step5_(恋人編:アカギ)
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「アカギさん・・・。」
「ん?」
呼びかけた彼女は
もう我慢の限界です…
そんな表情をしていた
アカギさんといっしょ14
「お……折り入ってお願いが…あるのですが…。」
「どうしたの改まって…。」
夕飯を食べ終え、ソファでTVを見ながら寛いでいるタイミング…。
youはソファの下におり、アカギを見上げて遜るようにして「お願い」を持ちかける…。
「リセントリー…頻繁に様々なバリエーションにエンカウントしてしまったので、所謂リミットブレイクがカミングしまして……わたくし。」
「日本語で。」
「つきましては、アカギさんにどうしてもお願いしたい事案がございまして…。」
「うん、だから何…?」
「アカギさんの………スーツ姿が見たい、です…。」
「・・・。」
予想していなかったyouの依頼に、珍しくアカギの目が点になる。
youいわく…。
ここ最近、近所の一条や平山、平井や森田などと会って話す機会が多かったらしく、
スーツ姿の男性(しかもイケメン)に目が慣れてしまった……否、目が肥えてしまったという方が適切である。
そんな状態なので、毎日アカギに会う度に彼のスーツ姿が見たくなってきて、
本日とうとうそのリミットブレイクを迎えてしまった…という。
「…というわけなのです…。」
「成程ね……他の誰よりオレのスーツ姿が見たいって思ってくれたことは素直に嬉しい。いいよ、別に減るモンじゃないしね、着るよ、スーツ。」
「ほっ、本当ですか?!」
「うん。」
「ありがとうございます!!」
アカギの言葉にぱぁっと目を輝かせて明るい表情を浮かべるyou。
本当のところを言うと、以前アカギにスーツ姿を見たいと思った時にお願いしてもいいかと尋ねた際に
「気分によっては条件を付けるかも」と言ったことを覚えており、今回ずっと我慢していたのもそれが原因であってのことだった。
(※「アカギさんといっしょ2」参照)
故に、特に何の条件も付けずにスーツを着ることを承諾してくれたため、喜びもひとしおという状態…。
「そうだ……折角だし、今度スーツ着て行くようなところに飯食いに行こうよ。どっかホテルとか高層ビル内にあるレストランとかさ。」
「行きたいですが予算は5千から1万くらいのコースじゃないとちょっと……。」
「それでもいいんだけど…………youと贅沢したい。」
「またそんな事言う…。」
「オレ、スーツ着るんだろ?なら、youにもちょっとお洒落な恰好してほしいと思ってさ。」
「えー……。」
零やカイジなど、普通であれば「それだけでも十分贅沢できるよ」と笑顔で返すところだが、
何故かこの男、こういうところで変に譲らない時がある…。
どこかその辺の居酒屋や定食屋でも十分満足する日もあれば、
何故か絶対的に高級店で贅沢したいと、今のように言い出す時の波が大きい…。
その理由は今回の「youにめかしこんでほしい」といったように、
ほとんどyouに起因しているのだが、彼女本人はそれに気付かない。
「渋るのはドレスコードの問題じゃなくて、単純に金額の問題?」
「そうですよ。」
「あー……うん、分かった。」
「分かっていただけて良かった……低予算で申し訳ないですけど。」
「とりあえず、youの心配は分かった。それを踏まえてオレが行きたいとこ考えとく。」
「アカギさん…ありがとうございます。」
まさか了承してくれるとは…と、youは意外そうな顔を浮かべるが、
勿論、アカギとしてはそんなに素直に享受したわけではない。
ふむ…と、何か考えるように腕を組んで目を瞑るアカギ…。
話はひとまずひと段落したので、youが再びTVに目を向けようとしたのを、アカギの言葉が遮る。
「んー……ゴメンyou、突然だけど一万円貸してくれる?」
「え?本当に突然……一万円ですか…??」
「そう。スーツで飯食いに行くときに返すから。今借りていい?」
「え、はぁ……分かりました…何に使うんですか??」
「ば(くちの……いやだめだこれはえーっと)………った(ね銭…もダメだな、あー…)………。」
「え?バッタ…?」
「ううん、ちょっと……給料前だから金欠で………だから飯は給料入った後でいいか?ちょうどいいと思ってさ。」
「構いませんけど……珍しい。」
「フフ……まぁ、そういう時もある。いや、無いんだけど。」
「???」
今までお金の貸し借りを持ち掛けられたことなど一度も無かったこともあり、疑問に思いながらもyouは財布から一万円札を取り出してアカギに渡す。
そもそもアカギには今まで何度も食事等をご馳走してもらっていたり、よく家に入り浸ることから食費や水光熱費という名目で
生活費の一部を負担してくれていることもあり、youは特に渋ることもしなかった。
ただ、何となくではあるが給料前で金欠ということはあるのかもしれないが、
南郷や安岡ではなく、敢えて自分に借りるという事に何かしら理由がありそうな気がする……とyouは思うのだった。
そうして、アカギの給料日後にスーツを着用して食事に行くことが決まったのだが…。
「そうだ…忘れてた。」
「ん?どうかしました?」
「どうもこうも……さっきの話、聞き流すトコだった。」
「?」
「you、オレちょっと怒ってるんだけど。」
「え?!急に?!!」
「オレの知らないところでそんなに沢山スーツの男と会ってたって事?」
「えっ、いや、ちが……そんなんじゃないですよ!」
思い出した所為で余計に変な怒りが湧いてきたのか、少し不機嫌そうなオーラを醸し出してyouの両肩に手を置いて見つめるアカギ・・・・。
「じゃ、どんなの。」
「えっと……一条くんは休みの日にお仕事を手伝ったので…。ゆっきー…平山さんはたまたまスーパーで会ったので一緒に歩いて帰ってきただけで……銀さんと森田くんは暫く102号を留守にされてたみたいで、久々で掃除が必要だったらしく、それをこないだ手伝ってあげたんです…。」
「何それ……オレのyouなのに…。」
「んでも……皆さんほとんど偶然系なので……。」
「偶然だろうが何だろうが関係ねェな。」
「お、怒らないでください……皆さん確かにスーツ着たイケメンさん達ですが、誰かに靡くとかじゃなくって…結果的に、わたしはやっぱりアカギさんのスーツ姿が見たくなっただけなんですし…。」
「・・・もう一声。」
「え?」
「オレの怒りが収まるようなヤツ、頼むよ。」
「そんな、キツめのアルコール頼むみたいな…。」
「いいから。」
「うーん……何か…わがまま言ってすみません…。」
「スーツ着てって?」
「うん……だって…普段のアカギさんも十分素敵なんで「見慣れた」なんてことは思わないんですが……いつもと違う姿を見たいって……欲張って、しまう…みたいな。」
「クク……まぁ、いいでしょ……でも、それはそれ、これはこれ……ちゃんとオレの嫉妬心を今から受け止めてもらうから、そこは宜しく。」
「?!!」
よろしくって何?!と目を見開いていると、アカギは片手でyouをソファに押し倒し、
器用にももう片方の手でTVのリモコンを手繰り寄せ、電源を消す。
「あ、アカギさんっ?!」
「オレに嫉妬させたyouが悪い。」
「そんな…っあぅっ…だめ!」
思いがけないことがきっかけで、アカギの気分を害してしまったため、いつもより早く、いつもとは違う場所で身体を暴かれることになるのであった…。
・
・
・
・
数日後……。
…というよりはアカギの給料日後だが、例のスーツを着て食事に行くことにした日。
夕飯ということでお互い翌日が休みという日を選び、駅で待ち合わせることにした2人。
アカギはどうか分からないが、youは一度家に戻って準備をして駅へと向かう。
「(ちょっと…早めに着いちゃったな…。)」
「すみませーん。」
「はい?」
「おねーさん、今一人ですか?結婚式の帰りとか?いや、何かシュッとした黒いドレス風で……綺麗な恰好してるなーと思って。」
「あ、いえ…そういうんじゃ…。」
「もしよかったらオレとお店行きません?すぐそこなんですけど、初回はめちゃくちゃ安いんで!」
流石に夜でも賑わう市街地の大きな駅前…。
コンセプトカフェやバー、飲み屋にホストクラブといた呼び込みがそこかしこでキャッチを掛けている様子…。
youは苦笑を浮かべ、声を掛けてきたホストクラブの呼び込みらしき派手な髪色の青年に向け、やんわりとお断りの意思を伝えてみる…。
「ええと、すみません…人と待ち合わせをしてるんで…。」
「そうなんすか?女の子とかだったら、その子も是非…!」
「あ、いや……男性で…。」
「えー、彼氏さんすか?それかもし、仕事関係なら気乗りしない飲み会行くより絶対楽しいのはガチなんで!」
余程呼び込みに力を入れているのか、待ち合わせの相手が異性だと伝えてみても、なかなかのガッツを見せる青年…。
困りつつも待ち合わせの場所を移動するワケにもいかないため、
どういう言葉であれば断れるかと思案していると、「それ、オレの連れなんで」と、目の前の男性の肩にポンっと大き目の手が掛けられた。
手の主をゆっくり見上げると、youには青年の後ろに待ち人が立っていることが分かったため、
パッと顔を明るくして「アカギさん!」とその名を呼んだ。
待ち合わせの男性が現れてこれ以上の勧誘ができないのは無念だが、それにしても今どきそんな台詞で恋人にアピールするなど、
どんなダサい彼氏が…と振り向くと、白髪がとびきり印象的な男も惚れる男がビシッと真っ赤なインナーシャツのスーツ姿で立っているので、思わず口がポカンと開いたままになる青年…。
「you、ゴメン、ちょっと遅くなった。」
「いえ、わたしがちょっと早かっただけなんで…!」
「行こっか。」
「はい!」
アカギは勿論そのままスルーで…。
youは律儀に青年にペコリと会釈して、その場を去る。
残された青年は暫く呆けた顔をしたのち「あれ、どこの店のひと……俺、あの人のいる店に移店したい…」と、呟くのだった…。
アカギが予約したという店の場所や名前は、当日になっても一切教えてくれなかったため、
今尚、youはアカギの足の向かう方へと付いていく…。
その最中、矢張り話題にするのはスーツのこと…。
「さっきは悪かったな、オレの方が遅かった所為で…。」
「お店の呼び込みも大変みたいですね……結構ガッツのある方だったので逆に感心してしまいました。」
「フフ…何それ、変なの………それよりさ、ほら、ちゃんとスーツ着てきたよ。」
「はい、はい!すっごく素敵、カッコいいです……いつもより大人っぽくて理知的というか……控え目に言って滅茶苦茶男前ですね…。」
「ありがと、だけどyouも綺麗。しっかりお洒落してるじゃない。黒ってのはちょっとだけ意外だけど、いいね、似合ってるよ。」
「そうですかぁ?何着ればいいか分からなくて……ちょっとだけよそ行きくらいの格好に落ち着いちゃったんですけど…。」
「十分でしょ。」
フッと笑みを浮かべ、お手をどうぞとばかりに手を差し出すので、
youは照れくさそうに「ありがとうございます」と小さく呟き、その手を取った。
それから約5分弱歩いたところにある駅の近くの大型のシティホテルに入ると、
そこの上階にある併設のレストランへとアカギが向かおうとするので、youはエントランスを潜った時点でピタリとその足を止める…。
「you…?」
「あ、アカギさん……今日のご飯って…。」
「ん?予約したのここの上階の飯屋だけど。」
「こういうとこ飯屋とか言わないから!!嘘でしょもう、そんなにお金出せないって言ったのに!」
「あぁ、それね……大丈夫ダイジョーブ、後で説明するから、とりあえず付いてきて。」
「何が大丈夫?!ああもう…!」
「フフ…いいから。あ、エレベーター来たよ。」
「ちょ!」
例によって例の如く、高級なホテルディナーを予約したと言い放ったアカギ…。
毎度毎回彼に奢ってもらうのに慣れるのも如何なものかと、自分の分はしっかり自分で払うつもりでやってきたため、
今回も自費では払えそうにないレストランを選んだアカギに憤りを見せたのだが…。
何故か面白いことを隠すような表情で、アカギは彼女の手を引き、上階のレストランへと連行する…。
エレベーターを出て、フロアに降り立ったところで案内の係が2人をカウンターへと誘導し、受付を行う。
予約を確認すると、そのままラグジュアリーな内装の店内、その座席へと案内されてしまった。
予約したコースの確認と飲み物の注文を終わらせると、向かい合うテーブルでyouがさめざめと悲しみを零す。
「うう…もう逃げられない…カード切るしか…。」
「いい加減しつこいな……心配しなくていいって言ってるのに……。」
「心配っていうか…!」
「はいこれ、一応確認する?これがあるから、大丈夫って、オレずっと言ってたんだよ。」
そう言ってアカギは1枚の茶封筒をスーツの懐から取り出し、真白なクロスの敷かれたテーブルの上に置いた。
手紙か何かかと、不思議そうな顔でそれを見つめるyou。
「何ですか、これ…。」
「こないだyouに借りてたでしょ、お金。」
「ああ、一万円!お給料入ったんですね。」
「うん、だから返すんだけど……ただ返すんじゃなくて増やして返したくてさ。あの時youに借りた。」
「ちょっと何言ってるか分からないんですけど…。」
「オレはカイジさんとは違うからね、ちゃんと返すよ。」
「いや、そこでドヤ顔されても……。」
「まぁ、兎に角見てよ、中身。」
言われるままに封筒の中身を確認するyouをフフ…と含み笑いを浮かべて見つめるアカギ…。
「なっ…?!」
茶封筒の中に入っていたのは1枚ではなく…。
「何で5万も6万も入ってるんですか?!」
「言っただろ、増やしたって。」
「増やしたって……増やしたって…!?」
「youに借りた1万。6万に増やした。」
「Why?!」
「何でって……youが単純に金額の問題で高いとこに飯行かないって言うから…。」
「人に借りたお金で何してんですかアナタ!!!」
「そこはそう、増やせなくてもオレはカイジさんとは違うからね、ちゃんと給料で返すよ。」
「何で2回もカイジくんをディスったし…。」
「でもちゃんと成功したから。youの分だけじゃなくて、オレの分まで。」
「す、すごいかもしれないですけど、もう絶対そんなことしないでください…。」
「あらら……残念…良い方法だと思ったのに。ま、でも……この6万はyouのもの。今日の飯の支払いに充ててもいいし、充てなくてもいい。どうする?」
「うう……使っていいんですか…?」
「勿論。元はyouの金なんだし。」
「でも…でも、やっぱり1万はわたしのかもですが、残りは違うと思うので……。」
「どのみち同じだろ、残り5万がオレんだって言うんなら、それはそれでオレが今日の支払いに充てるだけのこと。だってその為に増やしたんだしさ。」
「うう…。」
「それでいいか、you?」
「いつもいつも毎度毎回すみません………ご馳走になります…。」
「寧ろいつも飯用意してくれる方が大変なんだし、たまの奢りくらいじゃ全然オレとしては感謝足りてないくらいなんだけどね。」
「アカギさん…。」
「だから素直に「ありがとう」って言ってくれる方が嬉しい。」
「うん……はい、ありがとうございます……。」
「ん。」
「でも人に借りたお金を種銭にはしちゃダメです。」
「む…。」
ご馳走されることを受け入れてはくれたものの、
その資金調達方法だけは今後禁止です…と、youに釘を刺されるアカギであった…。
ただ、それでお互いの意思疎通は完了したため、
少しギクシャクしていた(主にyouの)態度も平常に戻り、穏やかに食事を楽しむことができた2人…。
予約したコースを人通り食べ終え、食後のコーヒーと紅茶で落ち着いてから、店を後にした…。
さて、そこでふとyouの脳裏に改めて過ぎるのはこの場所のこと…。
アカギが予約したのがホテルディナーだったため、明日は2人して休み、恐らく部屋も確保済なはず…そうなるとそのまま…と、
エレベーターに乗り込んだ後、急に緊張して押し黙ってしまう…。
「you、大丈夫?急に黙って……お腹痛くなった?」
「いっ、いえ別に!全然、大丈夫…。」
「そう…?まぁ、多少体調崩しても明日休みだしね。」
「そ、そうですね……いや、崩したくないですけど。」
「それもそうか。」
そんなどうでもいい話をしていると、ロビーに到着する音がエレベーターの箱に響き、ドアが開いた。
迷いなく外へ出るアカギの背中を驚いた顔で見つめ、呆けていると、そのままドアが閉まりそうになったため慌ててエレベーターを降りるyou。
「明日、何しようか……どっか行く?」
「え?えっと…いえ特にリクエストとか無いですけど…。」
「そう?まぁ、買い物とか、どっか行きたくなったら言って。付き合うよ。」
「は、はぁ…。」
ホテルの宿泊があるのではと、内心ハラハラしていたyouだったが、意外にもアカギはそのままホテルを出て歩き始める…。
例えばホテルにそのままでなく、歓楽街の方に誘われるのかと思いきやそれもなく…。
youはそれからずっと「え?え?」と思いながらも、アカギと普通に元来た道を辿り、駅に着く。
それからも電車に乗り、最寄りの駅で降り、普通に他愛のない会話をしながら、福本荘にそのまま到着してしまう。
なんだ、特別な恰好と特別な食事をしたと思っているのは自分だけで、
アカギにしてみればこのくらいの食事は別段特別でも何でもなかったのか…と、最終的に思い至ったyou。
最後に、家に入る際……少し寂しい気もするが、相手がこの赤木しげるなら、そういう感性の違いも致し方なかろう…と、フッと鼻で笑う様に溜息を吐いたところで、アカギから唐突に不思議な言葉を投げかけられた。
「you、1つ賭けをしないか?」
「へっ、え?何…?か、賭け、ですか…??」
「そう。」
「な、何のでしょう、急に?」
「ひとまず、オレの部屋に入ってからにしよう。」
「え、あ、はい…。」
まだ少しだけ自分とアカギの感覚の相違に地味にショックを受けているyou。
アカギが突然言い出した「賭け」に関しても深く考えられないまま、201号室へと入り、促されるまま彼が先日購入した最高の寝心地のベッドへと腰を下ろした。
「オレはさ…。」
「・・・。」
ゆっくりと口を開き、アカギが顔を横へ向ける…。
割と真面目そうな表情で、youも思わずコクリと息を飲んで真剣に目を見つめたのだが…。
「youは結構スケベだと思ってるんだよね。」
「はっ倒しますよ。」
「クク……まぁ、そう怒らないで…。」
「逆に怒らない女性います?!」
「でも事実デショ。」
「事実じゃないですっ!」
酒を飲んでいるとはいえ、youが怒るのも無理はない程の失礼発言をするアカギ。
賭けだか何だか知らないが、以前のようにスマートにシティホテルでの一泊を案内…などと抱いていた淡い期待が打ち消されたことも相俟って、不機嫌度が上昇するyou…。
声色でそれを読み取ると、アカギはクク……と小さく含み笑いを浮かべた。
「フゥン……じゃぁさ、これから提案するオレの賭けに乗って、それ証明して見せてよ。」
「は、はい?!」
「youが今付けてる下着がどんなやつか、オレに当てさせてよ。」
「はっ?」
「当たってたらオレの勝ち、外れたら負け。そういう勝負。」
「何それ……そっ、それでどう証明するんです?ていうか、勝ったら…どうするの?」
「ん、オレがyouに買ってやりたいモンがあるんだ……そいつをyouに身に着けてほしい。」
「な、なんですかそれ……それ、何かあんまりわたし損しない感じじゃないですか…?」
だってアカギさんからプレゼントいただけるんですよね?と、小首を傾げて頭に疑問符をポンポンと浮かばせるyou。
身に付けるという事であれば、何らかアクセサリーや時計などかもしれない…と。
だとすれば断る理由も無いが、ただ、その賭けに乗るという事はアカギに下着を見せねばならないということと、
今着ている下着の問題もあって、どう言い訳をしようともスケベ認定されてしまうというデメリットが浮かび上がる…。
なぜならば…。
「(だって…絶対どっかに泊まると思ってたんだもん……連れてかれると思ってたんだもん!!)」
プレゼントをもらえるのは有難いが、これは断らざるを得ない…。
そう伝えようとした彼女の様子を察したのか、アカギはふっと息を吐いてyouの頭をポン…と撫でた。
「…まぁ、今日に限っては仕方がないっちゃ仕方がないよな……オレにスーツ着てほしいって、ある意味でyouからのお誘いなワケだし……そういうコトするだろう、って誰だって思うもんな。」
「っ…!!」
アカギの伝えたそれは、正にyouが人知れずショックを受けていた要因が違っていたことを示唆するもの…。
トクベツな格好をしていたこと、特別な日にしようと思っていたことが自分だけではなかったと理解した。
その上で何故か何もせず家に戻ってきたのかは分からないが、それでも一方的なものではなかったという事実に安堵し、少しの嬉しさもあってyouの目が潤む。
しかしながら、全部まるっとお見通しだよと言われると、それはそれで羞恥心から別領域の涙が目尻に浮かんでしまうのだった…。
「当たり前の考え方だよ、恥ずかしがる必要無い。」
「あ、アカギさん…。」
「だからさ、賭け乗ってよ……そういうとこも含めてyouのこと……オレには、分かるんだからさ、隠したって意味ないって。」
「っ…もうっ……分かりました、どうぞ!お答えください!バカ!」
「クク……じゃ、遠慮なく…。youが着てるのは黒い下着。横んところ紐になってるの選んだあれ。こないだ一緒に買いに行ったヤツでしょ。」(※「アカギさんといっしょ11」参照)
「色まで当ててきやがった…っ!」
「当然。だから今日の服も黒にしたんじゃない?」
「えぇ……うん、そう…。」
「言ったろ、youのことは何でも分かるよ。」
「正直滅茶苦茶怖い。」
「クク……。」
youをからかう際によく見せるいつもの愉快そうな笑みで笑うと、
アカギはその延長で彼女の方へと身体を向けてその顔を除き込む…。
「じゃ、確かめていい?」
「み、見る必要ないじゃないですか!わたし正解って自分で言いましたし!」
「またそんなことを……無駄な抵抗はやめたら?だってエッチすると思ってその下着着てきたんでしょ。する場所が変わっただけなんだし……今更拒否されても説得力皆無じゃない。」
「うぅ…うぐ…ぐぐ。」
「…相変わらず強固な事で……仕方ない…。」
「う…?」
彼女が羞恥心と鉄壁の無意識な性欲抑制で言葉を噤む姿を一瞥すると、アカギははぁ~…っと盛大な溜息を吐いた。
そして暫しの沈黙ののち、急に身体を傾けたかと思うと、アカギはポスっとyouの肩に寄りかかった。
珍しく可愛い行為を見せるので、youは先程のムーディな雰囲気をすっかり忘れた様子で「どうしたんですか急に…」と微かに柔らかく笑みを浮かべて尋ねてしまう…。
「you。」
「なんですか…?」
「疲れたから脱がせてくれない?………オレのスーツ。ついでに中のシャツも脱がせてくれるとすごい有難いんだけど。」
「っ……はい喜んでぇええ!!」
思考が読みやすいというのもあるが、好きなものには無条件に反応するという…。
自分がいる限り大丈夫だとは思うが、
自分以外の相手にもその性質を把握されて、体よく利用されるのではないかと……チョロ過ぎて心配になるアカギであった…。
アンタの事は
何でも分かる
でもオレだから分かるんだ
(あ、そういえば…賭けに勝ったから、youに贈りたいもの、買っていい?っていうか賭けに勝ったから買うし、絶対使ってもらうんだけど…。)
(ああ、それわたしも気になってました……一体なにを買われるんですか?)
(スケベな下着。)
(なんて?)
(スケベなyouに似合う、スケベな下着だよ。)
(余計に酷い説明しないでください!!)
(いいじゃない……youだってオレにスーツ着せたじゃん。)
(冗談でしょ!一緒にしないでください……ハッ……ま、まさか……。)
(クク……。)
(嘘、うそ、ウソ……もしかしなくても…わたしが「スーツ着てほしい」ってお願いした時から……。)
(まぁね。そういやオレもyouに着てほしいのあるなって思ってさ。)
(素直にスーツ着るって言ってくれたのに、すぐじゃなくて、別の日に着るって言ったのも…家に直帰したのも……キレ散らかしたわたしがホイホイ賭けに乗ってくるように仕掛け……?!)
(大丈夫ダイジョーブ、似合うやつを買うから…。)
(似合ってたまるかぁあああ!!!)
words from:yu-a
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