step5_(恋人編:アカギ)
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※麻雀に関しての問答で「分からないままでいる」選択をする描写があります。
麻雀が好きで、気にされてしまう方は閲覧非推奨となります。何卒ご了承ください。
「すみません、今日のハンバーグは少し焦げております…。」
そう言っておずおずと
本日の食事をテーブルに置いた
アカギさんといっしょ16
「見た目にはそんな感じに見えないよ、大丈夫じゃん。」
「そうかな…わたしは先に食べちゃったんですけど、やっぱりいつもより硬かったし、焦げ的な意味で香ばしかった気がしますよ…。」
「でも、珍しいね、youがそんな失敗するなんてさ。」
アカギの言葉に「ああ、それは…」と、今日の出来事を話し始めるyou…。
「焼いてる途中で携帯が鳴ったので、てっきり誰かからメッセージが入ったと思ってトンって画面をタップしたら電話で…通話押してしまってまして…。」
「ああ…。」
「鷲巣さんからだったのでビックリして……すぐに折り返すって言えればよかったんですけど…。」
「あのジジイ……オレのハンバーグを焦がしたのか…。」
「だ、だからそれはスミマセンって!」
「いや、youの所為じゃない…鷲巣が悪い…。」
「わたしがちょっとテンパっちゃったのが悪いんです……でも、内容も元気かどうかの確認でそう長くは掛からなかったのが幸いでした。」
「…テンパちゃったの?」
「え?はい……ビックリして。」
「クク……そう、youがテンパったの。」
「??」
何故かくつくつと笑い始めたアカギに、小首を傾げるyou。
先ほどまで鷲巣からの電話に不機嫌そうな表情を浮かべていたため、
その不可解な笑いの理由を流石に彼女がアカギに尋ねる。
「あの…アカギさん??」
「いや、ゴメン……ちょっとね、youが麻雀の話してるみたいで面白かったから。」
「麻雀の話はしてませんけど…。」
「さっき「テンパって」って言ったでしょ、あれ「聴牌(テンパイ)する」って麻雀用語なんだよ、知ってた?」
「えっ!そうなんですか…!?知らなかった…。」
「他にも日常で使われてる麻雀用語って結構多いよ。」
「たとえば?」
「たとえば……ゲームの立直(リーチ)とかもそうだね。他にも連荘(レンチャン)とか?連続する事を何連チャンするとか言うじゃない?あれ。」
「えーっ!い、意外過ぎる…!」
「あと「オーラス」とか。あれAll Last(オールラスト)だけど、略してオーラスって使ってるのは元々麻雀。」
「すごい身近に麻雀用語!」
「ハハ……意外だし、面白いでしょ。」
「うん、面白い……麻雀で使われる用語が日常で使われるようになった理由は流石に分からないですよね?」
「さぁ、それは流石に知らないな。」
「えーっ、でも…そっか……じゃぁ、今までも何気に日常で麻雀用語使ってたのかな……アカギさんとか、南郷さんとか…麻雀知ってる人から「知らずに使ってるな」って思われてたかと思うとちょっとかなり恥ずかしいかも!」
「そうは思わないけど……何なら、youも麻雀覚えたらいい。」
「あ、それは遠慮しておきます。」
「あらら、即答じゃない……一考の余地もないの?」
パッと掌をアカギへ向けて断固とした拒否を示すyouに、
「同じ趣味を持とうとは思ってくれないのか?」と、アカギは苦笑しながら問いかける…。
しかし、最終的にはこの彼女の言い分は納得せざるを得ないと思う事となる…。
「だってアカギさん、麻雀お強いんですよね?」
「あー……どうかな……ていうか自分で強いっていうの、変じゃない?」
「でもそうなんでしょ?しかも凄く強い。」
「・・・。」
出会ってから今までの経験上、同じ福本荘に住まう面々からの感想も勿論だが、
それ以外の方面からも様々アカギの雀士としての腕前を聞く機会は多々あった。
その評価のどれもが「常人の発想ではない」だの「悪魔じみている」だのといったもので、
ただ「強い」や「上手い」といったレベルではないことが伺える上、
おまけに、たった一時でもアカギを組みの代打ちに抱える為に仕組まれた計略に、自分も巻き込まれた経験もあるワケで…。
(※『アカギさんとわたし告白編1、2』参照)
「そんな風に、尋常じゃない評価を皆さんがされるので、相当なんだろうなって事は分かってるんです。」
「・・・。」
「勿論、アカギさんと関わる前からわたしが麻雀を知り得ていれば全く違ったのかもですけど。」
「それはまぁ、確かに…。」
「うん……だから……アカギさんなら分かるかなって、わたしのこと…。」
「そっか、成程ね……そういうこと。」
「そういうことです。」
「ま、仮にアンタがそういう気持ちを抱いたとしても、オレは絶対手離さないけどね。」
「・・・。」
曖昧な表現でも、アカギはすぐに彼女の言いたいことを察する。
それは、とどのつまり「貴方から逃げてしまうだろう」という意味だと。
麻雀が分かれば、分かる程、同時にアカギの凄さが分かってしまうので、
あらゆる方面で、自分の気持が図らずとも乖離し、遠のくだろうと言うyou。
(そしてその先に待つのは自分の死であることも併せて考える必要があるのだ。)
「じゃあ絶対この先覚えないで、知らないままオレの傍にいて。」
「そうさせていただけると、ありがたいです。」
「ん。」
食事を始める為に食器を持たないといけないというのに、
アカギの手は銀色のフォークではなくyouの温かく柔らかな手をぎゅっと握った。
彼女は彼女で、本来であれば食事が冷めないようにと言わなければならない立場なのだが、
アカギの行為が嬉しくて、思わず顔を見つめて微笑んでしまうのだった。
「でもさ、麻雀への興味って毛ほどもないの?」
「ありますよ?」
「そうなの、そんな感じ全然無いから微塵も無いのかと。」
「だって、アカギさんが好きなものでしょう?」
「!」
「好きな人が好きなものだから、自分も知りたいと思う」という率直な意見。
今まで話していた言葉が丸っと覆されたことに、驚きと、それを凌駕するほどの嬉しさがアカギを襲う…。
「でもその上で覚えないんだ?」
「はい、アカギさんが好きなので。」
「……you、色々矛盾してない?」
「してるかもしれませんが……でも、根底にあるのは1つですし…わたしには違和感はないかな…。」
「あーーー……。」
「?」
サラリと流す様に言った彼女の言葉。
しかし、これは流してはいけない場面だ…と、アカギはニヤける口元を手で押さえ隠し、一度ゆっくり呼吸を整える。
そして、いつも通りの平静を装い、頼み事を1つ。
「you。」
「はい?」
「…その根底にあるヤツ、言って。」
「…そこは流してくださいよ…。」
「いやだ。流したくない、寧ろそこが今一番聞きたい。」
「あ、ほら早くご飯食べないと……今日は雀荘行くって言ってましたよね?」
「行かない。」
「でも、南郷さんと安岡さんと待ち合わせてるって…。」
「行かない。」
「アカギさん…。」
「行かない。」
「あの、でも連絡はしないと…。」
「youが言ってくれたら2人に連絡する。」
「もう!」
「聞きたい、言ってよ。」
言ってしまえば、南郷と安岡に迷惑を掛けても彼女は困ることは一切無いのだが、
自分の所為で人に迷惑が掛かることを良しとしない性格を、アカギには把握されてしまっている…。
「南郷と安岡の待ち時間」という何とも微妙な人質ではあるが、結局彼女は折れて小さな息を吐いて、意を決する。
そうしてyouは真っ直ぐアカギを見て、彼の欲しがっていた言葉を口に出した。
「全部……「アカギさんが好きだから」です。」
そのように言われることを察してはいたものの、矢張り相当に嬉しいわけで…。
アカギはずっと握っていた彼女の手をゆるりと解き、その身体を抱き寄せた。
「こういう気持ち、何て言ったらいい?もどかしいね、上手く言葉にできなくてさ…。」
「いいですよ、無理に言葉にしなくても…ちゃんと伝わってます。」
「you…。」
抱き寄せられたすぐ後に、youも同じようにアカギの背に手を回す。
目を閉じれば、youの耳にはアカギの鼓動が聞こえ、安心感と幸福感で満たされる。
このまま数分も経過すれば睡魔に襲われるだろうと思い、そろそろ身体を離そうかと考えた頃…。
同じように思ったのか、アカギの方から身体を離して今一度向かい合う体勢に戻る事となった。
それを少し寂しいとは思うものの、テーブルに目を向ければ未だ手付かずの夕飯。
思えばまだ彼は食事も終えていないのだから致し方ないと思った刹那…。
「いや、やっぱりちゃんと気持ちを伝えたいよな。」
「ん、だから別に…。」
「オレに言葉は無理みたい。」
「・・・。」
アカギの言葉と表情に不穏な気配を察知し、そっとその場から離れるべく脚を後ろへそろりと動かそうと試みるも、叶わず。
ガシッと腕を掴まれ、そのままグイっと引き寄せられて彼女の身体は再びアカギの腕の中に収まることとなる。
「あ、あの……アカギさ…。」
「そういうワケで言葉じゃなく身体で伝えようかと思う。」
「お気持ちだけで結構ですッ!」
「クク……遠慮するなよ。」
「ほら!ダメですよ、だってまだアカギさんご飯食べてないし!」
「もう冷えちゃってるから後で温めて食べるよ。今はyouの方が食べ………。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「言葉じゃなくて身体で気持ちを伝えさせてほしい。」
「手遅れだよ!!」
やましい気持ちが口を突いて出た点を、フォローしたつもりでキリっと言いなおすアカギ。
youは全力でツッコミを入れるも、この男が止まるはずもなく…。
「肯定と拒否の根底の理由が全部、オレの事好きだからなんて言われて、嬉しくならないワケないじゃない……我慢しろって方が無理な話。矛盾してたって嬉しいだろ、そんなの…。」
「う…。」
「でもオレも鬼じゃない……こんな食事のテーブルの前でyouのことを引ん剥くのは気が引ける。」
「ああダメ…ツッコミどころが多すぎて…。」
彼女に拒否権は無い前提で話を進めるため、流石に呆れた声になるyou…。
「南郷さんと安岡さんに連絡して「あげる」から、youは先にベッドでオレのこと待っててよ。」
「やっぱり鬼なのでは…?」
再び南郷と安岡への連絡を人質に取られ、正直な気持ちが口を突いて出てしまうyouなのであった…。
でも言葉にできないくらいの気持ちで
想ってるのは本当だよ
(そういえば思い出したけど、麻雀用語って結構…。)
(結構??)
(アレな用語もあるんだよね。)
(アレ、とは…?)
(聞きたい?)
(・・・いえ、何か遠慮しておきます。)
(何で?気になるでしょ。)
(いいです、いいです、結構です!何か嫌な予感しかしないから!)
(クク…そう遠慮するなって……。)
(な、なんでじりじり近付いてくるんですか!)
(ん?実は知りたいであろうyouに、身体で教えてあげようかなって思ってさ。)
(だから知りたくな……ぃっ…!!)
words from:yu-a
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