カルナさんの考えてる事は流石に崇高過ぎて分からないと思うけど、どういう性質なのかってことくらいは…ね。」
「別段徳の高いことを思考しているつもりは無いが……成程、そうか…人となり、というものは理解できるということか。」
「そうそう。でもまだ、分からないことだらけだし、もっと知りたい。」
「マスター…。」
人から自分のことをどう思われようが、言われようがカルナは別段何も気にする事は無いだろう。
だがしかし、彼女にどう思われているかは、実際のところ気になるところがある。
行動し辛くもなるので…という職務的な問題もあるのだが、
それ以上に、自分にこれほどまで敬意を払い、安寧にも思える時間を共有できる稀有な存在に嫌われたくないという気持ちの方が大きい。
だから「知りたい」と告げられ、素直に、嬉しく思った。
のだが…。
「勿論カルナさんだけじゃなく、他の、色んな人の事も知っていかないとなんだけどね。」
「・・・。」
チリッと、胸の奥に線香花火のように小さな火花が飛んだ感覚…。
一瞬感じたその違和感に首を傾げて己が胸元を見るも、特に何の変化もない。
「マスター。」
「ん?」
「ひとつ、許可してほしいことがあるのだが…いいだろうか?」
「え、な…何でしょう?」
大英雄の頼み事とは如何なるものかと構えたyouだったが、
良い意味で目を丸くすることとなる…。
「『マスター』ではなく……君の名を、呼ばせてほしい。」
「え…。」
「『you』、と。」
「・・・!」
「許してもらえるだろうか?」
youの言う「色んな人」に先を越されてはいけないと思うのは、
自分が先陣を切って彼女を守るサーバントであるからという向上心からなのか、
はたまた、嫉妬心なのか…。
手を取り、懇願するような瞳で見つめると、
ポッと赤く頬を染めた後、彼女はとびきり嬉しそうな笑みを浮かべた。
「も、勿論です、わたしもカルナさんに名前で呼んでほしいです!」
「では、これからはyouも…俺の事を名前で呼んでくれ。」
「えぇ!?」
「君にとって「カルナさん」と呼ぶ事が、サーバントである俺へ対してのギリギリの敬意だということは理解していた。」
「あうぅ…。」
「暫く共に過ごし、俺もまた君がどのような人間なのか…その人となりを知った。」
「・・・。」
「君がそうやって俺を敬ってくれるのはとても有難いことだと思ったし、そのことに感謝もしている。その反対にマスターである自分を卑下し過ぎなのではないか、とも思ったが。」
「うう、はい…だって、大英雄ですもん……緊張もします…。」
「ああ。だが、その結論として、これから、俺は君の名を呼びたいと思ったし、君に名を呼ばれたいと思った。」
「!!」
「君が俺の事を知りたいと言ってくれたように、俺もまた君のことを知りたいと思った。」
「カルナさん…。」
「俺に……歩み寄ってくれるだろうか…?」
目を細め、僅かにだが唇に弧を描いてyouを見つめると、
彼女はもう片方の手でカルナの手を握り返した。
「っ…はい!これからもよろしくお願いします、カルナ!」
youに笑みを返され、心が満たされる気分になったカルナ。
少し時間が掛かった気もするが、
これから全てが始まると予感するのだった。
ああ なんて
尊いのだろう。
words from:yu-a
title by:Kiss To Cry
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