step5_(恋人編:アカギ)
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「あっ、もしかして……you、さん…??」
「え…?」
名前を呼ばれて振り返った先にいたのは、見覚えのあるような無いような顔の男性だった。
アカギさんといっしょ21
「えっと…。」
「あ、すみません急に声を掛けてしまって…!先月、坂崎さんの家でお会いしたばかりだったから…。」
「美心ちゃんの家……あ、ああ!美心ちゃんのお父様の…!」
「そうです、堂下です!」
ぺこりと会釈をしてyouに挨拶をした堂下という男性…。
先日、美心の父である坂崎孝太郎の誕生日会に呼ばれたyou。
そこに彼の仕事関係の知人として呼ばれていた男性だったことにようやく気が付く…。
「奇遇ですね」、「その節はどうも」、「またお会いしたらどうぞよろしくお願いいたします」といった
一般的に距離感のある会話が繰り広げられて解散……と、思っていたyouだったが、
「先日はどうも」と、一礼して顔を上げたところ、堂下からまさかの会話が投げ込まれた…。
「今日はお休みですか?これから何処か行かれるんですか?」
「え?あ、はい今日休みで……もう、ある程度用事が終わったので電車で戻って、最寄りのスーパーで買い物して帰るくらいです。」
「そっ、それなら…今から時間あったりするかな!!」
「え…?」
急にずいっと一歩前に近付き、堂下はキラキラした目でyouを見つめる…。
が、彼女の戸惑いの表情を見て、ハッと我に返った様子。
「あっ、ご、ゴメン…ほぼ初対面なのに失礼だし、気持ち悪いですよね…。」
「あ…いえ…そんなことは…。」
「えーっと……えっと、実は!その…!!」
「?」
「君や……美心ちゃんと近い年齢の姪っ子に誕生日のプレゼントを買わないとなんだけど、何を買えばいいか分からなくて……いきなりで不躾で申し訳ない限りなんだけど、可能なら一緒に選んでくれたら助かるなと…いう…事情が…あったり(なかったり)…。」
本当に困っているのだ…という表情を浮かべて彼女に切実そうに訴えてくる堂下…。
この堂下という男…。
パッと見、ラグビーや柔道などのスポーツをやっている(もしくはやっていた)ようにも見えるガタイの良さがあるため、
失礼ながら、確かに美心のような女子力強めの女性が求めるものなどは、てんで分かりそうにないように見え、
一瞬youはふふっと小さく笑ってしまった。
「ふふ…なるほど、そういうことでしたか!えーっと…そうですね……夕方には帰るので…あと2時間程ならお付き合いできますよ。」
「ほっ、本当?!た、助かるよ!!!あっ、助かります!」
「どうぞ、気楽に話してください。」
「ごめん……ありがとう…。」
畏まった言葉が苦手なのか、はたまた距離感を縮めたいのか…。
堂下の意図するところは現時点では全く分からないが、大した問題でもないため、
youは「自由な言葉でどうぞ」と、言葉遣いも許容する。
そんな彼女の気遣いに有難くそうさせてもらうことにした堂下…。
実を言うとこの男…姪っ子のプレゼントを選びに来たというのは真っ赤な嘘。
たまたま休みの日にスポーツショップを巡り、街をブラブラしていたところ、
偶然、坂崎家の誕生会で出会ったyouを見掛けたため、声を掛けたのである。
声を掛けた理由も、彼女の事を覚えていた理由も1つ…。
誕生会で会った際にyouのことが気になった…気になっていたからである。
何とかしてお近付きになりたい…と、絞り出した「姪っ子のプレゼント選び」という案(というか嘘)は功を成し、
何の違和感も持たずに彼女はそれに付き合ってくれるという…。
この機を逃すものかと、密やかに心の中で己を燃やしている真っ最中だった…。
「えっと…オレは本当に何を選ばいいか分からなくて……youさんはどんなものが好きかな?欲しいものとかってある?」
「え、わたしですか……うーん…難しいなぁ……「自分じゃ買わないけど、もらえると嬉しい」とかの物が喜ばれたりしますよね。」
「うーん……ランニングマシン…は高いし…バーベル…あ、高級プロテイン?」
「姪っ子さんはスポーツ選手なんですか?凄いですね。」
「あっ!違います違います!今のはオレの話でした…すみません!!」
「なんだ、ビックリした……では、どんな方なんですか?」
「えっと……可愛くて…。」
「ふむふむ…。」
「丁寧で、優しくて…誠実そうで…。」
「え、素敵ですねぇ。他には?」
「はい…とても素敵だと思います……。」
「?堂下さんは姪っ子さんのこととっても好きなんですね。」
「え、姪っ子ですか?」
「姪っ子さんですよね?」
「あ、そうでした……や、はい……あの…もう本当…youさんが思うアイディアで良いと思うんで!」
途中から、誰の話をしているのかとお互いが疑問になるような噛み合わなさ…。
これ以上ボロが出る前に、と…堂下はプレゼント選びを丸投げすることにした…。
youはというと、彼の事情が嘘とはつゆ知らず…腕を組み、真剣にプレゼントについて思案する…。
「そうですねぇ…美心ちゃんやマミヤちゃんとよく送り合ったりするのはカーディガンとかのアウターだったり……パジャマとか…うーん……他にも色々あるけど…アパレル系はお互いの趣味や好みが分かってるからなんだよなぁ…。」
「は、はぁ…?」
「あ…ちょっとしたコスメはどうでしょう!?」
「こ、こすめ?」
「口紅とかグロスの下地にもなる質のいいリップバームとか、ハンドクリームとか…!」
「い、いいですね!賛成です!」
「どんなメーカーやブランドのを使ってるかとか…分かりますか?あと、金額の目安とか…。」
「リップとハンドクリームくらいなら、多少高級なブランドでも金は問題ないですよ!でも、どこのを使ってるかはさっぱり…。」
「自然素材がいいとか、パッケージが可愛いのがいいとか、ブランド力あるのがいいとか…。」
「自然素材…いや、可愛いのがいいと思います!可愛いのを贈りたいです!自分としては!」
「急に堂下さんの自我が…!でも分かりました、パッケージが可愛いものにしましょう!」
「はいッツ!!」
「声おっきい!」
体育会系の返事に流石に一言ツッコミを入れてしまうyouだった…。
それから、youの案内で市街にある百貨店の化粧品売り場へ向かい、
彼女の提案するパッケージの可愛さや綺麗さに定評のあるブランドでリップバームとハンドクリームを購入。
プレゼント用に包んでもらった商品は大変可愛くなっており、
これなら姪っ子も喜んでくれるはず…と2人で喜んだ。
(今一度言うが、姪っ子へのプレゼントは本来不要なものなのである。)
少し時間も余ったため、プレゼント選びのお礼も兼ねて近くのコーヒーショップで
休憩をして様々な話に花を咲かせた後、時間になって解散することとなったのだが…。
「そろそろ時間ですね…。」
「youさんは最寄りの駅ってどこ?一緒ならそこまで帰ろうかと思うんだけど…。」
「えっと…。」
と、自分の利用する駅名を返事するyou。
駅名を聞き、本当は違う駅ではあったが、方向も同じで、そこまで離れてもいないため
堂下は「駅は一緒」だと伝え、共に下車することに…。
そうして、youの利用する駅の改札を出て、今度こそ本当の解散となるはずだったのだが…。
「あの…今日は本当にありがとう、youさん。」
「こちらこそ、コーヒーご馳走様でした。プレゼントの件は、お役に立てたなら幸いです。」
「姪もきっと喜ぶと思う……から、えっと……よかったら喜んでくれたかお伝えしたいし、お礼もしたいなと思うんで…その…連絡先、とか…。」
「お礼なんて、お気になさらず。」
「あー…いや、そうじゃなくて……youさんとまた会いたいというか…。」
「え…。」
「ご、ゴメンなさいキモイですよね!すみません、いや、プレゼントの件は本当に、助かりました!はい!」
デートをしたかった下心はなく、姪のプレゼント選びが目的で誘ったのは嘘ではないと苦しい言い訳をする堂下…。
youは少し「うーん」と悩むように小さく声を漏らした後、堂下にこう語り掛けた。
「姪っ子さんが喜んでくれたかどうかのお知らせだけなら連絡先を交換するのは問題ないんですが、2人でまた出掛けたりするために、というのは…申し訳ないんですが、お断りさせていただくことになります……すみません。」
「え…あ、…そう、なんですか……。」
「はい……少し前から、お付き合いしている方がいるので…そういった意図では堂下さんと2人だけでのお誘いをお受けすることはできないんです。」
そう告げて、ぺこりと綺麗な一礼。
何もかもが丁寧で、誠実で、やはり大変好きになる要素ばかり…。
会った事の無い彼女の相手に嫉妬心さえ湧いてくる…
が、ここまではっきり言われたのであれば断念せざるを得ないわけで…。
「そ、そっか……それは残念…とっても……でも、分かりました!」
「すみません…。」
「あ、謝らないでください!それより、今日はお時間いただいてありがとうございました!」
「いえ、とんでもないです。」
「あっ……じゃあ最後なんで家まで送りますよ…!」
「あ、わたしスーパーで買い物して帰るんで大丈夫です。」
「あ、そういえば言ってましたね…。」
「さっき連絡がきて「今日は肉豆腐が食べたい」って言ってたので、食材を買わないとなんです。」
「あ、はは……そう、ですか…。」
「それじゃあ、堂下さん、わたしはこれで。また美心ちゃんの家でお会いしたら、よろしくお願いします。」
「あ、はい………また…。」
軽く一礼した後、手を振って歩き出したyouと、そんな彼女へ向かって少し気力の失われた顔で手を振り返す堂下…。
「くっそー……羨ましいぃ……youさんの肉豆腐…食いてェええ…!!」
あわよくば、連絡先を交換した後で、本日購入したプレゼントを渡して
「実はyouさんと一緒にいるための口実だったんです!」と、伝えようと考えていた堂下…。
その目論見は赤木しげるの存在により人知れず灰燼と化した…。
そうして、彼女が駅のロータリーを抜けて、見えなくなったところで「くぅ~~!」っと悔しそうな声を上げると、
堂下はこれが区切りとばかりに盛大な溜息を吐いて、再びトボトボと駅の改札へと向かうのであった…。
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一方…こちらはその赤木しげる。
仕事帰りに同僚の野崎治が「マミヤに駅前の洋菓子店のプリンをせがまれたから買いに行くのに付き合ってくれ」と言われたアカギ…。
勿論「面倒くさい」と断ったのだが「おひとり様1個なんです!!」と訴えられ…。
「マミヤの分は買えるじゃん」と返せば「代打ちしてもらった謝礼なんで「最低でも2個」って言われちゃいました…」と、泣きつかれ…。
どうせならyouに土産のクッキーでも買って帰るか…と、溜息交じりに付き合ってやったその帰り…。
それこそ、洋菓子店の前で治と別れて駅前の大通りを家路に向かって歩いていると、
バス停やタクシー乗り場のある、ロータリーのあたりに見知った女性と、見知らぬ男性の姿を発見。
距離が離れており、ハッキリと顔は判別できなかったが、アカギは直観的にそれが自分の恋人であると確信した。
都合よく信号待ちで足が止まったため、傍まで行くべきかと思考を逡巡させていると、
恐らくyouであろう女性が、男性に深々と一礼した後、2人で少し話してお互いに手を振って解散した様子。
ちょうど信号も青になったため、アカギは少し歩くスピードを速め、そっと…背後から彼女に近付く…。
「you。」
「!!!」
しっかりその姿を視界に捉えたところで、アカギは目の前の女性が自分の恋人であるとハッキリ確信。
まるで悪戯をする男子学生のように後ろから名前を呼んで抱き着いた。
「あ、あ、アカギさんッ?!!!」
「うん、さっき、たまたま見掛けたから。」
「う、後ろから急に抱き着かれたら危ないです……転びそうだった…。」
「ちゃんと支えるよ。」
「もう…。」
ゆるりと腕を解き、極々自然に彼女の隣に並んで歩き出す…。
「今日休みだったけど、どこ行ってたの?」
「あ、今日は用事があって市街に。」
「ふーん、用事…ね。」
今しがた見た光景を思い、その「用事」の全容が気になってしまうアカギだったが、
彼女に限ってやましい事は無いという確信もあるため、深く尋ねるということはしなかった…。
結果、彼女にとって別にやましい事ではないだろう案件と相手ということで、
恐らくは当事者の口からその全容が明かされることはないだろうと思っていたのだが、
意外や意外にも、youは笑顔で今日の出来事の詳細を語り始めた。
「あ!そうそう、今日は日用品買う用事が終わって帰ろうと思った時に急に知らない男の人に声掛けられてね!」
「!」
「誰か分からなかったんだけど、この間、美心ちゃんのお父さんの誕生日会で会った人だったんですよ!びっくり。」
「そう……その人がどうかしたの?」
「んー、わたしと美心ちゃんと近い年齢の姪っ子さんの誕生日プレゼントを買いにきてたみたいで、一緒に選んでほしいということで2時間ほどご一緒してきました。」
「2時間か…。」
「プレゼントはわたしも美心ちゃんも好きな化粧品ブランドのナチュラルなリップとハンドクリームにしたんですけど…姪っ子さん喜んでくれるといいな…。」
「2時間…ね。」
「アカギさん、聞いてます?」
一番聞いてほしかった「自分が選んだプレゼント」の話は聞き流している様子のアカギに、
youは少しムッとしながら横にいる男の顔を見上げた…。
「うん、聞いてる。youが2時間オレ以外の男とデートしてた。」
「・・・。」
「・・・。」
「デートではないです…買い物です。」
アカギからの言葉をすんなり肯定することはできず、youはピタリと歩みを止める。
アカギもまた、立ち止まってくるりと彼女を振り返ったため、お互いに向き合うこととなる…。
「オレの知らないところで…。」
「…えぇ……そんな……連絡先だって交換してないよ?コーヒーは奢ってもらいましたけど…。」
「まぁ……でも教えてくれたから許すよ、隠されたら外出れないように監禁だよね。」
「怖いよ!!!!」
「フフ……冗談抜きで、それくらい妬いてるの。」
「あら…まぁ…。」
軽く、サラリと言ってのけ、あまりに表情が普通なので、
アカギの「嫉妬した」などという言葉が本当に本気で真実なのかが分からない。
ただ、顔や声に出ないだけで、胸の内に潜む感情を、ことこういった状況に於いては
慌ててひた隠しにするような男でもないため、youは素直にその言葉を受け止めることにした。
「それは……ごめんなさい…けど、ちょっと嬉しいかも。」
「you、2時間の浮気……ちゃんと埋め合わせしてくれるよね?」
「浮気じゃないからちょっと納得いかない……けど…。」
「ん?」
「わたしも同じような話を聞いたら、2時間デートだと思うし、見知らぬ綺麗なお姉さんに妬きますよね……お相子だ。」
「・・・。」
だからごめんね、と困ったように笑ってアカギを見上げる。
それから「あ!」と何か思いついた様子で、youはピンっと人差し指を立てた。
「埋め合わせ!!肉豆腐にもう1品、アカギさんの食べたいの付けますよ。」
「成程ね、そういう………じゃあ…今日のメニュー変更していい?」
「え、肉豆腐食べたかったんじゃ…。」
「気が変わった。」
「もう…気紛れなんだから…。」
まぁ、まだ買い物に行ってないから変更はききますけど……とアカギの我儘に唇を尖らせるyouの頬にアカギの手が添えられる…。
急にどうしたのか、と不思議そうに顔を見上げれば、
男はいつも通り、至って平静な顔つきで恋人の目を見開かせる…。
「今すぐ帰ってyouが食べたい。」
「!!」
「食べたい。」
「それは…。」
「クク…オレの嫉妬心、受け止めてくれないの?」
「またそんなこと言う…!」
くつくつと笑うアカギに、からかわないで!と頬を膨らませば、
彼は飄々とした表情で、二人の「約束」を口に出す。
「だって心変わりしたらオレ、youのこと殺さなきゃいけないし。」
「しませんって…。」
「どうだか…。」
「だってやっぱり、アカギさん以外……愛せないと思う、ので。」
それは、今にも手に持っている洋菓子店の紙袋をその場に放り投げ、
こんな大通りの道端で、彼女を抱きしめた後に深いキスでも落としそうな程の衝動…。
「そこは「思う」じゃないでしょ…。」
「……アカギさん以外、愛せない。」
「もう1回言って。」
「わたし、アカギさんしか愛せないです。」
「知ってる。」
もう!と怒ると「オレもだから」と切り替えされ、
嬉しくて思わず涙目になってしまうyouなのであった。
You’re the one for me.
(さて、アカギさんの家に帰ってきてしまったんですけれども……買い物してないから肉豆腐は明日になるんですけれども。)
(うん、じゃあ脱ごっか。)
(もう、そういうの良くないですよ……やっぱりわたしの家に行きましょう!ご飯は準備しないと…お腹空きますよ。)
(じゃあこれで我慢してよ。)
(え…これ…。)
(お土産。)
(えー!このお店確か駅のトコのお菓子屋さんですよね!有名な…。)
(たまたま、治に付き合って行くことになったから、買ってきた。)
(このお店ならプリンですよー!いや、他のお菓子も勿論美味しいし嬉しいですけど…!)
(ああ、何かそんなこと言ってたね。)
(次回は是非プリンを…期待しております!!!)
(機会があればね。)
(でもクッキーも嬉しいです、ありがとう、アカギさん!!うれしー…。)
(まぁ、喜んでくれたなら良かったよ。)
(これは食後のおやつにするとして……ご飯何にしましょう…?)
(you。)
(はい?何ですか?)
(誤魔化しても無駄。)
(何をですか。)
(2時間オレ以外の男とデートしてたでしょ、その埋め合わせ。)
(だからデートじゃ…)
(随分ガタイのいい男だったみたいだけど?)
(なっ、みっ……?!)
(たまたまね。まぁ、youのことだから、特に何も心配はしてないけどね。でも、実際一緒にいたのを見てるんだからさ、色々……思うところもある。)
(そ、そう…ですね…。)
(…もうさ、すぐにでもyouのこと、食いたいんだけど……これはオレが我儘なだけ?)
(…アカギさん…。)
(…埋め合わせに応じてくれる?)
(……埋め合わせだけじゃ足りないかもですよね…。)
(え?)
(その時は……言ってください……が、がんばる…ので…!)
(クク……そう、そいつはありがたいことで。)
words from:yu-a
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