step X_(番外編)
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今日のご飯は何にしようか…と
スーパーへの行き道で
ぼーっと考え事をしながら歩いていたところ
ドン!と人にぶつかってしまった夕刻…
アカギさんとわたし(番外編)
「ああっ!す、すみません、すみません!大丈夫ですか!?」
「うぅ…。」
ぶつかってしまった相手はよろけた後、道に倒れてしまい、
youは慌ててしゃがみ込んで謝罪をし、相手の様子を確認する…。
「ああ、大丈夫…少しよろけただけだ…。」
それは、大変ほっそりとした白髪で色白の老人で、失礼ながらも不健康そうなその体型と顔色を見てyouはサーっと顔を蒼くする。
おまけに起き上がろうとする彼の傍には白杖…顔をしっかり覗けば薄いサングラス越しに色の褪せた眼球が見て取れたため、
youに更なる罪悪感が圧し掛かる…。
「あ、あ…すみません……わたし、ぼーっとしてて!!お怪我は無いですか?立てますか?!」
「・・・。」
「あの…?」
「ククク……いや、大丈夫。そんなに泣きそうに心配しなくても、ワシはすぐにおっ死んだりしねェよ。こういうことは割に多い。」
「!」
盲目であるが故、このようにぶつかってよろけたり、倒れたりすることはざらにあるから、そこまで心配しなくても良い、と逆にyouを気遣ってくている様子の老人…。
白杖を支えに起き上がる彼をyouも横から支えてやり、立ち上がった老人と向かい合った。
「わたしの余所見が原因で、本当に申し訳ありませんでした…。」
相手の目に映らなくとも、youは正面から深々と頭を下げて今一度改めて謝罪する…。
気配や声の遠近、靡いた彼女の髪の香りや、動いたことで起こった風…そういった様々な要因から
彼女が深々頭を下げていることなどが分かるのだろう……老人はふっと口角を上げて「構わんよ」と言った。
「あまり気にせんでいい、もう顔を上げなさい。それよりアンタ…その…。」
「!はい……あ。」
「?」
見えていないはずなのに、自分が頭を下げているのが分かるのか…と少し驚いたyou。
第六感か、視覚以外の五感が研ぎ澄まされているからか…などと思いながら顔を上げようとした時、
彼女の視界に地面に落ちている1つの麻雀牌が目に入ってきた。
ひょいっとそれを拾い上げ、youはそれが老人の持ち物ではないかと問うてみる…。
「あの…今地面にこれが落ちていたんですけど……これは貴方のものですか?麻雀牌のようなんですが…。」
「?!」
彼は微かに息を飲んで、驚いたような反応をした気がしたのだが、
そんな様子とは裏腹に、ハッキリと否定の言葉を発した。
「いいや、ワシのものではない。」
「そう…ですか?」
「・・・。」
「・・・。」
少しばかりの沈黙ののち、老人が薄く唇を開く…。
「麻雀牌、か……懐かしい……昔は牌の字を指に刻むのかという程、感触を覚える為に牌を持ち歩いていた時期もあったが…。」
「え!」
「遥か遥か昔の話だ……今はもう覚えてしまって必要ないし、もう…とうの昔に本格的な勝負麻雀はやめてしまったからそんなものを持ち歩くことはない。そう、だからそれはワシの牌ではないよ。」
「そうなんですか……ん、ビックリです。」
「何を驚くことがある?盲(めくら)の爺が麻雀を打つのは想像できんか?」
「いえ、そんなんじゃなくて……。」
怒りではなく、ただただ音の抑揚無く自分を揶揄する言葉を発する老人に、
youは素直に真面目な声色で自分が驚いたという原因を話し始める。
「わたしは麻雀全然分からないんですが、何故かわたしの周りには特別、麻雀が得意な人や大好きな人が多くって、貴方もそうなのかと思ってビックリしたんです。」
「そうなのかい…。」
「はい。普通ならこの牌も「わたしのじゃないです」って言うところなんですが、もしかしたら…わたしの知人のものが、わたしのポケットに紛れちゃったのかもって思うくらいには…。」
「ははは、そりゃ確かに特別得意か、大好きか…だな。」
「そうでしょう?」
くすくすと笑う声色はとても女性らしく、野花のような印象を目の前の男に与えた…。
「知り合いはどの程度麻雀をやるのかね?」
「……そうですねぇ、数人いますけど……一番麻雀のイメージが強い人は、週に何度も雀荘に行ってるみたいで……凄く強くてこの辺りでは有名だそうです…。」
「ほう…。」
「何か、たまに危ない人達からも声を掛けられてるみたいで…麻雀ってそういう感じなんですかね…そんな事あるんですかね…。」
「成程…そりゃあ……本当に強いみたいだな。」
「(あるんだ…)」
そこで「そんなことは無い」とか「危ない人とはどんな人だ」とでも言葉を返されればよかったのだが、
まさかの肯定にyouは若干口元が引き攣るのであった…。
「だとすると、さっきから……アンタから匂う微かな鬼の子の気配は…オレの勘違いじゃないのかもしれないな。」
「??」
小さく「鼻が鈍ったのかと思っていたのだが…」とボソボソと呟いたかと思えば、
老人は突如としてフッと顔を上げ、youに語り掛ける。
「だがね、お嬢さん……鬼に、魅入られてはいけない。」
「え?」
「いや、もう魅入られとるのかもしれなんだが……。」
「???」
「鬼に魅入られてワシが手放したものは麻雀というただの行為に過ぎんが、アンタが失うものは心…それは一度奪われたら二度とは戻ってこん…。」
「・・・。」
「ワシには生き抜くための術のものではあったが、生き残るために手放した……魅入られ、心を攫われてしまう前に。」
「あの…?」
ただの麻雀好きな知り合いの話をしていたはずだったのに、何故か深刻な面持ちで持論のような語りをされ始めたので、
youはどう反応すればいいのかと、オロオロしつつ目の前の男性に向かって小首を傾げる…。
だが、彼の独白は止むことは無く…。
「かくも美しく恐ろしい闘牌を追い求め、焦がれ、妬み、想い続ける…それは何と惨い道行きか、と。」
「は…ぁ…?」
「おっと、すまなんだ……ちょいと昔を思い出してしまった…今のはワシの完全な独白、気にせんでくれ。」
「そうなんですね…。」
気になる言葉や気になる単語はいくつもあった気がするが、それを彼が自分の独白だと言うのなら
あまり気にはしないでおこうと思うyou…。
深刻な顔で語っていた表情を解き、目の前の老人の口角が少しだけ穏やかに上がると、
次いで出たのはyouへの質問であった。
「名前を教えていだけるかな、お嬢さん。」
「え?あ、はい……youと申します。」
「そうかい…良い名前だ。ではyouさん、ワシはこの辺で……ぶつかってくれてありがとう。アンタが運んできた酷く懐かしい香りのお陰で、あの頃の焦燥感を鮮明に思い出せた…苦い記憶だったとしても、何とも懐かしい思い出だ。」
「あの…それはどういう…???」
「……これから先、アンタが選ばれようが選ばれまいが、たとえ心を明け渡してしまったとて…それでもワシはアンタの幸せを祈っておくよ。」
「…えっと…よく分かりませんが、ありがとうございます……あの、よければわたしもお名前、お伺いしてもよろしいですか?」
「おや…フフ……ワシは名乗るほどの者ではないよ…気に止めんでくれ。」
ぼーっとして、ぶつかってしまった上に相手を転ばせてしまったという事は謝るべき内容であるにも関わらず、
不思議なその男性は彼女に本心から感謝の言葉を述べているようだった…。
その上、これからの自分の幸せを願っているとまで言うのだ…。
そんな相手に「名乗るほどの者ではない」と言われて、彼女はそのままスルーすることを良しとする人間ではなく…。
「あら……そんなことないです。」
「?」
「だって、おじ様はよく分かりませんが、わたしの幸せを祈ってくださるんでしょう?だったら聞いておかないと…名乗るほどの者じゃないなんて…とんでもないです。」
ふわりと微笑み、名前を教えてほしい理由を伝えれば、薄いサングラスのレンズ越しに盲(めし)いた彼の目が見開く…。
「なんと…まぁ…。」
「?」
「美しい言葉を紡ぐ子だ。」
「えぇっ?!」
「お嬢さんの言葉なら、鬼の子にも届くのやもしれないが、さて……どうだろうか。」
「???」
「ワシの名は市川。」
「イチカワさん、ですね!ありがとうございます。」
「……そうさな…「盲目の市川」とでも名乗っておこうかね。」
「何だか…わたしの心がぽっきり折れちゃって、目の前が真っ暗になったら…市川さんが幸せになるよう、道行を案内してくれそう。もう会えなくても市川さんのことは忘れない気がします、不思議ですね。」
「これはこれは……捕らわれたのはアンタでなく、鬼の子の方かもしれんのか……驚いた。」
「あの……先程から仰っている…鬼の子って…?」
「…それじゃあ、この辺りでワシは退散するとしようかね……束の間の邂逅ではあるが、知り合えて良かったよ、youさん。」
「ふふ、わたしもです。」
最後に穏やかな挨拶を交わし、歩き出した市川をその場で手を振って見送るyou…。
曲がり角のところで彼は一瞬立ち止まると、顔を少しだけyouの方へ向かって小さな言葉を発した。
「アカギによろしくな、youさん。」
「え…っ?!!」
聞き知った知り合いの名が、初めて会った老人の口から飛び出し、
youは驚きで目を丸くした後、慌てて駆け出して角を曲がって見えなくなった彼を追った。
「イチカワさん、今、アカギって…?!あっ!っていうか麻雀牌!これ!!………いない…。」
彼が角を曲がって、そんなに時は経っていないはずであるのに…。
追いかけて曲がり角を曲がった先にはもう既にどこにも市川の姿は無く…。
「…不思議な人…。」
真実、そう思った言葉が口をついて出てしまうのであった…。
・
・
・
・
その日の夜…。
夕飯は既に終えた後だったが、雀荘帰りにしては早めな時間にアカギがyouの家に訪れたので、
彼女は夕方に会った老人の話を彼にすべく、まず先に…と、ポケットの中からその時に拾った麻雀牌を彼に差し出した。
「アカギさん、これ…アカギさんのものじゃないでしょうか?」
「何…麻雀牌…?」
「はい…。」
「何も書かれてない、白の牌か……どうしたのこれ?」
「実は…。」
と…。
youは夕刻にスーパーへの道のりで盲目の老人にぶつかってしまい、転ばせてしまったことと、
その時にこの麻雀牌が地面に転がっていたことを話した。
「それで、そのおじいさんに尋ねてみたんですが、お爺さんは「昔はよく手に持って歩いていたこともあったけど、今はそんなことしないから、自分のではない」ということだったので…。」
「ふーん、それでオレのかと思ったって?」
「1つだけ紛れるなんてことがあるのか分かりませんでしたけど……お爺さんがそれはもうハッキリ「違う」って言うので…。」
「でもこれ……よく見りゃあちこち傷だらけじゃん…こことか結構傷深いし…。」
「そうなんですか?」
「ああ、こんだけ分かりやすく傷付いてるのは文字通り「傷(ガン)牌」防止のために廃棄モンだよ、多分…。」
「がんぱい…?」
「付いた傷で牌を判別してイカサマするんだ。」
「え、すごい…。」
「だから、ここまで年季の入った牌は雀荘なんかじゃ使われないって事。」
「じゃあ、この牌はやっぱり…。」
「そのじーさんのだったんじゃない?」
「そっか…。」
「多分、いや確実に捨てられちまうと思うけど、一応昨日一昨日とかに行った雀荘に尋ねてみようか?」
「えっ?!捨てられちゃうんですか、これ!」
「ああ。」
「それなら、これ……わたしがいただいておきます!お守りにします!」
「はぁ??」
何で年季の入った傷だらけの麻雀牌をお守りになどするのか…と、珍しく素っ頓狂な声を上げたアカギに、
youはそうしたいと思った理由を話し始めた…。
「話してた事は何言ってるか全然分からなかったけど、おじいさん、わたしの幸せを願ってくれるって言ってくれたんです。」
「待って、全然意味が分からない。」
「何て言ったらいいのか……何かとりあえず、わたしの希望が叶っても、叶わなくても、わたしの道行が幸せであるよう祈ってくれるんだそうです!」
「何でそんな話になったのさ。」
「さぁ……何か、わたしの体臭で懐かしい出来事を思い出したからって、感謝されたから…?」
「何それ気持ち悪くない…?」
女の匂い嗅いで「ありがとう」って…と、若干引き気味になるアカギ…。
youは「そういう感じの人じゃなかったですよ!」と少しだけ頬を膨らませる…。
「よく見るとこの年季の入った「白」の牌って、市川さんみたいだし……大事にしよう。」
「え……今、なんて?」
「え?」
「白の牌が誰みたいだって?」
「あっ、ええ……今日会ったお爺さんです。自分の事は「盲目の市川」とでも呼べって。」
「まさかだろ…。」
「そういえば、去り際に「アカギによろしく」って……聞こえた気がしたんで追いかけたんですけど、もういなくなっちゃってて……聞き間違いかもって思ってたんですが、そうじゃなかったんですね?それなら、この白の牌、市川さんに返せそうですね!」
「いや……オレはその男の事を多分知ってはいるけど、今何処で何してるのか、生きてるのかどうかすら知らない。」
「え…。」
「アンタが会ったのがオレの知ってる男なら……まだ、しぶとく生きてるんだろうね。」
「しぶとくって…!」
「ハハ…そりゃ確かに、随分懐かしい記憶だわな…。」
「わたしが会った市川さんが、アカギさんの知ってる方だとして……いつお会いした方なんですか?2人して随分懐かしい…なんて…かなり前なんでしょうか?」
「ん、ああ……オレがまだガキの頃だよ。それこそyouがいつも写真見て会いたい会いたい言ってる中学生の頃くらい。」
「なんと!」
「そん時に麻雀で対戦してさ……懐かしいな。」
「もしかして…………アカギさん、市川さんに勝ちました……?」
「・・・ああ。」
「!!」
『アンタから匂う微かな鬼の子の気配は…オレの勘違いじゃないのかもしれないな』
『だがね、お嬢さん……鬼に、魅入られてはいけない』
『鬼に魅入られてワシが手放したものは麻雀というただの行為に過ぎんが、アンタが失うものは心…それは一度奪われたら二度とは戻ってこん…』
『かくも美しく恐ろしい闘牌を追い求め、焦がれ、妬み、想い続ける…それは何と惨い道行きか、と』
『……これから先、アンタが選ばれようが選ばれまいが、たとえ心を明け渡してしまったとて…それでもワシはアンタの幸せを祈っておくよ。』
今日出会った際に市川がぽつぽつと呟いていた言葉を思い返す…。
そして思う…。
自分が纏っていた微かな、このアカギの香りを市川は嗅ぎ分け、
確信は無いにしてもアカギのことを思い出して懐かしく思っていたのであれば…。
そうであれば「鬼の子」とは、よもやこの「赤木しげる」のことなのではないだろうか…と…。
「あのじーさん、他に何か言ってた?」
「うーん、色々仰られていたんですが、独白で呟かれているような感じだったので、よく分かりませんでした。」
「そう?てっきり呪いの言葉でも吐かれたのかと思った。」
「どんな関係性?!」
「ハハ、冗談冗談…。」
「ああ、でも今思うと「多分」なんですけど……。」
「?」
「ふふ、自分みたいに心を奪われちゃうから、アカギさんには注意しろ、って言ってたと思いますよ。」
「・・・。」
物凄く端的に言えば、ですが…と言葉を続ければ、くすっと笑った彼女とは相反して、
目の前の男は一瞬酷く寂しそうな顔をした後、長い睫毛を伏せた…。
「アカギさん…?」
「・・・。」
「?」
「…何でもない。」
「何か、寂しそうですね……市川さんに会いたくなっちゃいました?」
「オレは一局くらい打ってみたいんだけどね…あの人は絶対戦ってくんないよ。」
「そうなんですか……そっか…だからちょっと寂しそうなんですね、アカギさん。」
「別に寂しいワケじゃないけど……まぁ、少しだけ残念かもね。」
「あの人麻雀強かったし」とポツリ呟いた言葉を聞くだけでも、
今まで出会った中で、アカギにとって大変印象的な人物だったことが窺い知れた。
気付けばyouは手に持った白の麻雀牌を近くのローテーブルに置くと、
無意識のうちにアカギの頭に手を伸ばし、ぽんぽんとその頭を撫でており…。
何度かアカギの真白な髪を揺らした後ではた……と、我に返って彼の頭を撫でる手を止めた。
「ハッ…?!」
「you……何してるの?」
「え、いや……あ、ごめんなさい、つい手が…。」
「いや、別にいいんだけど…。」
「よく分かりません……無意識に手が……。」
「もしかして、慰めようとしてくれたの?」
「そうかも……。」
「フフ……ありがと。」
ふっと口角を綺麗に上げて、youが起こした意外なアクションを受け入れるアカギ…。
手を払われることもなく、撫でることを享受されてしまったので、
手を引っ込めようか迷ったが、彼女はそのまま青年の頭を撫でることにした…。
「ねぇ、you…。」
「はい?」
「オレ、そんなつもり全然無いけど……そんなに寂しそうな顔してた?」
「ど、どうかな……一瞬だけですけど…そう思えちゃったかな…?」
「ふーん……。」
「・・・。」
「you。」
「はい…??」
「じゃあ、そういうことにする。」
「はい??」
アカギの意味不明な言葉に、頭に疑問符を浮かべて小首を傾げるyou。
すると、頭を撫でていた細い手首をがっしりと大きな手で掴まれ、そっと下に下ろされる…。
「あの…アカギさん…?」
「よく分かんないけど、オレは寂しいらしい。」
「いや、そういう風に見えたってだけで、寂しいかどうかはアカギさんが思う事だし……しかも別に「そんなつもりない」って…。」
「でも、寂しがったらyouが慰めてくれるんだろ?」
「あ、やばい、頗る嫌な予感。」
普通であれば「何言ってるか分かりません」という会話内容なのだが、
ことこの男に限っては彼女の善意を何もかも自己都合に添えようと画策してくることをyouは悟っている。
それ故、掴まれた手を解いて距離を置こうと身を引くも、それは叶わず…。
それどころか、掴まれた手をぐいっと引っ張られ、あっという間にすっぽりとアカギの胸の中に身体が収められてしまった。
「あ、アカギさん!」
「ねぇ、you…市川さんに会えないから、オレ寂しいみたい。慰めて。」
「あ、頭撫でてあげたじゃないですか!」
「クク……冗談でしょ、あんな子供騙し……。」
「こっ、子供騙し?!」
「アンタもオレもいい大人なんだから……男の慰め方なんて決まってるじゃない。」
「し、知らない!分からない!離してください!!!」
「つれないな、you……無意識に頭撫でるくらいオレの事心配してくれたんじゃなかったの?」
「そっ…それは!」
「あらら……………そうなの?」
「だっ……だって……アカギさん、いつもあんな顔、しないじゃないですか…。」
「どうだろう、するのかもしれないよ?」
「う、うそ…。」
「youがオレ以外の男と一緒にいるトコ見た時とか、寂しい顔するかもよ?」
「何ですかそれ……アカギさんとほぼ一緒にいるのに、そんな場面ないでしょ…。」
「え。」
「ん?」
「素で言ってるのか…。」
「??」
「あー……もう……ホント……無理。」
「わ、わっ?!!」
からかい倒すつもりのアカギだったが、酷い殺し文句を素で返されて予想外のダメージを食らった様子…。
抱きしめていた腕の力を強めると、男はそのまま彼女の身体ごと床に身体を倒した。
「ちょっとアカギさ………ん……ん、んん…ぇ…ぁ…?!」
「・・・分かったら身動きしないで。」
横になって抱きしめられている体勢で、しかも隙間無く密着しているのだが、
アカギが態と自分を掻き抱いて倒れ込んだ理由が、
自分の腹辺りに押し付けられているデニム生地越しの彼の雄の象徴だと分かってしまったyou…。
どうしてそんなことになったのか、原因を作った当の本人は全く理解していないため、
何とか身体を離してもらえないかと提案する…。
「や……あの……そこはわたしを開放するという逃げ道も…。」
「それはイヤ。」
「で、でも…。」
「傍にいて。」
「えー…。」
「寂しいから傍にいてよ、you。」
「っ~~!狡いですよそれ!寂しくないのに、嘘吐ばっかり!」
「嘘ではないけど正しくはないか……あー、そうだ「寂しくなるから、傍にいてよ」だ。」
主に身体が…と脳内でのみ呟いたアカギなのであった…。
そんな思惑を察してか、youはぐぐ…と、アカギの胸板を押してみるもびくともせず…。
態とらしくグイグイ押し付けられてくるアカギの下腹部をどうしても意識してしまい、
youは羞恥心で顔を真っ赤にして、涙目になってしまう…。
そんな彼女の反応を見て、もう我慢ができないんですけど…と、アカギが顔を近付けた刹那…。
「いてッ?!」
「?!」
「何…??」
それはテーブルの上から急にアカギの頭に落下し、コロリと床に転がった。
「ぁ……いちかわさん…!」
「………くそジジイ…。」
別段テーブルにぶつかったわけでもなく、まるでアカギのおイタ(という名のセクハラ)を叱咤するように、
テーブルから転げ落ちた「白」の麻雀牌を2人して驚いた表情で見つめるのだった。
その闘牌は 鮮明に
(この白はやっぱり御守です!これずっと持ってたらアカギさんからのセクハラに効果があるのでは!?)
((絶ッ対隙を見て捨ててやる。))
words from:yu-a
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