step X_(番外編)
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「え…し、しげるくん?!」
「?」
とある日、市街地で一人の少年の後姿を見て
思わず声を掛けてしまった。
アカギさんといっしょ(番外編3)
呼び掛けに応じで、くるりと振り返った白髪の少年の顔を見て「あっ!」とyouが小さく声を上げた。
「ご、ごめんなさい、人違いでした!」
「・・・。」
ペコペコと、頭を下げて謝罪するyouをじっと見つめる学生服の少年…。
そう、youはいつぞや夢か現かで邂逅した(そんな気になっているだけかもしれない)、
隣人である赤木しげるの少年時代の彼と見紛ってしまったのだ。
(※「しげるくんとわたし」参照)
そういえば同じ白髪ではあるが、彼は後ろか見ても襟足が長く、
細かいところまでよく観察していれば間違うこともなかったのかもしれない。
ただ、学生服で白髪という外見でも稀有な上、纏う雰囲気がそこはかとなく似ていたこともあり、
うっかり大きめの声で呼びかけてしまった。
謝罪を止めて顔を上げると、未だ自分の前で立ち止まっている少年と初めて視線が合う…。
「(あれ、この顔……!!)」
学生服の白髪の少年は後ろ姿こそ、いつぞやの少年時代のアカギに似ていたが、
正面から見た顔つきは全く別人…。
そう、赤木しげるとは別人であるものの、その顔はこれまた隣人の伊藤開司にそっくりであったもので、
思わず正面から見ても驚きで絶句してしまった。
暫くフリーズしていると、様子をおかしく思ったのか、少年が小首を傾げて問いかけてきた。
「大丈夫、おねーさん?」
「え、はい?!」
「誰と間違ったの?」
「え、え、えーっと……。」
「この歳で白髪の中学生なんて早々いないハズ……オレと同じような見た目のヤツなんてさ…。」
「えっと……うん、そうだね、珍しいよね。」
「だからちょっと気になった。どんなヤツかなって。」
「わたしの……知り合いの甥っ子くん、かな~……はは…。」
「嘘下手……変なおねーさん。」
「はぁ…すみません…。」
まさか「この間会った少年時代の隣人と似てた」など、ワケの分からない説明などできるはずもなく…。
咄嗟に「知り合い(南郷あたり)の甥っ子」と、あまり親しい関係性の築けなさそうなポジションで説明してしまい、
youは「変な人」というレッテルを甘んじて受け入れる羽目になるのだった…。
中学生に指摘され、しょんぼり項垂れていると、目の前の彼は唐突に突拍子もない提案を持ち掛けてきた。
「ねぇ、おねーさん……名前は?オレはカイジ、赤木カイジ。」
「え、凄い名前…。」
「ああ、カイジ?うん、よく言われる。」
「(いや、そうなんだけどそうじゃないっていうか……って言っても分からないよね)」
「ね、名前教えて。」
「あ、ああごめんなさい……わたしはyou。」
「youさんね、ねぇ、youさん、ちょっとオレと勝負しない?」
「え?え?な、なぜ…?」
「気になったから。その知り合いの甥っ子。」
「!」
「会って話してみたい。だから勝負に勝ったらその子に会わせてよ。」
「えぇっ?!」
「何にする?ポーカー?オセロ?将棋?あ、じゃんけんでもいいよ。」
「ちょ、ちょっと待って…何いきなり…!」
グイグイ勝負を迫ってくる少年に、ドン引きするyou。
1歩、2歩とその場から後退していくと、トン…と背中が路地裏の壁に付いてしまった。
追い詰められたyouは「えーっと」と言葉を繰り返す…。
「ねぇ、勝負!」
「し、しません……そもそも会わせる術がないもの…!」
「…どういう意味?」
「えっと……こ、この近所に住んでないから…な、なかなか会えない子なの。」
「・・・。」
「・・・。」
「おねーさん、嘘下手過ぎ…。」
「うっ…!で、でも会えないのは本当!わたしも会いたいくらいなのに……どうしても会えない事情があるの。」
「…ふーん……せっきん禁止令ってヤツかー……やっぱおねーさん面白いね、年下が好きなの?」
「は、はい?」
「白髪とか珍しい毛色が好きなんだ?いいよ、オレyouさんのモノになってあげても。勝負して、おねーさんが勝ったらだけど。」
「ちょっと待って、全然話が見えない!」
「未成年いんこー罪?とどのつまり、ショタコンってやつなんだろ…?」
「誰がよ!!」
「違うの?」
「違いますッツ!!」
一方的に勝手な汚名を着せられ、全力でそれを否定するyou…。
冗談じゃない!と、プンスカ怒りながら目の前の少年、赤木カイジに食って掛かる…。
「わたしは至ってノーマルです!そんな罪も犯してないし、しげるくんとは…そ、そういうんじゃないから!」
「ふーん、白髪のしげるくん…ね。」
「ああ、もう……とりあえず勝負はしません、間違えて声掛けて呼び止めちゃったのは謝る。だからもう行くね、わたし。」
「ダメ、待って。」
路地裏から表の通りに出ようと歩き出したyouの腕をパシッと掴む赤木カイジ…。
「な、なに…?」
「youさんがショタコンじゃないのは分かった。でも、オレ、何でかyouさんが気になる。」
「は…?」
「youさん、オレと付き合って!」
「えーっと……何処へ?」
「付いてきてって意味じゃないっ!恋人になってってこと!」
「急すぎる!!」
当然の反応である…。
この赤木カイジ…どうも思い立ったが即行動、即発言の気があるようだ…。
youはいよいよ頭を抱えてしまう…。
「ど、どうして急にそんな話になるの…。」
「分からない!でも、何か……youさん面白い匂いがするから!」
「何か失礼だよその言い方!」
「勝負しよう、そんでオレが勝ったらオレと付き合ってよ。ねぇ!」
「何故そうも勝負をしたがる……。」
「大丈夫!youさんが未成年インコー罪で捕まらないように、大人になるまでエッチは我慢するから!」
「全然大丈夫じゃない!そしてわたしを勝手に犯罪者にしないで!」
全く埒が明かない問答を先程から繰り返しており、流石のyouもいつもの丁寧さを捨て去り、このまま走り去ろうと思う程…。
(しかし、逃げても恐らく追いつかれるため逃走は断念…。)
ここはもう、はっきりキッパリお断りをするしかない…と、youは意を決して赤木カイジを見た。
「君とお付き合いすることはできません!」
「何で。」
「何ででもです!」
「ダメ、納得できる理由じゃないとオレ、諦められないッ!」
「つ……付き合っている人がいるから…っ!!」
「・・・。」
「・・・です…。」
「だから、ウソ下手過ぎなんだってば…おねーさん…。」
「うぅっ…。」
最後が尻すぼみになり、自分でも情けないくらいに嘘が下手だとは思ったyou…。
中学生の少年相手にムキになって、バレバレな嘘を吐いている自分が大人気無く思え、
情けない表情で俯いていると、ふいに自分の身体が壁に固定され、斜め下から綺麗な肌艶の少年が自分を覗き込んでいることに気付く…。
ハッと意識を彼に戻せば、いつの間にか両腕を壁に付かれ、その間に自分の身体が収まっている…。
所謂両腕による壁ドンなのだが、相手が中学生ということで、若干振りほどいて逃げられそうな様子でもある…。
「え、えっと…赤木、カイジ…くん?何をしているのかな?」
「壁ドンだよ。逃げないで、勝負!勝負!」
「しーまーせーん-!」
「何で~!だって付き合ってるひと、いないんでしょ?好きな相手もいないんでしょ?オレにもチャンスちょうだいよ!」
「チャンスって…………え、あ、ああっ!!」
「?」
子どもがお菓子を買ってと強請るように「自分と付き合って!」と懇願してくる赤木カイジを窘めようとした刹那…。
表通りの道を歩いているとある人物の姿を見掛け、youは目を見開く。
現状への救世主となってもらえるかもしれない……と思ったワケではないが、
気付けば彼女は咄嗟にその名を大きな声で叫んだ。
「アカギさんッツ!!」
大きな声で呼びはしたものの、此処は屋外、しかも自分は裏路地におり、
通り過ぎていく彼は車も多く通る表通りを歩いているワケで…。
流石に声は届かなかったようで、道をまっすぐ通り過ぎ、路地裏からはすぐに見えなくなってしまった…。
「……そうだよね…聞こえないよね…。」
「知り合い?」
「え、あ、うん……。」
呼び止めることができなかったことに対しての残念な様子にしては、大いに意気消沈しているようで、
そんな彼女を赤木カイジが不思議そうにじっと見つめていると、表通りの方から路地裏へと誰かが歩いてくる気配と音に気付く。
「・・・you…?」
「え。」
「あ、やっぱり。何か名前呼ばれた気がしたから戻ってみたら……。」
「アカギさんッ!」
「何してるの……っていうかこれ、どういう状況?」
「ちょっと……事情が…。」
現れたのは福本荘201号の赤木しげる…。
自分の名前を呼ばれた気がして一度通り過ぎた路地裏へと戻ってきてみれば、
隣人で、想い人である女性が、自分と似たような髪色の少年に壁ドンをされて、追い詰められているという謎の光景…。
「おにーさん、誰…。」
「こっ、このお兄さんだよ!このお兄さんがわたしの…お、おお……おつ…。」
「・・・。」
「お付キ合いしている人ナンデスよ?!」
「いや嘘下手過ぎじゃん!!」
再び中学生も呆れる程動揺の表情で、ぐだぐだの嘘を吐いたyou。
「なぁっ!見え透いた嘘はいいから、早く勝負してオレと付き合ってよ~!」
「……嘘なんかじゃない。」
「え…?」
「オレがyouの相手で間違いないよ、それがどうかしたのか、少年。」
「そんなの…嘘でしょ。」
「本当だってば。youとは付き合い始めたばかりだから、口に出すのが恥ずかしいみたい。それがどうかしたの?」
「・・・。」
「ん?」
突如現れ、余裕綽々の表情で「彼女は自分の恋人だ」と真っ赤な嘘を言ってのけた男を、赤木カイジは怪訝な表情で見つめると、
彼と向き合うべく、ようやく壁から両腕を離してyouの身体を開放した…。
「あ、あの……アカギさ…。」
「どうしたのyou……こんなとこで…何してたの?」
「それは…わたしが聞きたいくらいでして……とりあえず、人違いで声を掛けた彼、赤木カイジくんに何故か勝負を挑まれておりました。」
「はぁ?」
端的すぎて全く意味合いが伝わらないが、それはそれで真実…。
ただ、それに至る理由が話されていないことに、目の前の少年が不機嫌そうに反論する。
「勝負を挑んでるのはyouさんに恋人になってほしいからだよ!!」
「よく分からんが、勝負して勝ったら自分と付き合ってほしいって、挑んでるってことか?」
「そう!」
「クク……面白ェガキだな……意味分からな過ぎて。オマケに名前もワケ分からない。」
「ワケ分からないっていうなよ……確かに珍しい名前だけどさ!」
「クク……悪い悪ィ…。」
youと同様「そういう意味じゃないんだけどね」と思っていることは間違いない様子。
見た目や喋り方などは隣人の伊藤開司を彷彿とさせるが、
気になった事や興味のあることに関してはグイグイ押していく性格は自分に通ずるところがある…と、
相対しているアカギのみならず、youも考えていたこと…。
要するに「アカギとカイジを足して2で割ったような少年」と称するのがしっくりくるだろう。
世の中には面白いヤツがいるものだ…と、恐らくそれはこの場に集った3人全員が各々を見て思っているだろうが、
その中でも今回の最たる変わり者が、挑発するようにアカギに声を掛ける。
「おにーさんでもいいよ、別に。」
「あ?」
「じゃあ、おにーさんがyouさんの代わりにオレと勝負してよ。」
「勝負って……お前が勝ったらyouを譲れって?」
「ウン。」
コクリと頷く赤木カイジ。
「トランプ、ポーカーでもブラックジャックでも囲碁将棋とか……じゃんけんだっていい。」
「じゃんけん…。」
ターゲットが代わっても全く事態が好転した気がせず、youは変わらず額に手を当てて俯くが、
勝負を持ち掛けられたアカギはというと、彼女の意に反して口角を少し釣り上げた。
「バカ言え、誰がそんな勝負受けるか。じゃんけんの一回で、まだアソコの毛も生え揃ってねぇガキにオレの女を渡すわけねぇだろ。」
「む……アンタ、勝つ自信無いのか…?!」
「クク…いや、その条件には同意しかねるが、勝負は受けてやる。」
「え、ほ、本当か?!」
「ああ。ただし付き合うじゃなく……ま、デート1回が関の山ってとこか。」
「えーっ!」
「キス付きでどうだ?」
「う~っ……1週間!」
「それはダメ、回数券じゃないんだから……たった1回、それに全力賭けないでどうすんの。」
「(おお……何かカッコイイ…。)」
ポンポンと話を進めるアカギと、赤木カイジ少年に対し、
すかさず「わたしの意思は無視かいっ!!」とyouが怒りの声を上げたが、2人は無視…。
話を更に続ける。
「じゃあ、その条件でもいいとして……何の勝負するんだ?」
「あー……麻雀?」
「(おおお…!何かカッコイイ!!でも)オレ麻雀分かんない。」
「あ、そう……じゃあ何でもいいよ。」
「んーッ…どうしようかな……何にしようっ……!」
「じゃんけんにする?」
「そうだ!神社の石段を背にしてじゃんけんしよう!負けた方が後ろ向きに石段に向かって一歩後退するやつ!」
「・・・なかなか面白いこと言う。」
「だろ?!スリル満点。こないだ同級生と学校近くの神社でやったんだけど、大怪我必至だった。結局、ガチで後ろ見てなかったから、最後の勝負で動いた時にオレが足踏み外しちまって……アイツが止めようとしたけどお互い庇い合って転げ落ちちゃったから、2人で骨折したりの大怪我。生きててラッキー。」
「ハハ、だろうな。」
「じゃあ、それでいい?!」
「よくなーーーいッツ!!」
「「うおっ?」」
恐らく、先程アカギを呼び止めようとして叫んだ声より二割増し程大きな声でyouの怒りの制止が入った。
声のボリュームに驚いて彼女の方を見る2人…。
「you…。」
「今アカギさん「いい」って言い掛けましたよね。」
「未遂…。」
「それわたしが止めたからでしょ!!」
「・・・ハイ。」
「カイジくんも!そんな危ない遊び…もう遊びじゃないね、危険行為はしちゃダメ!!」
自分はまだ肯定も否定もしていない…と言い訳しようとするアカギをキッと睨んで窘める。
同様に、勝負を持ち掛けた赤木カイジにもお叱りの言葉をぶつけるyou…。
「危険行為……違うよ、ギャンブルだよ!」
「危 険 行 為 で す。」
「うっ……で、でも誰にも迷惑掛けてないし。オレ達が納得して勝負しただけだし…。」
「迷惑です。」
「なんで!どこが!」
「階段から転げ落ちてもしどちらかが死んだらどうするの。」
「それはオレの天命!命尽きる時だから!もし助けるのが面倒なら助けてくれなくていいッ!」
「そうじゃなくて、死んだ時、神社の管理者にどう説明するの。」
「え。」
「2人がギャンブルのために1台の救急車を呼んだら、もしかしたら本当に救急車を必要としている人が助からないかもしれない。」
「う…。」
「お互いご両親はいる?なんて説明するの。」
「あう…。」
「何より、今回アカギさんとキミが怪我…じゃ済まないかもしれないのに、そんなことになったら……わたしが悲しい。」
「・・・。」
「すごく悲しい。」
ドが付くほどの正論で論破され、反省したようにしょんぼりしたのは、まだまだ彼が精神的に幼いからなのかもしれない。
おまけに、これから恋人になってほしいと告白した相手を、場合によっては一人孤独にさせてしまうことになる…という点に改めて気付き、自分を省みたというところ…。
そうしたことで、赤木カイジは、素直に謝るという手段を取るのだった。
「…youさん、ごめんなさい。」
「・・・。」
「ここでオレが死んだら、youさんと付き合えないもんね…。」
「うん……多分そこはあまり重要ではない。」
「だから、おにーさんと勝負して、りゃくだつ愛して、youさんと付き合う!」
「カイジくん、お願いだからお姉さんの話聞いて。」
「もうじゃんけん、ただのジャンケンでいい!絶対勝って、デートする!その1回のデートで必ずyouさんをゲットだぜ!」
「わたしポケモンじゃない。」
「っし……おにーさん、勝負!」
「聞け。」
どちらかと言うと「youと付き合いたい<アカギと勝負がしたい」の割合なのだろう…。
彼女の横からのツッコミはただの囁きくらいにしか思っていない様子で軽く流し、
赤木カイジはアカギに向かって腕を突き出す。
「おにーさん、youさんとのデートとキスを賭けて、勝負!」
「クク…いいだろう。」
「せーの!!さいしょはグー!じゃんけんポン!!!」
・
・
・
・
「…くやしい。」
「だろうな。」
「めっっつちゃくやしい…。」
「どのみちyouはオレのモンだし、仕方のない事…。」
「うう…。」
「命懸けの博奕は、全責任を自分で背負えるようになってから考えてみなよ、その時はオレもきっちり向き合ってやる。」
「ほっ、本当か?!」
「ああ。」
「今更だけど、おにーさん、名前は?」
「アカギ。赤木しげる。」
「!」
「どうかしたか?」
「いや、うん……何でもない。」
アカギの名を聞いた時、一瞬驚いた表情をした赤木カイジだったが、
首を横にふるふると振って「何でもない」をアピールする。
それは、自分と自分の友人に近い名前であったことや、
この邂逅の初めにyouが間違えた「白髪のしげるくん」がアカギその人にしては、
自分とえらく身長も違い過ぎるため、何故間違えたのかと不思議に思った事なども含めてのものだったが、
今更それを話題に上げたとて詮無い事…と、赤木カイジは何も言わずにおくのだった。
そうして、アカギの勝利に終わった勝負の後、
これ以上youに詰め寄ることができなくなった彼は残念そうな顔で深く溜息を吐いた…。
「はぁ~……仕方がないか……残念だけど、今回は一時撤退しておく。」
「一時撤退って…。」
「youさん!」
「は、はい?!」
「youさんがオレとエッチしても未成年インコー罪にならない年齢になったら、また来るから!」
「またそんなことを…!!」
「その時は絶対、命懸けの勝負してくれ、赤木しげる!」
youに自分をアピールをしているが、そこにはアカギとの勝負が必須らしい…。
ただ、至って真剣な眼差しで訴えてくるので、アカギもクク…と笑って彼に応える…。
「いいよ、何で勝負するかそれまでじっくり考えときな。」
「分かった、麻雀、覚えてやる!」
「は……それは……楽しみなことで。」
「じゃぁな!!」
最終的にアカギからの勝負の承諾を得たことに満足したのか、
赤木カイジは何ともサバサバした様子で2人に手を振って路地裏から、明るい表通りの方へと走り去っていった…。
今までのしつこさが嘘のように、あっさりした別れに、youが暫し呆気に取られていると、
不意にアカギから声を掛けられ、ハッと我に返った。
「大丈夫、you?」
「あ、は、はい……大丈夫……あの、アカギさん、助かりました……ありがとう。」
「ガキ一人の対応に何でこんな追い詰められてたのさ……。」
「すみません……凄くグイグイくるもんで…逃げられずにいました…。」
「それにしても、未成年淫行罪やら略奪愛やら……最近の中学生は凄い話するんだな…。」
「ですね…。」
「ま、オレがyouの傍にいる限り、そんなの縁遠いけど。」
「どういう意味ですか??」
「youの恋人は赤木しげるで不動って意味だよ。」
「そもそもお付き合いしてないですよね。」
「あらら。」
「自分が恋人なので未成年と付き合うことも、奪われることも無い」と言ってのけるアカギをジト目で睨むyou…。
「…でもさっき「このお兄さんがわたしのお付き合いしてる人です」って言ってたじゃない。」
「あ、あれはカイジくんに諦めてもらうための嘘だって、アカギさんだって分かってたくせに…。」
「残念……あ、でも、デート1回は有効だよね?」
「!!」
先程の会話を蒸し返され、驚いた表情でアカギを見つめるyou…。
「えっと……有効…なんでしょうか…。」
「youの代わりに勝負したんだし?反故にするのも霧散させるのも、さっきの子に対して誠実でない気がしない?」
「そう……なんですよね…それはちょっと思った…。」
「じゃあ、オレとデートしてくれる?」
「…アカギさんがするというなら…。」
「うん、したい。」
「分かりました…。」
「あとキスね。」
「それはしませんよ…!」
「そんなのは罷り通らないでしょ……確かに賭けの内容は「デート1回、キス付き」だったはず。自分本位に内容変えられちゃ賭けの意味が無い…。」
「うっ…!」
赤木カイジからの壁ドンが終わったかと思えば、今度は赤木しげるからの壁ドンが待っていた…。
中学生の身体とは違い、自分より体格の良い成人男性に追い込まれては逃げ場も作れず…。
まるで断れば今正にそれを実行しようとしているかの如き迫り方…。
「あ、アカギさ…。」
「デート1回。」
「う……はい…。」
「キス付きで。」
「う…。」
「キス付きで。」
「わ……分かりましたよ!分かりました!!」
「よし。」
youが折れて承諾するや否や、壁に付いていた手を離し、彼女を開放…。
折角なので、雰囲気あるところでキスしよう、何処にするか …などと愉快そうにデートの計画を立て始めたアカギ…。
youはそんな彼を横目で見遣り、また体よく丸め込まれてしまった…と、小さく息を吐くのだった…。
「それはそうと、アカギさん、じゃんけんも強いんですね…。」
「あー、アレね。実はじゃんけんって必勝法あるって知ってた?」
「え?!そうなんですか?」
ビックリするyouに、アカギは自分が勝負に勝てたのには理由がある…と、
じゃんけんの方法に関して説明を始めた…。
「サブリミナル効果みたいなヤツでさ、じゃんけんの「最初はグー、ジャンケン」の瞬間に、チョキを出して、「ポン」でパーを出すの。」
「え、全然気付かなかった…。」
「チョキが見えた瞬間、相手の頭の中で無意識にグーなら勝てると判断し、グーを出す。そういう脳の仕組みを利用した方法だよ。伊藤の方のカイジにはこれよく効くんだよな。」
相手が引っかかってくれて良かった、と笑うアカギ。
「あと、どうしてもあのガキの名前が気に食わなくてさ……勝ちに行ったとこあるよね。」
「そ、そんな……大人気無い…。」
「だって「赤木カイジ」だぜ……何かの冗談かと思ったわ。」
「それについては同感です。」
コクコクと頷くyou。
とても珍しい出会いを果たした…とアカギの意見を肯定した。
そんなこんなで、ようやく静けさと平穏を取り戻した様子のyou。
はぁ~っと大きな息を吸ってはいた後、現時点での心境を述べる…。
「あぁ……何かドッと疲れました……お腹空いた…アカギさん、お昼もう食べました?」
「今どっかで食べようと思って歩いてたとこ。」
「本当?じゃあ、よかったら一緒に食べに行きませんか?」
「勿論。」
「何食べましょうか…。」
「youが食べたい。」
「あ、わたし今日はちょっとがっつり食べれそうなんでお肉とかがいいかも。」
「チッ…。」
アカギのセクハラ発言を華麗にスルーし、話を無理矢理先に続けていくyou。
最早2人の遣り取りではテンプレートのようなものである。
ただ、定型パターンではあるものの、自分のアピールを軽くあしらわれるのには不満を抱くところではあるため、
少しムッとしたアカギは、意気揚々と自分の前を歩き出したyouをバックハグで固定した。
急に身動きが取れなくなって焦り、稼働できる首だけで後ろを見ようとしたyouの耳元で
アカギがちょっとだけ不機嫌そうな声で囁く…。
「you…。」
「ひぁっ…!?」
「…たとえガキだろうが何だろうが……もうオレ以外の男に翻弄されちゃダメだよ。」
「アカギさ…っ!」
「アンタは絶対…オレの女になるんだから。」
「っ……み、耳元やめ…っ!」
「やくそく。」
「~!!」
最後にかぷり…と耳を甘噛みして、アカギはyouの身体をパッと解放する…。
未だぞわぞわと鳥肌を立たせ、フラフラとよろめきながらもyouはアカギを振り返った。
「あっ、アカギさんッツ!!」
「クク…ごちそうさま。」
「まだ何も食べてないっ!」
「フフ……そうだったね、じゃあ飯食いに行こうか。」
「もう!もうっ!」
「なに?一人で歩けなくなっちゃったの?仕方ない……さ、行こうか。」
「~~ッ!アカギさんのど馬鹿!」
「クク…。」
そうして、悪戯が成功して喜ぶ子どものように、くつくつと笑いながら、
youの手をしっかり握ってアカギは表通りへと歩き出すのだった。
でもちょっとだけ
再戦が楽しみだったりするよね
(言わないけど…)
(ところで、人違いでアイツに声掛けたって言ってたけど、誰と間違ったのさ……アンタあんな知り合い、いたっけ?)
(えっ……えっと…。)
(白髪だったけど、身長とか学生服だし、オレと見間違えるってことはないだろ?)
(アカギさんではないですけど……アカギさんでもあるというか…。)
(??)
(しげるくんと……間違えました。)
(あー……。)
(あの時のあれは夢だったって、それはそうかもしれないんですけど……無意識にしげるくん会いたいって思っちゃったのかな…。)
(襲われかけたのに会いたいなんて、よっぽどガキの頃のオレのこと好きなんだね、youは。)
(うう…それは言わないで…。)
(その成長後がオレなんだけど?)
(はぁ……知っておりますが。)
(おい。)
(え、何…。)
(オレのことは?無意識に会いたいとか思わないわけ?気になるとか、好きとかないわけ?)
(どうしてそういう話になるんですか……しげるくんとアカギさんは何か…なんか別です!)
(納得いかない…。)
(だってアカギさんはここにいて、触れられるし、ちゃんと現実味あるけど……しげるくんはある意味幻みたいな…妖精的な感じじゃないですか!)
(へー知らなかった。オレって昔妖精だったんだ…。)
(いやそうじゃなくて……ああもう!)
(関係ねェな、そんなこと。)
(え?)
(とどのつまり、しげるくんに会いたかったって話だろ。それなら会わせてやるって前にも言ったじゃない。)
(いやいやいや!結構です!結構ですから!)
(クク…遠慮するなよ…。)
(や…!)
(付き合ったら速攻で子作りしないとね、you。)
(やっぱりアカギさんが一番怖いよぉおお!!)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*