garb of love. 番外編
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まさか温泉で
文化の違いという
壁にぶつかろうとは…
garb of love
温泉へゆこう!
「わぁ!凄い、良い眺め!これはリフレッシュできそう…!」
とある温泉宿の部屋、案内係が下がった後に荷物を置いて窓の景色を見てyouが感嘆の声を上げた。
ちょっとばかり金銭に余裕があったことと、溜まっていたストレスの発散…。
何よりカルナに温泉を体験してほしくて、この温泉旅行が決行された。
「いいねぇ、畳の部屋!低いテーブル!座椅子と座布団!準備された急須と「こんなに要らないよね」ってくらいの数の湯飲み!ロビーのお土産屋さんで売ってる商品をお試しさせてくれるちょっとしたお茶菓子!まさしくThe 温泉旅館!」
「そうなのか…必須アイテムもあり、しかも不要なものも有益となるとは…温泉旅館とは摩訶不思議な場所だな。」
「ふふ、そうだね。」
荷解きをするでもなく、youがその低いテーブルに準備されたお茶のセットを扱い始めたので、
カルナも一通り部屋を見て回った後、彼女の向かいの座椅子に背を預けた。
茶托を使ってお茶を差し出し、先程言っていたちょっとしたお茶菓子をカルナに手渡す。
「お茶をありがとう。茶菓子も早速いただこう。」
「どういたしまして。あ、そうだカルナ、このお宿は全室露天風呂付だから、後で入ってきたら?いつもと違って外で入れるよ。あったかいお湯だから、沐浴とはちょっと違うかもだけど……。」
「そうなのか、日輪を拝みながら……それはありがたい。」
「(そっか…太陽神はカルナのお父様だから…。)」
いつもはyouの家の手狭な浴室なので、生前のような外気に晒された解放感ある環境をカルナに提供してあげたいと思っていたyou。
しかも、敬愛する父である太陽神スーリヤの、その威光の元で彼に祈りを捧げられる事は、カルナにとって真に望んでいることでもあった。
その甲斐あってか、露天風呂の説明をした際のカルナは、予想以上に嬉しそうであった。
「(喜んでるみたい…よかった。)」
「お茶を飲み終わったら早速行ってみたいと思う。良いだろうか?」
「うん、温泉街の観光は明日でいいし、今日はお部屋でまったりしようか。」
「すまない、恩に着る。」
「いいよ、全然。」
youが最後にポツリと呟いた言葉だけは、よく意味が分からなかったが、
何にせよ、昔のような環境で沐浴ができることは嬉しい事で、心なしかお茶を飲み進めるペースが早まったカルナだった。
それから、お茶を終えた2人は部屋にある露天風呂を確認しに行く。
「わ!この露天風呂、思ってたよりずっと広い!」
「湯で沐浴など、随分と贅沢な気がする。」
「そうなの…今日は贅沢するために来たの。」
「そうだったのか…。」
「食事も豪華みたいだよ…期待しようね。」
「何と…それは期待せざるを得ないな…期待せざるを得ない。」
「じゃぁ、着替えの準備はしておくので、入っておいで~。」
「ありがとう、you。」
カルナを露天風呂の脱衣所に残し、その場を去るyou。
カルナはというと、露天風呂の環境での沐浴が楽しみになったようで、
ちょっとだけ目を輝かせながら、着衣をキャストオフして浴槽へと向かった。
ややあって…。
「you、用意されていた衣服の着方が…難解なのだが!」
「ひえっ!!」
廊下と居間を隔てる襖が勢いよく開かれたと思えば、沐浴を終えたカルナが浴衣に袖を通しただけの前開き、あられもない状態でバタバタと入ってきた。
幸い髪や体はちゃんと拭かれており、廊下が水浸し…などということはないようだった。
「ごめんごめん、そうだよね、浴衣初体験だもんね。でも旅館の浴衣は簡単だよ……その帯…あ、紐を貸してくれる?」
「あ、ああ…。」
カルナが手に持っていた浴衣の帯を受け取り、自らの腕に掛けると、youは彼の肌蹴た浴衣に手を掛ける…。
「あ、ちょっとだけ袖と裾足りてない…でも1サイズ大きくすると絶対余るから仕方ないか。」
「そうか。」
「(にしても……肌白くて綺麗だなぁ…細いけど鍛えてるから意外と体硬いんだよね…。)」
「・・・?」
「(わたし……いつもこの体に抱かれてるんだよね……何というか…今更だけど…凄く…)」
「・・・。」
「ハッ!わたしは今何を!!…ゆ、湯上りって危険だ……!!」
「今更だな。」
「えっ?!!!」
「オレは普段、youが入浴を終えて戻ってきた時は、いい匂いがするし、顔も上気していて艶めいて見えるし、何より下着を付けていないので、正直とても摩羅が疼く。」
「ああああ!?」
「本来であれば沐浴や入浴は穢れを落とす行為なので、 媾(まぐわ)った後に行うべきなのだが、フッ…オレもまだまだ、煩悩だらけ、修業が足りんという事か…。」
「またサラっと爆弾投下して一人で納得してるよ……怖ッ!!」
品のない言葉も意に介さずサラリと発言し、自己完結するカルナ。
彼の性質を理解しており、オブラートに包んだ言葉にしてもらうことが不可能であることも知ってしまっているため、
youは真っ赤な顔で、しかしながらドン引きの表情を浮かべるのだった…。
「オレはまた何か余計なことを言っただろうか?」
「う、うん……余計っていうか……そういう話、誰かがいるところでしちゃだめだよ?2人きりでも、公共の場とか…ダメだからね??」
「…………………分かった。」
「え、タメ長…。」
「(もし現界していたら)知人にもか?」
「逆に何で知人に言おうと思ったの?!」
「オレは元来、人にとっては退屈な男であったかと思う。自分でもそう思う。固執するとすれば終生の好敵手であったアルジュナくらいのものだったから。
だが、此度の現界でお前に出会って、アルジュナとはまた違った気持ちを抱いて執着する存在ができた。
だからもしも、オレの話に耳に傾けてくれる既知の者と再会したのなら、この喜びを伝えたいと思った。」
とどのつまり「彼女ができたから自慢させてほしい」という至ってシンプルな内容なのだろうが、
何故そんなにも自分の性格を卑下する言い方になるのかと、youはそっと額に手を当てて頭を悩ませた…。
「シンプルに「大事な人ができました」とだけ伝えるのではだめなの…?」
「む……それでも構わんが、オレとしてはこの感情が珍しく揺さぶられるほどのものだということを伝えたい。」
「うーん、でもそれに下ネタ……ええと、破廉恥な内容は入れないでほしいなぁ。(わたしの精神の為にも)」
「そういった内容の方が伝わりやすいかと思ったのだが…。」
「あー、成程ね、男子高生とか大学生のサークルのノリね…。」
「よく分からんが、お前が該当すると思ったのであれば、きっとそういうものなのだろう。」
「でも、やっぱりダメです…。」
「そうか…。」
「そういうことは……カルナとわたしだけの……うう、ね?分かるでしょ。」
「成程、そうだな……オレとyouだけの秘め事だな……分かった。」
そういう事なら…と、やっとyouの言葉に納得してくれた様子のカルナ。
youもやっとホッとしてカルナの浴衣の着付けに戻るのだった。
(と言っても、簡易的な旅館の浴衣は前を閉じて腰の紐を結ぶだけなのだが)
ちなみに、結んでいる途中であまりにも紐が余るので、カルナの腰の細さに驚愕したのはここだけの話だ…。
「おお、これが「旅館の浴衣」か……何ともいえない感覚だが、趣深いものがあるな。」
「何となく地域の異文化交流会感あるけど、でも純粋によく似合ってるよ。」
「ああ、ありがとう。」
何とも言いえて妙な表現を用いたyouだったが、そこは今回カルナがスルーすることにしたようだ。
特に何もツッコミを入れることなく、称賛の部分だけを受け取った。
その後、外に出る予定を翌日に回したこともあり、特に何もすることがなくなった2人は、館内を探索。
大浴場の場所を確認し、カルナに利用方法を教えたり、
自由に利用できる卓球コーナーやゲームコーナーで遊んでみたりしているうちに日も暮れる…。
部屋に戻ると準備されていた、山海の幸入り乱れる豪華な食事。
最近判明した食いしん坊スキルがフルに発揮されたカルナが、それはもう大変嬉しそうに、そして有難そうに食べるので、その姿には思わずyouも笑みが零れた。
「ごちそうさまでした」と、2人で最後にお辞儀をして、これからのことを話し出す。
「カルナ、夜のお風呂はどうする?大浴場に行く?」
「大浴場も魅力的だが、そこは早朝も入れるのだろう?」
「うん。」
「なら、オレは部屋の露天風呂でいい。」
「そう…じゃあ、わたしは大浴場に行こうかな……そしたらお互いお風呂待ちしなくていいし…。」
「む、それであればオレが大浴場に行こう。youを一人で行かせるのは避けたい。」
「館内くらい一人でも問題ないよ、全然遠くないし……令呪もあるし…。」
「ダメだ。湯上りのyouを一人で歩かせるわけにはいかん。」
「・・・。」
「ダメだ。」
ダメなのはお前の思考回路だよ…と、心の中でツッコむyou。
ただ、それを口にしたところで聞く耳を持ってくれないだろうし、否定すること自体に「何故だ」と問い詰められる地獄が待っている未来が想像できた為、彼女はグッと言葉が出るのを堪えた。
「youが部屋の風呂を使うといい。オレは今から大浴場に行こう。」
「じゃ……じゃぁ!!……あの、こっちで一緒に、入る…?」
「何だと?」
「あ、いや…え?」
折角温泉に2人できたのだし、恋人同士ではあるのだし…と…。
本来は言うつもりはなかった言葉が、旅行のテンションもあって思わずyouの口を突いて出てしまったのだが…。
予想に反して、カルナが驚愕の顔つきになっているので、youも一瞬にして恥じらった表情が吹き飛んでいった。
「…っい、一緒にだと?しょ、正気か?!な…なんと破廉恥な事を言うんだ…!」
「あわわ、何かゴメンなさい!」
「男女が同じ湯に浸かるなど…は、破廉恥極まりない…!」
「そ、ソウデスネ……スミマセンデシタ。」
そんなに怒気を含んで何度も破廉恥破廉恥言わなくてもよくない?と、今までの自分の言葉や行動は棚に上げ、
まるで自分が痴女のように突き詰めてくるカルナに少しだけイラっとするyou。
「勿論、オレがお前の伴侶となる関係性であるからの発言だと理解はしているが…!」
「はぁ…。」
「身を清める場で、そのような…!」
「あ、なるほどそういうことか!」
カルナが少し憤りながら混浴を否定する理由は、それこそ異文化が根源にあったのだと理解する。
カルナ達が活躍する時代の宗教観がどうだったかはリサーチ不足でyouは知り得ないが、
沐浴という行為が汚れや穢れを落とす行為だということは、はるか昔からの考え方で、
また、彼の反応を見る限り、男女が入浴を共にすることはそういった行為をする意味合いになってしまう様子…。
「文化の違いなんだって理解できた、ごめんね。」
「いや、オレの方もすまなかった。youが突然人が変わったかのように破廉恥な誘い方をするので、驚いてしまった…。」
「誘ってない、誘ってない。」
「その誘いに乗ってしまえば、流石のオレも我慢がきくか自信が無い……申し訳ないが断らせてもらう。ちなみに断腸の思いだ。」
「(どうしてこの英霊は本当に一言余計なのだろうか…。)」
あと、人の話をたまに聞いていないよね…と、心の中で呟くyouであった…。
結局、どちらも部屋の風呂を譲り合い続けたため、最終的に2人で大浴場を利用することにした。
本来であれば女性の方が時間が掛かるものだが、カルナが物見遊山的に大浴場の露天風呂やサウナ等をしっかり満喫したこともあり、2人なかなか良いタイミングで男女共用の休憩所に出てくることができた。
「カルナ、お待たせしました!」
「いや、オレも今此処へ戻ってきたところだ。」
「そうなの、じゃあタイミング良かったね。」
「そうだな。では部屋へ戻るとするか。」
「うん。」
顔を見合わせて歩き出せば、自然と手が繋がれる。
そういった優しい思いの通じ合いはとてもあたたかで嬉しいものだと、youは幸せを噛み締めた。
まさに心も体もぽかぽかした状態で部屋に戻れば、客室係が居間にきちんと布団を敷いてくれていたため、youは思わず修学旅行中の学生のように「わー!」っと布団へダイブする。
「いいよね、旅館の敷布団~!」
「寝台が無い…というのもまた面白いものだな。」
「お、カルナもこの趣深さを分かってくれるのね…。」
「ああ。」
「もっと人がたくさんいたら、皆で枕投げしたり、トランプしたりするんだけどね…。」
「2人なら何かすることはあるのか?」
「んー、特にないかな……布団に入って一緒にお話しするくらい?」
「それは……いつもと変わらないな。」
「ふふ、そうだね。」
先程、手を繋いで廊下を歩いてきた時のように、心があたたかさで満たされる…。
youは嬉しそうに微笑んだ後、実際そのようにしようと…布団を捲ったのだが、
それはカルナの呼びかけによって阻止されてしまった…。
「you、寝る前に少しいいだろうか?」
「どうかした?あ、まだやっぱり眠くない?そうだよね…今お風呂入ってきたばっかりだしね…。」
「確かにそれもあるが……その、物は相談なのだが…。」
「うん?」
「実のところ、猛りが鎮まらなくて困っている。協力してもらえないだろうか。」
「うん!……え?」
「そうか、協力してくれるか……感謝する、you。」
「ちょちょちょ、え?何て?何に協力するって?!」
「オレの猛りを鎮めてほしい。」
「何て?!何で?!どうやって?!」
「「オレの猛りを鎮めてほしい」と言った。理由は……先刻、youが共に入浴しようなどと誘ってきた事で妙に意識してしまったからだろう……入浴を終えた旅館の浴衣姿も相まって、歩いて部屋に戻る時もずっと胸が高鳴っていた。そういえば言い忘れていたが、旅館の浴衣…youも良く似合っているぞ。」
「あ、ありがとう??いや、そうじゃなくて!」
「youが拒むのならば致し方ないが……もし叶うなら……オレを、受け入れてほしい……どうだろうか?」
「ど、どうもこうも…。」
「つまり混浴の提案で盛ったってことですよね」…とは言えず…。
何もせずに一緒にお風呂を楽しむ古き良き日本文化の混浴より、混浴を拒否しておきながら、
妄想を膨らませ、湯上り後に盛ってくる方が絶対破廉恥だ…と…。
何か納得いかない…と緩やかに頬を膨らませるyou…。
「嫌…か?」
「~~っ!!!はぁ…負けました。」
「む?」
「ん…わたしも、お風呂上りのカルナにドキドキしてるので、人の事言えないなって話。」
「そう、なのか…?」
「だってとても……い、色気があるというか……!!」
「そうか…?よく分からんが…。」
「浴衣だし……。」
「成程、その要素は大いに理解できる。」
「何か……このままいくと結局行為後に一緒にお風呂入る事になりそうな気がするんだけど…。」
「…では…万が一そのような事態になっても自分を抑えられるくらい、今此処で自分を解放するとしよう。覚悟はいいか、you。」
「?!!」
恋人のとんでもない発言に(容赦ないとも言う)、ヒュッと息を呑むyou…。
結局、カルナの宣言通り本当に無理というくらいにまで愛されてしまうことになるのだった…。
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「お互いすぐにでも入浴したかったとはいえ、結局本当に……共に入浴するとはな……。」
行為後、身を清めるために風呂に入ることを決めてはいたのだが、
再びどちらが先に入るかの問答となり、最終的にどちらも同じタイミングで入りたいことは間違いないのだという結論に至った。
「でも、カルナはあまり良くないんだよね…?」
「良し悪しの問題ではなく、オレがオレ自身を律することができるかどうかだと思っている。」
ぐっと拳を握って、謎の決意を固めようとするカルナ…。
youはそれを見て、はぁ…っと大きく溜息を吐くと、少し困ったような笑みを浮かべて、
今まで告げずに黙っていた気持ちを吐き出した。
「んー…あのね、大衆混浴っていうのがわたしの国の文化では昔からあってね、逆にそういう煩悩とか一切洗い流してくれて、皆で一緒にゆっくりのんびりお湯に浸かって世間話とかをする場…っていう考え方だったんだよ。今は時代が変わって利用する人はごく僅かだと思うけど、その文化は残ってる。」
「何と…!そのような……凄いな…色々な意味で。」
「うん、そうだね。でも、だから…あまり色んな事を考え過ぎずに、2人で一緒にゆっくりのんびりお湯に浸かってみても、いいんじゃない?わたしはずっとそんな気持ちで話してたよ。」
「そうだったのか…そうだったのか…衝撃だ…正に異文化コミュニケーション…奥が深い、深すぎる…!」
「あはは、そう、それそれ。……ね、カルナ、目を瞑って、壁に背中を預けてみて。」
「む…こうだろうか…。」
「そうそう、後は良いタイミングで目を開けてみて。」
「…分かった、そのようにしよう。」
「・・・。」
youも黙ってしまい、夜の静寂の中、ただ湯が波立つ音だけが響く…。
何も思うことはないが、それが何故か心地よい…。
これが彼女のいつも言う癒し…というものなのだろうか、少しわかる気もする…などと考えて、
フッと目を開けば、背を預けた状態で目に映ったのは満点の星々だった。
「これは……何と…。」
「素晴らしい光景だ」という言葉が出なかったのは、それを提案したのが他ならぬyouだったから…。
彼女はこの光景の素晴らしさを分かった上で、自分に教えてくれたのだから、言わずもがなだろうと思った故だった。
「……you、すまなかった。」
「なにが?」
「知らなかったとはいえ、このように趣深い文化を貶めるような発言をしてしまい…失礼だった、と。」
「そういうの気にしないの、ここはそういう場所、今はそういう時間、だよ。」
「…そうか、そうだな……とても素晴らしい環境だ。貴重な時間だ。」
「うん。」
横にいるカルナを見上げて小さく頷けば、すぐさま微笑みが返されて、水中で手が触れる…。
この旅でカルナに伝えたくて、やっと伝わった温泉の真の魅力…。
次はどんな場所で、どんな幸せな思い出を作ろうか、と…。
想いを馳せるのだった。
君となら
何処へでも
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*
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