step1_(ご挨拶編)
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「お次お並びの方、こちらどうぞー!」
その爽やかな声に呼び掛けられるまま、隣のレジへと向かった。
コンビニの佐原くん。
「あっれ……もしかして…カイジさんのお隣さんの…!」
「え、あ…!えーっと……カイジくんのお友達の!」
「お友達っつーか……バイト仲間の佐原です!佐原誠!」
「そっか、佐原…くん!えっと、わたし、カイジくんの友達のyouです。」
「そうそう、youちゃんだ!」
外見通り…と言っては失礼にあたるかもしれないが、
明るめの髪色に軽いノリでサラリと女性に声を掛ける様子は、多少なりとyouに警戒心を抱かせた。
それでも、声を掛けられたからには何か話題を…と、当たり障りない内容で言葉を返す。
「カイジくんも佐原くんも、こんな近くのコンビニでバイトしてたんですね。知らなかった。」
「え、知らなかったの?」
「うん。カイジくんあんまり自分のこと教えてくれないから…。」
「ああ、確かに…。」
「えっと……佐原くんはいつもこの時間に?」
「いや、今日はたまたま人足りなくて昼夕に駆り出されたんス。いつもはカイジさんと同じで深夜帯ばっかッスよ。」
「そうなんだ?じゃぁ、たまたまなんだね。」
「そう、たまたま!でもこの時間帯に出勤してよかったー!」
「何かいいことあったんですか?」
「youちゃんと会えたんで!」
「あら……まぁ//」
あまりにもにっこりと爽やかな笑顔で殺し文句を言われ、
頬を赤らめて言葉を詰まらせるyou。
その様子があまりにも初々しくて、
佐原は思わず目を点にして惚けることとなってしまった。
「(え…何この人超可愛いんですけど…。)」
「ありがとう。わたしも、佐原くんに会えてうれしいです。」
「えっ、あ、は、はい…!」
ペコリと軽く一礼し、照れ臭そうに、しかし本当に嬉しそうに
youはカウンター越しに佐原を見つめる。
反応といい、切り返しといい、今まで自分が出会ったことのないタイプの女性であると佐原は認識する。
それと同時に思う事…。
「(カイジさんには勿体なさすぎるッ!!)」
思わず会計へ通さねばならない菓子パンをグッと握りつぶしそうになる佐原。
しかしすぐに我に返り、身を乗り出す様にして彼女に呼び掛けた。
「あのさっ、youちゃん!これから時間ある?!」
「これから??えっと……家に帰るだけだけど…。」
「福本荘だよね!?」
「うん。」
「あのさ!迷惑じゃなければでいいんだけど、一緒に帰ってもいいかな?!」
「え?さ、佐原くんも??福本荘に??」
「そう!」
実は…と、佐原はyouを引き留める理由を話し出す…。
それは至ってシンプルな「カイジに会いに行く」という理由だった。
辺りを見回し、ちゃんとレジが混んでいないのを確認してから、詳しく話し始めた佐原。
勤務時間中に私事を持ち込むのは勿論良くはないのだが、
仕事仲間に迷惑を掛けないように、今の状況を締めるべきかどうかを見極めるあたり、
佐原は仕事に対して不真面目な人種ではないことが分かる。
お陰でyouも周囲の視線を気にすることなく、佐原の話に耳を傾けることができた。
「今日カイジさんバイト休みで、オレも珍しくこの時間帯で上がりだから一緒に飲もうって話してたんすよ!(嘘だけど)」
「ああ、なるほど!」
「折角だから、youちゃんとも仲良くなりたいなーと思ってさ!もし予定無ければ、オレ達と一緒にカイジさんトコで宅飲みしません?」
「佐原くんと…カイジくんと…?」
「そう!」
「そうね…最近カイジくんと会ってないから体調とか心配だし、この機会に会って話聞こうかな。」
「おっしゃ、決まりッ!!今から退勤するからえっと…あと10分。いや5分くらい店内で待ってて!」
「うん、分かった。」
そんな話が終わってすぐに時間は夕刻の17時。
ちょうど佐原が上がりの時間となり、彼はバタバタと職員専用のドアをくぐり、バックヤードへと走って行った。
それから数分後、私服に着替えた佐原がコンビニの外に現れたので、youはそれを見計らって店の外へと出た。
「youちゃん、お待たせ!」
「お疲れ様です、佐原くん。」
「じゃあ、行きましょっか!いざ、カイジさんの元へ!!」
「あはは、何か冒険漫画の始まりみたい。」
「勿論、それのイメージっす。」
それから福本荘への行き道は楽しいもので、共通の知人であるカイジの話だけでなく、
最近の漫画だったり、歌手だったり、面白い番組の話だったりと、様々なことを話した。
佐原は話題の持ち出し方やパスの出し方も大変上手く、
その上話が面白いということで、youも終始笑顔で歩き続けることができた。
話に夢中になっていたが、気付けばあっという間に福本荘に辿り着いており、
佐原に「カイジさん203でしたっけ?」と尋ねられ、そこで目的地に付いていたことに気付きビックリしたほど。
そこで最終的に階段を上がろうとした際、youの携帯が鳴った…。
「もしもし?」
『あ!良かった、youちゃん!美心だけど!』
「うん、どうしたの?」
『ちょっと急ぎで大事な相談したいことがあって!youちゃん、今から時間ある?』
「えっと……ちょっと確認して折り返していい?」
『うん、本当、急にゴメンね!』
「じゃあ、またすぐ電話するから。」
掛かってきた電話は親友である美心からで、声色から察するに大変焦っている様子…。
佐原とカイジと飲む約束をしたものの、今の切羽詰まった様子の親友を放っておけるyouではなく…。
「あの…佐原くん…。」
「ん?どうかした?」
「えっと、今の電話なんだけど……わたしの大事な友達からで…。」
「あー…。」
「凄く焦った様子で「相談したいことがある」って言われちゃって……。」
「なるほど…。」
「ゴメン、折角誘ってくれたのに……ちょっと、友達放っておけないから……行ってきていいかな…。」
「うん、残念だけど、そりゃしょうがないッスよ!」
「本当にごめんね!!わたし、また佐原くんと話したいから、誘ってくれると嬉しい。カイジくんにも会いたいし。」
何度もゴメン、と言葉を繰り返しゆっくりその場を離れていくyou。
少し残念に思うものの、元々は自分が提案した架空の飲み会…。
ある意味で騙した罪悪感が解消されることもあり、彼女が参加できないのを受け入れることにしたのだが…。
「あ、待ってyouちゃん、待って!」
「?」
すぐに美心に電話を掛けようとした彼女を引き留め、自分の携帯を取り出した佐原。
「社交辞令じゃなければ……さっきの…。」
「?」
「オレもまた…絶対youちゃんと話したい、から……。」
「うん…社交辞令じゃないよ、今日短い距離だったけど佐原くんと話してて凄く楽しかった、またお話ししたいな。」
「っ……(がわ"い"ぃ"!!)」
「佐原くん?」
「な、何でもない!えっと、じゃあ……番号聞いてもいい?かな。」
「うん!よろしくね、佐原くん!」
「よろしくっす…マジで。」
そう言ってお互いの連絡先を交換し、youは美心に電話を掛けながら駆け足でその場を去って行った。
その場に残された佐原はというと…。
「すまん、カイジさん……オレ、これからライバルになるんで……今日は帰るっす。」
(そもそも押しかけようとしただけなので、全く問題ないのだが)
一応、それこそ社交辞令でゴロゴロ寝ているであろうカイジの203号に向かって
ビシっと一礼し、福本荘を去る佐原なのであった…。
コンビニの佐原くんは明るくて話してて楽しい人!
(お、佐原じゃん…何してんのこんなとこで。)
(かかか、カイジさんッ?!い、家にいなかったんですか?)
(おお、パチンコ行ってた。何だ、オレに用があったのか?)
(あったけど無くなったっていうか……無くなって良かったって今心の底から思ってます…危なかった。)
(はぁ?)
(まぁ、そういうことで用事無くなったんで、帰りますわ!カイジさんは今日からライバルなんで!)
(何言ってんのお前……あ、今日3万勝ったからメシいかね?奢るわ。)
(行く!!あざーっす!!)
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