step3_(日常編:アカギ)
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「寒い!さむい!でも暖かい!」
「屋内だからね。」
季節は秋から冬へ…
油断していたら急に寒くなった日の話。
アカギさんとわたし17
人々で賑わう市街地に出掛けていたアカギとyou。
吹く風は冷たいものの、はじめのうちは見事な秋晴れといった様子で
降り注ぐ陽光でぽかぽかと暖かかったのだが…。
午後を過ぎてから急に雲が増え始め、雨こそ降らない天気ではあるが、
日の光が差さなくなったため、急に冬の冷え込みが訪れた…。
どこかの建物に入るか、このまま帰宅するかと話し合いながら歩いていると、
アカギが「あそこに入る?」と、指を差したのが一般的に認知度の高いコーヒーショップだった。
youは美心やマミヤ、零や佐原などといった自分の行動範囲や行く場所、感覚がある程度共通的な人物とはよく行く場所…。
だが、(失礼ながら)金銭面で余裕のなさそうなカイジや、
世俗的な感覚が人と大いにずれているこのアカギのような者が相手の場合はなかなか共にいかない場所…。
そんな場所にアカギの方から「行こう」と誘われ、一瞬目が点になって立ち止まってしまうyouであった。
「どうしたの?」
「えっ!?いや、何でも!行きましょう!」
「?」
コーヒーショップに入るのに何故か動揺しているyouを不思議そうな目で見るアカギだったが、
寒さを凌ぐ方が先決だとばかりに、すぐに小走りで店に入っていったので、それ以上は何も問えなかった。
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「寒い!さむい!でも暖かい!」
「屋内だからね。」
店内に入ってすぐ、今までの外気の感想と現在の感想を交えた言葉が無意識に口を突いて出てくるyou。
気持は分かるので、アカギも小さく頷いた。
入口から近い物販用の商品棚を通り過ぎてレジへ向かう2人。
やはり、急に寒くなったためか、店内はなかなかの賑わいよう…。
しかし、ここで満席だった場合、暖を取るという当初の目的が果たせないワケで…。
キラリと鋭い視線でyouは店内を見渡して空席を探す…。
窓際のカウンターの端に2席とテーブル席が空いていることが確認できたが、
テーブル席の方はその隣のグループが1つ余分に椅子を使っているため実質1人席となっているようだった。
自分たちの前には客はいないため、何とかカウンターには座れそうで一安心したところで、
注文カウンターの方から「いらっしゃいませ」と、案内の声が掛かった。
「店内でお召し上がりですか?」
「はい!えっと何にしよう……。」
「只今秋限定のこちらの商品オススメしております!」」
「あ、美味しそう!うーん……どうしよう…外寒かったから暖かいのがいいかなぁ。」
「急に寒くなりましたもんね、今日。」
「ですよね!ビックリしました。」
などという明るい女性店員と今日の天候に関する話題で会話をいくつか交わし、最終的に注文した商品…。
「ではご注文繰り返します!ホットコーヒーと秋限定のメイプルクッキーフラペチーノ、アーモンドミルク変更とキャラメルソース追加。以上でお間違いないでしょうか。」
「…はい、合ってます。」
そうして支払いを終えると、特に複雑な注文をしていないアカギのコーヒーのみ、注文カウンターからそのまま手渡しされる。
アカギには先に窓際のカウンター席に向かってもらい、
youのみドリンクの提供を所定の場所で待つことになった。
5分とたたないうちにドリンクが提供され、アカギの横に着席したyou…。
「・・・。」
「・・・。」
「you…ちょっと尋ねていい?」
「はい…何でしょう…。」
「アンタ寒いんじゃなかったの?」
「寒いですよ!寒かったですよ!でも屋内だし、美味しそうだったんだもんこれ!!」
誘惑に負けましたぁあ!と猛省しながらも挿したストローに口を付けて「冷たい」、「甘い」、「美味しい」と語彙力の無い感想を述べる…。
が、しかし…その後は大方お互いの予想通り…。
冷たいフラペチーノを半分ほど飲んだところで「寒い」と小さく悲鳴を零し始めるyou。
自分でもそうなるだろうと予感はあったため、なるべくなら温度の下がる窓際ではなく
店内の中央あたりのテーブル席が良かったと、確保できなかった空き席に思いを馳せてみたり…。
物理的に冷たいフラペチーノになるべく手を触れないようにしたり…。
極力アカギには気を遣わせないため「冷たい」と「寒い」の単語を飲み込んで
何とか普段通り話題を振って会話することに努めたつもりだったのだが…。
「…それでね、その時に美心ちゃんが店員さんに言ってくれたから本当に助かっちゃった。」
「そう、坂崎さん様様だね。」
「本当にそう。」
「……で、ちょっといいか?」
「?」
「you、手貸して。」
「え??」
「手。」
「手ですか?はい。」
youの話がひと段落するのを待った後、アカギが突如手を出せと言うので、
何の疑問も抱かずに差し出されているアカギの両手に自分の両手をぽすっと置いてみる。
すぐにぎゅっと手を握られ、ビックリしたのだが、
アカギの行動よりもその手の温度差にyouだけでなく、お互い目を大きく見開くこととなった。
「冷たッ!」
「わぁ、あったかーい!」
普段の温度はどうか分からないが、今まで暖かいコーヒーを飲み、そのカップを掴んでいたこともあって
普段より一層手の温度が高くなったアカギと、言わずもがな冷え冷えの状態のyou…。
「予想以上に冷たくてビビったんだけど…。」
「そ、そうですか…。」
「ハァ……もう…ちょっと待って…。」
そう言うとアカギは着ていた上着を脱いでyouに手渡し、肩掛けではなく着用するように指示を出した。
「手、凄く冷たいよ。身体も冷えてるから袖通してちゃんと着てて。」
「え!でもアカギさんが…!」
「オレは少し暑いくらいだよ。店結構暖かいし、飲み物もホットだから。」
「ううっ…すみません…!」
「まったく……こうなるって分かってたんじゃないの?……今度から誘惑は断ち切るべきだね。」
「だって…期間限定…。」
「you。」
「自重します…。」
彼女に動物のような耳があれば間違いなくペソ…と、反省の意思表示で垂らしてしまっているであろう反応…。
そうして、俯いて申し訳なさそうにアカギの上着に袖を通すyouだったが、
いざ着用してみると、彼の体温がそのまま残っている上、サイズの違いから上半身すっぽりその温かさに包まれるので、
まるで極寒の冬から急にうららかな春が訪れたような気分になり、思わずへにゃりと顔が緩む…。
「えーー……わぁーー…あったかいーー…。」
「…ところでさ、それ美味しいの?」
「期間限定のやつですか?美味しいですよ、メイプルの香りがふわって広がるし、クラッシュしたクッキーの触感が面白いです。ミルクはアーモンドミルクに変えてるので風味とコク増しましですし……冷たいけど。」
「見事な食レポどうも。ちょっともらっていい?」
「どうぞ?」
自重するとは言ったものの、たとえ凍えようとも期間限定の商品を選んだのを後悔していないと言わんばかりのyouの説明は
さらっと聞き流し、アカギは手渡されたドリンクに口を付ける。
彼なりに寒さの負担を軽減してやろうと思ったのか、現在の残量の3分の1ほどを飲んで、無言で項垂れるアカギ…。
「あ、アカギさん…??」
「無茶苦茶甘い…。」
「まぁ……元々そういう飲み物なんで……(そういえば、キャラメルソースも追加したし)。」
「ちょっと待ってて。」
「?」
そう言ってアカギは徐に席を立つと、注文カウンターへ向かっていった。
何か注文するのかと思いきやそのままトイレへと向かったため、場所を訪ねていた様子。
youは一人になった時間で飲み物を飲み切り、
また少し寒くなった体を温めるべく、アカギが貸してくれた上着を胸元でぎゅうっと抱き込むようにして背を丸めた。
それから数分後、席に戻ってきたアカギが彼女の目の前にホットのカップをコトリと置いた。
「あ、アカギさん…おかえり。」
「ただいま。」
「二杯目頼んだんですか?コーヒー二杯目って確か割引ききますよね。」
「そうなの?知らなかった。でもこれ、オレのじゃないから。」
「??」
「結局冷たいの全部飲みきっちまってるし、身体丸めて……まだ寒いんだろ?」
「えっと…これは…。」
「ホットミルクだよ。さっき見た時メニューにあったから。」
「え!」
「飲めないんならオレが飲むけど…。」
「い、いいい…いいんですか…?」
「いいよ。」
「うっ……ありがとうございますぅう…。」
まるで数日間何も飲まず食わずで過ごしてきた村人のように「おお…アカギ様…」と崇めんばかりに感謝をするyou。
アカギは「はいはい」と軽く返事をして彼女が飲み物に手を伸ばす様子を見守る…。
「ふぁぁ……あったかいぃ…。」
「…まだ手は冷たいみたいだな。」
「手はね……でも、アカギさんに上着を借りたので本当にだいぶ暖かくなりました!」
「そう、よかったね。」
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
「あと、ホットミルク…いただきます。」
「どうぞ。」
一度ドリンクを注文したこともあり、敢えて一番小さなサイズで頼んでくれたようだ。
先程のフラペチーノより明らか小さいショートサイズのカップに両手を添えて、恐る恐る端に口付けるyou。
作りたてで少しばかり熱かったものの、何度か息を吹き掛けて冷まし、口に含めば
微かな甘みを帯びて優しいミルクの味がふわりと広がった。
「おいしい…あったかい……。」
「フフ…。」
「何ですか…??」
「いや…随分幸せそうに飲むなって思ってさ……買ってきた甲斐があったね。」
「ん、だって冷えた身体にはありがたい補給です……アカギさん、ほんとにありがとう…。」
「・・・you、手貸して。」
「え?あ、はい……今こんな感じです。」
今度は片手を開いて差し出されたので、youも片手にホットミルクを持ち、空いている片手をアカギの手の上に乗せる。
すぐにぎゅっと手を握られ、再び感じる手の温かさに思わず口元が緩む…。
「アカギさん、手あったかい…。」
「さっきよかマシだけど、まだ冷たいね……。」
「ふふ、本当にあったかい……このまま握って温めてもらおうかな。」
「いいよ。何なら手だけと言わず全身温めてやろうか?」
「結構です。」
「・・・チッ。」
アカギのセクハラ発言を間髪入れずに一刀両断。
それに舌打ちされたこともスルーしてyouは幾分飲みやすい温度になったホットミルクを美味しそうに口に含んだ。
しかしながら、それでもアカギが彼女の手を離すことはなく…。
握った手がお互い同じ温度になってもそのまま会話をして、最後にホットミルクが空になって席を立つ時にやっと、ゆるりと離されるのだった…。
「さてと……折角のyouとのデートだったから夕飯外で食いたかったけど……今日は寒いし、完全に日が暮れる前に帰ろうか。」
「デッ……デートはさておき……そうですね……日が落ちたらもっと寒くなっちゃいそうですし……。」
「やっと温まったyouが、また震えちまわないうちに帰んなきゃね。」
「そう、本当に。今やっと温かくなってるから……あ、そうだ…アカギさん上着ありがとうございました。」
「ああ、着てていいよ。」
「ダメですよ!今は良くても、流石に外に出たらその格好じゃアカギさんが寒いです!」
「オレはyouが寒そうな方が心配になるんだけど…。」
「その気持ちだけで十分ですよ……はいっ、お返ししますね!」
「別にいいのに…。」
「今度は逆に、わたしがアカギさんの上着温めておきましたから!」
「!」
「え、やっぱ他人のぬくもりとかキモイですか?いったん冷まして着ますか?」
「いや……フフ……そういうことなら遠慮なく…。」
youから上着を受け取り、店の外に出てからそれを羽織る。
じんわりと彼女の残した温もりと、微かに石鹸やシャンプーのような香りが伝わり、思わず口元がにやけそうになるアカギ。
外に出てたyouが「寒い!」と悲鳴を上げたことで、ハッと我に返った。
「ほんと、寒いね。急いで帰ろうか。」
「はい!でも、帰りに地元のスーパーで夕飯の材料買って帰っていいですか?」
「いいよ。」
「アカギさん、何か食べたいものあります?」
「多分、youと一緒じゃない?せーので言ってみようよ。」
「分かりました…せーの!」
「「鍋!!」」
綺麗に揃った声。
お互い顔を見合わせてクスリと笑ったものの、冬を思わせる冷たい風が容赦なく吹きつけてきたので、一瞬で口を一文字に閉じる2人。
「寒い!帰りましょうアカギさん!」
「ああ。」
「ちなみに何鍋がいいですか?」
「やっぱり鶏。」
「分かりました、そうしますね。」
「you、待って。」
「ん?」
「・・・帰ろうか。」
何のために呼び止めたか、ということは彼が差し伸べた大きな手ですぐに察した。
「…はい、アカギさん!」
そうしてyouはふわりと嬉しそうに笑い、アカギの温かい手を握り返すのだった。
いつかその体温が
溶け合う日を願って
(ところで少し気になったことがあるんですが…。)
(なに?)
(アカギさんのチョイスにしては意外だったので…聞いてみたくて。)
(??)
(確かに近くにあったというのもあると思うんですけど、なぜコーヒーショップ……あの店だったんですか?やっぱりたまたま?)
(ああ、オレは行った事無かったけど、youはよく行くんでしょ?坂崎さんと行ったとかよく聞く。)
(そうですね……確かに。それに、一般的にも有名ですしね。)
(単に暖が取れればどこでも良かったし、コーヒーは高いけど美味いって前にyouが言ってたし、それならいいかと思って。)
(なんだ、結構普通な理由だったんですね。)
(あと、折角youとデートだから、ちょっと合わせてみたくなってさ。)
(デッ…でーとじゃないでしょ、買い物!雑貨買いに行くのにアカギさんが付いてきただけでしょ!)
(どうだろ、店ん中で周りから見たらオレ、youの恋人に見えたと思うか?)
(し……知りませんっ~~!!)
(フフ…。)
words from:yu-a
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