Little Lark 〜君へ謳う〜 (アカギ)
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ごめんな
助けてやれなくて
まだ諦めきれない心が
「死にたくない」と叫んだ
憎悪
「悪いが平山くん、今日のワシはツイているようだ…まさに君への憎悪による「悪運」だ。」
「っ…!」
「ヒ…ヒヒ…クク、く……ロン…ロンロン!ロンだよ、平山君!!」
バラリ…と、面子の揃った牌の列が雀卓の上に広げられ、鷲巣の不気味な笑い声が部屋中に響く。
嬉々として嬉しそうな鷲巣とは反対に苦痛の表情を浮かべる平山…。
数刻前には燃えるような視線で鷲巣を睨みつけていた平山だったが、
今はその覇気も無く、蒼白の顔色で辛うじて雀卓にしがみ付いていた。
鷲巣は顔をくしゃりと歪め、彼の後ろで勝負を見届けているSPの一人に指示を出す。
「さぁ、早く平山君の最期の血を抜くのだ。」
「は…はい…。」
白服のSPが平山に近付き、腕に刺さった注射針を確認する。
無理矢理血を抜き入れすることで、鬱血して紫に変色した部位をサングラスの中で痛々しげに確認し、
白服の男は平山の横に置いてある異様な機械に手を伸ばした。
そう、その機械こそが平山の命を奪う魔物であった。
youの自由を鷲巣麻雀の勝ち金にと願った平山。
そんな平山に対し、人の運命を左右する賭け事であれば、
賭けるものもまた人でなければならないと…。
あくまでも命を賭けのチップだと考える鷲巣が考え出した、それは非人道的な殺人凶器だった。
男性成人の平均的な流出致死血量2,000ccを基準として、
通常血液10cc=10万円=1,000点で、持ち点は各200,000点とのレートを定めた麻雀…。
血液はあがった時や半荘終了後の清算時、点数に応じ取り戻す事が出来るという救済のルールもあり、
血を抜かれつつ、戻しつつでここまで食らい付いてきた平山だったが、ついに最期の刻が来た…。
この採血で平山の流出血液が2,000ccを超え、死に至る…。
「あ、あぁ…you……。」
「残念だったな、平山君…「アレ」はやはり君の手に余る代物だったようだ。」
「…ッツ…!!」
「これからも変わることなく…「アレ」はワシの物であり続ける……「アレ」が死ぬまで、外には出さぬ。ワシが死ぬ時が「アレ」が死ぬ時よ…。」
「き…さ、ま…!!」
その言葉に、平山は残り限られた体中の血が沸騰するのを感じた。
一発でいい、顔面を思いっきり殴らないと死んでも死にきれない…。
奮起した平山は最期の力を振り絞って雀卓に手をつき、鷲巣の胸倉を掴んだ。
「テメェだけは……死ぬ前に一発殴らせてもらわねぇと…気が収まらねぇ…ッツ!!」
拳を構えた平山を見て、SPが数人で雀卓に彼を押さえつける。
本来の状態であれば、ある程度の抵抗くらいはできただろう…。
しかし、今の彼は体中の血液を致死量ギリギリまで抜かれ、死の淵に立たされているため
少し力を入れたところで何の抵抗にもならない…ただ、悔し気に鷲巣を雀卓から睨み上げるほかなかった…。
「殴りたまえ、殴れるものならばな…ククク…キヒヒ!!」
「畜生…チクショウ!!」
「早く…早く採血せんか!脆弱な運しか持たぬ若者の命が潰える様は何と楽しい事か!」
「めろ……ヤメロ!!オレは…まだ、死にたくない!」
「ククク…ヒヒ…ワシこそが勝者じゃ。森羅万象に於いての勝者!!」
「死にたくない……死にたくないッツ!!!」
—あ あ 頼む、誰か
youを
救ってやってくれ—
雀卓に伏して動かなくなった平山の脈を確認し、白服のSPが鷲巣に彼の死を告げた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
轟々と雨が降り注ぎ、大きな雷が落ちたのだろう…物凄い轟音が鷲巣邸近くの雑木林の方から響いた。
本来であればもうそろそろ、朝日が顔を出すような時間帯…。
youは平山が鷲巣邸から車で山を降りるのをどうしても確認したくて、一睡もせずに起きていた。
止む気配の無い雨を部屋の窓から見つめ、無事に平山がこの屋敷を去る後ろ姿を待ちながら、youは呟いた。
「ユキ…。」
突然、普段は開くはずのない自分の部屋の扉が開いた。
少しだけ、ほんの少しだけ淡い期待を抱きながら、振り向く…。
勝負を終えた平山が…自分に会いにきてくれる夢を、観た。
「you…。」
「−−!!」
ドアの前に立つ人物を確認すれば、youの夢は瞬く間に水泡に帰した。
部屋に遣って来た鷲巣がゆっくりとyouに近づく…。
初めてを無理矢理奪われた時のように、鷲巣が一歩近づくごとに一歩後ずさることはしなかった。
youはもう、随分前から無感情を鷲巣に示しているから。
鷲巣もそれを彼女の常と思い、自分が彼女の感情を殺したのだと思っていた。
平山が今日、ここに来るまでは…。
だが、今は違う。
「今日はとても気分が良くてな…久しぶりに来てみたんだが…。」
「・・・。」
「聞いたぞ、you……平山君と友達になったそうじゃないか。」
「!!」
「驚いた…まさかお前が……喋れたなんて。」
「っ!」
パァン!
と、音が響き、youの頬に激痛が走った。
それから何度も鷲巣は平手でyouの両頬を打ち、
鬼か修羅かのような顔で彼女に一歩的に問うた。
「あの凡夫の何が良かったのだ?何の後ろ楯も無い無能な小僧の…どこが良かった?!ああ?」
「っ…!」
「声を聞かせたのか?歌を歌ったのか?それとも肌を許して啼いたのか?!」
「・・・。」
「何とか言わぬか!このっ……痴れ者がっ!!」
最後に大きく殴った後、間髪を入れずに鷲巣はyouの髪を無理矢理掴んで引き摺り歩く。
苦痛に顔を歪めるyouの顔を窓の外へと向けさせる鷲巣…。
途端に彼女の目が大きく見開き、動揺と驚嘆の入り混じった表情へと化す…。
「見えるかyou?お前を助けようとして平山君はああなった。」
「…ぁ…。」
「可哀相に…お前と出会わなければ、命まで取りはせなんだ。」
「ぃ……ゃ…。」
雨降りしきる中、レインコートを着用した鷲巣邸のSPが数人外に出ており、
その中の一人が見覚えのある男を背負って車へと押し入れる姿があった。
縦縞ストライプの白いスーツ、覗いて見えた派手な色のシャツ…
見間違うはずのない、綺麗な銀色の髪…。
「・・・ゆ、き。」
それが、youが鷲巣に聞かせた最後の声だった。
鷲巣はその場に崩れ落ち、静かに涙を流すyouを満足気に眺め、
屋敷中に響いているのではないかと思うほどの大きな声で高々と笑い声を上げた。
それから鷲巣に何を言われたのか、何をされたのかもyouは知らない。
ただ、鷲巣巌という男がいなくなる日までただ、生きる行為を行った。
寝て
起きて
食事をして
そしてまた寝て
夢を見ていた
幸せになるために生まれてきた男の子の夢を…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
わたしにはもう
何もない
声も歌も
好きな人も
憎悪でさえも
無くしてしまった
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*