with you. 〜君と僕との永遠性〜 (アカギ)
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この想いを
言葉や文字にしたら
上手く伝えれないから
それは諦めるよ
with you.
~君とボクとの永遠性~
06:君のことを
「アカギさんっ……!」
まだ太陽が真上に昇るくらいの時間、
ざわつく雀荘に治の声が響いた。
「どこ行ってたんですか…?心配してたんですよ……!」
「フフ……ちょっとフラフラしてた…。」
「はあ………どうしてここが…?」
「え…?ああ…人づてに聞いたんだ。お前がここによく顔を出すって。」
「はあ…。」
「……ちょっと、渡したいもんがあってな……。」
そう言って、アカギはゴソゴソと自分のポケットから
厚みのある銀行の紙袋を取り出し、治に渡した。
「ほら…。」
「え…?」
「例の。藤沢組とやった麻雀のおまえの取り分だよ…。」
封筒にギッシリ詰まった大金をまじまじと見つめ、治は慌ててアカギに詰め寄る。
「……こんな大金…!」
「まあ…取っておけ…。」
とは言うものの、少なく見積もっても100万は入っている様子。
困惑した表情で現金の束を見つめていると、アカギが口を開いた。
「お前、それで何か商売でも始めろよ。あんなくそみたいな給料でこき使われることはない…。」
「……はあ…。」
「じゃあな…。」
「じゃぁ…?じゃぁ…ってどこへ…?」
背を向けてドアに向かうアカギに思わず駆け寄った治。
そんな彼に、アカギは軽く「さあな…」と言うと
ある程度の答えと、思い出したように頼みごとをしてきた。
「ともかくこの街から離れる。行き先は不明だ。
川田組の石川さんらが嗅ぎ回ってきたら、そう伝えておいてくれ。」
「アカギさんっ…!」
アカギが出て行くのを制止させようと声を掛けたのは治。
しかし、声よりも先にアカギの腕を掴んだ者がいた…。
「…?……。」
「へへへ……。」
「…なんだ、こいつ…?」
アカギの疑問にしどろもどろで答えようとする治。
「いや、その…。」
治いわく、この雀荘で一試合打った後、声を掛けてきたことで知り合った男だという。
名前は仲井純平。この辺りでは名の売れた麻雀打ちで…
そして、アカギと対戦したがっている…とのこと。
しかし、そんな彼の望みはアカギ本人によって一蹴される。
「…兄さん、せっかくだが…オレは今遊びで麻雀を打つ気分じゃねぇんだ…。
腕一本賭けるっていうんなら考えてやるよ………じゃあな…。」
そう言い放って扉に向かうアカギを仲井は再び引き止めた。
「赤木はん、おもろい……受けましょ……腕一本。」
呆けた顔で仲井を見るアカギと治。
しかし、仲井には思惑があってアカギの無茶な申し出を受けたのだ。
街中の雀荘でそのようなデスマッチの勝負が罷り通るワケがない。と、そういう理由で。
結局、仲井の熱意…というよりは寧ろ、執念にも似たアタックにアカギが折れ、
腕の代わりに現金を賭けて半荘一回の勝負をすることとなった…。
それから数分後…
仲井の提案により、他の雀荘での勝負となり
通りで雀荘を探し歩いている最中に治が尋ねてきた。
「…そういえばアカギさん、youさんは?」
「…近くの店で待ってる。」
「そっ…そんな!だったら勝負なんてしてる暇なんて無いじゃないですか!」
「だから半荘一回での勝負にしたんだろうが。」
「どんだけ早く勝つ気でいるんですか!」
「もう…お前五月蝿い。」
治と話すことを放棄したアカギに、今度は仲井が話し掛けてきた。
「さて…アカギはん……この辺りはこの界隈が一番雀荘の立て込んどるところ。
どこでもいい、ひとつ決めんね。そこで打とう……。」
「(フフ…)」
出会ってからの仲井の行動から、何かを察したアカギ。
それが何であるのかは、仲井にも…そして治にも語ることなくそのまま雀荘を一軒選択。
勝負の場を決定付けた。
雀荘の中は閑散としており、アカギたちは卓を囲むだけに事足りる人数になるまでの間暫く待機した。
それから5分程で2人の若者が来店し、アカギと仲井の勝負が開始された…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「すみませーん、苺のショートケーキください。」
「苺ショートですね?」
「はい。あと、コーヒーのおかわりいただけますか?ミルクとお砂糖も。」
「かしこまりました。」
店員が頭を軽く下げ、厨房へと戻っていく。
アカギに待っているように言われた喫茶店で、もうかれこれ3時間経った。
youがもう何度目か分からないくらいの溜息を吐いた時、
入り口に来客が分かるよう下げられたベルがカラン…と鳴った。
「アカギさんっ!!」
「…悪い、遅くなった。」
「超遅いです……。」
どうやら相当退屈だったようだ。
いつもより人相が少し悪くなっている…。
仲井との勝負には勝って戻ってきたものの、
彼女にそのような顔をされては気分はあまり良くない。
とりあえず事情を大方話して謝ってみた。
「じゃぁ、その仲井さんって人は後に来た人たちとグルで、アカギさんをはめようとしてたってこと?」
「まぁ、そんなの関係なく勝ったけどな…。」
「むー……じゃぁ大変だったね…。」
「いや…別に…。」
「アカギさんは優しいから、その仲井って人の勝負を断らなかったんだよね……なら仕方ないか。」
「優しい?俺が?」
「うん。」
「何か変なモン食ったんじゃ…。」
ちょっと本気でそう思い、真剣にyouを見つめるアカギ。
そして、当然怒るyou。
「何でそうなるんですかっ!!」
「いや、だってなぁ。」
「アカギさんは自分が気付いてないだけで、優しいですよ。」
「具体的に。」
「私や治くんのこともだけど、川田組長さんとか、ゆっきーとか…
結局条件付きにしろ何にしろ……困ってる人には力を貸してるっていうか…。」
「その方がオレの利になると思う時はな。」
「でも、私の記憶のためだとしても……アカギさんは私のこと捨て置かないし…。」
「………。」
「絶対そうなのに」と、俯いたyouの頭をワシャワシャと撫でるアカギ。
お決まりのパターンになりつつあるこの行為。
そして、それから呟いた。
「オレは困ってる奴に優しくない………お前にしか優しくしてないから。」
アカギは何事もなかったかのように涼しい顔で席に着き、
真っ赤な顔のyouを満足そうに見た。
何か言いたげなyouだったが、ちょうど店員がケーキを持ってきたので口を噤んだようだった。
店員はケーキとコーヒーのおかわりをテーブルに置くと、また軽く礼をして下がっていった。
「……で、何個目だ?」
「…………3…。」
「他には?」
「……アイスを一つ…。」
「………よく食うな。」
「アカギさんのせいだもん!アカギさんのせいだもん!!」
「別に2回も言わなくていいだろ…。」
「大事なコトなので2回言いました!」
「はいはい、悪かった悪かった。」
プンスカ怒りながらケーキを口に運ぶyou。
一方のアカギはデザート類の名称がズラリ並ぶ伝票に目を通し、思わず笑みを零した。
ケーキを食べ終えた後、コーヒーを一口飲んでyouがアカギに尋ねた。
「ねぇ、アカギさん、治くんはどうするの??」
「アイツはもう…俺たちと一緒には来ないだろ…。」
「何で?!どうして?!本当に置いてっちゃうの?!」
「………。」
「お金だけ渡して…なんて…無責任過ぎるよ……。」
「アイツがついて来ないってことは、そう決めたってことだろ…。」
「……でも……私、お別れもしてない!治くんがどうしたいのか聞いてない!」
「………まだ…いるだろ……近くの雀荘に…。」
「………行ってくる!!」
そう言ってyouは店を飛び出した。
*。゜.*。゜.*。゜.*
走って数分もかからない建物の階段を駆け上り、治がいるであろう雀荘の扉を開いた…。
「you……さん…。」
「治くん!」
youの姿を映す治の瞳が少し見開いた。
「治くん、一緒に来ないの?」
「……オレは…。」
「アカギさんにダメって言われたわけじゃないんでしょ?」
「それはまぁ…そうなんですけど…。」
「じゃぁ…!」
「オレは………さっき仲井さん…あ、あの仲井さんっていうのは…。」
「知ってる、さっきアカギさんと対戦したって人でしょ?!」
「はい…。」
「その人から何か言われたの?!」
「まぁ…言われたといえば言われたんですけど……それは、オレに対してじゃないんです。」
「……?」
頭に疑問符を浮かべるyouに、治は仲井と話した会話の内容を教えた。
それはアカギの話……ギャンブルに己の破滅さえ賭けるアカギの生き方は
一生涯かかっても常人には到達できない領域であると…。
それは言うなれば「異形の感性」。
見かけは当たり前の人間でも、心は異形…。
当たり前の人間には彼の行為が、生き方が耐えられない。
触れてはいけないのだ、と……。
「治くんは…そう思うの?」
「youさん…。」
「アカギさんは「特別」だって、それで片付けちゃうの?」
「そういうわけじゃないですけど…。」
「異形なのは…特別なのは……特別の理由を知らないからじゃないのかな…。」
「そう…ですね。」
「ねぇ、治くん……治くんはどう思ってるの?アカギさんと一緒にいようと思う?」
しばし考えた後、治は苦笑しながらyouの質問に答えた…。
「オレは……やっぱり行きません。」
「……理由……聞いてもいい、かな?」
寂しそうな顔で…でも笑ってyouは治に一歩近付いた。
「本当はアカギさんについて行きたいですけどね。正直一緒にいて「怖い」って思うこと沢山あったし、
それが原因で…でも、だからこそまだアカギさんに憧れてるんですけど……。」
「うん。」
「それに、オレみたいなのが一緒にいてもアカギさんは文句も言わないでいてくれると思ってます。」
「…だったら…。」
「だから……です。強いて言うなら。このままアカギさんの後ろにいてもアカギさんがオレの盾で剣で…。
かっこ悪く言っちゃえばおんぶに抱っこっていうか……。でも、それじゃぁオレ、強くなれないから…。」
「治くん…。」
「アカギさんみたいになれなくても、アカギさんに認めてもらえるくらい強くなることくらいはできるでしょう?
あー……もちろん麻雀以外もメチャメチャ頑張らないとダメだろうけど……。」
そう言って笑いかける治の顔は何だか逞しくなったような気がした。
youは嬉しいのと寂しい気持ちが混ざって、気付けば治を直視したまま泣いていた。
「え!?っ…youさんっ?!!」
「ごめ……何か…治くん……カッコイくて。」
「えーー?!」
「決めたんだな…って思って。」
「………ハイ。」
アカギには無い…治だけが持つ暖かいオーラと、優しい笑顔…。
そんな空気の中、泣いているyouをからかう様に冗談ぽく治が言う…。
「それに…。」
「ん?」
「アカギさんとyouさんの邪魔虫になりたくないですしね。」
「なっ…それは、それは関係なく!」
「ふふ……でも、本当のコトですから。」
「あのねー…!!」
「さ!アカギさん、待ってるんでしょ?まさかyouさんも3時間待たせる気ですか?」
「でも…!」
「大丈夫、オレが決めたんです。」
「………。」
胸を張る治に、自然に笑みが零れた。
「うん、じゃぁ……行くね。」
「ハイ!」
「…またね、治くん!!」
「ハイ!いつかまた!」
手を振ったはいいが、治は何故か無意識に言葉を漏らしてyouを引き止めていた。
「あの…youさんは……。」
「え?」
「youさんは……アカギさんと行く道を怖いと思いますか?」
ぎゅっと拳を握って、youを見る治。
ドアに手をかけたまま、後ろを振り返り……youは曇りない顔で笑った。
「アカギさんと行く道だから怖くないんだよ。」
「じゃぁね!」と歯を見せて笑い、彼女は雀荘を出て行った。
扉の閉まった音が雀荘に響き、我に返った治。
口に手を当てて俯き、徐々に眉の中央に皺が寄った。
「……好き、だったのかなぁ…オレは……。」
その床に流れ落ちた水滴と同じように……
窓の外の夕焼けは消え、天上はいつの間にか夜の帳を下ろしていた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
(じっと待っているのがこんなにつまらないなんて)
(そうじゃない、多分これは)
(そう、「待っている」から)
君のことを。
*。゜.*。゜.*。゜.*