step5_(恋人編:アカギ)
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※IR法案は可決されましたが、カジノ併設ホテルはフィクションです。
「祝賀パーティー…?」
「そうっ!」
とある休日の午後、坂崎邸宅にて…。
アカギさんといっしょ22
「パパの仕事の関係なんだけど…その日、パパが別の取引先の人と接待ゴルフに行くみたいで、名代として出席しないといけなくなっちゃったの…。」
「そうなんだ…。」
「一人じゃ心細くて…できればyouちゃんに一緒に付いてきてほしくて…。」
お願い!と、両手を合掌させてyouに同伴を依頼するのは美心…。
彼女の父である坂崎孝太郎の仕事で繋がりのある、某ホテルのグループが新しくホテルを建てることになったため、
その建設決定の祝賀会が催されることになったのだという…。
「そ、それは……でも…うーん…協力したいのは山々なんだけど……そんな…パーティとか…呼ばれたことないし…緊張しすぎて無理っていうか…。」
「大丈夫!パパからは参加者がすごく多いから、参加しましたって招待状を出しにいくくらいの感覚でいていいって言われたの。」
「えぇ~…。」
「5名まで同伴可能だから、カイジ君とアカギさんも誘って4人で行こうよ!」
「あの2人?!行くかな……何かそんな煌びやかな場所に呼ばれて行くイメージが一切無いんだけど…。」
「確かに無いけど……ほら、見てこれ、招待状と一緒に入ってた案内状!」
結婚式の招待状のような立派な封筒の中から美心が取り出した案内状…。
そこには祝賀会に至った経緯のあいさつ文の下に開催場所や時間などの記載があり、
更にその下に不思議な案内が記載してあった…。
「なにこれ…『当日はカジノのサンプルブースが設営されております。是非ご体験ください』…カジノ…?」
「そうなの。今回建設予定のホテルにはIRの先駆けで国に認可されれば、小規模なカジノを併設予定らしいのね。」
「そういえばそんな法案がどうのってTVで前に流れてたな…。」
「この祝賀パーティーでは参加費をとる代わりに模擬カジノで利用できるチップが配られるから、それをうまく増やすことができれば、参加費以上の賞品と引き換えられるんだって。」
「模擬カジノ…。」
「まぁ、多分ちょっとしたゲームができるくらいだとは思うんだけど…。カイジ君もアカギさんも、何かそういうゲーム?ギャンブル?みたいなの、好きじゃない?だから、一緒に行ってくれないかな、って思って…。」
「そういうことならホイホイ行きそう……あの2人…。」
「でしょー?」
「うーーん……祝賀パーティー参加費用要るんだ、一人一万円?」
「ああ、そこは気にしないで!もし一緒に行ってくれるなら、美心の友達分は絶対出すようにパパから言われてるから!」
「え、でも…。」
「だって、そもそもパパが行かなきゃいけない案件の代理人なんだもん……お願いしてるのにお金なんて出させられないよ…だからそこは絶対全然気にしないで!」
お金持ちの余裕というものもあるのだろうが、カッと目を見開いて、そこは譲れないと主張する美心…。
正直、祝賀会参加は乗り気でないところもあるため、その点はありがたいと思ってしまうyouなのであった…。
「まだパーティの日まで時間あるし、もしよかったらアカギさんと話してみてくれないかなぁ?勿論youちゃんだけ参加でも問題ないよ!」
「うーん……分かった……一応聞いてみる…。」
「ありがとう!朗報待ってます…!これ、案内状のコピー渡しておくね。」
ご協力よろしくお願いします!と、全力でお願いする美心…。
そうして、案内状のコピーを持ち帰ったyouは、
その日の夜に自宅へ夕飯を食べに来たアカギにその話をすることとなった…。
「…ということで、かくかくしかじかで…美心ちゃんから祝賀パーティーのお誘いがありました…。」
「ふーん…。」
「どうしますか…?アカギさんもそういう人がいっぱいいたり、煌びやかなパーティーとかって得手じゃないですよね……個人的にはお断わりしようかなと思ってるんですけど…。」
「なんで?いいじゃない、一緒に行こうよ。」
「ですよね…………えぇっ?!なんて?!」
「え、だから一緒に行こうよって。」
「ぱ、パーリィですよ!?知らない人がいっぱいいる…セレブたちが集う(かどうかは知らないが)きらっきらの煌びやかなぱ、パーリィですよ?!!」
「誰が来るかとかどうでもいいし……オレはただ、綺麗なカッコしてるyouを見たいだけだし…。」
「そ、そんな理由…?」
「オレには十分な理由。」
「わたしの格好なんて、結婚式に参加するような感じの服ですよ…そんなの…。」
「でも普段着とは違うじゃない、新鮮でいいと思う。」
「オレもスーツ着たらいいんだろ?」
「うっ……(それは見たい…)。」
恐らくyouの考えていることなど手に取るように分かるアカギは、
フッと口角を上げて彼女の心を動かす言葉を選ぶ…。
「ちゃんとした格好しないといけないんだろ、今度白いシャツとネクタイ、一緒に選んでくれるか?それ着て一緒に行こうよ。」
「行きますッツ!!」
「(チョロ…。)」
先程まで「人が多い」「場違い」などと、あれだけ参加を渋っていたというのに…。
欲望に忠実という言葉にすら届かないのではないかというくらい、あっさりと参加を承諾するyouであった…。
そういった経緯…は、流石に美心には言えなかったため、ただ彼女には
アカギが行きたいと言ったので自分も参加する、ということで祝賀パーティーへの同伴を申請した。
祝賀パーティーまでの間の休みで有言実行、アカギと共にスーツの下に着る正装の白いシャツとネクタイを買いに行き、
美容院を予約するなどして準備を整え、そうして迎えた当日…。
開催が14時からということで、それに合わせてパーティーの開催場所である
立派なホテルの正面玄関で各自待ち合わせることになっていた。
実のところ、アカギからは一緒に行こうと誘われたものの、
美容院で予約していたヘアセットがいつ頃終わるのかハッキリと分からなかったため、
現地で待ち合わせをさせてほしいと伝えていた。
そして、ちょうどyouがホテルの正面玄関にやってきたところで、アカギもやってきた。
「あ、アカギさん!すごい、時間ぴったりですね!」
「youも今来たの?」
「はい、わたしもたった今です!」
「そう…。」
それならば、あまり長く一人で待ってないようで良かった…と、微かに安堵の息を吐くアカギ…。
というのも、彼女の本日の装いが服やアクセサリー、髪型に至るまでいつもと全く違うワケで…。
勿論、普段も彼女のことを可愛いと、綺麗に整えている、と常に思ってはいるが、
矢張り特別な場面で特別な格好をしている姿は普段の数倍美しいと感じるので、
そんな姿で一人、無防備に待たせる事は恋人として避けたかったというわけだ。
今すぐにでも約束なんかほったらかして2人きりで何処かへ行きたくなるような…。
そんなとてつもない衝動をぐっと抑え、ひとまず彼女の姿を褒めようとアカギが口を開いたところで、
朗々とした大きな声がその場に響いた。
「youちゃーーん!」
「美心ちゃん!」
ホテルの正門のロータリーに停まったタクシーから出てきた着飾った美心とスーツのカイジが
少し前に到着していたyouとアカギの元へと駆け足でやって来る…。
「アカギさんも、ごめんなさい、お待たせしちゃって!」
ペコリと頭を下げ、謝罪をする美心。
遅れてはいるもののせいぜい5分程、別段気にする程でもない…と、youもアカギも彼女をフォローした。
「本当にゴメンね、ちょっと…カイジくんのレンタルスーツ選ぶのに時間掛け過ぎちゃって…!!」
「カイジくんも来てくれたんだね!」
「うんっ!そうなの!すっごーーく渋ってたんだけどね!」
「(わたし以上に渋りそうだもんなぁ、カイジくん…。)」
「youちゃんもアカギさんも来るし、模擬カジノの話をしたら興味持ってくれて、あとは……これはちょっとナイショ。」
「?」
人差し指を唇にあててシーっと「美心とカイジくんだけの」秘密です…とウィンクする。
アカギとyouは顔を見合わせ、不思議そうに小首を傾げたが、
内緒の話と言ったばかりですぐさま開示するワケもないだろうと、それ以上の質問はしなかった。
ひとまず全員揃ったところで、美心が一同を先導してホテルの中に入り、
祝賀パーティーの会場の受付へと向かうこととなった…。
「カイジくん、どうも!スーツよく似合ってるよ、珍しいよね、超レアだ。」
「そうだよ…実際スーツ持ってなくてレンタルするくらいだから、激レアもいいとこだよ…ハァ…。」
「な、何かお疲れ?」
「どれでもいいって言ってるのに、美心のやつ…アレ着ろこれ着ろって次々にスーツ寄越すから…着せ替え人形にしたって悪趣味だろ…こんな…陰鬱とした男なんて…ッ!」
「えー、わたしは美心ちゃんの気持ち分かるよ。だってカイジくん、スーツ凄く似合ってるもん。」
「え……あ……マジ、で…?」
「うん、かっこいい。」
「あ……さ、さんきゅ…。」
タクシーから下車してからずーっと顔を伏せ、げんなりとした顔をしていたカイジだったが、
youの褒め言葉に表情筋が様々動いた後、頬をほんのり紅潮させ、照れ顔になる…。
意中の相手が自分を褒めてくれたのであれば、これはもう、同じく自分も彼女を褒めねばならんと…。
ぐっと拳を握って伏せていた顔を上げて口を開いたカイジだったが…。
「っ……ていうかyouもその格好すげー似合って…」
「you、オレのスーツ姿はどうなの?カイジさんとどっちがいい?」
「アカギてめぇ……!!」
それはもうグイっと…カイジとyouが並んで話している間に割って入ってきたアカギ…。
「あ、アカギさん…。」
「どっち?」
「いや、どっちも素敵ですよ……2人ともよく似合ってると思います。」
「あっそう………ふーーーーん…。」
あからさまに不機嫌そうな声色でyouに圧を掛けるアカギ…。
この状況で「アカギさんの方が素敵ですよ」や「カイジくんの方が似合ってますよね」など言えるはずもないので、
自分の選択した言葉は間違っていないはずなのだが…と、眉根を寄せて困り顔になるyouであった…。
そんな折、会場の受付をしていた美心が一同に参加の署名をするようにと声を掛けてきたので、
受付のテーブルへと向かうこととなった。
署名を済ませたところで、受付の女性から各々にカジノ用のチップが10枚程入った専用の小型プラスチックケースが1人1つ配られた。
「こちらは、今回の祝賀パーティーに設けられております模擬カジノでご利用できるチップとなります。参加証のようなもので、お好きなゲームに参加していただき、もしチップを増やすことができれば枚数に応じて様々な賞品と交換できるようになっております。よろしければ是非ご参加ください。」
「どんなゲームがあるんだろう、楽しそうだね!」
にっこりと素直な期待を口にする美心とは異なり、アカギはゲーム内容を…カイジは賞品の詳細を知りたい…と、
どこかにその案内が無いかをキョロキョロと探し出す始末…。
そんな彼らの思考回路が手に取るように分かるため、youは若干目を細めて呆れた表情を浮かべた…。
何はともあれ、受付を済ませたことで会場の中へと入る事となった4名…。
流石にホテル会社主催の祝賀パーティーということで、会場内は多くの招待客で溢れかえっていた。
「す、すごい人…。」
「本当だねー…でも逆にこれだけ沢山の人がいたら全然目立たないからかえっていいかもよ?」
「そっか…そうかもね。」
「だから、ちょっと知り合いにあいさつ回りしたら、後は美味しいビュッフェで舌鼓を打って、遊んで帰ろうよ!」
確かに、中央にドーンと広く設けられたテーブルには様々な料理やスイーツが並べ置かれており、
高い天井のライトに照らされて比喩表現ではなく、実際にキラキラと美味しそうに光って見えるので、少し喉が鳴ってしまうyouであった。
「さて…ここからは自由行動でいいと思うんだけど……youちゃんには美心のあいさつ回りに付き合ってほしいんだよね……ゴメン、いいかな?」
「え、あ、挨拶…?」
「パパのお仕事で顔を知ってる人が何人かいるみたいだから、その人たちに。一人じゃちょっとだけ心細くて…。」
「わたしでよければ…。」
「よかった!ありがとう、助かる!!本当に嬉しい!……なので、ごめんなさいアカギさん、ちょっとyouちゃんを連れまわっていいですか?」
美心はそう言ってyouの腕にぎゅっとくっつくと、アカギを見上げた。
「ああ、オレやカイジさん連れて回るより適任だろうしね、気にせず行ってきてよ。」
「ありがとう!じゃぁ、連れてっちゃいますね!」
何故youを連れて行くことをアカギにだけ了承を取るのかと、少し疑問に思ったものの、
よくよく考えると自分は美心をエスコートするようにと美心本人から依頼されていたカイジ。
ということであれば必然youの相手はアカギということになるため、
致し方ないのか…と、盛大な溜息を吐いてジト目でアカギを睨むのであった…。
そんなカイジの視線を受けても暖簾に腕押し…飄々とした表情で佇むアカギ。
そんな彼にyouが声を掛ける。
「アカギさん、これ、渡しておきますね。」
「?何これ、youの分のチップじゃない。」
「わたしは美心ちゃんについて挨拶に行くので、もしかしたら遊ぶ時間無いかもですし…ゲームするよりご飯食べたい…。」
「成程ね、分かった…じゃあ遠慮なくもらっておくよ。」
「何があるか分からないけど、いい賞品と交換できるといいですね。」
「ああ、期待しといて。」
相変わらずのビッグマウスだが、アカギの場合それが有言実行されるので
軽く「またまたそんな~」などと、ツッコミもできないyouだった…。
また、その様子を見ていた美心も同様に、そういうことであれば自分も…と、チップをカイジに譲渡。
そこからyouと美心は挨拶回りへ。
アカギとカイジは単独で食事をしたり、模擬カジノで遊ぶこととなる…。
・
・
・
・
祝賀パーティーに参加して小一時間程経過した頃…。
やっと大方の知人に挨拶が終わったようで、美心が会場をぐるりと見渡して「もういないかな」と口に出した。
「パパの知り合いで挨拶しておいた方がいいって人は今いる感じだとさっきの人でもう終わりかも。」
「本当?よかった…お疲れ様、美心ちゃん~!」
「皆おじさん達ばっかりだから話が長かったね……挨拶回りだけでもう1時間以上経っちゃった…。youちゃんもお疲れさま!ずっと付いててくれてありがとう!」
「いえいえわたしは別に…本当に傍にいただけなんで…。」
「疲れたよね!改めて、これから美味しいご飯食べよう!」
「うん!」
「それはそうと……カイジ君達はどこかな?」
「どうだろ、さっきチラっと見た時はご飯食べてたり、お酒飲みながら話してたみたいだけど…。」
挨拶回りの中でもアカギとカイジの様子がたまには視界に入ってきていたので、
その時の情報を伝えたのだが、彼らは今は飲食のエリアにはいない様子…。
では噂のカジノのエリアなのだろうか…と2人でそちらの方面へと移動する…。
パーティー会場の一角に設営されているとはいのものの、なかなか本格的なつくりになっているようで、
其処には代表的なカジノゲームとして、ブラックジャックやバカラ、ルーレットや出目当てのシックボーが行われているようだった。
「わぁ、何だか楽しそう!美心もちょっとやってみたかったな…チップ全部カイジくんに渡しちゃったから……惜しかったな~!」
「カイジくんが勝ってたら、分けてもらったらいいんじゃないかな?」
「そっか!そうだね、探してみよう!」
「(アカギさんは…?)」
美心がカイジを探し、youも同じようにアカギの居場所を探そうとした矢先…。
「お、you、美心も。」
「「カイジくん!!」」
探そうと思っていた対象が正に現れたため、youと美心は声を揃えてカイジの名を呼んだ。
「もう挨拶回り終わったのか?」
「うんっ!もう終わったんだぞっ!カイジくんのこと探そうと思ってたんだ!」
「あー、そうなの?」
「カジノのゲームをちょっとやってみたくて、もしカイジくんのチップがまだ残ってたらって思ってたの!」
「あー…そりゃ悪い……もう賞品交換しちまったんだ…。」
「えーーっ!そっか……残念。」
「4種のゲームがあって1ゲームチップが0になったり、降りるまでの1回って制限があったんだ。オレ、全部回っちまったからさ…。」
「そうだったんだね……じゃあ、賞品は何…。」
と、そこまで言ったところで、後方から「おおーっ!!」っと大勢の人のどよめきが聞こえたため、
一同は驚いて話を中断し、そちらを振り向く…。
何事だろうかと、野次馬に混じって行ってみると、そこにはカジノディーラーの女性と向き合って手持ちのチップを今尚増やし続けているアカギの姿があった…。
「あ、アカギ…!」
「アカギさん!?」
カイジと美心が目を見開いて、テーブルに人一倍多く詰まれたチップを見て驚嘆の顔を見せる。
youも勿論驚きはしたのだが、周囲のどよめきやざわめきを全く意に介することなく、
真剣に勝負に向き合っているアカギの姿に思わず感嘆してしまった。
しかしながら、今はもう次戦が既に始まっており、声を掛けるのも野暮に思えたため、
そのまま黙って彼の勝負を見守ることにしたyou…。
そんな中、「あの兄ちゃん凄いな…」や「さっきも大小でトータルとコンビネーション当ててなかったか…?」と、
カジノに詳しい男性客達が「このブラックジャックではどう勝つのか」とワクワクした様子で眺めているのに対し、
セレブリティな装いの女性達が、キャアキャアとアカギの後ろを陣取り、すぐ近くで勝負を見学……
するだけなら問題はないのだろうが、「お兄さん凄いわね」と肩に手を置かれたり、背中に手を当てられたりとやられ放題な状況…。
流石にいい気分にはなれず…youは口角を上げたものの目は笑えず…。
声に抑揚も付けれない様子で美心とカイジにその場を去る事を告げる…。
「美心ちゃん、カイジくん……わたし、お腹空いたからちょっとご飯食べてくるね。」
「あっ…うん、っていうか美心も一緒に行くんだぞ!行こう、美味しいもの食べよ!スイーツも沢山!」
「美心ちゃん……ありがとう。」
「うむっ!あ、カイジ君はどうする?」
アカギを取り巻く周囲の状況にyouが反応したことを察した美心は、
彼女に寄りそう為にその場をすぐに離れることに同意した。
そんな2人の気持ちは理解できていないカイジに、ひとまずはどうするかも併せて問う。
「あー…オレとアカギはさっき結構色々食ったからいいかな……酒でも飲みながらアカギの勝負見学しとくわ。」
「分かった、じゃあまた後でね!美心置いて帰っちゃダメなんだぞッツ!」
「ハイハイ、分かってるよ…。」
ピンっと人差し指を立てて「約束守ってね」とカイジに伝えると、
美心はyouの手を取ってビュッフェのエリアへと引き連れて行った。
・
・
・
・
「大丈夫、youちゃん…?」
「え、あ、うん、平気。何かごめんね…美心ちゃんに気を遣わせちゃった…。」
「全然なんだぞ!寧ろ美心がyouちゃんを挨拶のために連れ回ってアカギさんと離れ離れにしちゃったから…。」
「気にしないで、大丈夫。だってアカギさん勝負のゾーンみたいなの入ってるみたいだったし、周りのこと見えてない感じだったっていうか……あんなにいっぱい人に触られても「無」でいられるって……それって逆に凄いっていうか…。」
「た…確かに、それはあるね。」
「でしょう…?」
「まぁ…じゃあ……うん、メンズのことはこの際気にせず!食べまくっちゃう?」
「賛成っ!!」
つい今しがたまで心はモヤモヤしていたはずなのに、本気で楽しく笑えたのは
紛れもなく親友の美心の気遣いが嬉しかったからだ、と断言してしまえるな…と思うyouだった…。
それからyouと美心は一流のホテルビュッフェに舌鼓を打ちながら、
女子トークをしながら、スイーツまで美味しく網羅しつつ時を過ごす…。
一方、こちらはアカギとカイジ…。
先程のブラックジャックの勝負も見事に今回定められた上限までチップを獲得したアカギ…。
それが最後のゲームでもあったため、それ以上の勝負ができなくなったことで彼もカイジと同様にチップを賞品と引き換えることとなった。
勿論積み上げたチップは主催者側も予想だにしていない枚数となったようだったが、
現金での換金ではなく賞品との交換となるため、いくら枚数を積み上げようがちゃんと天井があり、それは変わらない。
そして、これは余談だが、カウント無効になった分のチップを貰えたなら、自分も特賞が貰えたはず…と、
今更ながらアカギの最後の勝負が終わるまで交換を待てばよかった…!と半泣きになるカイジだった…。
そんな2人は今、会場を離れてホテルの喫煙所で休憩中である…。
「特賞は……30万円分の商品券か……あんまり使い道ねェな…。」
「いやあるだろ!!30万だぞ!?30万あったら家電も買えるし、米とか肉とか…生活にあてれんじゃん!!」
「商品券じゃ種銭にできない…。」
「しょんぼりすんな!この万年異端ギャンブル中毒者!」
「カイジさんに言われたくないんだけど…。」
「くっそー……オレだってそこそこ頑張ったハズ…なのにっ!ああ、羨ましい…30万…。」
「カイジさんは?そこそこ頑張って何の賞だったの?」
「あ?あぁ……オレは4等……この系列のホテルのペア宿泊券……。」
「え、いいじゃない。」
「いや、要らねーわ……ペアどころか1人でも…オレ、別に旅行とかしねーし…。」
「じゃあ交換しようよ。」
「あー別にいいけ……ど……え。え、えええええ?!!」
「それっていつでも使える?」
「えっと……一応いつでも、それと、金額の幅は制限ある。あとは……ここの会社の系列のホテルなら使用できるみたい…だ、けど??」
「うん、やっぱ交換してよ。オレ結構フラッと河岸変えて他県とか、別んトコで博奕しに行ったりするしさ。」
「いや、でも……あまりに価値が違い過ぎるだろ…流石に…ッ!」
「どちらに価値を見出すかはオレが決める事……その結果、交換していいって思ったんだから、それでいいんじゃない?」
「あ、アカギ……様…。」
「様…。」
急に遜ったカイジを微妙に冷めた視線で一瞥すると、アカギは先程賞品としてもらった30万円分の商品券を懐から取り出す。
「どう、カイジさん?」
「どうもこうもあるか!ありがたく交換させていただきます!すげー嬉しいです!神かお前!」
「ああ、でも1個だけ条件がある。」
「な……何だよ…?」
「この商品券で坂崎さんに何かプレゼント、買ってあげなよ。」
「え、あ?み、美心…?美心に…?」
「そうだよ。」
「な、何でお前がそんな事言うんだよ…??」
「だってカイジさん……バイト代もらってるでしょ。」
「!!!!」
アカギの指摘にビクゥっと肩を跳ねさせたカイジ…。
どうやら正解らしい…。
「いやぁ……その…だって、行きたいくないって言ってるのにどうしてもって…言うから…。」
「カイジさんと「内緒の約束」ってしきりに言ってから、そうかなって。」
「うぐ……バイトとして3万出すから…自分のエスコートするために来てって言われてぇ…。」
「スーツもレンタルしてもらったんでしょ。」
「あい…。」
「30万のうち1、2万でも…坂崎さんにお礼してあげても罰は当たらないと思うんだけど?」
「…ソウシマス。」
この祝賀パーティーに参加する費用を全員分出してもらっているということの恩義や、
youの大事な親友であるという点もあり、アカギとしては彼女の優しさに甘えに甘えているカイジに少し灸を据えたかった様子…。
伊藤開司という男が、ここまで指摘されて彼女を蔑ろにするような人物では無いと分かっているため、
アカギはもうこの件に関しては特に言及することはしないことにする…。
「じゃあ、カイジさん、交渉成立?」
「ああ、勿論だっつの!!」
最終的には満面の笑みでアカギの提案を飲んだカイジ。
拳をグーにして出してきたので、アカギもそれに応え、コツンと軽く拳同志を突き合わせる。
そうして商品券と宿泊券を交換したところで、アカギが突拍子もないことを言い出した。
「ああ、そうだカイジさん…もうそろそろ2人とも飯食い終わると思うしさ、多分帰ると思うんだけど…。」
「ん、ああ…そうかもな…挨拶も飯もゲームも終わったしな。やることも無いだろうし…、」
「ちょっと用事があるから、先に会場を出るって2人に伝えておいてよ。」
「はぁっ!?」
「それじゃあ、お疲れ様。」
「おい、ちょっと待て!アカギおい!!!」
喫煙所に設置されている吸い殻入れに吸い終わった煙草を捨て入れると、
アカギはそのままホテルのロビーに向かって歩いて行ってしまった…。
「か…勝手過ぎんだろぉが…ッ!」
眉をハの字にして呆れたような、怒ったような複雑な感情を吐露すると、
カイジは盛大な溜息を1つ吐いて、その情報を伝えるべくyouと美心のいる会場内へと戻っていった。
・
・
・
・
「…というわけで……アカギは先に会場を出てしまいましたとさ。」
「か、勝手だなぁ…。」
「激しく同意。」
「でも、気持ちは分かるかも……気疲れしちゃったのかもだよね、慣れない格好で、慣れない場所で、ゲームは楽しかったかもだけど、沢山の人に囲まれて大変そうだったし…。」
喫煙所から戻ってきたカイジに事の顛末を語られ、youは苦笑しながらもアカギの行動を受けれる。
「それで、これからどうする?もう飯も食ったし酒も飲んだし…ゲームも全部やりつくしちまった。」
「うん、お料理もスイーツも美味しかった!ゲームができなかったのはちょっとだけ残念だけど、目的であるパパの名代としての役割も十二分に果たしたと思うんだぞっ!!」
「おう…じゃ、そろそろお暇するかね…。」
「それでいいと思う!」
カイジと美心の言葉に、youも同意見。帰宅するという結論に異論はなかったので、コクリと頷いたのだが、
疑問が1つ……彼女の中でアカギの行動だけがよく分かないまま…。
先程「疲れただろうから早めに帰宅するのも分かる」と言ってはみたものの、
美心やカイジが一緒にいてくれるとはいえ、果たして彼が自分を一人置いて家に帰るだろうか…と。
一応電話をして本人と確認を取ってみるか…と、今の今までパーティー会場の中では一度も開かなかった(開けなかったとも言う)携帯のホーム画面を確認する。
連絡用のツールを開けば、いくつかのショップのDMに紛れて、アカギからのメッセージが1件入っていた。
「(あ、やっぱり連絡くれてた。)」
先に帰る事情の記載があるのだろうと、メッセージを確認すると、そこには『終わったら今いるホテルのxxx号室に来て』とだけ記載があった…。
「(????)」
先に帰宅したはずなのに、ホテルの上階に上がれとはどういうことだろうか、
其処にアカギがいるというのだろうか??と、頭に疑問符を浮かばせるyou…。
携帯の画面に集中していると、美心にポンポンと肩を叩かれてハッと我に返った。
「youちゃん、大丈夫?」
「あっ、うん!大丈夫!」
「美心はカイジくんとタクシーで来たから、またタクシーで帰ろうと思うんだけど、youちゃんも一緒に帰るよね?」
「あっと、えーと……。」
「?」
「私、この後ちょっと寄りたいところがあって…トイレ行ってちょっとお直ししてホテルを出るよ。」
「え、そうなの?その格好で行くの?」
「う…うん……ちょっとね……大した用事じゃないんだけど…。」
「そっか……分かった、もうそろそろ夜になるし……気を付けて帰ってね?」
「うん、玄関まで見送る。」
「分かった、ありがと!」
そうして3人でホテルの玄関口まで行けば、いつの間にやら空は夕暮れから夜へと移ろう色になっていた。
ロータリーで待機していた数台のタクシーがあったため、
特に待つことなく美心とカイジはそれに乗れることになる。
「じゃあね、youちゃん!」
「うん、色々あったけど今日楽しかった!参加させてくれてありがとう!」
「こっちこそ、挨拶まわり付き合ってくれて感謝してるんだぞ!」
「今度は食べるだけのビュッフェで一緒に行こうね、美心ちゃん!マミヤちゃんも誘って、3人で!」
「大賛成ー!!!」
「じゃぁね、美心ちゃん、カイジくんも!」
2人が乗ったタクシーが走り出し、最後にばいばーい!と手を振って見送りを終えたyou…。
「さてと…。」
くるりと後ろを振り向き、彼女は再びホテルのエントランスをくぐる…。
そのままアカギの指定した部屋に向かっても良かったが、
先程美心にも伝えた通り、実際少しトイレにも行っておきたかったため、エントランスホールに設けられているレストルームでトイレと軽く化粧を直しを済ませてから、ホテル宿泊者用のエレベーターに乗り込んだ。
そうして、指定された部屋のある階のフロアに出て、号室を探して、部屋の目の前に立つ…。
「(ここ…だよね……どうしよう1回電話する?した方がいいかな?やっぱりアカギさんがいるのかな…え、でも誰もいなかったりしたらどうしよう、まさか他の宿泊客がいるというパターンも……!!)ええい、もう知るか!!」
部屋の呼び鈴を押して中からの反応を待っていると、数十秒程でガチャリとオートロックのドアが開かれる音がした。
そのドアが4/1程開かれたところで、中から伸びてきた人の腕に手首を掴まれたyou。
そのままぐいっと強引に引っ張られ、無理矢理部屋に連れ込まれる…。
「!!!」
「いらっしゃい、you。」
「あ、アカ……んっんんん!!!」
言わずもがな、部屋の中にいたのも、彼女を部屋の中に無理矢理連れ込んだのもアカギ…。
彼は一瞬だけの挨拶を済ませると、素早くドアを閉めてそこにyouの背中を押し付け、唇を奪った。
「ん…っ…!」
「・・。」
「は……ぁ…。」
「ん…。」
何度も角度を変えながら、それでもって舌も絡ませて…。
余裕が無いワケでもなく、特に怒っているという雰囲気でもないのに、
ただただ無心に、兎に角深くスキンシップが取りたいのだと訴えるような深いキス。
理由はハッキリ説明できないが、今日一日の中で様々な出来事や感情を抱くことになったことは間違いなく、
それは勿論アカギだけではなくyouにも言える事…。
なので、youもアカギの性急なセックスアピールは理解できる…と、
両腕を高く伸ばし、アカギの首に絡ませた…。
「はぁ…ぁ…。」
「は……っ……you…。」
「ん…。」
キスの最後はちゅ…と、軽いリップ音で締めくくられ、はぁはぁと熱い息を吐きながら見つめ合う…。
「ぁ…あかぎさ……ど、して…。」
「ん……ちょっとね……色々あってさ……それ、話さなきゃって思ってはいるんだけど、正直youを今すぐ抱きたくてしょうがないんだよね……。」
「ちょ、れ……冷静になりましょうよ…!」
「そうしたいのは山々なんだけど……色々考えてやっぱ無理……シよ、セックス。お願い、you。」
「そ、そんな急過ぎる……シャワーとか浴びさせてくれない、ですか…。」
「ベッドがイヤなら風呂場でいい。」
「何で!色々希望が通って無い!……寧ろ悪化…ッ!」
「行こう、you。」
「ああああー!」
そうして腕を引かれ、強制的に風呂場へ連行されてしまう…。
広い洗面台の中に入って、ぱっと腕を離されたものの、そのまま潔く脱衣することができるワケもなく…。
「あ、あの…アカギさん…。」
「その服…。」
「え?」
「似合ってる。」
「え、あ……ああ、ありがとうございます…。」
「服だけじゃなく、髪型も……今日、ホテルのエントランスで会った時からずっと褒めたかった。その後も…けど言うタイミングなくてずっとヤキモキしてた。」
「そ、そうなんですか?」
「いつものyouも勿論いいけど、特別な格好をしてるyouは…やっぱりちゃんと特別いいと思えるよ。」
「何か照れるな……でも、そうですよね……わたしもスーツのアカギさんは特別素敵に見えます。」
「そう、ありがと。窮屈だったから、さっき上着は脱いでベッドの上置いてきたけど…。」
「白いシャツにネクタイだけの格好も新鮮ですから。」
「フフ…。」
アカギはyouのパーティードレス姿を、youはアカギのフォーマルスーツ姿を褒める。
「だからさ……その特別な格好してるyouに隣にいてほしかったし、触れたかった。色々あってそれ、叶わなくてさ……だから今日は余計にフラストレーションが溜まったというか……まぁ、そんな感じ。」
だからこその部屋に入ってからのあの行動、その後のこの状況に繋がったのだとアカギは言う…。
やっとアカギが性急に身体を求めた理由が判明し、成程…と、youは理解を示した。
「一緒にいれなかったのは仕方ない事なんだけど……わたしも、アカギさんの隣にいたかったです。隣にいたらあんな…。」
「あんな?」
「ちょっとした嫉妬です……でも、ちゃんとアカギさんが靡いてないって理解してるので、大丈夫です!美心ちゃんが自棄酒自棄飯自棄スイーツに付き合ってくれたので、昇華済だし。」
「ふーん…でも教えてよ、何に嫉妬したのさ。そもそも会場では全然youと話せてないじゃない、オレ…何か変な場面でも見たの??」
「…模擬カジノのエリアに行った時にアカギさんがゲームの卓に座ってるのを見つけたんですけど…凄い人だかりで近付けなかったのと……アカギさんの周りを沢山の煌びやかな女性達が囲んで触られていらっしゃったことに拗ねたと言いますか…。」
「そうなの?周りの人間って全然気に留めてなかった……ああ、だから上着があんなに香水臭かったんだ…成程な。」
「流石ですね…やっぱりゾーンに入ってたんだ…。」
「ディーラーのねーちゃんしか見てなかったな……クセは無いかとかサマしてないかとか…。」
「成程、そっちかぁ~。」
「あと、勝負終わった後にディーラーの格好youにさせたいとか…は考えたかな。」
「はぁ……まぁ、とりあえず、そういう嫉妬でした。」
「うん、じゃあ……今からは全部youのだから。」
「?」
何の話だ?と小首を傾げると、アカギはシュッとネクタイの結び目を緩めて解くと、プツプツとワイシャツのボタンを外していった。
恐らくは祝賀会の時は上着を脱ぐ機会は無いと踏んでいたからだろう…。
特に下着を着用していなかったため、シャツを脱いで放ると、アカギは上半身裸で彼女に向き合った。
「あの…。」
「今からは(いつもだけど)、赤木しげるはアンタのもんだから、好きなだけ触ってよ。」
「い、いいですよ……そんな、痴女じゃないんだから…。」
「あらら、随分理性的な事で…。」
「アカギさんも理性的になったりしないです?わたしのこの冷静な反応を見てですね…。」
「…全然。全くならねェな。」
「は、ぁ~~…。」
それはもうスパッと「NO」と言い切ったアカギ…。
youは盛大な溜息を吐いて項垂れるのだった…。
と、すぐにアカギが「だって…」と、言葉を続けてきたので、彼女はゆっくりと顔を上げる…。
「そもそも、こうしてホテルに部屋取った時点で理性決壊してる証拠って分かるじゃない…。」
「そ、それ!そうなんですよ、そもそもこれは一体どういうことだったんですか!」
「あー…(結局一発ヤる前に全部説明することになるのね。)」
先程youが吐いた溜息と同じくらいの大きさで息を吐き出し、
アカギは自分の頭をガシガシと掻きながら彼女をこの部屋に呼ぶに至った経緯を話し出した…。
「この部屋はオレが獲得したカジノの賞品。まぁ、正確にはオレじゃなくてカイジさんが獲得したんだけど…。」
「し、賞品…?!」
アカギはそこで、自分の模擬カジノでの成績と、其処で得た特賞の30万円分の商品券を
カイジが獲得したここの系列のホテルの宿泊券と交換した経緯を説明した…。
「さっ、30万円分の商品券を交換したんですか?!」
「うん。」
「何で?!」
「え…だって……あんまり使い道ねェなって…。」
「いやありますよね!!30万ですよ!?30万あったらいい家電も買えるし、お米とかお肉とか…生活にあてれるじゃないですか!!」
「商品券じゃ種銭にできないし…。」
「冗談でしょう?!もうっ!この万年異端ギャンブル中毒者!」
「カイジさんにも同じ事言われた…。」
「そりゃ言いますよ!!!」
「だって、それよりホテルの宿泊券でyouと今日泊まって帰りたいって思ったから…。」
「はい?」
「それはだって、さっき言ったじゃない……近くにいたのに、折角特別な格好してるyouと全然触れ合えなかったからだって。」
「そ、そんなことで……30万を…。」
「それもカイジさんに言った。30万だろうが何だろうが、どちらに価値を見出すかはオレが決める事……その結果、オレはどうしても特別な格好したyouと一夜を過ごす方に天秤が大きく傾いただけ。」
「本当に……もう……勝手すぎます…。」
「自覚ある。」
「家に帰ってからでも……って、考えなかったんですか…。」
「野暮な事聞くなよ……どっちがいいか、正直に言いなって。」
すり…と、一度youの頬に手を滑らせた後、ゆっくりとアカギは彼女の身体を抱き寄せる。
「you…答(応)えてよ。」
というアカギの言葉に、youは観念したように小さく息を吐くと、
細腕を男の広い背に這わせて、隙間なく抱きしめ返した。
「アカギさん…。」
「ん?」
「……背中のファスナー…下げてくれますか……今、自分じゃ、届かないから…。」
「最高の回答、ありがとう。」
少し、身体を離して見つめ合う。
嬉しいやら恥ずかしいやら、少し怒ったような、困ったような…頬を赤く染めて複雑そうな顔をするyouと、
それが手に取るように分かるため、最終的に自分の思う通りのシナリオが描けて満足そうな笑みを浮かべるアカギ。
今日一日のアカギの気持ちを汲んで、全て享受すると決めたのか、youが先にそっと目を閉じたので、
ありがたくいただきます、とアカギは口付けを落とし、背中のファスナーに手を伸ばした…。
何を引き合いに出しても
その天秤は君に傾く
(you…っ、もう1回…。)
(え、え…えぇ?!)
(っは……や、何回出しても鎮まらない気がする……。)
(ぁ…あ…む、むりです……アカギさん、無理です、もう無理!)
(無理じゃない、オレが全部動く。)
(そういうことじゃない、絶対そうじゃない……もう身体が…!)
(大丈夫…あと2個しか残ってないから。)
(何か恐ろしいこと言ってる!!もうやだ…ッツ!!)
(逃げるな……逃がさない……。)
(手ぇええ!痛いいたい!ネクタイの使い方間違ってる!解いてください!)
(あ……これ緊縛って言うの?……ヤバいな……コンドームあと2個しかないのに。)
(使い切る気かいッツ!!!)
(応えてくれなきゃ寝てる間に避妊具無しでしちゃうよ、それでもいいの?)
(あ、ぁ……更に恐ろしいこと言ってる……!!!)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*