with you. 〜君と僕との永遠性〜 (アカギ)
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だからきっと
笑って 怒って
時には泣いて
私の全てで
君に
想いを伝えていたんだ
with you.
~君とボクとの永遠性~
04:手と涙
その夜
料亭「広瀬」
アカギとyouたちが到着したニセアカギとの対決の場。
そこでは現在、藤沢組の代打ち浦部と川田組の代打ちとして担がれたニセアカギが対局していた。
川田組長への顔見せに勝負の部屋を訪れたアカギ。
そこで勝負の流れを把握し、すぐに部屋を去った。
それから、石川に案内された控えの部屋でアカギは予言した。
「ニセアカギは浦部にまける」と…。
その場にいた川田組長や石川…それからアカギの知り合いでありながらも
ニセのアカギを担ぎ上げた刑事の安岡……。
更に、ニセアカギの資質を知らないyouや治までもがその言葉に耳を疑った……。
その通りにいけばニセアカギとアカギの対決云々の話ではなくなるだろう…。
一同が深刻な面持ちで皆顔を見合わせてざわついていると、川田組の部下の一人が現れる。
彼は浦部からの申し出があったことを報告し、今一度勝負の場へと川田組長と石川を誘った。
川田組の者が去った後、控えの部屋では
治とyouがニセアカギの話題で盛り上がっている。
「アカギさん、あの人と対決するんでしょ?」
「サングラスとったらどうかな、似てるかな?どう思う、治くん?」
「背格好は似てましたけど……どうでしょうね…。」
「昔のチンピラみたいな格好だったけど、似合ってたね。」
「昔のって……チンピラは基本あーいう格好でしょ、youさん。」
「そうなの?」
「そうですよ、ねぇ、アカギさん?」
同意を求め、アカギを振り向く治。
どうでもいいような些細な話題だが、youもアカギに注目した。
「どうでもいい……。」
ご尤も。
しかし、その冷めた反応に「つまらないーい」と口を尖らせる2人。
youと治……。
思考回路に似たようなところがあるようだ……と、アカギは思った。
それからも2人でニセアカギ談議が進められ、盛り上がったところで
アカギに話を振り、さらりと流される……といったことを繰り返していた。
そんなおり、川田組の好意でアカギの控えの部屋に夕飯が運ばれてきた。
「うわぁーー!美味しそうぅ……///」
「たっ、食べていいんですかね?!」
目を輝かせて目の前に並べられた食事を眺めるyouと治。
そんな2人を尻目にアカギは素早く箸を割り、パクパクと食べ始めた。
「あぁ!私も食べる~!」
「おっ、オレも!」
「おいしい……!」
「うまいッ!」
youと治とは違い
無言で黙々と食べ続けるアカギだったが、
刺身を一切れ口にした後、一言呟いた。
「…ウマい。」
「このお刺身?」
アカギの横から箸を伸ばして、youと治が同じ刺身を口にする。
「高いよね…これ。」
「ふぐ刺しっすよね、これ…。」
「ふーーん。そうなんだ。」
相変わらず薄い反応だが、上向きに上がった口からはアカギの機嫌の良さが見て取れた。
そしてそれから、数分しないうちにアカギは食べるのを止め、立ち上がった。
「ご馳走様。」
「えー、もういいの?!」
「食べなきゃ勿体無いですよ?!」
引き止める2人に手をヒラヒラと振って、廊下に出ていったアカギ。
youと治は顔を見合わせて……
「勿体無いよ。食べよ食べよ。」
「そうですよね。食べましょう。」
再び食べ始めた……。
*。゜.*。゜.*。゜.*
アカギが部屋を出て、youと治が2人で食事を取り始めた頃……
代打ちの交代を宣言され、一度、室のへと出されたニセアカギ……。
彼、平山幸雄は生唾を飲み込み、その場に立ち尽くしていた。
「やられた……あんなレートでの勝負で気負いもなしに打つなんて事できるかよ……
そんなの……正気の沙汰じゃない…ッツ!」
額にじわりと浮かんだ冷や汗はそのまま形を成し、まるで涙のように無数に頬を伝う。
とりあえず心を落ち着かせるために、風を感じようと思った。外の空気にふれたかった…。
「クソっ……。」
何をするわけでもないが、廊下にずっと立ったままというわけにもいかず、
暫く時間を置いた後、平山はトイレへと向かった。
そして、そこでばったり会う……。
youと…。
「あっ、ニセアカギさんだ。」
「………。」
「こんばんは。」
「………。」
挨拶をしても返事は返って来ず、youは平山を覗き込む。
そして、察した。
彼はアカギの予言通りに負けたのだと。
「……お疲れ様、です。」
「………。」
何と話し掛けても無駄なことは分かっている。
むしろそっとしておくべきだと、youはお辞儀をして平山に背を向けた。
「……ぎ…は…。」
「え?」
声がした方を振り向くyou。
それと同時に強く腕を掴まれた。
「アカギは……どこにいる?」
「え、え?控えの部屋だけど……。」
「アンタ……さっきアカギと一緒にいたよな。」
「え、うん。」
「アカギは………アカギは、強いのか?いや、分かる、強いのは分かっている。俺は…」
「(何かなー…見えないなー、この人。)」
完膚無きまでの敗北で我を忘れてしまっているのだろう、
まとまりのない言葉のカケラからそう感じたyou。
とりあえず喋ってくれたのだ、気持ちが落ち着けば楽になるはず…。
そう思ってyouはしばらく平山と話してみようと決めた。
「私、youって言います。えーと、ニセアカギさんって名前じゃアレですよね…。」
「幸雄……平山…幸雄。」
「平山さん!名前聞けてよかった!」
嬉しそうに笑いかけられて、掴んだ腕を離して一瞬戸惑う平山。
「何故?」という疑問がつい口から出てしまう。
「は?何でだよ?」
「だって、ニセアカギって……名前、変だし。」
「まぁ、そりゃ仕方ねぇだろ。」
「せめてもっとカッコイイ名前を……「アカギ・ザ・フェイク」とか
「アカギ2号」とか…あ、それはかなりダサいなぁ…。」
「「アカギ2号」……。」
「じゃ、やっぱり「平山幸雄」ですよね!えーと「平山幸雄」だから……「ゆっきー」とか!カワイイです!!」
「「ゆっきー」……。」
「お疲れ様、かな?……ゆっきー。」
「……何がお疲れ様だよ……大敗して、代打ちの席を交代させられて…
…そんな労いの言葉…俺には……受け取れやしねぇんだぞ……。」
流血しそうな勢いで強く拳を握り締めた平山。
youは少しだけ辛そうに笑って、彼の手を両手で包んだ。
「緊張してた?」
「………。」
当たり前である。
なにせレートは浦部の策略により今や3200万。
逆を言えば、気負い無しに勝負できる人間など尋常ではない…。
「平山さんの……ゆっきーの手、綺麗だねぇー。」
「ふ、普通だろ……。」
「手が綺麗な男の人はモテるんだよー?」
「そんな…関係ねーだろ……。」
「アリアリだよ~、あと鎖骨とか首筋ラインとか……。」
youは「ココ」とか、と言いながら平山の首元に手を持っていく。
少し動揺し、顔を赤らめて平山がそれを嗜めた。
「な、何してんだ!」
「あれれ……平山さん顔赤い。」
「馬鹿か!何言ってんだ……///」
「ふふふー、やっぱり「ニセアカギ」じゃちょっとね。」
「あ?」
「怒ったり、照れたり、そういう色んな顔するっていいよね!」
「……?」
「アカギさんはちっとも顔色変えないから!」
「だから俺はアカギにはなれないってコトか?そう言いたいのか?」
「違うよぉー!」
「ブッブー」とNG音を自分の声で出し、youは再び平山の手をぎゅっと包んだ。
「平山さん……ゆっきーはゆっきーだから、だから手が綺麗で鎖骨と首筋ラインが素敵なんだよ。」
「喧嘩売ってるのか?」
「ゆっきーだから今みたいに怒って、照れることができる、全部ゆっきーだけの身体と心。」
「………。」
「ニセモノの誰かになれるほど、人間って器用じゃないと思う。」
「………。」
「だから私は本物しかいないって思うんだ。」
「you…。」
「ニセアカギじゃダメだよ。平山幸雄じゃないと。」
「………。」
「その方が素敵。」
その瞬間、youの視界は真っ暗になる。
気付けば平山に抱きすくめられていた……。
慌てて平山の名を呼び、今の状況を確認する。
「ゆ…ゆっきー??」
「……すまん……もうちょっとだけ……このままでいさせてくれ。」
「えーっと……ここ、トイレの前だけど。」
「気にするな。」
「うぅ……。」
困ったなぁ、そんな顔をしながら数十秒平山の腕の中でじっとしていたyou。
香水と汗が混じったアカギとは全く違う香り……
アカギの香りはどんなものだったかと、アカギのことを考えようとした時だった。
「それ、俺のなんだけど。」
と、まさにその人物の声がその場に響いた。
「アカギさん!」
「アカギ……。」
緩められた腕の力…。
youは平山から解放され、アカギの方へと向いた。
「遅いから迷子じゃないかって、治が言いにきた。」
「まいご…。」
「俺は大の方だろって言ったんだけどな。」
「シャラップ!!」
「まぁ、迷子じゃなかったんならいい。」
「え!あ、待ってよ、アカギさ……じゃぁ、ゆっきー!また後で!」
勢い良く平山に手を振り、アカギの後ろを付いていくyou。
その彼女の満面の笑みと……
先ほどまで自分に向けられていたアカギの殺気のようなオーラ…
冷たく、研ぎ澄まされた刃物のように突き刺さる視線…。
平山は「敵わないハズだ」と、苦く笑った。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「………。」
「アカギさん?」
「………。」
「アカギさん、怒ってる…?」
「別に…。」
その割にはいつにも増して口数が少ない。
そうツッコみたかったが、事の発端は自分にあるだろうと確信があった為
youはその話題を避け、勝負の話に持っていった。
「平山さん……ニセアカギさんは負けちゃったみたい。」
「だろうな。」
「アカギさん、戦うの?」
「さぁな。」
「でも皆困るんじゃないの?」
「そんなの……俺の知ったこっちゃない。」
コンパスの長さが違うためか、はたまたアカギがワザと早足で歩いているのか…。
youは小走りで必死にアカギについていき、控えの部屋まで戻った。
「あ!遅かったですね、youさん!やっぱ迷子だったんですか?」
「違うよ、治くんの馬鹿!言っとくけど大の方でもないから!」
「そ、それは思ってませんけど…///」
「あ!何か料理減ってる!」
「だってもうyouさん食べないかと思って。」
「そんなことないもん!!」
治との会話の後、youが再び席に着こうと思った矢先、アカギが部屋を出て行こうとした。
慌てて行き先を尋ねるyou。
「アカギさん、どこ行くの!?」
「……ちょっと風に当たってくる。」
そう呟き、振り向きもせずに廊下に出て行った。
youは治と料理を交互に見て、僅かに未練がましい顔をしたが
諦めたように一度頷き、廊下へ飛び出た。
「あ!youさん!?ご飯は?!」
「いらない!全部食べていいよ!」
「あ、ちょっと!」
治の呼びとめを無視して、アカギの元へと駆けたyou。
すぐに、廊下の角に腰掛け、広い庭へと足を投げ出しているアカギを見つけた。
youはアカギの後ろに立つと、振り向かない彼に向かって話しかけた。
「隣、座ってもいい?」
「好きにしろ。」
「よいしょ」と、小さく呟いてアカギの横に座るyou。
それからすぐに横にずれて、ぴったりとアカギと身体を密着させた……。
「……寒いのか?」
「そういうわけじゃないけど…。アカギさんは?」
「そうだな……俺はちょっと寒いかもな。」
「……ありがと。」
それは側にいてもいい、という遠まわしな……でもアカギなりの優しさ。
その優しさが何故か、youの胸をぎゅっと鷲掴むほど切なかった。
「早く……思い出したいな……アカギさんのこと…。」
ポツリ…呟いて、アカギを見つめた。
スラリと伸びた鼻、切れ長の目、艶のある唇……風に揺れる純白とも白銀とも言える髪。
全てに於いて整った顔立ちがyouの顔に近づく…。
youが静かに目を閉じた……
その時。
「アカギっ!どこだアカギっ…!」
廊下をドタドタ走って、焦った様子の石川が現れた。
「じゃ…じゃあ、私は治くんのトコ戻ってるね///」
「………。」
顔を赤くしてそそくさと立ち去るyou。
廊下ですれ違う瞬間、youの様子に少し違和感を覚えた石川。
しかし、置かれている状況がそれどころではなかったため先にアカギの方へと話を持ちかけた。
「アカギ…!さがしたぞ……なにしてんだ、こんなとこで。
……ともかくすぐ来てくれ……!うちの代打ちがボロボロ、おまえの力が必要だ。」
「浦部が勝ちだしましたか……?」
「ああ…。」
今しがたそのニセアカギと会ったばかりなのだ…。
その事実を知っているのに、あくまでそ知らぬフリをして石川と会話するアカギ。
「あのヤロー調子にのってレートをどんどん引き上げて、今3200万だ…!」
「フフ…。」
「たのむよアカギ…!」
「残念ですが……気分じゃないんで…。」
「俺のお楽しみを邪魔した罰ですよ」とでも言わんばかりの反応で石川を軽くあしらった。
「…気…気分って……?な…なに言ってんだよ…!3200万だぞ、3200万…!気分なんて問題じゃねえだろ!」
しかし何度も必死に食い下がる石田に、提案…というよりは条件に近いものを出した。
「治でどうです……?」
「治…?治って、あのソバカスの……。」
「ええ…。」
切羽詰まった石川と、それを軽くあしらうようなアカギの反応…。
素人である彼にプロの相手は不可能だと、石川が反論すると、
アカギは何かを企むような顔つきで言葉を返した。
「治にレートを伏せて楽に打たせてみてください。。案外いい勝負するかも。」
「バカな…!いい勝負じゃ困るんだよ!アカギ…!3200万だぞ、3200万…!」
「ククク…まあ、好きにしてください。治が打たなきゃオレも打たないだけ……。」
「アカギ…。」
プイっとそっぽを向いたアカギに、ワナワナと拳を振るわせる石川。
こうなればもうヤケだ!と言わんばかりに石川はアカギに言い放った。
「じゃあ、治の後はいいんだな……治が打ったら、おまえも打つんだな?アカギ…!」
「そりゃ…まぁ…。」
と、暫し考えた後、小さく答えた。
それを聞くや否や石川は廊下を走り出す。
そして数秒後、後方から「いつまで飯食ってんだ!」と怒鳴り声が聞こえた。
その声を耳にし、アカギがやれやれと軽く溜息を吐くと、
後ろから今度はトタトタと軽い足音が近づく。
予想通りの人物が自分のところに来たようだ。
「アカギさん!今、何故か治くんが石川さんに連れてかれたんだけど!!」
「だろうな。」
「アカギさん、行かないの?」
「そうだなー……あと5分くらいしてからな。」
「ふーん……。」
アカギが「あとどのくらい」という話をする時は、今朝の寮の門での一件から
必ずそのくらいの時間にアカギが動くことをyouは理解していた。
そしてそれには何らかの理由があることも……何となくだが察していた。
案の定、大体5分くらい経ったかとyouが思った時、アカギが立ち上がった。
「いくの?」
「あぁ。お前は待ってろ、分かんないだろ?」
「何が?」
「麻雀」と、言いながら廊下を歩き出したアカギ。
youはクスっと笑ってアカギに呼びかけた。
「アカギさーん!頑張ってねっ!!」
少しだけ後ろを振り向いて、アカギは微かに微笑みかけた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「う……おぉおおっ!!……ロン!河底ドラ4、マンガン…!」
たった一つ残った牌を震える指で弾いた後、
呼吸さえ上手く出来ないほど緊張した声で石川が叫んだ。
「逆転……!」
消え入りそうな程の声で石川がアカギの勝利を宣言する…。
一時7万点以上あった浦部のリードを吹き飛ばし、逆転。
アカギは未曾有の大逆転により…浦部との死闘を決着付けた…。
それは6年前、麻雀の素人同然であったアカギが
盲目の裏プロ、市川を倒した……あの魔性の夜。
奇跡の闘牌の再現であるかのようだった。
そんな風に一同の興奮が冷め遣らぬ中、
当のアカギ本人は何食わぬ顔でyouのところへ戻ってきた。
「ただいま。」
そう言って扉を開いても返事はなく、探せばyouは
部屋の隅で丸くなり、座布団を枕に眠っていた。
「あらら……そんなに時間経ったか?」
「ん……あかぎさ?」
「悪い、起こしたか?」
「んーん……。」
眠い目を擦り、しぱしぱと瞬きをする。
そして、立ったままのアカギに質問を投げかけた。
「もう行くの、アカギさん?」
「あぁ、ここは旅館じゃないしな。」
「んー……分かったー。」
「隣の空き部屋で荷物の整理してくるから……もう少し眠っとけ。」
「んー……分かったー。」
「(本当か?)」
呆れたように笑って、アカギは隣の部屋へと移動する。
そこで月明かりの中、荷物を整理していると治が部屋を訪れた。
「治か……帰るぞ、用は済んだ。そもそもオレは礼のニセモノと闘うためにここに呼ばれた。
しかし…奴を破った浦部を倒したんだ。今さらニセモノと闘う必要もあるまい。帰ろう…。」
「はあ……それが…その~…そうもいかないみたいですよ…。」
「ん…?」
治の後ろに気配を感じて目をやると、川田組長とその部下がアカギの前に現れた。
彼等は先ほどの浦部との対戦で打ったアカギの闘牌の解説を請いに来たというのだ。
「(フー……まいったな…まぁ、アイツもまだ寝てることだし……睡眠時間でも稼いでやるか。)」
色々と試行錯誤した結果、解説に応じることにしたアカギ。
「河は壊してないか」と問い、それに関しては説明しやすいように勝負後のままに保っていると言われ、
彼等は再び勝負のあった部屋へと向かった。
それから行われたアカギの解説には誰もが言葉を失った。
彼の語るそれは…浦部の血の流れ、吐く息吸う息まで聞こえてきそうな
相手の心理と抱き合わせで進行していく生きた理だった。
そしてそれを淀みなく話すアカギは現世の成り立ちを説く高僧のよう…。
結果、一同は思う。
もはや彼の打つそれは…解析は不可能。
いうなれば
「天衣無縫の闘牌」だと。
そして大方の説明が終わり、廊下を歩きながら細かな説明をしている時だった。
一つの部屋から悲痛な笑い声が響いてくる…。
治が恐る恐る覗くと、真っ暗な部屋の中
勝負に負け、血の代償を支払ったのだろうと…
安易に予測できる姿の浦部が座り込んでいた。
「待てっ…!覚えとけっ……!アカギ…!」
突然響いた大声に飛び起きたのはyou。
キョロキョロと周りを見回して状況を確認する。
「アカギさん?!」
確か隣の部屋で荷物をまとめると言っていたはず…。
youはそう思い出し、隣の部屋に走ったがその姿はなく…。
困っていると、再び先ほどの大声が響いた。
「いつか…いつか必ず…お前を倒す…!」
ピンときたyou。
その声のした方へと駆け出した。
「この人、アカギさんと話してるのかも!」
予想通り…走った先の廊下には、立って部屋の中を見つめる川田組一同と、治、
それからアカギの姿を発見した。
声を掛けようと思った時、アカギがスッと部屋の中へと入っていく…。
皆の表情から嫌な雰囲気を悟ったyou。
部屋からの声がよく聞こえるようにと、一同にバレないように
そっと隣の部屋に入り聞き耳を立てた。
「(んー…よく聞こえない?)」
「……アカギ…。」
「(あ!喋った!結構よく聞こえるかも。)」
驚いたように壁を見つめるyou。
すると聞き知った声が壁から聞こえてきた。
「…浦部…いつか倒すなんてそんなこと……お前には無理だ…。
おまえは欲に振り回されそのあげく肝心な場面で腕が縮む。そういうレベルの人間だ…。
得意なことは卑しく人の匂いをかぎ回ることくらい。
そのくせ、てめえの匂いには鈍感…。あれほどの悪臭を放置しておくというまぬけぶり。」
「きさま……殺してやろうか…!」
浦部の怒りの声がビリビリと壁を伝い、youは一瞬身震いをした。
そして思った……的外れなことを。
「(きっとこの対戦相手の浦部って人は物凄く体臭が臭かったんだ!
でもその言い方は流石に誰でも怒ると思うなぁ……アカギさん、ダメだよ…。)」
しかし、そんなお気楽な考えもそれからの会話で砕け、
彼女はアカギの本質を知ることとなった…。
「浦部……いつかなんて言わなくていい、今でいい。半荘1回の勝負をしてやろう。
オレが負けたらお前の背負った負債を全て引き受ける……かわりに
もしオレが勝ったら、お前の両手……その手首から先をもらう。ってのでどうだ……?」
「え…?」
「(え?!)」
youが口を手で覆ったと同じタイミングで、治や川田組長からストップの声が掛かった。
「アカギさん。」
「アカギ…!やめておけ、そんなバカなマネは……勝っても負けてもおまえになんの特もない…。」
川田組長の宥めとも諌めともとれる言葉に、アカギは軽く含み笑いをする。
「ククク…だからかえっていいんですよ。もともと損得で勝負事などしていない。
ただ勝った負けたをして、その結果無意味に人が死んだり不具になったりする……
そっちの方が望ましい。その方が……バクチの本質であるところの……理不尽な死―
その淵に近づける……!」
最後に「醍醐味だ…なあ…浦部」と、ギャンブルを持ちかけるように言い放つ。
浦部はそれから何も言ってはこなかった…。
その後、何とか大きな騒ぎにならずに収まったこの場を川田組長が指揮。
アカギに代打ちの報酬を支払い、この日の戦いは真の意味で幕を閉じた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
それから、料亭を出た…基、川田組から離れたアカギたちは夜の町を歩いて移動し、
素泊まりのホテルへと足を運んだ。
「オレとアカギさんが同室で、youさんは別の部屋でいいですよね?」
治が2人に同意を求めると…。
目に留まったのはアカギと、彼のシャツの裾をぎゅっと握っているyou。
無言で受付カウンターに立ち尽くす治に、アカギが言った。
「悪いな、治……部屋割りはそういうことみたいだ。」
ホテルの部屋に着き、荷物を置いた後、アカギはyouをベッドへ座らせた。
「何かオレに言いたいことがあるんだろ?」
アカギのその言葉を聞いた瞬間、youの目からボロボロと涙が零れ落ちた。
「死ぬって、死ぬってね……きっと凄く痛いと思う。」
「………。」
治や川田組の者と一緒に居なかったけれども、
どこかで浦部との遣り取りを聞いていたのだとアカギはすぐに察知した。
「自分が死ぬことじゃなくて……傍にね、いる人。凄く痛いんだよ。
「居なくなる」なんて考えるだけで胸が張り裂けそうなんだよ……。」
「………。」
「私は、アカギさんがいなくなるのはヤダな。きっととっても痛いもの。
でも、アカギさんには「私のために生きて」とか「私と一緒に死んで」とか
……それじゃきっとダメな気がする。」
「そうだな。オレはそんな言葉じゃ縛れない。」
「いつか、いなくなる運命からはきっと……逃げられない。私、それをちゃんと知ってる。」
「……そうか。」
「でもね、でもね、違うの……アカギさんがいなくなるのはね、痛いけど…。
でも……アカギさんはあったかい。生きてる今も……きっと、死ぬときも。」
「そりゃ死んでるって言わないだろ。」
「ワケわかんないぞ」と、苦笑するアカギの手を引き、そのまま2人ベッドに倒れこんだ。
「違う、ここ。」
そう言ってyouはアカギの左胸に手を当てた。
鼓動を感じようと目を閉じる……。
「心があたたかいなら、きっと最後もあたたかいよ。」
「そうか……そうかもな。」
「私もきっと一緒にいるからね、きっと…もっとあったかいよ。」
「そりゃありがとよ。」
「だからね、そうやっていつか消えるまで、無意味な死はヤダな。」
「………。」
「それから、手首から先が無くなったりするのもやだ。」
「…フフ。」
「無事にね、アカギさんと年を取りたいかも。」
「ハハッ、いきなりスケールが肥大したな。」
「うん、私、アカギさんが好きだから。」
瞳を開いて、笑った瞬間
涙が一筋流れて落ちた。
「……そんなにオレがいいのか?」
「アカギさんがいい。」
「チキンランでブレーキ踏まないマッド野郎だぞ?」
「アカギさんがいい。」
「これから先、ギャンブル無しに生きない人生だぞ。」
「アカギさんがいい。」
アカギはそっと手を伸ばし、youの頬を流れる涙を拭ってやった。
それからyouに問いかけた。
「出会って何日だ?2日か?3日か?」
「きっと、もっと昔だよ。ずーっとずーっと昔。」
「ん、そうか……じゃぁ、抱くぞ?」
そう言って口付けて
両手を掬い取り
指を絡ませた…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
(頬に触れて、初めて分かった。)
(この手があってよかった。俺が在ってよかった。)
(原因としてはこの、一つに溶けた…)
手と涙。
*。゜.*。゜.*。゜.*