step3_(日常編:アカギ)
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いつもそこにいるのがあまりに自然だったので
たまにでもそこにいないと
どうしようもなく会いたくなる時もあると知った
アカギさんとわたし18
「あ、そうだ……明日なんですけど、わたし夕方家いないんで。」
「え………何で。」
冬の寒さが厳しくなってきたこともあってか、最近は夜中まで雀荘には入浸らないのか、
ここ数日はいつもより早くyouの家に上がり込み、本日も一緒に夕飯をとっていたアカギ。
割と珍しく夕刻過ぎに家を空けると言うyouに、アカギは箸で掴んでいるおかずを思わず取り落としそうになった。
「何で……まぁ、忘年会というやつです。」
「忘年会…。」
「アカギさんは南郷さんや安岡さんとそういうのしないんですか?」
「割と頻繁に顔合わせてるのに、する必要もないでしょ。」
「それはそうかも……あ、でも、福本荘の皆ともそういうのやりたいですね。」
「そう…(面倒くさそう…。)」
僅かに顔を濁らせたアカギを見て「あ、面倒臭がってるな」と察したyou。
確かに、上階の面々だけでなく今はマミヤや銀二、森田…福本荘には住んでいないが美心や平山といったように近所にも知人が増えており、
もし忘年会など開催しようものなら、なかなか人数も多く、曲者揃いの会となるだろう事は必至…。
楽しそうではあるが、アカギの気持を汲み取って、これ以上話を広げて福本荘大忘年会を開催するなどの流れには持ち込まないようにしようと気を遣うyouであった…。
「とりあえず、そういう理由なので…すみませんが明日は夕飯のご提供は難しいのです。」
「分かった。」
「・・・。」
「ところでその忘年会ってどういう集まりなの。」
「(きた!!!絶対聞かれると思ってた…。)1人、引っ越してなかなか会えなくなった子がこっちに顔出すことになったので、折角なので忘年会名目で女子会しようって話になったので…5,6名くらいの少人数で……まぁ、そんな集まりです。」
「ふーん…。」
「・・・。」
「帰り、何時頃になりそう?」
「え?うーん……ちょっと現時点では分かりかねるかもです……一次会だけで終わるかどうか…。」
「そう……オレが言うのもなんだけど、あんまり遅くなると危ないからできれば早めに帰っといでよ。」
てっきりアカギのことなので、本当に女子会なのか、男性の不在は確かなのかと詰問でもされるかと思っていたものの、そういったことは一切無く…。
寧ろ、その身の心配をしてくれるという意外過ぎる反応だったため、
youは思わず目を丸くして「はぁ」などと微妙な言葉と、呆けた顔になってしまうのであった。
・
・
・
・
そんなアカギとのやり取りを終え、迎えた忘年会当日…。
久しぶりに会う友人達との再会というだけでも盛り上がるのに、それに加えて忘年会の女子会とくれば食事会の一次会だけで話が終わるはずもなく…。
誰一人欠けることなく二次会に赴き、その後にやっと翌日予定がある者や交通機関の時間の問題で撤退を余儀なくされる者は帰宅の選択を…。
翌日が休みである者や交通機関を気にしなくて良い者は三次会のカラオケにいざ!という選択をする時間となった。
「youはどうする?明日休み?」
「明日は休みなんだけど…。」
「なら行こうよカラオケ!最悪終電逃がしても私の家泊まっていいし!」
「うーん…ひとまず終電の時間確認してみる。」
明日は休みではあるのだが、現時刻から考えると三次会で長居をすれば終電が無くなってしまうであろう予感…。
近辺に住む友人が泊まっても構わないと言ってくれたが、泊まる用意など何も持参が無いため、少しばかり躊躇われる…。
タクシーという選択肢も無いことはないが、年末の繁忙期ということもあり理想的につかまるか怪しいところ…。
終電の時間までどのくらい時間に余裕があるか再確認のため携帯を確認したところ、一次会、二次会の間、
仲間との話に夢中で全く気付かなかったが着信と未読のメッセージがあっていたことに気付き、慌てて確認を行うyou。
それぞれ着信とメッセージの順で確認したところ、そのどちらもアカギからのものであった。
時間的にはメッセージが先に届き、そちらが既読にならなかったため電話を入れたという流れのようだ。
メッセージはとてもシンプルで「何時頃戻るの?」というもの。
昨日の言葉もあり、アカギなりに夜遅く帰る自分の身を案じてくれたのだということは分かったため、
返信も電話も気付かなかったこの状況下で「まだ分かりません」や「今日は帰れません」といったような返事を返すことはどうしてもできず、youは眉こそ寄せたものの、口元は嬉しそうに緩む…。
「you?」
「あ、ううん……折角だけど今日は帰らなきゃかな…。」
「そっかー、残念!」
そうしてyouも帰る事となり、6人いたうちのちょうど半々で別れる事となった。
駅の改札で更に2人に別れの挨拶を済ませると、上り下りの問題で一人になってホームへと向かうことになったため、
youはそこで携帯を取り出し、アカギに電話を掛けたのだが、コールのみで終わってしまった。
よくよく時間を確認すると11時は優に超えているため、最近の早々帰宅するアカギの生活時間を考えると
就寝している可能性もあるのか…と、youは改めて考え、長々コールしてしまったことを反省するのだった…。
ひとまず、メッセージの返信で、電話に出れなかったことや返事が遅れてしまったことを詫び、
今正に帰路に着いている最中であることや、最寄りの駅に到着するのが何時になるため、
家には最終的に何時頃帰りつく事になるだろうという事を記載してメッセージを送信した。
「(あ、そうだ…寝てるの起こしたらゴメンなさいって入れておこう…。)」
最後にそのように追加でお詫びのメッセージを入力したところでタイミング良く電車がホームにやってきて、
流石の時間帯ということで空席の多い車両に乗り込む…。
空いている席に座り、再度メッセージを確認したところ、未だ既読は付いていない様子。
本格的に寝ている説が有力か…などと思いつつ、今度は本日の女子会のメンバーにお礼のメッセージを送る作業をこなす。
そこで数人が同じようなお礼や次回の女子会の話などの掛け合いを行い始めたので、
自身もそれに続いてコメントをしていると、気付けばあっという間に最寄りの駅に到着するに至った。
ホームから改札へ向かい、そこから駅の外へ向かうにつれて段々と強く吹いてくる冬の風…。
マフラーも手袋も抜かりなく装着して出てきて良かった!と……コートの前ボタンを留めながら歩いていると、
駅を出てすぐの辺りに此処にはいないはずの、見慣れた白髪の男性の姿が視界に飛び込んできた。
「え…。」
「!」
「あ、アカギさんッツ?!!」
思わず大きな声を出してしまったのは驚きもあるが、自分とその男以外はこの駅に誰もいないからだろう。
驚きすぎて一瞬固まってしまったが、youはすぐに慌てた様子でアカギの傍に駆け寄った。
「な、な、何でいるんですか?!!!」
「youがこの時間に駅に着くって言ってたから、来ただけだけど…。」
「いや、確かにメッセージに書いたけど……でも、アカギさん電話出なかったし…寝てたんじゃ…。」
「ああゴメン、風呂入ってた。出てからメッセージ見たよ。返してないけど…。」
「お風呂…お風呂?!!」
「?」
アカギの言葉に驚嘆の表情を浮かべると、彼女は手袋を外した手をそのままアカギの髪へと伸ばす…。
「ギャァ!つ、冷たい!!!何で乾かしてないんですか?!」
「ドライヤーとか家に無いし……のんびり乾かしてたら迎えが間に合わないと思ってさ。」
「いや、アカギさんそれはダメ……流石に風邪引くから…!」
「まぁ、そんな家から遠くないし…今だってyou、すぐ出てきたからオレそんなにここで待ってないよ。今から帰るし…。」
「しかもよく見るとめっちゃ薄着!!何ですかこのジャケットは!秋冬用かもですが許されるの冬初旬でしょうこれ!!」
「これ、職場で支給されたジャケット。…厚手の上着とか持ってないし……今んとここれが一番風凌げるやつ。」
「凌げてませんけど!?」
「あー、寒い……早く帰ろうぜ。ずっとここで問答してる方が風邪引く。」
「~~っ、帰ったら説教!!!」
「え、何で…。」
「一般常識的な指導です!」
「(納得いかない…。)」
「不服そうな顔してもダメです!もう、ほら!わたしのマフラー貸しますから、これ付けて!!」
「いいよ、youが寒くなるでしょ。」
「見てる方が寒いの!」
プンスカ怒りながら、youは自分のマフラーをアカギの首に巻いてやる。
ふんわりと柔らかいマフラーが巻かれると、首元に風が当たらなくなり一気に防寒の能力が上がった上、
彼女が今まで付けていた温もりと優しい香りに包まれることになり、アカギの目が思わず細まった。
「あったかい。」
「良かった……手袋も貸したいところですが…これはちょっとサイズ的に無理かも…。」
「手袋はいいよ、代わりに手繋ごうよ。」
「え…でも、ポケットに両手入れてた方が防寒できるかも…。」
「youの手握る方が温かい。」
「そう…ですか…。」
「うん。」
コクリと頷くと、アカギはそのままyouの手を取り、2人は自然に歩き出す…。
駅から歩いて近いとはいえ、少しばかり足早に…。
そうやって歩きながら、話すことといえば、普通は「今日の忘年会はどうだった?」といった話なのだろうが、
今回、この状況に於いては飲み会の話なんかより圧倒的にアカギの行動に重きが置かれるワケで…。
「アカギさん…本当何で…髪も乾かさないで、こんな寒い中…どうしてわざわざ…。」
「夜だし…短い距離ではあるけど、やっぱり心配だったしね。」
「それは・・・ありがとうございますなんですけど…。」
「それに・・・。」
「?」
まるで煙草代わりにとでも言う様に、フーっと白い息を吐きながら、アカギはフフ…と小さく笑う。
そうして握った手に少し力を込めたので、youはそれを合図と捉えて彼の方に顔を向けた。
「何だろね、無性にyouに会いたくなった。」
「え…。」
「いつもそこにいるはずのアンタが、いない…ってなった時、何かさ、どうしようもなく会いたくなったんだよね。」
「そんな…たった1日のことなのに…。」
「その1日がオレにとって大事だっただけの話だよ。」
youの顔は見ずにフッと笑って、一瞬目を閉じたアカギ。
その横顔を見つめながら、一瞬だけ驚いた顔をしたものの、
youもまた同じように小さく笑うと、アカギの言葉に返事を返した…。
「・・・アカギさん。」
「ん?」
「わたしもそうかも。」
「?」
「皆と話してる時は楽しくて、時間も忘れちゃうくらいだったけど……さっき、ふっとアカギさんからのメッセージとか着信を見たら、心配してくれてるのが嬉しかったです。だから「あ、家に帰ろう」って思いました。」
「…それってつまり、オレに会いたいって思ったって事?」
「まぁ……そうかな。」
「フフ……珍しく8割方素直。」
「別にいつも天邪鬼ってわけじゃないハズなんですけど…。」
「さぁ、どうだろうね。」
「もう…!」
「お、何かそんな話してたらそろそろ帰り着きそうだな…。」
「あ、ほんと…。」
2人同じように見慣れた道路の前を向けば、あと2ブロックほどで福本荘に辿り着くところまで来ていることを認識した。
「帰ったらアカギさんはすぐドライヤーで髪乾かしてくださいね。」
「はいはい、分かったって。」
「その間に暖房入れて、温かいお茶淹れるんで。」
そんなことを最後に話し、福本荘に到着した2人。
2階への階段を上がったが、家主のアカギは201号の前を完全にスルーし、
さもここが自分の家であるかのように202号の家の前に立つ…。
youが鞄から取り出した鍵で扉を開け、全く違和感なく2人して入室。
先にyouが靴を脱いで上がったところで、玄関に立つアカギを労うような声で名を呼んだ。
「アカギさん。」
「ん?」
「寒い中わざわざ迎えに来てくれてありがとう……冬だし、暗くて寒くて、怖くて、何だか物悲しくなって、一人じゃやっぱり不安になってたかも。」
「そうさせないために行ったんだよ。」
「ん……感謝です。」
「感謝は身体で返してくれればいい。」
「またそんなことを…。」
「もしくはキスとかでもいいんだけど?」
「あー……じゃあ、身体で。」
「え?」
てっきりまた冗談として流されたり、怒られるものだと思っていた提案を彼女が承諾したため、アカギは割と本気で驚いた顔を浮かべる。
これはどう言葉を切り返すべきかと正解を選ぶため思考を逡巡させるアカギを、どうしようもなく柔らかい衝撃が襲った。
気付いて眼下を見下ろせば、自分にぎゅうっと抱き着くyou。
「どうでしょう……少しくらいあったかいといいんですけどね。」
「・・・まぁ、うん……これはこれで……。」
「寒いの、変わらないか…。」
恐らくはワザと「身体で」の意味合いの違いを提示したのだろうが、
元々自分の思うような生々しい意味合いの報酬は得られないものだと知り得ていたアカギには、
彼女のワザとの選択肢さえも嬉しいものに他ならない。
すぐに、ふっと口角を上げると、彼女の髪の香りを堪能するように顔を埋め、下ろしていた両腕で隙間なく抱きしめ返した。
「いや……youはあったかいよ。」
「本当ですか?」
「ああ。」
「なら、良かった。」
「・・・できれば裸が良かったけどね。」
「そういうこと言うならこのまま家帰っていただきますけど。まだ靴履いてますよね?」
「冗談だよ。本心だけど。」
「またそういうことを……ほら、そろそろ髪乾かしますよ。」
「ん……待って……もう少しこのまま。」
「もう少しって…。」
「明日の朝まで?」
「さっさと上がって髪乾かす!」
「あぁ…。」
キリがないと踏んだyouがバッとアカギから身体を離すと、
其処に在った想い人の香りやら温もりやら癒しやらが無くなった事で、とんでもない喪失感に襲われたアカギが珍しく切なそうな声を上げた。
両腕を抱きしめる状態で固まったままのアカギをその場に残し、
youは家の電気を点けてリビングへと向かい、テキパキと暖房をつけ、お茶の準備をし始める…。
「覚えとけよ……寝る時絶対ベッド入り込んでさっきの続きで顔真っ赤にさせてやる…。」
そう悪態を吐き、アカギはチッと小さく舌打ちをしたものの、腕に残る温もりを思って自然と口元が緩んでしまうのだった…。
Nobody can take your place.
(明日休みで良かった……ゆっくり寝れるー…。)
(あ、明日休みなんだ?オレも休み。じゃあ2人でどっか行こうか?)
(・・・何でいるんですか。)
(何でって……youのベッド温めてた。)
(頼んでないです……ご自宅でご就寝ください…。)
(いいから入りなよ、寒いだろ。)
(ちょ、腕引っ張らないでくださいよ!)
(ほら、どう?温かいでしょ。)
(っ……そ、そりゃあったかいですけど……あったかいですけどっ!)
(だって、さっきのだけじゃ全然足りねェなって思って……オレ、もっとyouの身体が欲しくてさ。)
(ひぇ……そっ、あ……どういう…!)
(ぎゅってさせてよ、youの身体。さっきの続き。)
(!!!)
(クク……違う意味だと思ったの?youのスケベ。)
(おおおお思ってますんから!!)
(どっち……ま、どっちてもいいけどね。)
(~~!!)
(youの身体、あったかいね。いい匂いするし、柔らかいし、すげーいい抱き枕。)
(綿のヤツ買えっ!寧ろわたしが明日買ってあげますよ!)
(要らない。youの方がいい。)
(わたし抱き枕じゃない!!)
(おやすみ。)
(聞けぇえ!!!)
words from:yu-a
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