step5_(恋人編:アカギ)
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「うぅ……っ、なんで…どうしてこんな事に…!」
「それはこっちの台詞なんだけど…。」
向かい合った男2人…。
福本荘の202号の伊藤カイジと
201号の赤木しげるであった…。
アカギさんといっしょ20
「「ストーカー被害ぃい?!」」
「こ、声でけぇって…!」
ただいま夜の20時を過ぎた頃…。
24時間営業のファミレスにて食後にドリンクバーで語り合うのは福本荘の面々と美心…。
「それ、カイジさんの勘違いじゃないんですか?」
205号の宇海零。
「右に同じく。」
201号の赤木しげる。
「勘違いであってほしいよ!!」
203号の伊藤開司。
「カイジくんを怖がらせるなんて、美心、許せない!」
ご近所の友人、坂崎美心。
「美心さんやさしー……あ、頑張ってねカイジ。」
101号のマミヤ。
「うーん……わたしにできることなら、何か助けられればいいんだけど…。」
そして、202号のyou…。
「オレだって最初は自分が自意識過剰になってるって思ったよ!けどさ……気付いたらバイト先のコンビニの窓の外から見てたりすんだよ。」
「どのくらいの頻度、どのくらいの時間で?」
零の問い掛けに「うーん」と唸った後、記憶を呼び起こしてみるカイジ。
「大学生くらいの女の子で……オレが夜シフトの時はほぼ毎回見掛ける…監視っていうより観察みたいで、だいたい20分とか30分くらいでいなくなる…。」
「あ、それか佐原くんとかに会いにじゃなくて?」
「いや、多分オレなんだよ…。」
「どうしてそう言い切れるの?何かきっかけがあったの?」
零の質問に答えた後、今度はyouからの質問が飛んでくる。
カイジは自然に会話に入ってきた彼女の問いにこれまた自然に答える。
「先々月の終わり頃だったかな……珍しくパチンコでバカ勝ちしたんだけどさ…。その時オレの隣で打ってたのがその女の子で…何か玉無くなってんのに台の前でレバー持ったまま固まってて、何か声も無く泣いてて……。」
「え、こわ。」
カイジの語る情景描写にマミヤがボソッと呟く。
美心も同意するようにコクコクと頷いている様子…。
「多分、パチンコで有り金全部スっちまったんだろうなと思って、何か……オレを見てる気分になってさ。」
「いやそれ絶対違うからな。思考回路お前と一緒にすんなよな!」
「な、何でだよ!マミヤ!」
「あー、もういいから、それで、アンタその後どうしたの。」
「オレ…お前より年上だよね…?まぁいいけど……とりあえず賞品交換で金交換して、ちょっとだけ箱菓子と交換してそれをその子にあげたんだよ『これやるから元気出しな』って。」
「お前…伊藤カイジ……やっちまったな!!」
「何で?!」
カイジは自分の行動に何の落ち度も無いと思っているようだったが、
それは思い違いだとマミヤと美心、そしてyouまでもが頷く…。
「美心の予想としては、その子…失恋したとか、喧嘩したとか、兎に角心の傷で泣いてたんだと思うんだぞ!」
「えっ、そうなの…。」
「パチンコ屋さんに行く女の子が皆お金のためだけに行ってるわけじゃないと思うし…。」
「えっ、そうなの…。」
「趣味だったかもしれないし、ストレス発散だったかもしれない……けど、それでも気が晴れない何かがあったんだよ。」
「えっ、そうなの…。」
「だから、カイジくんが声掛けて優しく慰めてくれたって、思ったんじゃない?羨ましい!!」
「えぇぇ…そんな、マジか…。」
カイジの起こした行動を聞いた時から、マミヤとyouも美心と同じ想像をしており、
また、零とアカギも彼女の話を聞いて合点が行く、と頷いている様子。
全員に「きっとそうだ」と示唆され、カイジはテーブルに両肘をついて頭を抱える…。
「あぁぁ…バカかオレはぁあ!!何で放っておかなかったんだよぉおお!!赤の他人じゃんかよぉお!」
満場一致で「お前の落ち度だ」と指摘され、また改めて自身の過ちにも気が付いたカイジは
両手で頭を抱えてメソメソと泣き始める…。
「ま、まぁまぁ……悲しい顔してる人を放っておけないカイジくんは凄く優しいよ、素敵だと思うな。」
「うぅ…you…。」
「それに、私たちを呼んだのって助けてほしいからなんだよね?頼ってくれて嬉しいよ、何かできることないかな…。」
「そっ……そうなんだよ!それでyouに頼みがあって声掛けたんだった……何か気付いたら人数増えてたけど…。」
「な、何かごめんね。」
そう、当初カイジが「相談したいことがある」と声を掛けたのはyou。
そこにたまたまマミヤが一緒だったため、3人でこのファミレスに夕飯がてらやってきたのだが、
マミヤが『今近所のファミレスにyouさんとカイジと来てるんだけど、今からカイジが面白い話するって言ってる』とグループメッセージを送ったのだ。
「それで、わたしに頼み事って?」
「あ、ああ……その……自業自得って分かった今、すげー申し訳なくて言いにくいんだけど…。」
「遠慮せずどうぞ。」
「…その、ストーカー対策で…つ、つ…付き合ってるフリ!こ、恋人のフリしてほしい…ッ!」
「え!」
「3か月……いや、1か月でいいんだ!頼むッツ!!」
目の前のテーブルに額をくっつけるくらいの勢いで目の前のyouに頭を下げるカイジ…。
そして当然ながら飛んでくる非難の嵐…。
「は?何バカな事言ってんのアンタ……クズニート風情がオレのyouに……フリでもダメに決まってるだろ。」
「youさんはアカギさんのじゃないですけど、それ以外は全面的に同意ですね。フリでも絶対ダメですよ!」
アカギと零が若干カイジの方へ身を乗り出して圧を掛けながらカイジの案を却下する。
「うぅっ!」と怯むカイジに、隣に座る美心からも反対の声が上がってきた。
「ダメダメっ!それなら美心が協力するんだぞ!」
「いいい、いや、お前の家近所ではあるけどちょっと離れてるし、それなら一番近くのyouの方が毎日一緒にいれるし都合いいって…。」
「「よくない!」」
それらしい理由を述べて美心の提案を断るカイジだったが、すかさずアカギ、零、美心からツッコミが入る…。
その場にいる半数から提案を断固却下され、再び半泣きになるカイジ…。
「じゃぁどうすればいいんだよぉ」とボロ…ボロ…と泣いてしまった…。
暫し沈黙が流れた後、奇しくもマミヤが1つの考えを出してきた…。
「あのさ、オレ思いついたんだけど……言っていい?」
「な、なに…?」
「相手を、男にすればいいんじゃない?」
「はぁ?!」
マミヤの言葉に、何を馬鹿げた事を…という声を上げたのはカイジだけ。
you、アカギ、美心の3人は少し目を丸くし、零は「あ、オレもそれ考えてた」と伝えてきたのだ…。
「カイジさんの相手役、youさんでも美心さんでもなくて、アカギさんがいいと思う。」
と、自身を省く発言が零から飛び出し、当然ながらアカギが憤りの声を上げる…。
「は?!なんで、嫌だよ…零の方がいいだろ、女顔だし。」
「あ、分かった!女顔だから、零じゃなくて、アカギさんの方がいいんだよ。」
「?!」
「男相手でも女と同じくらい美人じゃただ嫉妬されるだけかもだし。」
「ガチで相手男じゃんって思わせないと!「これは自分に無い要素」ってところが大事なんじゃん。」
「冗談だろ…。」
零の考えを察したらしいマミヤがその分析を説明すると、珍しく絶望感を感じさせる表情を浮かべたアカギが額に手を当てる…。
アカギが本気で嫌そうなのを察し、youが小さく挙手をする…。
「あの…やっぱりわたしが…。」
「いや、それだけはダメ。ハァ………結果的に、零でも嫉妬の可能性があるって言うんなら、youや坂崎さんに恋人のフリなんかさせたら2人が危険な目に遭うかもってことでしょ……流石に看過できないだろ…。」
「アカギさん…。」
実際はそれだけではなく、別の相手を好きになる時には別れる選択肢など選ばず、お互い死に合うと誓いを交わした程の相手であるyouを、
たとえフリであっても自分以外の男の元に送り出すわけにはいかない、というのが大きかった。
若干…否、あからさまに苛ついた様子で、アカギは先程注いで来たコーヒーを飲み干して言う…。
「分かったよ……やればいいんだろ、やれば……youが犠牲になるよかマシだからな…。」
と、いう理由から最終的にアカギがLGBTのカップルを装うことを、(本当にめちゃくちゃ)渋々だが承諾することとなった…。
(というか、なってしまった…。)
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恋人を装うという作戦で、アカギは1ツキほどカイジの家で過ごし、
そのルーティンをストーカー(仮)の子がチェックしていることを確認…。
頃合いを見計らい、日にちを決めて、福本荘の敷地内にまでストーキングしてきた彼女に意を決して声を掛けたカイジ…。
「あの……勘違いだったらゴメン、ここずっとオレのこと見てた?」
「え、あ……うん、見てた……ずっと見てたよ!」
「な…何で…?」
「何でって……あの時優しくしてくれて、カイジ君のこと…私......好きになったからだよ!」
「えっと……それなんだけど……オレ、それには応えられないっていうか…。」
「福本荘の202号の人?私あの子には負けない自信あるんだけど。」
「は?お前何さ…ま……いや、違う……あの子じゃない。」
自分が一番気に掛けている相手を貶めるような彼女の発言に一瞬カッとなったものの、
ここで喧嘩になっては折角の作戦が水泡と帰す為、ぐっと堪えてカイジは首を横に振った。
「え、じゃあ近所に住んでるあのスタイルいい子?それとも101号の女子高生?」
「いや……その…兎に角、アンタの気持ちには応えられないんだよ!あの時パチンコで声掛けたのも箱菓子あげたのも気紛れで!」
実際に彼女と話してみると、想像よりも随分自分の周囲の人間のリサーチが済んでいたことを知り、カイジはゾッと顔を蒼くする…。
そんな彼の表情の変化は全く目に入っていないのか、彼女は恍惚の表情で独白を始めた。
「気紛れでも優しくしてくれて嬉しかったの、だから好きになって、ずっと見てたくて…カイジ君今日何してるのかなって…コンビニ、いつも見に行って……あ!たまに私のこと見てくれるよね、ふふ、カイジ君も私のことちょっとずつ好きになってくれてるんだって確信したんだよ?なのに…どうしてそんなこと言うの…ねぇ、どうして?どうして?どうして?どうして?」
「あ…あぁ…ご、ごめん…マジで無理……悪いけど本当…。」
「何が?どうして無理なの?ねぇ、何が無理なの?」
「だ、だって…っ…!」
自分が考えている以上に目の前の彼女はストーカーという枠繰りで間違いない様子…。
女性の扱いにも慣れていない男が、クセの強い女への良い対応方法など分かるはずも無く…。
最早恐怖で先程から後ずさりばかりしている半泣きのカイジの元に、颯爽と現れた白髪の青年…。
「悪いけど……コイツ泣かせていいのオレだけなんだよね。」
「201号のアカギ…何でアンタが…。」
「ヘェ、オレのこと知ってんだ?」
「カイジ君の友人だか何だか知らないけど…ここ最近カイジ君の家に入り浸ってますよね、私、これからカイジ君の恋人になるので、出ていってほしいんですけど。」
「ククク……まるで白痴だな…見当違いも甚だしい。」
「はぁ?なっ…何ですって…?!!」
「誰が誰の恋人だって…?」
「私が、この伊藤カイジ君の…!」
「悪いけど、アンタ如きじゃオレに敵わないよ。」
「!!」
最後の言葉を言うや否や、アカギはカイジのシャツの胸倉を掴んで引き寄せるとそのまま目を閉じて口付けた。
驚いた顔をしているのはそれを目の当たりにしている彼女と…。
無理矢理キスをされた上、口内に舌を入れられている伊藤開司…。
「んんっ…!?!」
「・・・。」
「んは…っ…!(コイツ…ッ!!)」
「ン……。」
「はぁ……っ…(キス上手ェ…ッツ!!)」
さんざ口内を荒らされる中、見開いていたカイジの目は、
いつの間にかうっとりとした表情へ変化…。
ぎゅっと握っていた拳は解けてアカギの服を掴んでいた…。
そうして、最後にゆっくりと唇を離すと同時に閉じていた目を開くアカギ…。
一方、こちらは福本荘の2階の階段付近で隠れて彼らの様子を見ているこの作戦の参加者たち…。
こっそり見ていたマミヤと美心が声なき声で「キャー」と叫び、
零とyouは「う、うわぁ…」という反応…。
そんな彼らの感想は全く知らない当事者達は、演技とも演技でないとも取れる様子で向き合い、言葉を交わし合う…。
「あ…アカギっ……おま…!(舌入れるとか聞いてねェ!!)」
「なに…。」
「うぅ……っ、なんで…どうしてこんな事に…!」
「それはこっちの台詞なんだけど…。」
ボソボソと零れた本音はひとまず彼女には聞こえていない様子。
ただ、チラリと様子を窺う限り、想像以上に効果があったのか、未だ目を見開いて絶句している。
そんな手応えを感じた2人は、さっさとこの茶番を終わらせるべく演技を進めることに集中する…。
「(演技演技演技演技!!)ぁ…アカギぃ…。」
「クク…大の男が腰砕けさせてどうすんの……そんなに良かった?オレのキス。」
「ッ……!あ、アホかッお前…こ、こんなところで……ひ、人の前で…!」
「だって、しょうがないじゃない……ご理解いただいてお帰りいただかないと……続き、できないよ?」
「~~~ッツ!!!」
カイジの耳元に唇を寄せて伝えた言葉だったが、彼女に聞こえなければ意味が無いため、
アカギはそこそこ大き目の声でそう伝える…。
これで最後……。
くるりと、耳まで真っ赤に染めて彼女の方を振り向き、カイジが叫ぶ。
「そういう事でアンタの気持ちには応えられない……事情はお察しください…ッツ!!」
「あ…あ…うそ…。」
「い、行こう……アカギ!」
パシッとアカギの手を掴み、大股でズンズン福本荘の建物の方へと歩き出すカイジ。
アカギもそれに合わせて歩き出し、最後に彼女を振り向いてヒラヒラと手を振って去って行った…。
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「・・・しにたい…。」
「気色悪い……。」
この世の終わりでも見てきたような青白い顔で203号に帰還したカイジとアカギ…。
カイジはキッチンのシンクで……アカギは洗面所でそれぞれ口内を濯ぎ、リビングへと集った。
「お…お疲れ様でした…。」
「2人とも、よく頑張ったんだぞ!」
既に家で待っていたのは作戦の参加者であるyouと美心、それからマミヤ。
youと美心の言葉に迎えられ、カイジとアカギがリビングのカーペットの上に腰を下ろした。
そんな中、未だ外で渦中の女性を観察していた零が戻ってくる…。
「あ、お疲れ様カイジさん、アカギさん。さっき彼女「多様性の時代半端無い!エロ過ぎる!」って叫びながら走って何処か行ってたんで、うまく騙せたと思いますよ。」
「それは有難いんだが、その代償に何か大切なものを失った気がする…。」
「言いたいことは分かります…。」
同じ男性としての視点だからか、自分が同じ立場であれば全く同じ感想を抱くだろうと、
そのカイジの呟きには即座に同意してしまう零であった…。
その逆に、色んな意味で良いものを見せてもらった…と、称賛するのはマミヤ。
「いやー、圧巻だった……やっぱアカギさんに任せて大正解って感じだったね!」
「二度とやらん。」
先程の光景を思い出しながらウンウンと頷いているマミヤに
3割増し低い声で、露骨に怒りを露わにするアカギ…。
そんな彼らを宥めるようにyouが苦笑しながら言う…。
「と…とりあえずこれで…一件落着…だよね?」
「そうであってほしい……切実に…。」
「うん、零くんが話してくれた様子じゃ大丈夫そうだし……また何か問題があるようだったら、わたしたちに教えて。」
「あ、ああ……ありがとな、you……ていうか皆……巻き込んで悪かった。」
この作戦が終了したと取れるようにか、
その場に胡坐を掻いて座るカイジが、皆へと向かって深々と頭を下げた。
皆それぞれに「気にしないで」や「楽しかった」など、思い思いの感想を口にして、
ようやく約1ツキに渡るストーカー撃退作戦チームは解散することとなった。
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「アカギさん…あの……お、お疲れ様でした。」
202号のyouの家に戻ってきたのは勿論家主であるyou本人と、その恋人の赤木しげる…。
「youの家、口臭ケアとか、うがい薬あったよな……借りていいか?」
「ど…どうぞ…。」
アカギは先程からあまり変わらず気分の悪そうな顔色と声色で、口内のケアをしてくると強く宣言…。
勿論、歯磨きもしてくるのだろうが、それに関しては彼女の家に自分の分も常備してあり、態々自室に戻る必要はないため、尋ねたのはプラスアルファのケア用品だった…。
そうして、いつもの倍以上の時間を掛けて歯磨きを終わらせて戻ってきたアカギ…。
普段の彼からは想像もつかない様子で、大変げんなりした雰囲気を纏っている…。
「お、おかえり…。」
「you…頼む、キスさせて。」
「滅茶苦茶切実!!!」
youの両肩に手を掛けて項垂れるアカギ…。
その姿はまるで瀕死の重傷を負い、今にも死に掛けている戦士か何かのようだった(と、のちにyouは語る)。
あまりに気の毒に思え、いつもは自分からしないキスを、アカギの為にと…。
youはまるで全て捧げるかのように目を閉じて、少し背伸びして口付ける…。
軽く口付けた分が徐々に深くなり、熱を帯びていくのはいつものことで…。
何度か触れるだけのキスを重ねた後、アカギが許可を強請るように彼女の両頬に手を添えると、
暗黙の了解でyouの唇が開かれ、舌が招き入れられた。
「…んっ…ふぁ!」
「は……。」
こういう状況なので、アカギがすぐにでも理性を手放して、
息継ぎもさせないくらい自分本位に攻めてくるのだろうと覚悟していたyouだったが、
そういったことはなく…ある程度のところで、唇は解放されることとなった。
それでもアカギとのキスが心地良かったことは確かで、
ふにゃりと砕けそうになったyouの腰をアカギがしっかりと腕を回して抱き留めた。
「はぁ…すみませ…ん…。」
「いいよ。とりあえず座って話そうか。」
「そうですね…。」
すぐそばにソファがあるんだし…と、2人はリビングのいつものソファに腰を下ろして向き合った。
するとすぐに、今しがたのキスで幾分精神状態が安定したのか、若干顔つきが改善したアカギがyouに尋ねる。
「you、さっきのアレ見てた?」
「えっ……アレの光景は……はい……見て、ました…。」
「どう思った?」
「どう…とは…。」
「気持ち悪かったとか、気持ち悪かったとか…。」
「アカギさんは気持ち悪かったんですね…。」
「当たり前だろ!あんな事you以外としたくないよ!」
「(珍しく目に見えてお怒り!)えっと…そんなに嫌だったら、その…普通のキスにすればよかったのでは?」
「そんなんじゃ納得してもらえないかもでしょ……疑われて更にしつこく付き纏われるとまた期間が延びるかもじゃない……そっちの方が面倒だったから、一撃で終わらせたかった。だから、ままごとみたいなやつじゃなくて、youにするみたいにしたんだよ……そうじゃなきゃキスするだけでも嫌だって。」
「な、なるほど…わたしににするみたいに…ですか……はは…。」
はぁ~~っと深い溜息を吐くアカギとは裏腹に、彼の真意を聞いたyouは
どうしたものか…言うべきか…と、自分の抱いた感想を伝えるべくモジモジしている…。
彼女が実は正直な感想を言いたがっている事を察したアカギは今一度小さく溜息を吐いて「言っていいよ」とGOサインを出した。
「何と言うか……はい、見ていて気持ち悪いとは思わなかったです……寧ろその…。」
「え、なに…。」
アカギのうんざりするような表情と声色がチクチク棘ありきで今からの自分の発言に
更に機嫌を悪くするかもしれないと気にはなったものの、意を決して、youは赤い顔で答える。
「見ていてちょっと恥ずかしい感じだったというか…。」
「何でアンタが恥ずかしいんだ……それはオレたちの方だろ、絶対…。」
「えっちでした……何か、とっても…。」
「・・・。」
「あと、その……カイジくんが凄く…う、羨ましかった、です!」
膝の上に置いた両手の拳をぎゅーっと握りしめた後、そろり…と横眼で隣のアカギを見遣るyou…。
アカギはというと、先程からずっとyouのことをじっと見つめていたようで、
バチリと視線がかち合ったところで、静かに口を開いた…。
「つまり、youは……カイジさんに嫉妬したってこと?」
「しました……はい。」
「…そっか。」
「アカギさん…。」
「うん…。」
「同じこと、してほしい。」
少し間隔のあったソファでの距離は、youが傍に寄ってアカギの胸板に両手を添えたことでゼロになった。
恥ずかしそうに懇願する恋人の表情にアカギの雄がドクンと反応する…。
そもそも、1ツキ以上なかなか触れ合うことさえできなかったので、当然と言えば当然…。
「クク……冗談でしょ…カイジさんのと同じようなキスだけで終われるわけない…。」
「え?」
「あんなのよりずっと…濃厚で…。」
「ひぁ…っ!」
身体を抱き寄せ、はむ…と耳を甘噛みすれば、ビクンと全身を跳ねさせて小さな悲鳴を上げるyou…。
先程までずっと満身創痍だった様子は何処へやら…。
ひとたびスイッチが入れば嬉々として彼女を羞恥の淵へと追い詰め始める…。
耳元に唇を寄せ、愛し合う行為を誘うためだけの声色でもって、聴覚からyouの性欲を掻き立てるアカギ…。
「ずっと濃密で……とびきり気持ち良いセックス……しようよ。」
「ふっ……ぅ、ぁ…っ…!」
「フリじゃない……本当の恋人同士でさ。」
「ぅ…アカギさ……。」
キスもされていなければ、抱き寄せられた以外、身体の何処にもアカギの手は触れていないのに、
まるで全身を弄られたかのように身体が熱い…。
youは恥ずかしさで涙を浮かべつつも、恍惚の表情でアカギを見上げた。
「そんなに物欲しそうな顔されたら、たまらないんだけど…。」
「だって……今すぐ欲しい…。」
「クク……珍しく積極的じゃない……これはあの苦行を耐え抜いた甲斐があったね。」
「苦行って…。」
「どう考えても苦行だろ……1ツキも禁欲した上、演技とはいえ恋人の前で男とディープキスだぞ…。」
「す、すみませんでした……苦行です。」
「だろ?」
「またお願いされたら…?」
「二度と御免だね。」
そんなこと考えたくもないし、youの味しか知りたくない…と、耳元で囁き…指を絡ませる。
確かに巻き込まれた自分が一番の被害者で、今回の件で大概腹も掻き、憤り、性欲を持て余す結果となったはずだったが、
意外や意外にも、彼女も自分に触れられない期間、触れ合いたいと思っていてくれた点を知れた事は朗報で、色んなものを耐えた価値があったかな…と思ってしまうアカギであった…
だからって二度とあんな事しないけど!!!
(ん……おはよ…you…。)
(う…アカギさん……おはようございます…。)
(身体、大丈夫…?)
(だいじょばない……腰痛い…。)
(あらら……ごめん…。)
(今日休みで良かった…。)
(1ツキぶりってのもあったし、加減できなくてさ……。)
(わたしも…それに応えたので、自業自得なとこあります…。)
(本当にね……まさかyouがあんなにオレのこと欲しがってくれると思ってなかった。正直びっくり。)
(そんなことないです…。)
(そんなことないって、なに?)
(わたしだって……独占欲凄いんです。)
(何それ、悶えるくらいには嬉しいじゃない……相手が男だったのは複雑だけど。しかもフリ。)
(ふふ、フリでもなんでも、アカギさんのこと好きすぎてダメなのかもですね、わたし…。)
(あーー……悪ィ……。)
(?)
(ゴメン、極力…腰、痛くしないようにするから……。)
(いや、ちょっと待って!朝からやめて無理、本当に無理……ッ~~!!)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*