step2_(イベント編)
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「youさぁああーーーん!!!」
「?!!」
夕刻、福本荘に帰り着いたと同時に大きな声で名を呼ばれ
101号のマミヤに勢い良く抱き着かれたyou
お弁当を作ろう!
「お帰りなさい!待ってた!助けて!ヘルプ!」
「ま、マミヤちゃん?落ち着いて……とりあえず話を聞くから、家に入ろう。」
「うぅ……かたじけない!」
確かに困ってはいるようだが、マミヤの表情を見る限りでは、泣く程ではない様子。
youは自身の家の鍵を開け「どうぞ」とマミヤの入室を促した。
「お邪魔しまーす。」
「お茶でいい?」
「ありがとうございます!でも、ゆっくり茶をしばいている暇はあるけど無くて!」
「何か急ぎの困り事?」
「です!」
コクコクと頷くマミヤだが、矢張りそこまで困っている様子は見受けられない…。
会話の最中に準備したお茶を差し出せば「茶をしばいている暇など無い」と騒いだ割に
「あ、いただきまーす!」と、まったり茶をしばき始める…。
「それで、困り事って何?」」
「そうっ!あのね!一緒にお弁当を作ってほしいの!!!」
「お、お弁当…?」
「そうっ!」
マミヤいわく…。
普段は学校(本当は雀荘)帰りに、商店街の顔見知りのおっちゃんやおばちゃんにラーメンやらかつ丼やら定食、うどん等々…。
そういったお店でまかないや、ちゃんとした夕飯に呼ばれているため、自炊する必要性がほぼ無いのだという。
たまに家で食べる時もあるが、本当に稀なのでカップ麺やコンビニで済ませているという現状…。
そこで、出てくるのが心配性の叔父(本当はただの知人)の野崎治…。
アカギと同じ工場に勤務する彼が、マミヤの一人暮らしを心配して
「自炊はしているのか」、「3食ちゃんと食べているのか」、「ジャンクフードばかり食べていないか」と事ある毎に聞いてくるのだという…。
心配してくれるのは有難い限りだが、いい加減うざったく………
否、心配してもらうのが忍びなくなってきたため「大丈夫、ちゃんとしてるよ!」と宣言して
小言…ではなく、近況を尋ねてくる頻度を減らしたいのだと言う。
「なので、治のために弁当の1つでも用意すれば当分大人しくなるかと思って!」
「なるほど…。」
「しかもyouさんと一緒に作れば、何かご飯で困りごとあればyouさんに相談してるって思ってもらえるから一石二鳥!」
「そんな安直な…。」
「でも実際そうだし…治も安心するって。」
「そうかなぁ……まぁ、別にマミヤちゃんがいいならわたしは別にいいんだけど…。」
「やったー!じゃあ、オレは治の分を作るから、youさんはアカギさんの分を頼むね。」
「・・・何て?」
「え、だから……オレが治の分作って、youさんがアカギさんの分を作る。」
「何で?何でアカギさんの分まで作るの?」
空耳ではなかったようで、突然降ってわいた「もう1人分の弁当」を作ることに対して異議を呈するyou。
マミヤは小首を傾げながら「え、だって…」とその理由を話しだす。
「アカギさんにお弁当持ってってもらえば届けにいかなくていいじゃん。」
「それはそうかもだけど…!」
「治の弁当だけど、youさんと一緒に作ったっていうだけで絶対アカギさん拗ねるから、それなら2人分作った方がいいと思う。」
「拗ねるって…。」
「拗ねるっていうか……オレは問題ないけど、youさんが困るんじゃないかなと思ってさ。」
「何で?」
「えーだって『何で治の分はあってオレの分無いの?』ってずーーーっと作るまで言われ続けない?」
「う…っ…。」
それは何となく察するというか…。
言われてみると、マミヤの言う通りの反応をしてきそうだと、youも考えてしまう…。
少しでもその可能性があるのであれば、予め回避の対策を取っておくほうが賢明である…と。
youは「そうだね…」と肩をガックリと落としながら頷くのであった…。
そして、そういうことであれば、唐突に弁当を作る理由を予めアカギに話しておく方がいいだろうと…。
マミヤは早速アカギに電話を掛ける…。全く驚きの行動力である…。
数コールののち、アカギが応答した。
「あ、もしもしアカギさん?」
『マミヤか…どうした?』
「今どこ?仕事は終わった?」
『仕事が終わって今から雀荘行くとこ。』
「あ、いーな……って違う違う!あのさ、明日って仕事だよね?」
『そうだけど…。』
「治も出勤?」
『さぁ、そうじゃない?』
「おっけおっけ。あのさ、2人ともお昼ご飯っていつもどうしてる?」
『どうって……コンビニで弁当買ったり…食いに行ったり…?多分、治もじゃない?』
「チッ……アイツ、人には自炊自炊言うくせに……自分だって同じじゃねーか…。」
『それがどうしたんだ?』
「あー……ごめん、明日なんだけど、アカギさんと治、お弁当でもいい?」
『は?なんの?』
「詳しくはこっち戻ってきて話すよ。今、youさんの家なんだけど…。」
『youの家……じゃあ今から行く。』
「え、いいよ打ってきなよ。」
『いい。何時になるか分かんないし…特に誰かと打つって約束でもないし。』
「そう、分かったー。じゃあ、待ってまーす!」
『はいはい。』
通話終了のボタンを押したところでyouがマミヤに尋ねる。
「アカギさん、なんて?」
「今から帰ってくるって。」
「そう…。」
本当にどこにも寄り道をしなかったようで、電話を切ってから小一時間程でアカギが福本荘へ帰宅…。
ちょうどyouがマミヤと一緒に夕飯の準備を終えた頃に202号へとやって来た。
「ただいま。」
「あ、アカギさん、おかえりなさい。」
「何か良い匂いするね。」
「今日はマミヤちゃんのリクエストで煮込みハンバーグです。」
「いいね、美味しそう。」
「ちょうど今できあがったところなので、アカギさんの分も準備しますね。」
「ん、ありがと。」
玄関で靴を脱ぎ、部屋に上がると、先程電話を寄越した張本人のマミヤがキッチンから飲み物を持って出てきた。
「お、アカギさん、おかえりー!」
「ただいま。」
「とりあえずテーブルんトコ座っててよ、準備するから!話も後で!」
「はいはい。」
ものの数分で夕飯の準備ができあがり、本日はyouとアカギ、マミヤの3人で夕飯を囲むこととなった。
そしてそこで話されるマミヤの電話での案件…。
「実はさぁ、アカギさん…聞いておくれよ……かくかくじかじかで……治からの小言を軽減するためにyouさんに協力してもらうつもりなんだ……。」
「成程ね…。」
「だから、作った弁当を治に届けてほしいんだよね……アカギさんのも一緒に作るからさ、お願いしていい?」
「別に…構わないけど。」
「ありがとー!!!」
「あ、会社に冷蔵庫とかレンジとかある?」
「あるよ。」
「おっけ!じゃあ今日の夜作るから、明日、会社行ったら冷蔵庫に入れといて。お昼になったらレンチンして食べる感じでおねしゃす!」
「分かった。」
コクリと頷いたアカギにマミヤが「よかったー!」と両手を上げて喜ぶ。
そして、保険を掛けるためにもyouがそろり…と小さく挙手をしてアカギに物申す…。
「あ、あの……お弁当と言っても本当に簡易的なものなので、残り物は入れるし、冷凍食品使うし…一から手作ると言ったら卵焼きくらいのものなので…過度な期待はなさらないでください…中身も治くんと同じにしますし……と言っておく…。」
「フフ…全然構わないでしょ。」
「そ、そうですか…。」
それなら一安心…と、胸をなでおろすyou。
それから夕飯を終えると、誰に言われるでもなくアカギが席を立ちあがり、自分はこれで家に帰ると宣言する。
マミヤはというと、特にアカギを見送る義理もなかろう…と、これから台所を使用すべく、
3人分の食器を回収してお皿洗いを開始する…。
アカギがそれはもうスパッと見切りの早い様子で玄関へ向かうので、
youはぱたぱたと彼をを見送るためにその背中を追った。
「じゃあ、オレは帰るね。」
「え、もう帰るんですか…(珍しい)。」
「うん、だってこれから2人で弁当作るんでしょ?明日の朝取りにくればいい?」
「あ、はい…じゃあそれでお願いします。」
「分かった。折角だし、中身は見ずに明日の楽しみにしとこうと思って。」
「そ、そんな大したものでは…。」
「大丈夫、オレにとって大事なのは中身の問題じゃないからね……。」
「…好きなおかず入ってなくてもがっかりしませんか?」
「好きな人が作ってくれるから、がっかりなんてしないよ。」
「っ…!!」
そう言うとフフ…と笑ってyouの髪をくしゃりと一撫ですると、
そのまま手をヒラヒラと振って部屋を出て行くのだった…。
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翌日、ちゃんとマミヤとyouが作った弁当を朝から受け取ったアカギは
職場へ出勤してすぐにそれらを冷蔵庫へ入れて保管し、昼休憩に入ったと同時に治へと声を掛けた。
「治、今日の昼飯は弁当だ。」
「え、何ですかアカギさん急に…。」
「マミヤから預かってきた。」
「いや、話が全然見えないんですけど…???」
「あー……マミヤから何か連絡とかは?」
「いえ特に……いや、待ってください……何かメッセージ入ってる。」
仕事中は見ることができなかった携帯のメッセージを確認してみたところ、
マミヤから確かに「youさんと一緒に作ったお弁当をアカギさんに持ってってもらったから、一緒に食べて」
といったメッセージが入っていることに気が付いた治…。
「何か、お前が事あるごとに「自炊してるか」とか「ちゃんと食ってるのか」って聞いてくるのがうざ…面倒…しつこ………えっと…ちょっと小うるさかったみたいだぞ。」
「最後にオブラートに包んでもらったのは有難いんですが、それまでの棘のある言葉全部聞こえちゃってますよアカギさん…。」
「悪ィ…。」
「いえ、いいんです……確かにおれも心配し過ぎの自覚あったんで……はは…。」
「つーか、マミヤの方がお前よりよっぽどサバイバル力はあると思うぜ…。」
「うっ…!アカギさんが判断してそう言われると…ぐうの音も出ない…。」
「まぁ、結果的にyouにオレの分も作ってもらえたから礼を言わなきゃな。」
「そういえば、アカギさんもお弁当初めてですね!もしかしてyouさんの愛妻弁当…初ですか?」
「愛妻…あー…(まだ嘘バレてなかったのか…まぁいいか)うん、そうなるね。」
ここでアカギの言う嘘というのは、治に「youは自分の嫁」と伝えていることなのだが、
未だバレていなさそうなので、変わらず黙っておくことを決めるのだった…(その方が気分がいいため)。
それから2人は事務所の休憩室に向かい、冷蔵庫から弁当を取り出す…。
「何か治のだけ手紙あるぞ。」
「え…『甘党の治のために卵焼き甘くしといたぜ!』…はは…マミヤらしいな…。」
それを電子レンジで交互に温め、テーブル席で向かい合って食べることにする…。
「何か、一緒に作っただけあって中身ほぼ一緒ですね。」
「うん、そう言ってた。」
「でもちゃんとお弁当してる……確かに…傍にyouさんがいて、マミヤの面倒みてくれてるなら…全然大丈夫ですね。寧ろおれの方がちゃんとしないとだ…。」
「そうかもな……いただきます。」
「ううっ…耳が痛いなぁ……いただきます!」
確かに、youが昨日言った通り、中身は2人とも同じ内容で、昨日の夕飯の残りである煮込みハンバーグも入っている。
冷凍食品のフライものも入っているが、ちゃんと彩りやご飯とのバランスも考えて詰めてくれているようだった。
欲を言えば少し男性としては量が欲しいと感じるくらいのものではあったが、
それを差し引いても全然おつりがくるぐらいにはアカギも治も満足できるお弁当といったところ…。
そんな2人が弁当を食べ進めていると、治が卵焼きを口にした瞬間「うわっ!」と突然声を上げた…。
「どうした?」
「あ……甘いぃ……。」
「卵焼きって甘いんじゃないのか?」
「これは甘いってレベルを超えてますよ…!?」
「そうなの?」
自分はまだそれを食べていないから分からない…ということで、アカギも卵焼きを口にしたのだが、
寧ろアカギの卵焼きに関しては甘く味付けはされておらず、出汁の風味と程よい塩味を感じるだし巻き卵…といったものだった。
「オレは甘くないよ。」
「えぇっ?!」
「食ってみるか?」
「え…じゃあ僕のもどうぞ……いただきます。」
もぐ…と、お互い2つ入っていた卵焼きを交換して食べてみる…。
「美味しい!アカギさんの卵焼きは出汁巻きなんですね!」
「お前……これ……砂糖……っ…!」
「・・・おわかりいただけましたか…?」
「すげー甘い…。」
「はい…。」
恐らくは砂糖を目分量で入れたのであろう…。
マミヤの作った卵焼きは凡そ人の想像の2倍程甘さの際立つものとなっていた…。
その点以外はほぼyouとの合作であろうと分かるため、
やはり最終的にマミヤの生活力が心配になる治なのであった……。
ただ、そうだとしても態々弁当を自分の為に作ってくれたことには素直に感謝もすべきとあって、
治はマミヤにお礼のメッセージを返し(そこにちゃんと卵焼きが甘すぎたんだけど…とも付け加えておく)、
アカギとyouには自分の小言が原因で弁当騒動に巻き込んでしまって申し訳ないと、謝罪を入れる…。
「本当にすみませんでした…アカギさんとyouさんを巻き込んでしまって…。」
「オレはいいよ…さっきも言ったけど、youの弁当食べれたし。」
「じゃあ、帰ったらyouさんに「野崎が謝ってた」って伝えてください…。」
「フフ…多分気にしないと思うけど……分かった、一応伝えておく。」
「すみません、ありがとうございます!」
そうして2人の職場ランチタイムは終了…。
弁当箱や包みなどは全てyou宅のものであるということで、
休憩室で洗い物だけ済ませて、全てアカギが回収してyouへ返却することとなった…。
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「ということで、治がyouに「自分の小言の所為でマミヤの我儘に巻き込んですまなかった」って謝ってたよ。」
「そんなの全然気にしなくていいのに……。」
「そう言うと思うって言ったんだけどね、一応。」
弁当箱とその他のものをyouに返却すべく、その日のアカギは仕事が終わって真っ直ぐ福本荘へ帰宅…。
夕飯時に間に合い、youと共に食卓を囲む中で治からの伝言を伝えた。
「寧ろマミヤちゃんのことを本当に心配してて治くんは優しいなって思ったし…。」
「じゃぁ、治がマミヤを心配したら、オレはyouにまた弁当作ってもらえるってこと?」
「な、何でそういうことになるの…。」
「だって嬉しかったからさ。美味しかったし。」
「それはどうも…。」
「ねぇ、今日の弁当さ、治の卵焼きは凄く甘かったんだけど、オレのは違ったね。」
「甘い方が良かったですか?」
「いや……寧ろ甘くない方が…。」
「アカギさんはそうかなと思ったので、甘くしなかったんですけど…。」
「あーー(これもう絶対愛妻弁当じゃん…そうじゃん…)」
「アカギさん?」
「いや……ちょっとね…。」
作る際に食べる相手の事を想ってくれているのであれば、
これはもうそういう代物で間違いないだろう…と、口にせずとも嬉しさを人知れず噛み締めるアカギ…。
同時に、1回きりで終わってしまうのがこんなにも寂しいとは思わなかったと…。
少し悲し気な溜息を吐いたのだが、赤木しげるという男はそれで終わる人間ではなく…。
「ねぇ、you。」
「はい…?」
「もう1回……今度は少し甘い卵焼きが食べたいんだけど……弁当リクエストしたらだめ?」
「えぇ?!」
「お金なら払うよ。」
「い、要りませんよお金なんて…。」
「だめか?」
「もう!……1回だけですよ…?」
困ったような、呆れたような顔で弁当のリクエストを受け入れてくれるyouに「ありがと」と微笑むアカギ…。
その後もちょくちょく「今度はアレをリクエストしたい」や「またコレが食べたい」などと
アカギの巧みな誘導に負けて、その都度弁当を作らされる羽目になるのだが、それはまた別の話…。
棚ぼたラッキーとはこのことか。
(あ、アカギさん今日はまたお弁当なんですね!)
(治か……今度は甘い卵焼き食べたいって言ったら作ってくれた。)
(羨ましいなぁ……甘すぎないですか?)
(ああ……食うか?)
(いえっ、いいですよ!それはyouさんがアカギさんのために作ったお弁当なんで!!)
(別に気にしなくていいのに…。)
(へぇ~…んじゃオレが食ってもいいかぁ、アカギぃ?)
(川島先輩…!)
(…川島先輩。)
(生意気にもアカギが愛妻弁当なんか持ってきてるっつーからよ……卵焼き、食っていいんだろ?)
(ダメです。)
(あ゛?!)
(治はyouと知り合いだからいいですけど、川島先輩は知り合いじゃないからダメです。)
(ど……どういう基準だよ…。)
(ダメです。)
(チッ……意味の分からねぇ事言いやがって………もういい!!)
(お、怒って行っちゃいましたね……午後から機嫌大丈夫かな…。)
(知ったこっちゃない。)
(アカギさん……ていうかさっきの断る理由、不思議過ぎて笑いそうになっちゃいました。)
(あんなのテキトーに断る建前に決まってるだろ。)
(え、そうなんですか?)
(お前なら嫁が自分の為に作ってくれた卵焼きを川島に食わせたいと思うか?)
(…イヤですね…普通に。)
(うん、だから、それな。)
words from:yu-a
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