step3_(日常編:アカギ)
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「たまにはこんな日もあるよね」
口では軽く言うけど
心はどうなんだろう
そんな事を考えた日のこと
アカギさんとわたし24
確かに、よくよく考えればそういう日に遭遇することだってあるワケで…。
「暇……雀荘行けば良かったな…。」
家主不在の家の中。
彼女の寝室のベッド…その上に我が物顔で寝転がり、その部屋の天井を見つめて赤木しげるは呟いた…。
そう、ここはアカギの家ではなく、youの家…。
いつものようにフラっと夕方過ぎに彼女の家に現れて、一緒に夕飯でも食べるつもりだったのだが、
本日に限ってはそれができずにいた。
というのも…。
「確かに、言われてみれば何日か前にそんなこと言ってたな……。」
「そんなこと」というのは、この福本荘202号の主であるyouが数日前にアカギに
「友人と2泊3日で旅行に行ってくる」と言っていたことである。
言われた当初は「そうなんだ、行ってらっしゃい」くらいの返事をしており、
いつ行くのか等は全く気にしていなかったアカギ…。
たった2、3日不在にするだけなので、せいぜい夕飯が一緒に食べられないくらいしか支障は無いと、
アカギもyouも思っていたので、特にいつ行くか、何処へ行くか、いつ戻るかなどは明確にしておかなかった。
だがしかし、いざその時になってみると、
家を訪問して「夕刻過ぎなのに何故家にいないのか?」という疑問と、
何かあったのではないかという心配を抱くことになり…。
そこで更に翌日になっても彼女が家にいないことで、ようやっと「あ、あの時言っていた旅行か」と判断するに至った。
そして、その事に気付いても翌日にはそれを忘れてまた夕刻に彼女の家を訪れて、
アカギは本日も「あ、そういえば」を繰り返したのである。
「全く……誰と何処をほっつき歩いて回ってんだか…。」
自分が気紛れに出掛けたり、代打ちに駆り出されて数日連絡も寄越さないで他県に行くことなどは棚に上げ、
家主不在の部屋の中、不法侵入した上で男は文句を垂れる。
よくよく考えてみれば一緒に旅行に行く「友人」のことも知らないし、
何処へ、どんな交通手段で行くかも聞いていない。
「(飛行機か?列車か?船って線もあるのか…?)」
「(そもそも何処に何しに行ってんだ、アイツ。)」
「(ていうか友人って…まぁ女だろうけど…いやでも、複数ならその中に男も含まれてるかもしれないのか…?)」
考えれば考える程、彼女の安否が心配になってくるし、相手が分からないことで、らしくなくモヤモヤとした気持ちを抱いてしまう…。
それが何とも自分でない気がして、腹いせと、自分への憤りもあって彼女のベッドで
フラストレーションを発散させたのだが、それは本人だけの秘密にするのだった。
・
・
・
・
そうして、3日後…。
なかなか遅めの時間に家に帰ってきたyou。
鍵を開けて家の中に入り、コンパクトサイズのカートはいったん玄関に置いたまま、短い廊下を抜けてリビングへ。
当然、自分が立った今帰ってきたばかりのため電気は点いておらず、
そこで初めてパチリとスイッチを入れて部屋の電気を入れた。
手に持ったお土産を適当な場所に置いて「フゥ…」と一息吐いたところで、急に自室へのドアがガチャリと開く…。
当然、本来であれば誰もいないはずなので、そのドアの音に心臓が跳ねるくらい驚くyou。
「ッ…?!!」
「あ、you。おかえり。」
「あっ……!かっギさ……!ビッッ…くりしたぁああ!!!」
「ゴメンごめん、youのこと出迎えようと思ってたら、うっかりアンタの部屋で転寝しちまった。」
「アカギさんに合鍵とか渡した覚え無いんで、出迎えも普通にできないし、わたしの部屋で転寝とかしてるの事態おかしいんですけど…?」
「それより何処行ってきたの?かなり遅かったじゃない。」
「あー、目一杯遊んできて現地最終の飛行機で帰ってきたので、遅くなっちゃいました。」
「飛行機だったんだ…無事でよかったね。」
「ん?はい、そうですね。」
「何処行ってたの?」
「日頃の疲れを取る為にちょっと遠出して温泉旅行に行ってきました。あ、これお土産です。」
「ふーん、温泉だったんだ……お土産どうも。」
合鍵の出所をまたもサラリと誤魔化されたが、軌道修正しても絶対に答えてくれないことは分かり切っているため、
もうそこに関してはツッコむのを諦めている様子のyou…。
流れるように普通の話題を振られたため、律儀にそれに答えてアカギにお土産を手渡した。
お土産のパッケージで彼女の旅行先を確認すると、彼はそれを近くのテーブルに置いて再び彼女に問う…。
「何人くらいで行ってきたの?」
「わたし含めて3人ですよ。」
「そう…じゃあ男はいないね。」
「い、いませんけど……何かちょっとカマ掛けられた感…。」
「フフ、正解。まぁ、とりあえずどこも怪我せず、無事に帰ってきて良かったよ。」
「そんなに心配してくれたんですか?なんか……ありがとうございます。」
色々とツッコミたいところはあれど、アカギの言葉や声色は本気で心配をしてくれていた様子が感じ取れ、
youは少し嬉しいのと、有難い気持ちで思わず笑みを浮かべた。
「…帰ってくるのを待つって、帰ってこないかもって思ったりするって、こんな気持ちなんだな…初めて知ったよ。」
「あら……?そういえば、数日留守にする場面って今回初めてかもですね。」
「別に他の誰かじゃきっと、こんな風に考える事もなかったんだろうけどさ……惚れた女だからかな、自分でも感情の起伏が、何かちょっと新鮮だった。」
「あはは、冷静な分析ですね。」
「……けど、あんまり何度も味わいたくはない感情だな、流石にこれは……フフ…。」
言って、彼女が不在だった2、3日の自分の感情の推移を思い返したのか、含み笑いを零すアカギ。
すると、今度はyouがそれを見てフフっと笑い、アカギの顔を覗き込んで言う…。
「アカギさんが何週間も帰ってこない時のわたしの気持ち、少しは分かりました?」
「!」
自分も同じように、ほぼほぼ毎日夕飯時に訪れていたアカギが、急にフラっと出掛けて数週間も連絡無く帰って来ない場面に遭遇した時、同じような気持ちを抱くのだと…。
そう、短い言葉で伝える。
アカギはそれを聞いて一瞬キョトンと目を丸くしたのち、徐々に口角を上げていく…。
「あれ…?それはつまり...オレに片時も離れてほしくないって愛の告白?」
「ハッ?!ちちち違いますよ!た、ただ無事なのか心配するって話です!!」
「ふーん……ま、それは一部オレも感じた事だし、理由としては良しとするよ。」
「一部って…。」
「それより、さ。」
一歩、足を動かしてyouに身体ごと近付くと、アカギはじーっと彼女の目を見つめて言った。
何か言いたげな表情を携えている目の前の男の視線に、小首を傾げるyou。
「?」
「ちょっとこっち来て、you。」
「何ですか…?」
あんまりじっと見られるので、顔や髪にゴミでも付いているのだろうかと思って、
言われた通りに傍に寄れば、突如として腕を引かれ、その身体はすっぽりとアカギの腕の中に納まることとなった。
「わっ!?わ、あ、アカギさんっ?!」
「ちょっと抱きしめさせて……あーー……うん、これこれ…。ちゃんと、無事に帰ってきたね。」
「う…はい……。」
「オレのyouの匂いと感触だな。」
「アカギさんのじゃないです…。」
「そのうちオレのもんになるから。」
「またそんなこと言う…!」
「でも嫌がらない?逃げないんだ?」
「それは…。」
そう言ってアカギの問いかけに少し言葉を詰まらせるyou…。
つまり、拒否の感情は無いのだと分かり、アカギは普段より少し嬉しそうな声色で彼女をからかう…。
「実はyouもオレに会えなくて寂しかったとか?」
「…っ?!」
「...え...。」
「ちが…っ、そん…っなことなぃくて!」
アカギとしては、ただ先程の軽口の延長で零した言葉だったのだが、
小さくビクッと肩と声を震わせた彼女の反応が正に「図星」といった反応で…。
アカギは大きく目を見開いて眼下の彼女の旋毛に向かって声を掛ける。
「何それ、本当?そうなの?寂しかったの?会いたかったの?傍にいたかったの?」
「もう!そんなに畳み掛けないでくださいッ!!」
そう言って一度、ちょっとだけ強めにアカギの胸板を叩いたyou。
声色とその行動で怒りを表現しようとしている努力は感じ取れるものの、
如何せん発言と行動がちぐはぐなので、否が応でも本心は見抜かれてしまう…アカギには。
「クク…全然、怒られてる気がしねぇな…。」
「~ッ!!」
アカギに心理をまるっと見抜かれ、何とも愉快そうに笑われてしまい、
ますます羞恥心で顔を上げられなくなるyou…。
「…you。」
「...。」
「顔上げてよ。」
「いやです。」
「どうして?」
「何かだって多分……凄い顔、してるから。」
「見たい。」
「見せません。」
「じゃあこのままだよ?」
「…その方がいいです…。」
「オレが抱きしめたままでもいいの?」
顔を上げて照れた顔も見たいが、このまま自分の腕に抱かれているのも「いい」と言ってもらえるのは、
それはそれで嬉しいため、アカギは彼女を抱きしめる腕の力を僅かに強める…。
それに呼応するように、youも行き場なく下に落とされていた腕をアカギの胸に添えた…。
「……良いです、だって……アカギさんの心音、聞こえるから…。」
「...。」
「わたしのと違って……バクバクしてない……穏やかで一定というか…何か安心する音が聞こえる、から。落ち着く。」
「そうなの?」
「うん…。」
「ずっと聞いてたら眠くなっちゃうくらい。」とまで言うので、少し驚いてしまうアカギだったが、
それをまるで逆手に取るように、再び彼女の心拍数を上げようと画策する…。
「…youはバクバクしてんだ?」
「…アカギさんの所為でしょ。」
「…なら、胸触って確かめていい?」
「・・・。」
背中に回していた腕をスルリと移動させ、ちょっとばかりいやらしい手つきで腰のあたりを撫でたアカギ…。
折角穏やかな雰囲気になっていたのに、ぶち壊しである…。
故に、youもまたいつものように一瞬で表情を怪訝な顔つきに変えると、ようやっと少し身体を離して顔を上げた。
「あ、顔上げた。」
「アカギさん…。」
「ん?」
「変態。」
正に残念なイケメンを見る顔でアカギを見つめるyou…。
ある意味でお決まりのパターンなのかもしれない…。
「変態っていうかさ…男なんだから、好きな女相手なら欲望に忠実にもなる。」
「そういうのは恋人になった相手になら言っていいやつですよ?」
「だから恋人になってっていつも言ってるんだけど??」
「ぁ…。」
心の中で咄嗟に『しまった…また藪蛇トークを振ってしまった!!』と叫んだ時には既に全て遅し…。
これでもかという程悦に入った表情のアカギが、今一度youの腰元あたりに手を伸ばし、正面から身体を密着させる。
「あ、アカギさん…離し……ぐっ、か、固い!!」
「逃がすかよ。」
「そ、そうだ!お土産一緒に食べません?お茶入れるんで!!」
「要らない。後でいい。ねぇ、だってオレと離れて寂しかったんでしょ?会いたかったって言ったじゃん。傍にいたかったって。」
「いいい、言ってません!!」
「でも目は口程に物を言うってヤツでしょ。ていうか今日は目も見てなくて反応でも分かるくらいって……割と結構相当っていうか…。」
「ワーーーッ!知りません!分かりません!」
「抱きしめても嫌がらないって、もうオレのこと受け入れてるんだしさ……いいじゃない。観念しなって。」
「観念って何ですか!離ーしてー!」
「心臓バクバクしてるかどうか胸触って確かめりゃオレのこと好きか分かるって。」
「セクハラ反対ぃいい!」
「あ。」
「ん?」
「あー…。」
「!!」
先程からのお互いの無自覚の甘い問答と、
密着した体制で逃げようと暴れたことが仇になったとも言うかもしれない…。
youの下半身辺りに感じた違和感に意識を向ければ、
アカギのそれは次第に質量と硬さを増して彼女の身体にめり込むようにして主張し始めた。
「っ……変態ッツ!!」
「アンタの所為…。」
「何で!」
「youがオレのこと好きって言うから。」
「言ってませんよ?!」
「口で言わなくても分かる…。」
「それアカギさんの勘違いじゃないですか。」
「勘違い?冗談だろ。」
「冗談じゃ……っ…んむ!」
彼女の言葉を強制的に制止させたのは、アカギの唇で…。
彼は顔を傾け、突如言葉を噤ませるキスを落とすと、彼女が騒ぎ出さないうちにそっとその唇を離した。
「ぁか…!」
「ダメだよ、それ以上は。」
「なん…。」
「オレだって男だからさ……これでもかなり譲歩と我慢してんだよね。」
「!」
今だってかなりギリギリの理性で持ってる…と、アカギはすっとyouから視線を逸らす。
「寂しかったとか会いたかったとか、抱きしめられるの嫌じゃないとか心臓バクバクしてるから胸触っていいとか言われた後で、それでもやっぱり好きじゃないとか言われたら、流石に…。」
「アカギさん……(胸触っていいとか一言も言ってないけど)。」
少し切なげな表情を浮かべるアカギに、youの心臓が思わずドキリと跳ねる…。
愁いを帯びた表情が何とも色っぽく感じてしまったのと、
売り言葉に買い言葉を発して、彼の心情を傷付けてしまうところだった、というちょっとした罪悪感…。
ごめんなさい、と素直に謝ろうと眉根を寄せて口を開いたのだが…。
「ブチ切れて死ぬほど犯すかもしれない…。」
「ごめんなさいアカギさん、本当にごめんなさい。」
今にも土下座する勢いで精一杯の謝罪をし始めたyou…。
何度も何度も(まるでお経のように)謝るので、流石に途中で「分かったわかった」とストップを掛けた…。
「3割冗談だよ。」
「7割本気…だいぶ大きい…。」
「まぁね。」
「アカギさん…。」
「ん?」
「色々ごめんなさい…出掛けて心配してくれてたこと、嬉しかったです。」
「そうだね……まぁ、それがやっぱり一番大きいかもな。」
「うん、ですよね……なので、本当にありがとうございます。」
未だ抱きしめられているアカギの腕の中で顔を上げ、はにかむように感謝の意を伝える。
アカギもまたフッと僅かに口角を上げ、小さく頷く。
「you。」
「はい。」
「…おかえり。」
「…ただいま、アカギさん。」
これで一件落着…。
気付けば下腹部に当たっていたアカギのソレも落ち着きを取り戻している様子…。
いつものように腕を解放され、後はお茶でも飲みながら旅の話をし、いい時間になったら解散…。
そんな流れになるだろうと踏んでいたyouだったが、
何故か解かれない腕…解放されない身体…。
何故だ…と、今ひとたびアカギを見上げると、間髪入れずにキスが落とされた。
「んっ…?!」
「・・・ん。」
アカギとしてはもっと本格的に彼女をキスで蹂躙したかったのだが、
そうすると、今しがたの問答の繰り返しになること待ったなしだろう…と、最低限の好意に留めておいた。
唇が離された時間を思えば、それに関してはyouも何となく察した様子で、
真っ赤な顔をすれど、彼を怒鳴るようなことはなく…。
「また…した…。」
「詫び料代わりに許してよ。ま、何回シても足りないけどね。」
ちょっと悲しませたり(本人多分悲しんではいないだろうが)、怒らせた分のお詫びとして許してと言われると、
youもそこは強く抗議はできず…。
「色々大変なことになると分かったから…今度から、ちょっとの間家を空ける時はアカギさんには伝えますね…。」
「ククク……そう、大変だったね……。」
「(誰の所為だと…!)」
「オレもそうしようかな。」
「え。」
「安岡さんとかに駆り出されたりした時とか、河岸変えて遊び(博奕打ち)に行く時とかさ……アンタに言っとこうかな。」
「アカギさん…。」
「心配するんでしょ?」
「うーん……うん、心配しますね…。」
「旅先で女といるんじゃないかとかさ…。」
「・・・。」
「あれ?」
「えっと…。」
「you…?」
「そう、いう時もあるんですか…?」
「…!」
目は口程に物を言う…。
先程「目も見てなくて反応でも分かる」というような話をしたが、
実際表情で見てみるとこんなにもハッキリと分かるものなのかと、アカギは一瞬息を呑む…。
眼下の彼女は、大変動揺した表情で…。
まるでアカギに「違うって言ってほしい」と懇願するかのように自然と眉根が寄り、瞳が揺らいでいた。
もっとその表情を切なくさせたいという衝動と加虐心に駆られたものの、それをグッと堪えれば、
その先に待つのはもう歓喜の一択…。
「(それ嫉妬だよね……you、もうオレのこと好きじゃん…。)」
「アカギさん…?」
「(って言いたい…すげー言いたい…。)」
「あの…。」
「あるわけないデショ……おれ、youしか要らないし。」
「・・・。」
「なに?疑ってる?」
首をフルフルと横に振って、youは困ったような表情を浮かべると、
そのまま、アカギの胸板にポスっと顔を預けた。
「アカギさん…。」
「ん?」
「ごめんなさい。」
「なにが?」
「自分でもよく分かりません…でも、色々。アカギさんをモヤモヤさせてることは理解…してるので…。」
「そう思うなら応えてくれたらいいのに。自分を捨てちゃいなよ。」
「そうも思う時、あるけど……。」
「お、意外だな、そういう気持ちもあるのか…。」
「ある。けど………どうしてでしょうね…アカギさんのことは1から10まで突き詰めないといけないことがあるとしたら、その全部に自分の気持と折り合い付けないと絶対…。」
「絶対?」
「絶対破滅すると思うんです。」
「あーーー…。」
指摘され、正に我が生き方のその身に覚えあり…といった反応をしてしまうアカギ…。
そういうことであれば矢張りまだ、もう少し…。
彼女が自分のものになるには時間が掛かりそうだと理解する。
「理解はした。」
「はい…。」
「けど、1つだけいいか?」
「?」
「オレはyouとなら破滅したっていいって思ってる。」
「は…っ?!」
「ククク……いいね、そういう博奕も面白い。」
「はぁ?!」
「だからさ、安心して落ちておいでよ。」
「!」
「オレのところに」と告げ、軽く彼女の額にキスを落とす。
顔を離せば、呆れたように口を開いたまま呆けるyouの姿…。
「ますます怖くなりましたが…?」
「あらら。」
「でも、うん……どうあってもアカギさんが折れないっていうことは分かりました。」
「当たり前じゃん…。」
「わたしは途中でアカギさんの狂気に飲まれないよう、全力で自己防衛します。」
「じゃあオレは全力でyouの心を掻っ攫いにいけばいいんだな?」
「・・・。」
「・・・。」
「あの……それって…。」
「うん…。」
「今と変わらなくないですか?」
「変わんねェな。」
はた…と、現状に気付き、お互いに顔を見合わせると、
くすぐったそうに笑うyouに釣られて、アカギも口角を上げる…。
「アカギさん。」
「ん。」
「わたし、もう少しだけ自分のペースでアカギさんと一緒にいてもいいですか?」
「はいはい……もう、これは仕方ねェな…。」
「あ、じゃあ早速なんですけど…。」
「あ?」
「お茶入れるんで、お土産一緒に食べません?」
「…お茶、ちょっと渋めがいい。」
「はい!」
そういえばずっと抱きしめたままでいたね、というようにパッと彼女を拘束する腕を解いたものの、
そこからスルリと離れて行ったyouのぬくもりの消失が大きくて、秒で彼女を引き戻したくなるアカギなのであった…。
寂しかったし
会いたかったし
傍にいたかった、でしょ?
(旅行、どうだったの?)
(楽しかった…というか、癒されました!日頃の疲れが昇華した~って感じです。)
(いいね、温泉……おれも行きたい…今度一緒に行こうよ。)
(いいですけど…。)
(え、いいの?一緒に温泉入ってくれんの?)
(いや、一緒には入らんですけど…。)
(いや、一緒に入って一緒の布団で寝るだろ?)
(怖いこわい、何言ってんですか?!)
(別に怖くないだろ。)
(怖いですよ!!)
(一緒の布団で寝るとか、別に今とそう変わらないじゃん)
(そもそも前から許可してないわ!!)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*