step5_(恋人編:アカギ)
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「ちょっとバイトを頼みたいんだが、いいか?」
「はぁっ?」
思わぬ人物からの、思わぬ声掛けに
生まれて初めて素っ頓狂な声が出た…(かもしれない)
そう思うアカギであった。
アカギさんといっしょ26
「銀さんのお手伝い…ですか?」
「ああ。と言ってもただオレの「仕事の依頼主の親戚」という体で、一緒におじさま方と食事をするだけなんだが。」
「そのおじ様方って……銀さんの関係のお偉い社長さんだったり重役の方なのでは…。」
「…まぁ、そうなるな。」
「や、ダメ、無理です!漂う品位が!わたしには庶民のオーラしか出せないんで!!」
「構わん構わん、黙ってニコニコして「そうですね」って返事しときゃ大概何とかなる!」
「雑!!」
「頼むよ、you…来てくれたら綺麗な服買ってやるし、夜景の見える個室で美味いホテルディナーが食えるぞ?」
「大変魅力的ですが、メンタルが持ちそうにないので!」
「2時間くらいの会食で、そこの高級ホテルに泊まれるよう手配してやる。アカギも呼んでいいから。」
「ぐぬぬ…ダメです!やっぱり無理!」
「じゃあ、給仕係(ウェイター)姿のアカギが見れるなら?」
「なんて?」
「給仕係(ウェイター)姿のアカギが見れる。」
「・・・。」
「・・・。」
「その話、ちょっと詳しく…。」
「おう。」
了承の決めては体力での精神でもなく、自分の欲望…。
かくして、普段とは違う様相の恋人が見たい…という希望から、
youは平井銀二の依頼を飲むこととなった。
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「どうも、平井銀二と申します。」
「おお、あなたがかの有名な銀王…!お会いできて光栄です…!」
「こちらこそ。日本のIT企業界では右に出るものはいない、不動の地位を確立された方と実際に対面できるとは。」
ハハハ、と取り繕ったような笑顔で挨拶を交わす見知った男性と見知らぬ男性たち…。
これが正に社交辞令というものか…などと思いつつも、
相手方の企業の名前が挙がらずとも分かってしまうという…。
場違いな領域に足を踏み入れてしまったという緊張感で胃が痛くなるyou…。
銀二からの依頼を受けて程なく経った頃、休みの予定などを聞かれて、
(どうやらこちらの予定に合わせてくれたらしい)
それに合わせてヘアメイクを予約したり、銀二と共に服や靴、鞄を買いに行ったりしたのは楽しくて良かったのだが、
いざこの場所に来るとその代償は高くついたと思わざるを得ない…。
「それはそうと、本日は申し訳ございません…この場には本来本人が来る予定だったのですが…。」
「いえいえ、構いませんよ。会長とはまた別の機会に会食なりゴルフなり行くことにしますので。それを思うと、今日は平井さん、貴方と知り合いになれた方が有意義かもしれませんし。」
「社長にそう言われるとは、光栄なことで…。」
「それに、名代も華があって良いじゃないですか。」
「ええ、そうでしょう?彼女はyou。少し遠縁ではありますが、本日来られなかった会長の親戚の令嬢です。社交界デビューの一環ということで、連れて行くよう依頼がありましたので。」
「なるほど、そうでしたか……よろしく、youさん。」
ニコリと笑みを浮かべて手を差し出す紳士。
youは小さくお辞儀をしてその手を握り返した。
「あ…よろしくお願いいたします。」
「こんな年配のオジサン達の相手は面倒だろうが、どうか今日はよろしく頼むよ。」
「とんでもないです、こちらこそ、無理に押しかけてしまって申し訳ありません。わたしの事は気にせずお仕事のお話をなさってください。」
「いやいや、こんな機会だからこそ、食事を純粋に楽しむとするよ。」
年齢の割には爽やかに笑う壮年の男性。
流石にIT企業の社長というだけあって、他会社と比べると柔軟性があり、精神的にも若いのだろうか…などと思うyou。
「そういうことで、平井さんとのお金儲けの話は大変惜しいですが、今日は仕事の話は抜いて楽しく食事をさせていただくとしましょう。」
「はは、ではそのように。」
「そうだ、平井さん…今日は弊社の専務もご一緒させていただきますので、何卒宜しくお願い致します。」
社長の横に立っていた男性が一歩前に出て、銀二とyouに自己紹介をする。
全員で自己紹介をし終えたのち、食事を始めることになった…。
さて、今回you達が来ているのは高級ホテルの上階にあるレストランの個室…。
格式のあるホテルやレストランは客室やテーブル毎に、担当が決まっているため、
彼らの個室にもその給仕係が2名ほど入室してきたのだが…。
「!!」
「・・・。」
2名のうち1名は元々このレストランに勤務する者なのだろうが、
もう片方は銀二もyouも見知った人物…赤木しげるであった。
元々、お偉い方々との会食に参加するという銀二の依頼には応えるつもりはなかったyouだったが、
これこのように…アカギが店の給仕係として遣って来るので、それを見たくはないかと引き合いに出され、依頼を承諾したのである…。
アカギが自発的にこのような場でアルバイト等を行うような人間でないことは熟知しているため、
youも「ああ、銀さんはわたしと同じようにアカギさんに何らかの依頼のため給仕係としてのバイトをさせるつもりなのだろう」と何となく考えていた。
本来であれば、彼に給仕係をさせることでどのような依頼をしたのかを気にするべきなのだろうが、
そうと頭で理解していても心が追い付かない程、youは単純にウェイターの姿のアカギに見惚れてしまっていた。
アカギに座席の椅子を引かれ、銀二に背中をぽん…と軽く押されたことでハッと我に返ったyou…。
「レディーファースト、というやつだ。」
「あ、ぎ…平井さん、ありがとうございます。」
「It's my pleasure.(どういたしまして)」
それから着席し、彼女にとって緊張の会食が始まった…。
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・
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彼女にとって、それから先の事はほぼほぼ記憶に無いと言っていいほどのものだった…。
次々に出される食事は勿論「美味しい」という感想以上のものではあったが、
会食の内容でしっかり舌鼓を打って味わう事もできず…。
対面のIT企業の社長と専務から振られる話に綺麗な愛想笑いをしたり、
YESやNOで答えられない問いを乗り越えるべく尽力したり…。
(恐らくは銀二の助けが無ければ恐らく中盤でもうボロが出ていただろう…。)
普段と異なる様相のアカギを極力気にしないようにはするものの、
食事や飲み物を運んでくる度に、矢張りチラチラと目で追ってしまったり…。
兎に角、感情のアップダウン激しめに数時間を過ごしたのだ…ということだけは確かだった…。
そして今やっと、日も暮れた夜の8時過ぎ…銀二と2人で会食相手の2名をホテルのロビーで見送って任務を終えたところである…。
「っつ……疲れたぁあああ!!!」
「おー…ご苦労さん。」
「銀さぁぁん……ごめんなさい、わたしちゃんとできなかったかも…。」
「いや、十分充分……見た感じ最後までバイトで雇った近所の友人とは思ってなかったみたいだしな!」
「本当ですかぁ…?」
「あーでも、最後はヤバかったな……あの専務のスケベジジイ、しつこくyouの連絡先聞いてきやがって…。」
「教えたら身バレしちゃうと思って断ったですけど、良かったですよね?銀さんも「会長が大事にされているご令嬢ですので、会長が怖くなければどうぞ」なんて圧を掛けてくれたから引いてくださって…本当助かりました。」
「勿論だ。そういう理由もあるけど、下心見え見え過ぎて同年代ぽかったし、オレが腹が立ったからよ…。」
「銀さん…。」
「何より…。」
「?」
「その遣り取り見てたアカギのオーラが半端ないくらいドス黒くて、流石のオレもちょっと胃が痛かったしな。」
「えっ、アカギさんいましたっけ、その時……わたし多分、断るのに必死で気付いてませんでした…。」
「あー……うん。」
「?」
「今のうちに謝っておく…ごめんな、you。」
「何ですか急に……もう会食は終わったんですから、今更謝られても……それに、大変でしたけど、お料理美味しかったし、お仕事モードの銀さんは何時にも増してスマートでカッコ良かったし…ウェイター姿のアカギさんも素敵だったし…!」
「そうか……うん、そう言ってもらえると助かる…気持ちちょっと楽になるよ。このバイトの件に関しては…だが…。」
「??」
割と真剣な顔つきでそう零す銀二と、その真意が汲み取れず頭に疑問符を浮かべるyou…。
勿論、銀二はこの後、彼女がアカギに相当責められる(もしくはお互い喧嘩をするかもしれない)
という事を見越しての大いなる謝罪だったのだが、それは当然やんわり誤魔化すわけで…。
「あー…じゃあ、オレはこれで帰るから。」
「はい、お疲れ様でした!」
「これ、ホテルのカードキーだ。渡しておく。」
「本当にいいんですか?」
「ああ、寧ろこっちが「いいんですか?」だ。協力してくれたのにバイト代出さなくていいのか?」
「いいですよそんなの!!高級ホテルにそのまま泊まらせてもらうわ、髪のセット代出してもらうわ、このお洋服やバッグだって…!」
「依頼主からはその代金以上に貰ってるんでね……それに、今日の会食相手と依頼主の商談が纏まれば更に追加でがっぽし儲かるってんだから、微塵も気にすることぁない。」
「うう……ありがとうございます…。」
「また、こういうことがあったら頼まれてくれや…な?」
「それはちょっと…考えさせていただきます…。」
「おいおいおい~!」
「身の丈に合った依頼であればいつでも。」
「分ぁかったよ…(仕方ねェ…またお互いを餌に釣るかぁ…。)」
「今よからぬこと考えませんでした?」
「…いいや?」
アカギは兎も角…youの思考など銀二にとっては鍵の掛かっていないドアのようなものなので、
如何様にも協力させる手段は見つかるだろうと確信している。
危ない目に遭わせるような依頼は勿論避けるが、彼としては今後も協力を促していこうと画策するのであった…。
「じゃあな、嬢ちゃん。ゆっくり休めよ(休めればの話だけど)。」
「はい、ありがとうございます。銀さんもお気をつけて!」
ヒラヒラと手を振って銀二もまた、次に到着したタクシーへと乗り込む。
youはそれを見送ると、すぐに「う~ん!」と腕を天上に上げて身体伸ばしてリラックスをすると、
フーっと大きく息を吐き出して「よしっ!」と一声。
「さてさて、アカギさんのお仕事が終わるまでお部屋で寛がせていただきますか!」
銀二からyouへの依頼は「銀二たちと会食をすること」なので、彼等と解散した今、彼女は依頼を終えて自由になった身だが、
銀二からアカギへの依頼は「ホテルで銀二達の個室担当として臨時の給仕係として仕事を全うすること」なので、
銀二たちの去った後もウェイターとしての仕事が暫し残っている状態…。
故に、銀二は先にyouにホテルのカードキーを渡したというわけである。
そうして再びホテルの中へと戻ったyouは、フロントへ向かい、
預けていた1泊用の軽めに納めた荷物を回収し、チェックインを済ませて部屋へ向かった。
最上階とまではいかないが、高層階の部屋に入るとその展望に思わず「わぁ」っと感嘆の声が漏れる。
「凄ーい!夜景が綺麗…。」
さて、本来であればその感動を分かち合う相手がいるはずだが、
その男はまだ暫くここにはやってくる気配は無い…。
「…うーん…まずは疲れたしお風呂入って一休みさせてもらおうかな。」
そうポツリと呟いて、アカギに携帯で部屋番号を伝えるメッセージを送ると、
youは部屋に備わっている寝間着や持ってきていた着替えの下着などを持って、
バスルームへ向かい、優雅にバスタイムを堪能することにした。
歩き疲れたワケでもないのに、ゆっくりのんびり広いバスタブを堪能した後、ホテルの備品のパジャマに袖を通す。
広い洗面台も十分に活用し、髪を乾かし、スキンケアをして寝る準備を整え…ようとしたが、
アカギの仕事が終わってやってきた時に完全に寝る準備を済ませていた場合の視線が怖いと考え、
改めてきっちり化粧をし直すことにするyouであった…。
「アカギさん、どのくらいで仕事終わるんだろう??」
そう何気無く呟いたところで、聞きなれないホテルのインターフォンが鳴ったため、
彼女は慌てて洗面台を飛び出して玄関方面へ向かった。
除き窓から外を確認し、それがちゃんと自分の見知った人物であるかを確認すると、
しっかり掛けていた防犯用のチェーンを外してドアを開いた。
「アカギさん、おかえりなさい!あれ、いや、いらっしゃい?」
「ただいま。」
少し疲れたような声色で返事を返したアカギを、部屋に招き入れるyou。
ひとまずの挨拶は終わったので、玄関口からホテルの部屋の内部へ移動。
2列並んだキングサイズのベッドのうち、1台の上に2人で腰掛けたところで、
youが自分だけ先に寛いでしまっていたことを軽く詫びる。
「何かすいません、こんな格好で……時間があったので、先に寛がせてもらってました。」
「そうみたいだな…。」
「アカギさんご飯は?」
「要らない。youが会食で夕飯食ってたの知ってるから、適当にまかないもらって食ってきた。」
しかしそこは高級ホテルのレストラン、適当とはいえ食材や調味料のランクもあって、
まかないでも十分美味かった…としみじみ呟くアカギ…。
「いいなぁ…わたしは緊張で「美味しかった」とは思うけど、しっかり味わう程ご飯に集中できなかったから…。」
「そうなの?」
「そうですよ!銀さんがちょこちょこ助けてくれたから会話も何とかなったものの…。」
「そうは見えなかったけどね…。」
「そうですかぁ?違和感無かったなら、いいんですけど……ああ、報酬目当てに協力しますって言ったものの、こんなに気疲れするなら、もう絶対受けない~!」
「そうだね、目先の利益だけ見て飛びつくと、その対価は必ず高くつく……いい教訓になったんじゃない?」
「うっ……アカギさんが言うと妙な説得力が…。」
「フフ…まぁ……それで破滅してく人間を何人も見てきたからね。」
「あっ、でも「次はない」って言うのは思ってますけど、報酬のために頑張ってよかった!とは思ってますよ、現在進行形で。」
「ああ、銀二さんから聞いてる。このホテルに泊まらせてもらうからって。あと、美味い飯と服とか靴とかそういうの、だっけ?」
確かに実際部屋に入ってみると、高級感もあり、何より夜景が素晴らしい…。
一般人では中々宿泊する機会も無いだろう、と…それは理解できるとアカギは言う。
更に、そこで開催されるホテルディナーの会食と、それに見合うような
値の張る装飾品類も併せてプレゼントしてくれる豪華オプション付き…。
故に、それを報酬にと提示されれば、たとえ精神が磨り減ると分かっていても
大概の女性であれば釣られるのも致し方なかろう…と。
そのように解釈したアカギだったが、youはそれをなかなか大き目の声で否定する…。
「違いますよっ!!」
「!?」
「あ、すみません…大きな声出ちゃった…。」
「いや、いいけど…。」
「確かに、ホテル宿泊と、高いお洋服とか色々プレゼントしてくれるからって言われましたけどッ…めちゃくちゃ心がグラついたけど…ッ!でもやっぱり精神的に持たないと思ってお断りしました!」
「はぁ?じゃ何で依頼受けたの。オレもこんな依頼受けるつもりなんて無かったけど、銀二さんが『youが快く協力してくれるって言ってた』って言われたんだけど?」
「快くぁねぇです…!!」
「・・・みたいだな。」
語弊のある経緯をアカギに語られ、会食での緊張感で請負ったストレスが沸々と湧いてくるyou…。
「言われたんですよ、銀さんに…ウェイターの格好でバイトするアカギさんを見たくないか?って…。」
「何それ…。」
「だから、ホテルも服も靴も要らなかったですけど……アカギさんのウェイター姿は是が非でも見たくて……ッツ!!」
「・・・。」
「それで……つい…協力しますって…。」
「嘘だろ……。」
「…本当です…すいません…。」
「オレだって報酬弾むって言われたけど、面倒臭いから断ろうとしたのに……銀二さんに『その高級ホテルの会食(しごと)に嬢ちゃんを連れてくことになった。youが心配なら見えないとこに勝手に連れていくよりはオレの依頼を承諾して高額報酬プラス嬢ちゃん見守った方がいいんじゃないか?』って…しっかり弱み握られたんだけど、オレ…。」
「えー……えー…。」
「なんつー理由で依頼受けてんだよ、アンタ…。」
ペシッと額を軽く叩かれ「痛っ!」と小さく声を上げるyou…。
手で額を数回摩り、youは「でも…」と弁明をするつもりだったのだが、
それを遮るようにアカギが彼女の頬に手を添え、眉間に皴を寄せながら文句を零す…。
「分かっちゃいたけど……折角着飾ってる恋人がすぐ触れられる距離にいるのに、数時間お預け食らわされるの……結構キッツかったんだけど。」
「それを言うならわたしが!わたしこそが…!!!」
「・・・。」
「アカギさんのウェイター姿を目にして心は歓喜しているのに、目の前のおじさま達の話に目と耳を傾けなきゃいけない辛さ!!」
拳をこれでもかという程ぎゅぅうっと握り、熱く自分の苦悩を語る…否、性癖を語るyou…。
「これの何がそんなにいいの……オレには全く分からねェな…。」
「もう、全てが!白いワイシャツにネクタイしてるかと思えばベストを着用し、更にはトドメの腰に巻いたソムリエエプロン!」
「(分からん…。)」
そう、先程youが「現在進行形で報酬の為に会食を耐えて良かった」と物申したのは、
今現在、仕事が完了して部屋にやってきたアカギが未だにその給仕係の制服を着用したままだったから。
魅了のステータス異常に犯されているように、youはそのままベッドに腰掛けたまま、すぐ隣の制服姿のアカギに抱き着く…。
仕事終わりだからか、少し汗の匂いがするのもまた「働く男」という感じで良いな…などと思ってしまう程には
大分、恋人への欲目が大きく反映されていると言えるだろう…。
「you、さっきまでテーブルの片付けとかしてたから……汚れてるかもよ。」
「ん……いいです…。」
「この格好……そんなに好き?」
「好きです…!」
「この格好が好きなの?」
「好きです…!」
「スーツよりいいの?」
「スーツも好きですけど…ウェイターもとっても……ていうかアカギさんが何着ても似合い過ぎるので困るんですけど…。」
「はぁ??」
「そういう「いつもと違うカッコいい姿のアカギさん」を見れる機会があるんなら…!!って、依頼を受けたワケですし……だから、今後もそれを出汁に使われそう……正直断れる自信が無い…。」
「you…。」
「ん?」
「次回また銀二さんがこういうこと頼んできたら、ちゃんと断って。」
「えぇ……いや、断りたいですよ…でも…。」
また、自分の性癖を抉るような様相の恋人が見れるなら、あっさりと意志が折れて天秤が欲に傾くかも…と、
ごにょごにょと弁解染みた言葉を呟くyou…。
そんな彼女に、アカギは盛大に溜息を吐くと、抱き着いていた身体をべりっと引き剥して向かい合う…。
「本当に。危ないから。やめて。」
「!」
それは意外にも真面目な顔つきと声色での注意だったため、
瞬時にピリッとyouにも緊張が伝わる事となった。
「危ない…とは?」
「今日だって、あれ、遠縁の親戚とか言って嘘吐かせてただろ、銀二さん。」
「え、あ、はい…。」
「銀二さんもアンタ連れてって問題無い相手かどうかはちゃんと見極めて人選してるとは思うけど、万が一バレるってことも考えられる…その時のことを考えると怖いだろ…。」
「確かに…。」
「銀二さんや依頼主の情報を手に入れる為に、youが危ない目に遭うかもしれない。」
「万が一とはいえ……それは怖い…です。」
「だから、今後は安易に請け負わないでくれると嬉しいんだけど?」
「分かりました……もし依頼があっても、アカギさんに相談するようにしますね。」
「分かればいい。」
言いたいことが全て理解できた、と…youガアカギに向かって納得の表情ののち、笑顔を向けると、
彼もまたフッと笑みを作って彼女の髪を何度か撫でてやる…。
「ところで、わたしは会食をすることが銀さんからの依頼だったんですが、アカギさんには何故ホテルのウェイターを?」
「ああ…それは…。」
アカギいわく…。
まずは、前提として先に銀二が白羽の矢を立てたのはアカギではなく、カイジだったのだという…。
高額なバイト料を欲しているのは明らかアカギよりもカイジなのだが、
カイジは顔や指に傷もあるし、高級店で働くようなタイプの人種ではないし(失礼)、
何より緊張してヘマしそう…という理由で、銀二の相方である森田が却下したのだという。
(多分本当はカイジを銀二に近付かせたくないからだとアカギは推測…。)
それで、youを出汁に使われ、渋々バイトを承諾したアカギには森田と協力して、
高級ホテルのレストランに店員のフリをして潜入をし、部屋や卓に盗聴器仕掛けたり、
こっそり会食した証拠写真を撮ったりしてほしいという…まさに裏バイト、闇バイトを依頼されたという話だった…。
「とっ、盗聴器…と…とうさつ…?」
「まぁそこはね、森田さんがメインだったかな。ホラ、オレ髪色これだから目立つだろ?」
「え、あ、はい…まぁ。」
「そうなると逆に森田さんが普段から地味なのに、余計目立たず行動できるって感じでさ。」
「普段から地味って…。」
「だから逆に「お前は完璧に目立て」なんて言われるから…。」
「か、完璧に目立て…??」
「礼儀作法、所作、もてなしの方法とかさ。あとはフランス料理とワインの名称覚えたり…?マニュアルしこたま読まされて、試合放棄一歩手前までいった…。」
「うっ……わたしもそれ無理かも…。」
「学校の教科書だってマトモに読んだことないってのに…。」
「え?」
「ナンデモナイ。」
フイっと一瞬youから目を逸らしたアカギ…。
いつぞやのしげる少年の時期は、あまりお利口ではなかったのだろうと察するに余りあった…。
それはそうと、どれ程アカギが高級レストランの給仕係としての勉強をしたのかは分からないが、
確かに本日の会食の際の彼の動作は一つ一つ完璧だったとyouも思うし、
何より会食相手の社長も「白髪の彼は若いのに所作が完璧だね」と発言していたことを思い出す…。
「…という感じで、あちらの社長さんも銀さんもアカギさんのこと褒めてました。」
「そう……まぁ、兎に角……珍しく嫌な時間を過ごしたのは確か。」
「そうだったんですね……大人になってからのお勉強…大変でしたね!!本当に、お疲れ様でした。」
「まぁ、それもあるかもだけど、そこまで頑張った結果、当日目に入ってきたのが知らないオヤジに言い寄られる自分の恋人って光景だったって言うんだから、キレるでしょ、これは…。」
「え、え?」
「銀二さんも止めに入ってたみたいだけど……。」
「ああ、あの専務さんですか?そうなんですよね……多分お酒が入ったからかと思いますけど、後半結構くだけちゃってましたね…。」
「レストランから出て連絡先聞かれたりしてない?」
「大丈夫ですよ!そこは任務なので!身バレ避けなきゃなので何とか……銀さんに助けてもらって事なきを得ました!」
「そう…良かった。まぁ、一向に怒りは収まってないけどな。」
「えぇっ?!」
連絡先を聞かれた案件以外に何か彼の怒りのボルテージを上げるような会話があっただろうか?
そもそも、自分は受け答えに精一杯で、内容をしっかり覚えているかも怪しい…と、youは眉を中央に寄せる…。
「恋人いるのかって質問に、いないって言った。」
「だ、だって「いる」って言ったら社長さんが依頼主の会長さんと会った時に、そういう話して噛み合わなくなるかもじゃないですか…。」
「だから「夜は遅くまで街中で友達と遊んでるんじゃないか」とか「今度夜一緒に遊ぼう」とか言われてた…エロジジイめ…。」
「そ、そうでしたっけ……苦笑で誤魔化したかな?記憶に無いです…。」
「思い出したらイライラしてきたな……。」
「えぇ……あ!じゃあお風呂入ってさっぱりしたらどうですか?わたしもさっき入って…っ、ん……んむ…?!」
高級で広いお風呂で寛いで、自分も溜まったストレスが解消したという事実があったため、
同じことをするようにというアカギへの提案は急に前触れなく落ちてきたアカギからのキスによって遮られるに至った…。
「イライラする」というストレスの吐け口に選ばれてしまったことにより、
いつもより大分荒っぽく、無遠慮に口内を犯され、呼吸も制限されてしまう…。
「んっ……んんん!!」
「は…っ……口閉じないで……ちゃんと開けて。」
「ん…ぁ…だって、アカ…んん~!!」
「ん…ッ。」
数分の間口内をしっかりと蹂躙され、息も絶え絶えになったyou…。
最後に唇を開放された後はブハッと盛大に息を一度吐き、その後大きく何度も深呼吸をすることになった…。
「はぁ…っ、はぁ…!!」
「・・・。」
「あ、アカギさ……ん、急に…何…。」
「勃った。」
「ふ…っ?」
「無理矢理する気は全く無かったけど……止まんないかも…。」
「あ、アカギさんちょっと待ってください…!」
イライラした気持ちをちょっとぶつけてみたら
思った以上に下半身にきてしまったというアカギ。
勿論制止を求めるyouだったが…。
「自分の性癖のためオレを巻き込んだ落とし前、きっちり付けてもらうから」
「そ、でもその事情をわたしは知らなかったじゃないですか!」
アカギが自分の所為でイヤイヤ銀二の依頼を受けることになったのは最終的に申し訳なく思うが、
自分を出汁にアカギに協力を求めたことを知っていれば自分だって断るだろうと…
それを事前に知り得ないのだから、このような流れになってしまったのは致し方ないではないかと切実に訴えてみたものの…。
「知るかそんなこと……結果的にオレはアンタの所為で被害を被ってんだ。」
「だからそれは、ごめんなさいですって…!」
「you。」
「は、はいっ!?」
「オレ、さっき『目先の利益だけ見て飛びつくと、その対価は必ず高くつく』って言ったよな。」
「い、言いましたね。」
「じゃ、アンタが好きで、見たいって思ってたオレのウェイター姿……しっかり目に焼き付けなよ。」
「えっ?!は、はい、それは勿論……有難く…。」
「このカッコでyouのこと今から滅茶苦茶に犯すから。」
「はい……はい…ッツ?!」
「良かったね。アンタが好きな格好してるオレとえっちできるんだから……寧ろご褒美なんじゃない?」
「あ……あか…ごめんなさ……ゆ、ゆるして……さっきも言ったけど、次回からもうちゃんと必ずアカギさんに相談しますから…!」
「いや、もう手遅れ。」
「何を言っても絶対に手を止めないよ」と言い放ち、アカギはそのままyouの身体を押し倒し、
指を滑り込ませて絡め取り、身動きの自由を奪うと、
これがその開始の合図だとでも言うように、再びお仕置き替わりのキスを深く落とした…。
アンタが望むなら
どんな格好したっていいよ
(タダでとは言わないけど)
(やっぱりこの制服返さなきゃダメなんですね…。)
(まぁ、臨時バイトってことでレストランから借りてるものだしな…森田さんに渡さないと。)
(うう…なんて名残惜しい…!)
(やっぱり分からん……給仕係の格好の何がいいんだ……。)
(アカギさんには「好きな人にこんな格好してほしい」とか無いんですかぁ?それと同じですよ!)
(オレはどんな格好のyouでも好きだし…。)
(えー…わたしは色々ありますよスーツもウェイターも、和服とか…中華風な服とか…!)
(まぁ、普段とは違う新鮮さはあるよね。)
(そうですよ!!そういうことなんですよ!)
(だとすればオレはアンタの…。)
(お、そういうのやっぱあるんですね?何かな…どんな…)
(裸がいいけど…。)
(論外ッツ!!!)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*