with you. 〜君と僕との永遠性〜 (アカギ)
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広い背中が
好きでした
強い瞳が
好きでした
貴方の全てが
大好きでした
with you.
~君とボクとの永遠性~
02:その手をとって
沼田玩具に勤める工員の寮。
その一室に深夜、明りが灯った。
「さて……どうするかね。」
自分の上着を被せただけの状態の女性に目をやり、
とりあえず布団に寝かせようと思ったアカギ。
押入れから寝具一式を出し、畳の部屋に敷いた。
「裸じゃ流石に風邪決定だよな。」
やれやれ、と溜息混じりに寮設置のタンスの中から己が少し厚めのシャツを一枚出した。
「これで十分だろ……。」
それからテキパキと手早くシャツを着せてやり、抱えて布団に入れてやった。
更に、スヤスヤと寝息が聞こえてきていることから、明日には普通に目が覚めるだろうことが推測できた。
「さてと……俺も寝るか。」
電気を消し、薄い毛布に包まって目を閉じた…。
それから数時間……
仮眠といっても過言ではないくらいの短い時間を就寝に費やして、アカギは目を覚ました。
毛布を畳みながら、横目で布団の方を見た。
規則正しく上下する布団に何故か安堵する……。
立ち上がって押入れを開けた時だった……
アカギは背後から声を掛けられた。
「あの……すみません…。」
驚いて後ろを振り返ると、完全に寝入っていると思っていた女が布団の中から自分に呼びかけていた。
思わず毛布を取り落としそうになるアカギ……。
「起きてたのか…。」
「はい……えーと…あの…貴方は…。」
「…アカギ……赤木しげる。」
「アカギ…さん…。」
「アンタは?」
「私は……you…っていうんです…けど…。」
「…けど?」
困ったような表情で自分を見つめてくる彼女に、
昨夜の疑問をぶつけてみた。
「アンタ、俺を知ってるのか?」
「……それが…。」
少しの沈黙…。
そして彼女が言った言葉にその場が凍った。
「覚えてないんです……何も。」
*。゜.*。゜.*。゜.*
「覚えていない……とは。」
「そのままです……名前以外…自分の記憶が吹き飛んでます。」
「家は。」
「さぁ…。」
「何で真っ裸であんな路地裏にいたんだ?」
「真っ裸?!!」
ガバっと布団から起き上がり、己が身体を見る。
ダボダボの上着が目に留まって、現在も裸というわけではないと安堵したのも束の間…
何か物足りない感じがして、自分の身体をそっとシャツの上から擦ってみると…
「無い……下着が…ない。」
「元から何も着てなかったって。」
「じゃぁこのシャツは…?」
「俺のだ。」
「じゃぁ……これを着せたのは…。」
「俺以外にココに誰がいるんだよ。」
「ぎゃぁあーー!」
「安心しろ、貧弱すぎて襲う気にもならなかったから。」
「ひぃい!泣きっ面に蜂ぃ!」
「ッハハ!襲われたかったのか?」」
「そんなわけ無いです!」
半泣き状態のyouと相反してクスクス笑うアカギ。
その状態でアカギはyouの頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でた。
「よかったな、0からのスタートで。」
「記憶喪失のどこがイイんですか!!」
「言葉も存在も、何もかも忘れたマイナス状態からのスタートじゃないだけマシだろう?」
「それは……まぁ、そうですけど…でも…。」
「ま、そのうち思い出すだろ。」
「警察に行ったら……身元とか分かるかなぁ…。」
「オイオイ勘弁してくれよ……俺はサツになんて付いてってやらねぇからな。」
「な、何でですか!貴方、第一発見者なんですよ!?」
「生憎と、俺は真っ当な人生歩んできちゃいないからね。顔が知れると色々と困るんだよ。」
「でも……じゃぁ、どうすれば…。」
俯いて涙ぐむyou。
その姿にはぁ~っと思いっきり深い溜息を吐いて、アカギは言った…。
「面倒見るとは言わないけどな。都合が付くまでココにいればいいだろ。」
「ココって……ココ?」
「あぁ。会社の寮だけど……ま、バレなきゃ大丈夫だろ。」
「バレなきゃって…。」
「都合のいいことに俺は人付き合いが乏しくてね。
さっきみたいに大声で騒がない限りは早々バレるもんじゃない。」
「でも……アカギさん…迷惑でしょう?」
「別に。」
しれっと答えるアカギに怪訝そうな顔を向けるyou。
しかしそんな態度もアカギの一言で掻き消えた。
「不納得、って感じだな?」
「だって……。」
「じゃ何か、アンタは今から素っ裸で外に放り出されてもいいってことか?」
「う"………それはちょっと…かなり…困る、な。」
「だろ?人の好意には甘えとけ。俺が誰かに優しくするなんてこと、滅多に無いんだぜ?」
「そう……なんですか。じゃぁ……どうして、優しくしてくれるの?」
というyouの質問に、アカギは少しだけ考えた。
そして答える……。
「アンタのこと、知りたいから……かもな。」
「ぇ?!」
「昨日、アンタと会った時……アンタは俺を知っていた。」
「そう……なの?」
「あぁ、俺の名を呼んだ。」
「アカギさんは……。」
「あぁ、勿論俺はyouを知らない。だから、知りたい。」
「何故…アカギさんを知っていたのか…を?」
「そういうことだ。」
顔を上げ、視線を壁に掛けてある時計に持っていく…。
時計の針は朝食の時間を差していた。
もう一度youの頭をクシャっと撫でてアカギは立ち上がり、彼女に告げた…。
「じゃ、俺は仕事に出るから。」
「あ、は…はい!」
「気が向いたらパンツくらい買ってきてやるよ。」
「ぐっ……///」
片手で玄関のドアを掴み、もう片方の手でヒラヒラとyouに手を振った。
バタンという音が響き、ドアが閉まる…。
急に静かになった部屋でyouは一人呟いた…。
「赤木…しげる……何かここが暖かいな…。」
そっと胸に手をあてた…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
沼田玩具工場
終業時刻の5時のこと。
「赤木…いいか……?これから……。」
終業の合図と同時に現れた懐かしい人物。
6年前の…出会った時と寸分変わらない顔と声。
あの時の代打ち依頼者、南郷がアカギの前に現れた。
その南郷によって引き合わされた石川という人物から聞かされた
「赤木しげる」の偽物……フェイクがいるという事実。
そしてアカギは今日、その「偽アカギ」の存在の有無を己が目で確認するため
石川の属する川田組へと赴くことを決めた。
「あぁそうだ…。」
「どうした、赤木?」
「ちょっと買い物したくてさ。」
「石川さん、時間ありますか?」
アカギと南郷の会話を聞いていた石川。
すんなり申し出を許諾した。
「あぁ、時間は大丈夫。で、何を買うんだ…赤木?」
「ちょっと、衣料品をね。」
「…分かった。」
車を数分走らせ、夕刻の商店街へと到着した一行。
石川はアカギと南郷だけを降ろし、自身は車を商店街外の広い場所へ止めに行った。
「さてと、じゃぁ行こうか。」
「衣料品って……何買うんだ?」
「とりあえず下着。それから服かな。」
歩きながら会話をして、目的の店を見つけたアカギが立ち止まる。
「南郷さん、ココ。入ります。」
「あぁ……って、お前そこ女性用下着の店だぞ!!?」
「そうですけど。」
「「そうですけど」って……まさか…。」
「…俺が着るとでも?」
「……だよな。恋人でもできたのか!?」
「いや……記憶喪失の猫がね、一匹。」
「???」
クスクスと笑いながら恥ずかしげも無く店へと入っていくアカギ。
つられて南郷も入ったのだが、店内の雰囲気や女性客の視線がどうにも痛くて仕方ない…。
恥ずかしさが先に立って、アカギが何を買ったのかさえも確認はできなかった。
ただただ彼の「終わりましたよ」という言葉で我に返る……そんな買い物だった。
「次は服か……それも女物なのか?」
「えぇ、まぁ。」
「女の好みは分からんからなぁ……赤木、お前はちゃんと分かってるのか?」
「さぁ……でもまぁ、似合いそうなのを選びますよ。」
そう言ったアカギはどこか楽しそうで、年相応の青年のよう…。
何となくだが南郷はそう思った。
ショーウィンドウに飾られている服を見て気になる店を数軒巡り、そのうちの一軒に入る…。
ハンガーにかけられた多数の服の中から数着選んでレジへと持っていった。
「えらく適当に選んだみたいだなぁ…。」
「そうでもないですよ。」
「相変わらずな自信だな、お前…。」
「まぁ、いいじゃないですか。さて、買い物もしたし、そろそろ行きましょうか?」
「あぁ、ニセアカギの元へ、な。」
石川の待つ駐車場まで戻り、車に乗り込んだ。
商店街を発って、オレンジの空が闇に飲み込まれた頃
3人は川田組に到着した…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「お腹空いたよーー…アカギさぁーん…。」
終業時刻の5時過ぎ、両隣の部屋から物音が響き
それと同じようにこの部屋の主も帰ってくると思っていた。
それから数十分してもアカギが帰ってこなかったため、
youはもしかしたらという思いで、彼が業務終了後に
自分の服を買いに行ってくれていて……それで遅くなっているのではないかと考えを改め…
最終的に数時間待てど帰って来ず、時刻は深夜2時を回るに至った。
朝から何も口にできておらず、空腹に耐えかねて
お腹を両手で押さえながら部屋をゴロゴロと寝たまま動き回る。
「餓死する。」
外に出たいが、まともに外を歩ける格好ではない。
それに加えて外の世界の右も左も分からなくなった自分の記憶。
深い溜息を吐いた後、一つの結論に辿り着く。
「よし!寝よう!寝たらお腹も減らないし!」
グッと拳を握り、一度は片付けて押入れにしまった布団を再び部屋に敷いた。
誰にともなく「おやすみなさ~い」と言うと、部屋の明かりをパチンと消した。
布団の中でyouが「やっぱりお腹空いた」と、呟いた時…
ガチャガチャと部屋の玄関を開ける音が響いた。
当然の如く飛び起きるyou。
彼女が布団から身体を起こしたと同時に、玄関からアカギの顔が覗いた。
「アカギさんっ!」
アカギは手荷物を部屋の隅に置き、部屋の電気を点けた。
「よ、ただいま。」
軽く右手を挙げ、靴を脱いで部屋に上がる。
youも布団から出て、アカギを迎えた。
「おかえり…なさい。」
「大人しくしてたみたいだな。」
「騒ごうにも……お腹が空いて、もう餓死寸前。」
「悪ぃ、気になってはいたんだけどな……ちょっと遠出してたもんだから、戻れなくて。」
「ううん、本当は自分でどうにかしなきゃいけないコトなんだし……アカギさんの所為じゃないっていうか…。」
「まぁ、とりあえず……もらってきたのがあるから。」
そう言って手荷物から出したのは豪華な重。
見た瞬間に怪訝な目でyouはアカギを見た。
「これ…超立派なんですけど。どこでもらってきたの?」
「…あー…川田組?」
「組?!しかも何で疑問形?!」
「いいから食え、腹減ってんだろ?」
「う、うん……じゃぁ遠慮なくっ!いただきまーす!美味しそう…。」
渡された割り箸を割って、キラキラと目を輝かせて食事を始めるyou。
それをじっと見ていると、彼女に問いかけられた。
「アカギさんは?食べたの?」
「あぁ、まぁね。」
「そだよね……もう2時過ぎだし。って、こんな時間に食べたら間違いなく太るよねー。」
「少しくらい肉付ければ?足りないだろ、ココとか。」
そう言ってアカギはyouの胸を鷲掴んだ。
アカギの目と掴まれた胸と手と箸で掴んでいる肉を順繰りに見て……
怒った。(当然だが)
「何すんですかッツ!」
声は荒げても、手は挙げないことから
youの性格がどんなものだったか推測するに至ったアカギ。
しかし、今は冷静にそんな話をしている状況ではないようだ。
「信じらんない!変態!セクハラ!訴えて勝つよ!?」
「ハハハ、まぁまぁ。そう怒るなよ…(っていうか「せくはら」って何だ?)」
「怒るに決まってるでしょ!」
「それもそうだな。でも、まぁ……これでサイズは確実、かな。」
「??」
アカギの意味深な言葉に、頭に疑問符を浮かべるyou。
そんな彼女を見て少し笑うと、アカギは重箱が入っていたものとは別の袋を差し出した。
「これは?」
「一応買ってきた。」
「もしかして……もしかする?」
「かもな。」
ガサガサと紙袋を開き、中身を確認する……。
それぞれ別の袋に数着の下着と洋服が入っていた。
「あ!ピンクだ!ワンピース……とスカートと……可愛い~!
(あれ…でも何だろう…この違和感……何かが…古い?)」
言い知れぬ違和感を感じてはいるものの、
色もデザインも気に入ったらしく、感嘆の言葉を漏らすyou。
続いて下着を確認すると、これまた自分の好みだったようだ。
オズオズと引け腰な態度で、上目遣いにアカギに問う。
「着て…いいの?」
「あぁ、お前が着なきゃ捨てるだけだ。」
「じゃぁ着るっ!」
「どうぞ。」
「あの……。」
「何だ?」
「ありがとう、アカギさん…///」
照れたように頬を赤く染め、礼を告げるyou。
アカギは何も言わずにふっと微笑み返した。
そして…
「あの…アカギさん…。」
「まだ何かあるのか?」
「早速着替えたいんで、後ろ向くか外で待ってて下さい。」
「なんで。」
「「なんで」じゃないでしょ!女の子が着替えるんですよ!」
「だから、なんで俺がそんな七面倒なコトしなきゃいけないん……」
「いいから出てけーーっ!!」
*。゜.*。゜.*。゜.*
youの着替えのため、強制的に部屋の外へ出されたアカギ。
やれやれと溜息を吐いて、タバコに火を点けた。
そして廊下の…とある部屋から聞こえてくる賑やかな声に耳を傾ける。
「(あぁ、そういえば今日は麻雀するとか言ってたっけ。)」
夕刻に会った事柄を思い出し、興味本位でその部屋に足を向かわせた。
立ち止まった同僚の部屋……この部屋に住む青年の名は治。
アカギは給料日の今日、会社の先輩らに金を賭けての麻雀に誘われたのだが
ニセアカギの一件でそれを断った。
そしてアカギの代わりに彼等の相手をする羽目になったのが治なのである。
「(ちょっと覗いてみるか…。)」
扉を開くと、雀卓と化したテーブルを囲む4人の姿が目に映る。
一同はアカギの来訪に少し驚いたような、そんな顔をしながら
「もう少し早く帰ってくりゃ一緒に楽しめたのに」と、声を掛けてきた。
それもそのはず…現在時刻は朝5時を迎えようとしているのだから。
今や勝負はもう、あと半荘で終了という状況らしい。
とりあえずアカギは治の後ろへ座り、状況を尋ねる。
「どうだ……?」
「……ハハ……全然……。」
「ダメ」の言葉を発さずとも、彼の顔色から大体の予想はついた。
アカギは畳の上に無造作に置かれた配録帳を手に取り、今までの勝敗状況を確認する。
そして治以外の3人が組んでいることを予測。
それから始められた南3局の一巡の一部で彼等3人の会話で『通し』を確信した。
「(…半荘6回も打っていて、この程度の『通し』も見抜けないようじゃ…
むしられても仕方ねぇか………同情はできねえな。)」
ぼんやりと考えながら、勝負を見終えた。
結果は3人がグルだとすると、治の大敗……そんな形での閉幕だった。
「悪かったな……俺が打ってりゃあ……。」
「いえ。アカギさんのせいじゃないですよ。結局やったのは俺なんですから。」
勝負を断りたくても断れなかった意志の弱さ故。
そう無言で語る治の背中に心地よい風を感じたアカギ。
「……ふーん………いいこと言うじゃん…。」
アカギの呟きが聞こえていたのかいなかったのか。
少しながらの罪悪感が自分達を支配しようとするのを避けるため
彼等は立ち上がり、玄関に向かった。
「先輩がた……俺とひと勝負しませんか?」
その場にいる全員がアカギに目を向けた…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「どこに行ってたんですか?」
治の部屋での勝負事を終え自分の部屋に戻ると、
youが心配そうに問いかけてきた。
「同僚の部屋にね、ちょっと。」
「いなくなってたから、心配したんですよ……。」
「ハハ…寝てればよかったのに…。」
「今日…っていうか昨日は空腹の所為で睡眠はちょくちょく取ってたから大丈夫なのです!」
「そうか……じゃぁ、大丈夫だな。行くか。」
「はい?」
「ここを出る。」
「は い ?」
何がなんだか分からない、といった顔で固まるyouを無視して
テキパキと荷物を整理し始めるアカギ。
小一時間程でコンパクトに荷物がまとまった。
「あの……アカギさん?」
「ん?」
「どこに?」
「んー……川田組だろうな。多分そうなる。」
「また出たよ、川田組!」
「いいから……もうお前は外出とけ。」
「え、え?!」
youの服が入った紙袋を手に持たせ、
玄関へと彼女の背を押す。
「寮の門前で待ってろ、5分で行く。」
「あ、ちょっと!アカ…」
ドアを閉めたことで諦めたらしい。
youが大人しく命に従い寮の階段を降りる音が聞こえた。
「さてと……治を叩き起こすか。」
そう呟いた、そのタイミングで玄関のドアがコンコンとノックされた。
youが戻ってきたのではと思ったが、磨りガラスに映るシルエットは男性のもの。
そっと開かれたドアから現れたのは、自分が今まさに会おうと思っていた人物だった。
「治か…。」
「はい。」
「ちょうどよかった……用があったんだ。」
アカギはそれから、昨日の先輩相手の勝負での取り分を治に渡し
自分がこの会社を退職することを上に伝えるよう頼んだ。
呆然と立ち尽くす治に背を向け、寮の門へと向かう。
「待たせたな。行くか。」
「行くって……どこに?ていうかさっき部屋で全荷物まとめてませんでした?!」
「いいから、騒ぐとバレるだろ。行くぞ。」
「もぉっ!」
少し歩き、少し広い道に出たところに一台の高級車が停まっていた。
一般の民家が連なる道に不釣合いなその車をyouが怪しそうに見ていると、
アカギが平然とした顔でその車の窓を叩いた。
「アカギか……。」
「流石にこんな民家にこの車はないんじゃない?」
「確かに、そうだな。」
「まぁ、いいさ。あくまでも俺を連れてくつもりなんだろ?」
「………。」
「アイツ攫ってでも。」
「………。」
「沈黙は肯定。ま、いいですよ、行きましょう。」
「すまんな。」
「その代わり、その「アイツ」を先に預かっててほしい。」
「先に、か?……分かった。」
「you。」
アカギに呼ばれて高級車に近付いたyou。
必然的に車のシートに座っている男と目が合う。
「お前の女なのか?」
「ちょっとね、アンタに会った日に拾って。」
「……まぁいいさ。」
「じゃ、頼む。」
「あぁ。」
短い会話の遣り取りの後、アカギが車の後部ドアを開いて言った。
「you、乗って。」
「アカギさんは…?」
「俺はちょっと用事みたいなのがあって。だからお前は先に行ってろ。」
「……川田組に?」
「そう、川田組に。」
「……一人で?」
「ちゃんと迎えに行くさ。」
「でも……。」
捨てられた子犬のような目でアカギを見るyou。
アカギは昨夜のようにクシャクシャとyouの頭を撫でて「いい子だから」と諭す。
その効果なのか、はたまたアカギには何を言っても無駄と判断したのか…
youは深々と溜息を吐いて首を縦に振った。
「わかった……。」
「よし、じゃあまた後で。」
「はーい。」
渋々と車に乗り込んだyou。
アカギはドアを閉めてやり、再び助手席の男に話し掛ける。
「じゃぁ、石川さん頼みましたよ。」
「あぁ、お前の迎えはそのうち寄越す。」
「分かりました。」
窓を閉め、車のエンジンがかかった。
それと同時に後ろの窓が開き、youが顔を出した。
「アカギさん……。」
「心配するな、お前の在り処が分かるまで……俺はお前を手放したりしないから。」
「でも……///」
「…行くだろ?俺と…一緒に。」
「……行く。」
「なら、ちゃんと待ってろ。」
「…うん!」
動き出した車に少し慌てて、顔を引っ込めるyou。
それからはひたすらスピードが上がって徐々にその場から離れていった。
「服、ちゃんと似合ってるじゃないか。」
「流石、自分」とでも言いたげな表情でタバコを取り出す。
その場で火を点け、最初の一口を透明な空に放った……。
*。゜.*。゜.*。゜.*
(金がない?戸籍が無い?)
(そんなの必要だったのか?)
(要らない世界を見せてやるよ、お前の…)
その手をとって。
*。゜.*。゜.*。゜.*