garb of love. 番外編
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それは「君の夢を見た」ではなく
「夢で君を見た」が正しかった夢
garb of love
君が見た夢で幸福を知る日
『どうか、私めにその黄金に輝く鎧をお与えください。』
『バラモン僧…いや、お前は……。』
『どうか、どうか…。』
『すまない。この鎧は我が肉体の一部そのもの、与えることが出来ぬもの……何か、他に…お前の望むものを与えよう。』
もし外すことができる代物であったとして、それは所謂、会うこと叶わぬ父からの形見のようなもの。
常人であれば、そのような理由からも渡すことを躊躇うもの…。
しかして、彼は外すことができたとすれば、僅かばかり躊躇はすれど笑みを浮かべて明け渡しただろう。
英雄カルナとはそのような男であった。
しかし、如何にカルナの心の性質がそうであれ、身に纏う太陽神から授かった鎧は体の一部であり、物理的に外すことができないもの。故に諦めてほしいと伝えた。
だが、目の前のバラモン僧は頭を垂れて鎧を懇願するばかり…。
何度かこの問答を繰り返し、少しの違和感は大いなる疑惑へ…。
そして、とうとう確信へと繋がってしまった。
『…申し訳ない限りだが、諦めてはくれないだろうか。』
『いいえ、私めはどうしても、どうしても貴方のその鎧が欲しいのです…!どうかどうかお与え下さい…「我が息子のために」…!』
『!』
気付いてしまったからこそ、その問答に終止符が打たれた。
一度、唇をきつく結んだ。
そうしなければ、一瞬にしてあらゆる混沌とした負の感情が唇を震わせてしまうと思ったからだ。
『わかった』そう言って、青年は腕の黄金に手を掛け…。
「っ!!!」
布団を払い落とす勢いで起き上がる。
辺りはまだ真っ暗で、就寝の途中で目が覚めたのだと分かった。
「う、で……。」
体中がぐっしりと濡れているのは、今自分が見た夢にうなされて汗を掻いたからだと、すぐに察する。
しかし、youにはその不快感よりも今は無い激痛を感じた恐怖感の方が圧倒的に上回っていた。
「今のは…ゆ、め…?」
その鎧はあまりに美しい輝きを放つ黄金だったが、それは自分の肌にぴったりとくっついていた。
それこそ、身近なもので例えるなら、強固な瞬間接着剤で地肌にくっ付けられたかのような代物だった。
それを、夢の中の青年は苦痛に耐えながら小剣で体とつながっている部分を自身の肉体からすべて剥ぎ取った。
かくして彼は幽鬼のようにやせ細り、活力ある色だった髪と肌は雪のように真っ白な姿へと…。
最後には酷い苦痛で喋ることも辛そうな状態で、体を血に染め、鎧を欲した男に微笑を浮かべながら言ったのだ。
『此れがそうまでしてお前の望むものなら、オレは与えよう……さぁ、持っていくがいい。』
あれほどまでに日の光を浴びて眩しく輝いていた黄金は彼の鮮血に塗れ、真っ赤に染まっていた。
「…you?」
「!!」
夢の中で聞いていた声が、自分のすぐ隣から聞こえ、youはまるで幽霊を確認するかのように恐る恐る声の主へ振り向く…。
「か……ルナ…。」
「どうした、声が震えている。」
多少なりと魔力の消費はあるものの、お互いが傍にいたいという理由で、カルナは霊体化をしていない。
そのため、すぐ隣で寝ていた彼女が急にうなされて飛び起きたことで、彼も身体を起こし、youの頬に手を伸ばしてその安否を問う。
「酷い汗だ…悪い夢でも見たのか?」
「夢……なのかな、心の中がちょっと混乱中、でも大丈夫…あ…ご、ごめんね起こして…。」
「オレのことはいい、電気を点けるか?」
「ううん、迷惑かもしれないけど……このまま、傍にいてほしいな…。」
「勿論だ…you、手を。」
「…ありがとう。」
弱々しい声で礼を述べ、youはそっとカルナの手を握る。
「起こしてごめんね、寝ようか…カルナ。」
「…大丈夫なのか?」
「うん……何かね、寝た方がいい気がする……起きてると色々、夢のこと、考えそうで…。」
「そうか…そうか、なら、そうするといい。」
「ん…。」
再び体を横にして、目を閉じる…。
夢で目にした光景が瞼の裏に映りそうで、どうしたものかとぎゅっと眉間に皺を寄せて目を瞑ると、その不安を見透かされていたのだろう…カルナに抱きしめられた。
「果たしてこれでどれ程の効果があるかは分からないが……兎に角、オレはyouの傍にいるぞ。」
「……ありがとう、カルナ。」
「ああ。」
「おやすみなさい、カルナ。」
「おやすみ、you。」
そうして就寝のあいさつを交わし、再び眠りについた…。
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夜が明け、再び目を覚ましたyouだったが、カルナが傍にいると認識したこともあってか、更なる夢を見ることはなかったようだ。
しかしながら、一度見たあの夢はあまりに生々しく、すぐには消えてくれそうにない。
洗濯物を干し終え、ベランダから室内に戻った今まさに、再び夢の事を思い出してしまう…。
そうしてyouが本日何度目かの溜息を吐いた後、カルナに声を掛けられた。
「you、少しいいだろうか?」
「ん?どうしたの?」
「今日は何処かへ出掛ける予定はあるか?」
「えっと、特には無い、かな。午後から夕飯の買い物に行くくらいだけど…。」
「そうか……では、今から少し時間をもらえるだろうか?少しお前と話がしたい。」
「うん、全然……じゃぁ、お茶淹れるね、ちょっと待ってて。」
そう言ってキッチンへ向かい、手際よくお茶を準備するyou。
2つ分のカップを持ったまま、リビングのソファで座って待っているカルナを一瞬じっと見つめると、ふいに昨日の夢で見た血濡れの姿が重なるようで、振り払うように首を横に振った。
「お待たせしました。」
「ああ、ありがとう。」
カップを2つ、テーブルに置き、自身はカルナの横に座る。
・
・
・
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「それで、急に改まって話って……何かあった?」
「何かあったのはyouの方だろう……朝から溜息ばかり吐いている。朝食も抜いて、顔色もあまり良くない。」
「え、そ…そうかなぁ…。」
「昨夜のことか?」
「えっと…。」
「…嘘を吐かれても見抜いてしまうが、youはそれでなくても表情が分かりやす過ぎる。」
「…「貧者の見識」要らず…だと…?!」
カルナがスキルを用いる必要もない程あからさま…という事実にショックを受けるyou。
だがしかし、昨日の夢のことを思えば、顔に感情が浮かんでいてもおかしくはないな…と、
youは小さく溜息を吐いて「うん」と頷いた。
「そうだよね…あからさまだよね、きっと……隠せてないか…いや、隠してるというわけでもないんだけれど…。」
「それで、何がお前にそこまでの憂いを抱かせている?」
「あー……えっと、じゃぁ、話す前にカルナに謝らせて…?」
「謝る?」
少し想定外の言葉に、カルナがきょとんと不思議そうな顔をすると、彼女は「そう」と、小さく頷いた。
「昨日の夢…というか、昨日寝ている間に見たのは……あれは多分……カルナの記憶、過去だと思う……。」
「何…?」
「だからその……見ようと思って見たわけではないの!でもその……見てしまった、から……勝手に見て…ごめんなさい…。」
「そうか……そうだったのか……そう、だった、のか…。だから昨日あんなにも…。」
否、昨日に引き続き、今の今までもそんなに分かりやすく動揺していたのかと…。
今度はカルナの方が大いなる溜息を吐き出す方となった。
一呼吸おいて、カルナは眉を少しばかり中央に寄せ、口を開く。
「そういうことであれば、謝るのはこちらの方だ。申し訳ないことをした。」
「え?」
勿論、カルナのことなので怒られることはないだろうと思っていたyouだったが、それにしても謝罪をされ返すとは思わなかったので、一瞬ポカンと口を開けて呆けてしまった。
一体どういう意図で、という質問を投げ掛ける必要はなく、カルナはすぐにその理由を話し出す。
「you…オレは今までの自分の生き方を、選んだ選択肢を後悔などしていない。」
「…うん。」
「だが、オレの選んだ生き方や選択肢は、人に英雄譚として語るには些か暗すぎると……思っている。」
「そ、そんなことは…。」
「無理をするな、決して自分の人生を卑下しているわけではないが……他の英雄のように素晴らしい功績を残したり、見聞きしている者の目を輝かせることのできるものでは決してないのだろう。」
「・・・。」
何とかフォローしたいところだが、youの知りえているマハーバーラタでのカルナの物語は
ほとんどが分かりやすく簡潔にまとめられたウェブサイトや、自国向けに発行された解説書での情報くらいであり、それを詳細と称するには些か傲慢である…。
そんな簡潔にまとめられた内容の中で彼女が理解しているカルナの物語は、成程確かに、有体に言ってしまうと「悲劇の英雄」である。
だが、全てを詳しく知りえているわけではない……だからこそ否定も肯定もハッキリとは言えず、口を噤んでしまったわけで…。
「お前が気に病むことはない。不遇な出来事は多かったが、同門の者と切磋琢磨した事や、生涯の親友を得ることもできたことを思えば、実りある人生だった。」
「ドゥリーヨダナさん、だね?」
「ああ。」
その名を口にした途端、カルナから零れた笑みは幸福に満ち溢れ、彼に出会ったことが如何に嬉しかったか、察するに有り余るものだった。
だが、そんな満々の笑みもすぐに失せるほどの言葉を、カルナは自ら放つ。
「世の誰にも、認めてもらえなかったオレにとって、あの男だけが身分の隔たりなく認めてくれた。それはオレにとって、人生で一番の幸福だったのだと思う。それほどまでに嬉しかったのだ……たとえ実の母や兄弟と袂を別ち、殺し合いの戦をすることになったとしても。」
「…っ。」
「ドゥリーヨダナと出会う前は己の身分に苦しみ、出会った後は自分の出自に苦しんだ……極めて端的に言ってしまえば、それがオレの人生なのだろう。決して愉快なものではなかろうよ……それを、ましてや愛する者に伝えて暗い顔をさせてしまうなど……我が事ながら、申し訳ない限りだ。」
「そんなんじゃ……。」
「オレの過去を見たということであれば、それは夢の中でyouはオレだった、ということか?」
「う、うん……。」
「そうか…ならば真に申し訳ないことだ……一体いつ頃の事を体験した?」
「それは…。」
少し躊躇った後、彼女は恐る恐るカルナを見上げ、蚊の鳴くような声で夢の舞台を告げた。
「カルナ…が、大事な鎧を………インドラさんに渡す、ところ…でした。」
「!!」
よりにもよって、と…。
カルナの浮かべた表情を見ると、正に顔面蒼白という様子であった。
「ああ、そんな……よもやyou……お前にその痛みを共有させてしまったなど……。」
「カルナ…ごめんなさい、そんな顔をさせたくなかったのに……隠しきれなくてごめんなさい…。」
「いや、謝るべきはオレの方だと……とても痛かったはずだ、いや、痛覚があったかは定かではないが、それにしたとて視覚の暴力でもあっただろう…。」
「うん………ごめん、本当のこと言うと、めちゃくちゃ痛かった。」
「すまない…。」
「でも……それは、身体の痛みだけじゃなかったでしょう?」
「you…?」
そう言うと、youは不意にカルナに向かって両手を伸ばし、自分の胸に向かって抱き寄せた。
勿論カルナはその突然の行為に驚いているのだが、彼女にはその表情は分からない。
「お父様から授かった大事な鎧を手放すこと、両親に愛されている義兄弟、その彼を生かす為にインドラさんが選んだ人を騙す行為……他にも、きっと色々。」
「・・・。」
「辛かったよね、羨ましかったよね、憎んでしまいそうだったよね……たくさん、たくさん………悲しくて苦しかったよね。」
「そう、だったのだろうか……。」
「そうだったんだよ、だって……カルナ、あの時沐浴してたでしょう?」
「ああ、それが何か?」
「一瞬ね、水面にカルナの顔が映ったから……。」
「そう…か。」
「色んな気持ちが混ざって、凄く痛かった……でもそれは鎧を剥ぐ痛みじゃない……心が、痛かった。」
「・・・you。」
「でも、そんな痛みの全部を…カルナ、あの時堪えたんだよね。」
「・・・。」
「偉いとか、凄いとか……色々思うところもあるけど、わたしは……本当にごめんね。」
「?」
また、お決まりの「先に謝っておく」パターンかと、カルナが理解したのは、そのすぐ後の言葉からだった。
「わたしは、とても……そんなカルナを愛しいと思った。」
「you…。」
「その時傍にいられなかったとしても、ただの読み手だとしても、カルナの生き方の物語を……愛しいと思ったの。」
「そう、なのか…?」
「うん……とても高潔で、勇敢で、儚くて、悲しくて、美しくて、そういうのいっぱい詰め込んだ「愛しい」かな。」
「随分と規模が……大きいな。」
「うん……でもそれはきっと、わたしだけじゃなくて…。」
自分の記憶を体験したのはyouに他ならず、それ以外に誰がいるのだと、不思議そうな顔をしてカルナが「だけじゃない??」と呟く。
「何だろうか。」
「……カルナはさっき自分の人生を、ほかの英雄達のように煌びやかなものじゃなくて、見聞きしている人を嬉々とさせることはできないものだって言ったけど…。」
「ああ。」
「話を聞いた人がどう思うかは、功績を残したかどうかじゃないよね。それは確かに凄いけど……凄過ぎるんだけど……でも、カルナの物語はそうじゃなくて……何て言えばいいかな……それこそ、カルナ自身が言っていた「生き方や選んだ選択肢を後悔しない姿」が素敵で……皆カルナを尊敬して、愛して……だから、カルナは英雄なんだよ…!」
「・・・。」
「あ、ご、ごめんなさい……何か月並みだし、そんなことわたしなんかに言われなくても分かってるよね!あああ、ごめんなさい!」
「いや……確かに。重きを置かれるのは、それらは栄光が全てではない…言われてみれば当然のことか。…オレはちゃんと英雄であったか……そうか…そうか。」
「あぅぅ…。」
「何よりも、youが英雄としてのオレをそのように思ってくれていたのだと知れて嬉しい…。」
「カルナ…。」
そんな比類なき英雄に進言するなど、何と烏滸がましいことをしたのだと自己嫌悪するyouだったが、当のカルナ本人が大変満足気味で嬉しそうなので、それ以上謝罪も何もできなくなるのであった…。
「改めて、自分の何処が英雄たる所以なのか自覚したというか……何だかむず痒い気分だ。」
「カルナ…照れてる?」
「む……そうか、オレは今、称賛されて照れているのか…。」
「ふふ、そうかもね。」
「……you。」
抱きしめられていた体をゆるりと離し、カルナは少し距離をとってyouを見つめる。
先程までの苦しそうな表情はもう其処には無かった。
「オレの過去を見たことで悲しませてしまってすまない……それに、夢とはいえ、心身の痛みも。」
「ううん。わたしの方こそ、不可抗力とはいえ勝手に…見てしまってごめんなさい。」」
「だが、そのお陰でyouに先程のような言葉を沢山もらえたのは幸いだった。……オレも大概、自己中心的だな。」
「そ、そうかな…。」
「ああ、いつだってお前は………オレの欲しかった言葉をくれる。だからきっと、オレなりに期待して、甘えてしまっているのだろう。」
「!」
「ありがとう、you。かつてのオレの心を汲み、慈しんでくれたこと、全力で感謝する。」
「そんな、大袈裟な…。」
「オレにとっては大きな事だ。」
穏やかな顔で少し目を細めて、youに微笑みかける。
かくして、生前のカルナの過去の一部を垣間見たことで、youだけでなくカルナ自身も完全にではないとはいえ、その混沌とした感情が昇華されたのであった…。
そこで、ついでに…とばかりにyouは己が個人的意見を後付けすることにした。
「カルナ、あの……怒らないで聞いてほしい、個人的感想があるんだけど。」
「よく分からんが、恐らく怒れる要素はないと見た。何だ?」
何だかちょっと雑に対応されている気がするが、そこはいつものカルナだ…と、自分に言い聞かせて一呼吸するyou。
軽く息を吐いて、彼女的には失礼にあたるという個人的感想を話し出した。
「考えたけど、わたし、鎧がないカルナの方が……いいな、って。」
「鎧が 無い方が 良い …?! 何故だ?」
流石のカルナも、ほぼほぼ自分の英霊としてのアイデンティティとも言える無敵の鎧を「無い方が良い」と言われるとは思っていなかったようだ。
と、カルナの反応も頷けることこの上ない。
確かに、今までの周囲の意見は総じて鎧を形成する膨大な魔力量への憤りではあったかと思う。
だが、生前は自分の味方である者は皆、誰しもが無敵を誇る黄金の鎧を喪失したことを嘆いたし、
英霊として呼ばれた時にも同様に、
それを魔力消費量故に解放しない(あるいは出来ない)場合は、自分への評価は下がることが殆どだ。
万全な状態で戦えないことは確かに自分にとっても大変遺憾に思うところはあるが、
失ってしまったのなら、それもまた仕方のないこと…。
そのように受け入れているのは自分一人だけで、
他に同じような思いを抱くものなどいない…そう思っていたカルナにとって、
youがほんのり嬉しそうに「鎧が無い方が良い」と言う真意が分からなかった。
それ故、思わず怪訝な表情で彼女にその理由を問うてしまったのだが、
彼女は甘やかな表情を崩さず、眼前のカルナの頬に手を伸ばし、こう答えた。
「え?だって、障害無くカルナに触れられるから、嬉しいなって思ったの。」
「…なるほど。」
「まぁ、有体に言うとどっちでもいいんですけど。」
「どっちでも…いいのか?」
「うん。鎧があるカルナは強いし、本来あるべき完璧な姿だし、無いなら無いでわたしには有り難いのだし。」
「ふむ…。」
「わたしにとって大事なのは武具の有無じゃなくて、カルナの心だもの。」
「でしょう?」と、ビー玉のように丸い目をカルナに向けて微笑めば、
相当嬉しかったのだろう…。
カルナはすぐに彼女の手を握り、ありったけの笑みを浮かべて感謝の言葉を口にした。
「you……感謝する。」
「え?」
「今までオレの持つ才や材に歓喜や愁いを抱いた者はいても、きっと誰一人、オレの心情に重きを置いてくれる者はいなかっただろう…。」
「カルナ…。」
「you…お前に巡り合えてよかった。」
「わたしも、カルナと出会えてよかった。」
「とんでもない果報者だな……オレは…。」
「お、大袈裟だなぁ。」
「さぞ幸運値が高いのだろう。」
「あー…そこはノーコメント。」
「?」
個人的主観でのステイタス値偽装はNGなのだよ…と、
口にしたい気持ちをグッと堪え、マスターである彼女は言葉を飲み込んだ。
その代わりと言うべきか、誤魔化すためだと言うべきか、
ひとまずカルナの胸に顔を預けたyou。
「ほらね、やっぱり……鎧が無い方が、いいよね。」
「…そうだな。オレも、そんな気がしてきた。」
「えー、本当?」
「ああ。具現化させるとお前の魔力を消費させることになるだろう?」
「む。それはいいの!修行よ、修行!修行なんだから…必要な時は…うん…頑張るんだから…!」
「そうか。まぁ、その点は置いておいても…。」
「何かあるの?」
「いや……オレも、障害無くyouに触れられる方が、嬉しい。」
「わたし?障害?ある?」
自分は鎧なんて身に纏うことはないが?と、小首を傾げてカルナを見れば、
彼は少し含みのある笑みを浮かべながら、youの着ていたカーディガンの端を摘まんだ。
「服(これ)だな。」
「・・・そうきたか。」
「そういう理由は不快だろうか…?」
「不快じゃない……けど…。」
「けど?」
「……対象はカルナに限る感じです。」
「無論。オレ以外は触れさせないつもりだ。」
そろそろ一緒にいる時間も長くなってきたこともあり、お互いの距離感も初めて会った頃に比べると随分と近付いた。
だからこそ、こういった艶めく話題も出てきて、昼夜問わず話の内容によってはカルナがその手を伸ばしてくるわけで…。
「(マスターはサーヴァントの過去を夢で見ることがある、とは聞くけど……信頼が浅くても見るのかな?信頼が深かったから見れた、だと嬉しいなぁ。)」
もうそろそろお昼に差し掛かろうとするくらいの時間、リビングのソファで体を組み敷かれ、
youはぼんやりと、そう思うのだった…。
「you…?」
「カルナ……もしまた、カルナの夢を見たら……話してもいい?」
「勿論。見た夢がお前の憂いとならなければ良いが……オレの過去であれば不可避かもしれん…。」
「またそんなこと…。」
「だが、そうであっても……youは過去のオレの心に寄り添ってくれると信じている。」
「うん……そうするつもり。」
「願わくば、僅かだが…オレが幸せに思った時の事を夢に見てほしい。」
「そうだね、カルナの幸せそうな顔……すごく見たいな。」
「成程、だが、それであればyou、今から。」
「ん?」
「ずっとオレの顔を見ているといい。youと一つになる時、オレは一番幸福を感じるのだから。」
「ひぇ……。」
羞恥すればいいのか、感謝すればいいのか、色々と問題ある言葉を投下されて、言葉も出ないyou。
ツッコミたい気持ちは大いにあったが、二の句が継げぬ状態となり、
それを「もう語る言葉は今は無いのだろう」と受け取ったカルナに、背中のホックを外されるのであった。
そして
できることなら
今度は君の夢を見たい
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*