step2_(イベント編)
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「それでね、その時にカイジくんがぁ~…!」
「んん!ちょっと待って美心ちゃ…何か電話…。」
本日は202号にて絶賛女子会中のyouと美心…。
イベント参加ですよ福本荘!
口に頬張っていたお菓子を爆速で嚥下し、youは美心に断りを入れて電話に出た。
「もしもし?」
『あっ!もしもしyouさん?マミヤです!あのね、今ちょっと話せる?』
「ん、ちょっとなら大丈夫。今は家で美心ちゃんとお茶してるの。」
『えっ、今家?美心さんもいるの?!ヤバい、めっちゃいいタイミング!寧ろ好都合!』
「えーっと……じゃぁ、マミヤちゃんも来る?」
『すぐ行きます!』
と、言うや否や、電話はブツっと切られる。
恐らくマミヤもこの福本荘の101号にいたのだろう。
youが美心にマミヤが今から来ることを口頭で伝え終わったと同時に玄関のインターホンが鳴った。
youは「来たみたい」と苦笑しながら、玄関へ向かう。
「いらっしゃい、マミヤちゃん。」
「はい!お邪魔しますっ!」
マミヤと共に美心の元に戻ってくると、美心が嬉しそうに挨拶をする。
「こんにちわ、歓迎会以来かな、マミヤちゃん元気にしてた?」
「美心さ~~ん!お久しぶりです!オレはいつも元気ですよー!美心さんも相変わらず可愛いね!」
「も~!ヤダぁ~!女同士なんだから、お世辞なんていいんだぞっ!」
「いえいえいえ、本心だから!そう、本心なの!美心さんもyouさんも!素敵!可愛い!美人!間違いない!」
「「ま、マミヤちゃん…??」」
途中から、鬼気迫る勢いで2人を急に褒め倒し始めたマミヤ…。
流石に違和感を感じたyouと美心が顔を見合わせてマミヤに問いかける…。
「あの…マミヤちゃん、どうしたの?何かあった?」
「私とyouちゃんでよければ話聞くんだぞっ!」
心配そうな顔でマミヤを見つめる2人…。
マミヤはすぐにワナワナと震えだし「わーーん!」と2人に抱き着いた。
「2人ともマジ女神~!永久に推すぅ~~!!」
「はいはい。」
「ぐすっ……実はお2人にお願いがあって…。」
「「お願い…?」」
抱き着いたマミヤの背中や頭を2人でポンポンと撫でながら、彼女の言葉に再び顔を見合わせる。
「来月の予定なんだけど、土日でyouさん達のお休みもらえないかなぁ……実は手伝ってほしい事があって…。」
「手伝ってほしいこと…?」
マミヤ曰く…。
雀荘によく顔を出すため、よく年配のおじさんらに頼まれごとをされることが多いらしいマミヤ。
楽しそうな事に関しては後先あまり考えずに「いいよ~、何か楽しそうだし」と安請け合いしてしまうこともしばしばあるのだという。
今回もそのパターンで、中華料理店を営んでいる雀荘仲間のおじさんに頼まれて、
次月に行われるイベント会場でフードエリアのブースの一角に出張出店することになったため、手伝ってほしいという依頼を受けたのだという。
「ブース出展の料理はおじさんと息子さんが作るけど、自分の店は自分の店で奥さんが営業するから、店のバイトをイベントに出せる余裕が無いらしくて……イベント会場のフードコートエリアの客に提供する人員が足りないから手伝ってって言われて…。」
「それで「いいよ」って言っちゃった手前断れなくなって、しかも自分1人じゃ足りないことに気付いた?」
「美心さんビンゴ!」
会場のフードコートエリアが予想外に広かったらしく、最低でも2名は確保したいと店主から要望があったため、
youに協力してもらえないか…という相談であった。
「休みの予定が確約できれば、全然手伝うのは構わないけど……仕事の内容は簡単かな…そこが心配。」
「注文取って、料理を提供するだけ!」
「うーん、それくらいなら何とか…。」
「やったー!ありがとう、youさんっ!」
仕事内容はそこまで難しくなさそうなため、休みが確保できれば別に協力するのは構わない…とyouが言うと、
美心も「楽しそうだから私も協力するね」と二つ返事でOKしてくれた。
「ううっ、本当にありがとう!youさん、美心さんっ!!」
そう2人に感謝の意を伝えると、マミヤは大喜びで「そうと決まれば早速報告!臨時バイト代弾むようにおじさんに伝えておくね!!」と、去っていった。
数日後、日時や場所、メニューなどの詳細がyouと美心に伝えられ、
ちゃんと2人とも指定の土日の休みを確保し、当日を迎えることとなった…。
そしてイベント当日…。
「ま、マミヤちゃん……これは一体…。」
「うーん、ゴメン……何か女の子3人で手伝うって言ったから…かも…。」
バックヤードでイベント時の制服としてマミヤから渡されたのは膝上丈のチャイナドレス…。
よく店頭で見かけるパーティー用グッズよりもやや作りがしっかりしているのは、恐らくネットショッピングで購入したものだからだろう…。
申し訳なさそうに謝罪するマミヤと、絶句するyou…そして…。
「えぇ~っ、これ着てお仕事していいの~?!超可愛いー!コスプレみたーい!」
「え、美心さんこれ嬉しいの?」
「え、だってこんな機会滅多になくない?美心は全然嬉しいんだぞっ!」
「えー、美心さんマジ天使~~!」
「ヤダ、マミヤちゃん、褒めてもウィンクくらいしかあげないんだぞ☆」
「わー!美心さんアイドル過ぎーー!!」
満更でもないどころか、思いっきり嬉しそうにチャイナドレスに着替え始める美心…。
そうなると、結果的にマミヤもそれを着用するワケで…。
そこで一人だけ私服で参加するとなると、ちゃんとしたバイトを雇っていない…と、
来店客らが店側に不信感を抱いてしまう可能性もあるわけで…。
結果的に羞恥心に耐えながら、youも制服として同じチャイナドレスを着用することになるのだった…。
そうして迎えたお昼時…。
イベントのフードエリアにはそれなりに多くの店が出店しており、イベント参加者が食事をするフードコートも広かった。
その上、かなり目を引くチャイナドレスの店員がいるとなると、味はともかく客は増える一方で、
兎に角昼以降、数時間ぶっ続けで客が引くことがなく…、夕刻のイベント終了時には参加者全員満身創痍…。
マミヤもyouもあの勧誘の日、一緒に居合わせたピンチヒッター美心の存在を改めて有難く感じることとなった。
・
・
・
そして本日、イベント2日目…。
昨日と同様に昼時に入り、徐々に忙しくなってきた頃…。
「あれっ?!もしかして…youちゃん…?!」
「えっ?!な、南郷さんっ?!な、何で!どうして南郷さんがここに…?!」
「えーっと……俺は人の付きそいでこのイベントに……ていうかyouちゃんこそ何を…っていうかその恰好…。」
「こ、これはその…!!」
アカギと、そして自分自身の知り合いでもある南郷とイベントでばったり遭遇するというハプニング…。
だがしかし、人の表情などから感情や心境を汲み取る、
そういった洞察力が鋭いというのがこの南郷という男であった…。
彼はyouの表情や言葉に詰まる様子に「ああ、アカギには言ってほしくないのだろう」ということを察する。
故に、南郷は優しく彼女に笑みを向けた。
「察するに、手伝いで駆り出されたって事なんだろう?」
「う…そうなんです…。」
「大丈夫、アカギには内緒にしとくよ。」
「な、南郷さん…っ!(マジ聖母…!!)」
ぱぁっと目を輝かせて、南郷に多大なる感謝の眼差しを向けるyouだったが、
それは2人のやり取りを偶々傍で見ていたマミヤの一言で一瞬にして崩壊することとなる…。
「え……アカギさん呼んじゃダメだったんですか…?」
「「え・・・?」」
「さっき…休憩ん時に呼んじゃいました…アカギさんっていうか福本荘のグループメッセージで……昨日3人で撮った写真、送って…多分、youさんにも届いてる…。」
「「え。」」
その時、南郷とyouに電流走る。
説明文だけならいざ知らず、この格好のyouの写真を送ったとなると…。
南郷は今までの優しいフォローが一切無かった事のように、
youの両肩にポンっと手を置き「がんばれ」と一言告げてそそくさと撤退していった。
今からでも逃げ出したい!と頭を抱えてしゃがみ込みたいyouだったが、
徐々に忙しくなってきたこの状況がそれを許さず…。
次々とやってくるお客の対応をこなしているうちに、結局福本荘の一同が到着してしまうのだった…。
「・・・。」
「(膝上チャイナドレス……スリット…ゴクリ…。)」
「わ、youさん可愛い!マミヤちゃんも美心さんもよく似合ってます!」
「ほ、本当に着てたんだな……ビックリした。」
マミヤの招集に呼応したのは4人。
それぞれ、アカギ、カイジ、零、そして森田がチャイナドレスで奮闘するyou達の姿を見た感想であった。
「げぇっ?!!」
「キャーっ!カイジ君ッツ?!!」
「おー!来たなメンズー!」
そしてこちらは来訪した福本荘の面々を見てのyou、美心、マミヤの反応。
「いらっしゃい!でも、まさか本当に来るとは思わなかったよ。」
「マミヤちゃん写真ありがとう。面白そうだったから皆で来ちゃった。でも、何だか忙しそうだね…何か手伝おうか?」
「くぅ~、流石零っち……男性用の制服があれば手伝ってってお願いするトコだったよ…残念。」
「次回があれば手伝うね。」
「うん、是非!」
「って、あれ……?youさんは…??」
「あれ??どこだろ。」
マミヤと零が辺りを見回すが周囲にyouの姿が無い。
更に探そうとしたところで、その場にいた美心が「youちゃんならたった今トイレに行ったよ」と居場所を教えてくれた。
「じゃぁ、すぐ戻るね……あ、そうだ、折角皆が来てくれたし、そろそろ交代で休憩入ろう!美心さん先にどうぞ!」
マミヤの提案に美心は歓喜。
「分かった!ありがとう!」と告げるや否や、カイジの腕を引っ掴んだ。
「カイジくん!折角だから一緒にお昼回ろう!!」
「ひっ、な…なんなんなんでっ?!オレ?!!」
「大丈夫、美心が好きなの奢ってあげるから!!」
「お、オレはyouと……っぎゃーー!」
ブツブツ喋るカイジの言葉は一切ぶった切り、行動力の化身と化した美心はカイジの腕を引いて駆け出して行った…。
そんな彼らの背を見つめて、生暖かい目で見送る零と森田…。
「グッバイ、カイジさん……そんな予感はしていたよ、俺…。」
「飯奢ってもらえてよかったな…伊藤…。」
・
・
・
・
一方、こちらはトイレに向かった……否、トイレに一時避難したyou…。
さり気なく美心にだけ小声で「トイレに行ってくるね」と告げ、
イベント会場特有の人混みに紛れて、福本荘の面々……というよりアカギから距離を取った…。
はずだったのだが。
「持ち場から随分離れたトイレ使うんだね。お陰で誰もいなくて空いてたみたいだけど。」
広い会場の中でも奥のエリアにあるトイレを選んで使用し、出てきたところ、youは背後から何気なく声を掛けられた。
「そりゃ折角なんで遠いとこ使って時間稼がないと………ッツ?!!!」
聞き知った声だったため、ナチュラルに返事を返したが、改めてその声がすること自体がオカシイ…と、
気付くと同時にサーっと血の気が引いていく…。
「ヘェ……何のための時間稼ぎ?」
「あ…あ……あか…ぎさっ…!!!」
立ち止まって振り返るや否や、通路の壁にドンッと勢い良く追いやられる。
壁に腕を付かれて、壁とアカギの間に挟まれ、完全に逃げ場を失ってしまったyou…。
「あばばば…来られてたんデスネ。」
「マミヤから写真送られてきた……何かの冗談かと思ったのに、まさか本当にこんな格好してるとはね…。」
「これはその……大変不本意ながら…着る羽目になってしまったというか…。」
「制服なんでしょ、なら仕方ないじゃない。だから別に責めてるワケじゃないよ……似合ってると思うし…。」
「そ、そうですか…。」
てっきりからかわれたり、露出の指摘などから不機嫌な反応をされるとばかり思っていたyouだったが、
意外にもアカギは理解ある反応を示してくれている様子で、緊張が緩み、彼女はホッと小さく安堵の息を吐く…。
いや、安堵したのも束の間。
「けどさ、」と続いたアカギの反意語から不穏なオーラを感じ取るyou…。
「やっぱり気になっちまうよな…。」
「っ…ひっ?!あ、アカギさっ……こんなトコで何っ…誰かに見られたらっ…!!」
「見られないよ。そも、誰も来ないからアンタはココ選んだんだろ……。」
「っ~~!!」
youが逃走できないのを良いことに、アカギは彼女のチャイナドレスのスリットの中に手を差し入れて、太股の外側を撫で、そのまま後ろまで移動して下着越しに尻を鷲掴む…。
突然の刺激に、行き場の無い手がアカギのシャツをぎゅっと掴み、youはビクビクと身を強張らせる。
「ダメじゃない、こんなスリット入ってるのに中、下着だけなの?」
「ん、ちょっと…っ!!」
「ハァ……最悪…。」
「はぁっ?!失礼な?!」
「あんまり前屈みになるなよ?あと、しゃがんだり…。」
「え……も、もしかして気遣ってくれてます…?」
「当たり前だろ……youの下着と裸見るのはオレの役目…。」
「おまわりさんこの人です。」
いつものアカギのセクハラ発言にハッと我に返ったyou。
ちゃんとツッコミを入れた後、意識をハッキリ取り戻し、未だ尻を鷲掴むアカギの手をスカートから取り除いた。
ちゃんと怒った顔をしてアカギをジロリと見上げるも、アカギにとってみれば可愛いだけで1ミリも怖くないワケで…。
「もうっ、そろそろ忙しくなるから戻りますんで、退いてもらっていいですか?」
「残念、もっとその格好のyouと一緒にいたかったけど……マミヤと坂崎さんには迷惑掛けれないしな。」
「い、意外に素直…。」
「あ?」
「何でもありませんっ!!」
「あ、そうそう、オレはもう帰るから、カイジさん達にそう言っといて。」
「えっ?もう?」
「うん。目的はyouのコスプ……制服見るだけだったし、イベント興味無いし、それに…。」
「?」
「オレ以外の男に給仕してるyou見るのとか、暴れ散らかしそう……冗談だけど。」
「是非お帰りになられてください。」
仮にどうしても気に食わない相手がもしいたとして、アカギに限ってその場で暴れるなどということは無いだろうが、
夜道の辻斬り、或いは雀荘に連れ込んで毟りに毟るなんてことはありそうだ…と、考えてしまうyouであった…。
結局、アカギの意思は変わらないようなので、youはイベント会場の玄関まで見送ると伝えようとしたのだが…。
「と、兎に角、玄関まで見送りますよ…。」
「ん、ありがと。でもいいよ、忙しそうだったし、このまま持ち場に戻りな。」
「そうですか……あ、あの…わざわざご足労いただいたことは何と言いますか……ありがとうございます。」
「フフ…どういたしまして。」
不純な動機ではあるものの、ただ「君に会いに来ただけ」と言われてしまえば、
大した持て成しもできずに申し訳ない気持ちも湧き上がるわけで…。
せめて感謝だけでも伝えねば…と、youは綺麗な一礼をアカギに贈った。
「あ、そうだ……忘れるとこだった。」
「え?」
廊下を歩き出そうとした次の瞬間、ピタリと立ち止まったアカギ。
それに対して、どうしたのかと、小首を傾げたのが良くなかった…。
彼はそのまま再びyouをくるりと振り返り、その隙間の空いた首筋に唇を寄せた。
「痛ッ…?!」
「・・・これでよし。」
「?今何か……。」
「ま、虫除け程度にはなるデショ。」
「はい?」
「じゃ、また。」
「えっ?あ、はい!お気を付けて!」
ヒラヒラと軽く手を振って去っていくアカギの背中に向かってブンブンを手を振るyou。
その背中が人混みに消えてしまった後、youにはドッと疲れと安堵が押し寄せて、深々と溜息を吐く。
「はぁ~~……アカギさん、色々と分からな過ぎてやっぱり緊張する~…。」
本音を言えばこのままのんびり持ち場に戻りたかったが、そうもいかず…。
youはペチペチと両頬を叩いて気を取り直し、急いでマミヤ達の元へと駆け戻った…。
・
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・
・
「マミヤちゃんごめん、遅くなった!」
「youさん、良かったー!今美心さんにお昼回してもらったから、1人になっちゃって!ブースに出来上がりがあるから、配膳お願いー!」
「分かった!!」
店に戻ると、youが手洗い(という名の逃走)に行く前より客が増えており、
マミヤの指示に従って、大急ぎで配膳を行うこととなった。
途中、カイジや零が何処に行ったのかも気にはなったが、仕事を疎かにするわけにもいかず、
一先ずは増えていく客の対応をこなすことを優先することにした。
それから30分程経過した頃…。
まだまだ客は減っていないが、マミヤと2人で安定して料理の提供ができている状態で、
休憩が終わったのであろう美心と、彼女に連れられ、何故か半目のカイジがフードエリアに戻ってきた。
「youちゃん、マミヤちゃん、お・ま・た・せっ!坂崎美心、ただいま戻りましたー!」
「美心ちゃん、おかえり!」
「先に休憩行かせてもらってごめんね、大変だったでしょ?」
「ううん、ひとまず何とか大丈夫!」
youの言葉にマミヤも「うんうん」と頷くので、安堵した様子の美心。
カイジに向って「カイジくん、一緒にご飯食べてくれてありがとう!美心は今からお仕事に戻ります!」と宣言し、持ち場に戻って行った。
「youさん、次お昼どうぞ!」
「え、わたしは後でいいよ、先にマミヤちゃんどうぞ?」
「オレ、言うてもyouさんと美心さんを巻き込んだ張本人、いわば今日のバイトリーダーだし!最後にタイミング見計らって行くよ!」
「でも…。」
「ていうか……あ、ホラ、零君と森田さんちょうど戻ってきたし…カイジも何か具合悪そうだから面倒見てあげてよ。そういうおもてなし?ちょっと苦手だし…。」
「あ、本当だ……。」
マミヤが言う通り、折角なのでイベント会場を見に行っていたであろう零と森田がこちらに戻ってきて、
美心と食事をしたであろうカイジは見るからに顔色が悪い様子…。
「youさん、戻ってたんですね!あ、カイジさんもお帰り~。」
「零くん、森田くんも、お帰り……あ、さっきアカギさんから伝言で、先に帰るって伝えてって言われました。」
「え、そうなの?もう帰った?もう…勝手だなぁ…。」
「全くですよ……はぁ…。」
「ん、youさんもしかして今から休憩?」
「あ!そうなの。よかったら一緒に…。」
「もっちろん!イベント会場の外行ってみた?キッチンカー出てたよ。天気いいし、外で食べない?」
「外か……うん、いいかもしれない。」
森田とイベント会場を見て回り、戻ってきた零からの提案を受け、youも外で食事をすることに賛同する。
着ている服が服なので、本当はあまりブース以外のところに出ていくのも憚られたが、
外に出るのを良しとした理由は、頗る体調の悪そうなカイジを心配してのことだった。
「カイジくん、大丈夫?すごく顔色悪いけど……人混みに酔っちゃった?」
「ぁ……ああ、うん……大丈夫じゃなかったけど…今ちょっと回復中…。」
「わたし今から零くんと森田くんと外でお昼食べようと思うんだけど、カイジくんも外に出ない?屋内だと騒がしくてまた気分悪くなっちゃうんじゃないかと思って…。」
「でっ…出るッツ!!」
「うん、じゃあ皆で外に出ましょうっ!」
youはカイジに笑い掛け、その手を彼へと伸ばす・・。
差し伸べられた手と、その相手を交互に見て、カイジは半泣きで目を輝かせる…。
蚊の鳴くような声で「おぅっ」と返事をして、ぐしぐしと服の袖で涙を拭うと、彼女の手を取って立ち上がった。
一同はそれからイベント会場の外へ出て、いくつか出店されているキッチンカーで思い思いの食べ物を注文し、休憩にちょうど良い木陰にそれらを広げた。
「わ、森田くんのハンバーガー大きい、美味しそう…!」
「ちょっと食うか?」
「ううん、大丈夫!自分のだけで多分お腹いっぱいになっちゃうと思う。」
「そうかぁ?オレyouはもうちょっと食えると思うけど?」
「ちょっと、それどういう意味~?」
「何でもないー。」
森田がyouをからかうのを零もクスクス笑って眺め、
自分も森田と同じキッチンカーで違う種類のハンバーガーを頼んだが、セットのポテトが多いから…と皆でシェアするよう促す。
「こんなにバーガーが大きいと思わなかったから、よかったらポテトは皆で食べない?youさんもカイジさんも、よかったらどうぞ。」
「わ、ポテト美味しそう!いただきます!零くんありがとう。」
youが嬉しそうに零が提供してくれたフライドポテトに手を伸ばし、ぱくりと食べた後、
森田が「ほら、まだ食えるじゃん」と悪戯っぽく笑うので、それに彼女がプンスカ怒ったり…。
そんな様子でワイワイと3人は楽しく食事を終えた。
食後に少し時間が余ったのを確認したところで、
外へ連れ出してからもずっと元気の無いカイジが気になり、youは声を掛ける…。
「カイジくん、本当に大丈夫?」
「ん、ああ……大丈夫。気ィ遣わせちまって悪い…。」
「少し横になった方がいいかもね…。」
「いや別にそこまで…。」
「わたしの膝、枕にしていいよ、木陰で横になってたら少し回復するかもだから。どうぞ?」
「え……えぇえ?!」
「な、何?」
「いっ、いいのかッ…?!そんなことして、ひ、膝枕…とかっ!!」
「い、いいけど……あ、もしかして逆?嫌だったら無理には…。」
「よろしくお願いいたしますッツ!!!」
「あ、はい…。」
先程の元気の無さとは打って変わって、大きな声で土下座をするカイジ…。
謝罪したいのか依頼したいのか最早本人も分かっていない状態のようだ。
それからyouが膝枕をしてやってすぐは、真っ赤な顔で鼻の下を伸ばしてニヤついていたカイジ…。
薄い目で零に「カイジさん、キモい…」と指摘されても、全く耳に入ってこない様子。
心地良い風と、木々の木漏れ日、何より好きな相手に膝枕をしてもらうというその圧倒的僥倖と温かさに、
カイジは次第に微睡んでいく…。
「…伊藤、寝ちまったな。」
「寝る前の顔、youさんに見せたかった……マジでただのスケベなオッサンみたいだったよ。ね、森田さん。」
「まぁ、それに関してはある程度同意するな。」
「ですよねー!」
「まぁでも……色々とマジで具合悪くなってるみたいではあったしな……休めて良かったって思ってやろうぜ。」
「それはまぁ……そうなんですけど……オレもyouさんに膝枕してもらいたかった!」
「やっぱそれか。」
ぷく、と頬を膨らませてカイジへの嫉妬を自ら明言する零。
それを聞いて、youと森田は顔を見合わせて笑うのだった。
そんな様子でyouの休憩時間は森田や零とこのイベントに参加する経緯だったり、
この制服に対するマミヤや美心と自分のモチベーションの差の愚痴を聞いてもらったりして過ごした。
時間になったので、カイジの身体を揺さぶって全員で彼を起こす…。
「ん…んあ…?」
「おはよう、カイジくん。体調はどう?」
「you……あ…ああっ!そっか!オレ寝て…。」
ガバっと身体を起こしてyouに向き合うカイジ。
寝起きにも関わらず、少し焦った様子で早口なのは恐らく膝枕が原因であろうとyou以外は思うのだった…。
「わ、悪ィ……重かったよな、オレ結構ガッツリ寝ちまって…脚痛くないか?」
「うん、大丈夫。」
「うう……申し訳ねぇっ!」
「いいよ、それよりカイジくんこそ体調は?」
「戻ったッ!youのお陰で完璧に戻ったッツ!!」
「本当?それならよかった。」
「(神様……ありがとう…ありがとう…!!!)」
「か、カイジくん…泣いてる?」
「ぐすっ、いや……うん、人からこんな心配されたり、優しくされたのって久しぶりだったからさ……サンキュな、you。」
「そ、そう……(泣く程…?)」
カイジの普段の自堕落な生き様を知り得ている人間からすると、親切心を出すのは躊躇うわけで…。
その問題は間違いなくカイジ自身に大いにある。
故に、人から優しくされる機会がなかなか少ない彼の経験の中で
特に好きな相手に優しくされるのは有難さも一際大きいよう…。
顔をくしゃくしゃにしてボロ…ボロ…と涙を零すのであった…。
「とりあえず、休憩もそろそろ終わりそうなのでちょっと早めに仕事に戻るね、わたし。」
「うん、後半も頑張ってね!youさん!」
「皆が興味あるイベントかどうかは分からないけど、折角だから色んなブース回って楽しんでね。」
「うん、ありがと。」
零の感謝の言葉を終わりに、手を振って立ち去ろうとしたyouを、何故か「あっ!ちょい待ち!」と、森田が引き留める。
「森田くん?」
「すっかり忘れてた!写真、撮っていいか、you?」
「え。」
「いや…本当は銀さんもここに来たかったみたいなんだけど、どうしても仕事の都合で抜けられなくてさ。」
「はぁ…。」
「行く前に『折角だから嬢ちゃんのチャイナドレス姿写真に撮ってきてくれや』って言われてたの、忘れてた。」
「ぎ…銀さん…。」
「10枚くらい撮れば満足してくれると思うし、頼むよ。」
「いや割と多ッ!」
「悪い、そこは譲れねぇ……10枚以下じゃ俺が怒られる……多分…。」
恐らく本気で銀二が怒るわけではなく、希望に沿えなかった場合に「何だよ森田、写真はたったこれぽっちかぁ?」と、失望される方が怖いらしい。
渋るyouだったが、そもそも彼女のその特殊な格好を見るためだけにやって来た男たちしか此処にはいないのだ…。
彼女の拒否が罷り通るワケもなく…。
「森田さん、ポージングの指示はおれに任せて!」
「お、おお…助かる?よろしく頼むわ、零。」
どうせポーズ取ってなどと言っても、凡そ彼女の性格的に直立不動かピースサインが関の山だろう…。
それでも撮らせてもらえれば嬉しいのだが、恐らく何かよっぽどのハプニングでも起こらない限り、
彼女が今回のような格好をする機会などそうそう訪れないはず…。
零はそれを見越しており、ちゃっかり自分にも送ってもらうことを念頭に
「どうせならちゃんとしたポートレートになるように!」と先回りして動いたのだ。
時間もそこまで多くは無いため、いちいち零に突っ掛かって文句も言えず、
youは彼に指示を出されるまま、ポーズによっては困り顔で羞恥しつつも十数枚の写真を撮り終えた…。
「ああっ!もう時間!急いで戻らなきゃ!!」
「あっ、じゃぁ最後に皆で写真撮ろうよ!」
「そういえば皆で撮ってない、撮ろう!ちょっと待って!」
皆で一緒に撮るのは抵抗は全く無いようで、それに関してはyouの方から率先して携帯を取り出し、
インカメラで自分たちを撮って「後で皆に送るね!」と…最終的には笑顔で仕事に戻って行った。
そして残された福本メンズ…。
「…森田さん、今撮った写真共有したいです。」
「…右に同じ。」
キリッと森田を振り向く零とカイジ…。
「皆まで言うな。分かってる、任せろ。」
森田までもがキリっと要望に応えると返事を返すのであった…。
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・
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・
youが休憩を終えて戻った頃にはお昼のピークは緩やかに終わりを告げており、
最後の順番で休憩に行ったマミヤが戻ってくる頃にはフードコートエリア自体の客数も落ち着きを取り戻した。
ただ、最終日ということで、最後までコンスタントに客が訪れてはいたため、
休憩もそこそこに夕刻に撤収を終えるまで、you達にはなかなか忙しいバイト体験となったのであった…。
そうしてブースの撤収後、店主から各々に現金でバイト代を手渡される3人…。
「マミヤちゃん、本当に助かったよ!!3人とも可愛いし、特に制服のお陰か、想像以上の来客だったし……感謝の気持ちにバイト代、色付けといたよ!またこういう機会があったらよろしくね!」
「もー、本当だよ!想像以上に忙しいんだもん!もう絶対手伝わない~~!!」
「ははは!」
依頼人の中華料理店の店主から(本人いわく)大入りのバイト代の封筒をマミヤに続いて、youと美心も礼を言って受け取った。
その後、店主とその息子に最寄りの駅まで送ってもらった3人…。
疲れてはいたが、折角臨時のバイト代が入った上、なかなか貴重な経験を共に過ごしたこともあり…。
「仲良し女子、イベント出店側参加……臨時収入ときたらこれはもう……打ち上げしかねーー!!!」
「行くぞーーー☆」
先程まで社内で店主に見せていた疲れたという態度は何処へやら…。
大変元気、大変楽しそうに食事処を探し始めるマミヤ…。
美心も楽しそうにしているため、「体力あるなぁ…」などと若干遠い目で2人を見つめてしまうyouであった。
「あっ、そうだ……言い忘れてた!!あのあね、youさん、美心さん!!」
「「?」」
「今回は本当にありがとう!!と、こんなに忙しいと思わなかったから、巻き込んじゃってゴメン……でも、もっとごめんなのは……オレ、今日2人と過ごせて大変だったけど、すっごく楽しかった…!だからその……もし、また……うぅ…やっぱダメだよね…。」
朗々と感謝の言葉を告げたかと思えば、次第に眉根を寄せて謝罪モードに入ったマミヤ…。
youと美心が大変そうに仕事をしている姿を見て、申し訳なく思ってしまう気持ちがどうしても感謝を凌駕してしまったようだ…。
そんな彼女を見て、お互い顔を見合わせるyouと美心…。
くすっと笑い合った後、youはマミヤの頭をぽんぽんと優しく撫で、美心は彼女にぎゅうっと抱き着いた。
「マミヤちゃんがまた何か困ることがあったら相談してね、協力する。3人でお仕事できて楽しかったよ、ありがとう。」
「youちゃんの言う通りなんだぞ!美心もすっごい楽しかった!チャイナドレスも着れたし、しかもまさかのカイジくん…達に見てもらえたしッ!!」
「今回の依頼でチャイナドレスさえなければと思ったわたしはそこはノーコメントだよ…美心ちゃん…。」
「えぇ~~?」
「だって、わたしはチャイナドレス似合ってなかったから大丈夫だったけど、マミヤちゃんも美心ちゃんも気付いたら男の人にすっごい引き留められてたから、ハラハラしてたんだよ!」
「「・・・。」」
げんなりと、自分のチャイナドレス姿を思い出して意気消沈した後、
更には、自分の問題だけではない、とマミヤと美心に告げるyou…。
彼女のその発言を聞き、今度は抱き着き合ったままのマミヤと美心が顔を見合わせてボソボソと何か相談をする…。
「(どうするマミヤちゃん…言った方がいい?)」
「(ていうか多分気付いてないよね?)」
「(言ったら怒られないかな…?)」
「(いんじゃないっすか?怒られるのオレらじゃないし?)」
「あー…えっと……youちゃんが男の人に声掛けられなかったのって、その……多分、似合ってないとかじゃなくて……首の、それじゃない?」
「チャイナドレスの時はちょっと襟のあたり隠れ気味だったけど……今めっちゃ目立つね。」
「それ…昨日無かったよね…?」
「犯人アカギさん?」
「男が数多寄ってくるのを見越して牽制してくれるなんて、素敵……美心羨ましいんだぞっ!」
「着替えの時気付かなかった?はいこれ、鏡。」
ぽす…と、マミヤが自身のショルダーバッグからコンパクトミラーを取り出してyouに手渡し、
彼女は不思議そうに鏡に映る自分の姿を確認したのだが…。
「な、な、な………何これぇえええ!!!」
首筋にガッツリ付けられた欝血痕……まぁ、所謂キスマーク。
それは、掻きむしった、蚊に刺された…等では誤魔化のきかないくらいの代物で…。
youは本日の記憶を呼び起こし、アカギとの邂逅で起こった違和感に辿り着く…。
『痛ッ…?!』
『・・・これでよし。』
『?今何か……。』
『ま、虫除け程度にはなるデショ。』
『はい?』
「あれか!!!」
「あ、何か思い当たったみたい。」
「逆に何でそんなの失念できるん、youさん…。」
「まぁ、今日ずっと慌ただしかったから…。」
怒りに打ち震えるyouを見て、マミヤと美心が各々の感想を呟く…。
「美心ちゃん……マミヤちゃん……。」
「「はっ、はいっ?!」」
「わたし……今日飲むから……潰れたら、よろしく。」
「「わ、わかりました…。」」
打ち上げという場を借りて、ヤケ酒を煽る宣言をするyou…。
この後どうやって彼女の怒りを鎮め、楽しい女子会にするにはどうすればいいのか…。
店を決める前に模索し始めるマミヤと美心なのであった…。
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数日後…。
「you!」
「銀さん、こんにちわ。」
「おう、こんにちわ。今日は休みか?」
「あ、はい。もう少ししたら夕飯の買い物行こうかなって。それまで暇を持て余してたので散歩してました。」
「あー・・・じゃぁ、悪いが小一時間ほど、嬢ちゃんの時間を俺にくれねェか?」
「え??別にそれは…全然構いませんが。」
福本荘の近くの公園でyouがばったり会ったのは平井銀二…。
少し時間が欲しいというので、掃除か何かの手伝いだろうかと、youは小首を傾げながらも彼の相談を受諾する。
「場所はどこでもいいんだ、俺んとこでも、嬢ちゃんとこでも、この公園だって構わんのだが…。」
「今日は風も天気もちょうどいいし、そこのベンチでお話なんてどうでしょう。」
「ああ、いいね。」
程よく木陰になっているベンチに2人で腰掛け、youは銀二に目的を問う。
「銀さん、これから何を…。」
「膝枕。」
「え?」
「伊藤の……カイジのヤツにはやってあげたんだろ?」
「え、え、……え?」
「こないだのイベントだ。森田からアンタのチャイナ服の写真を見せてもらったぞ。」
「ぎゃぁああ!!」
「良く撮れてたし、可愛かった。」
「やめてください黒歴史ぃいい!!」
「休憩でこれ撮った時の話、その前に具合悪いカイジにアンタが膝枕してやったって聞いてな…。」
「は、はぁ…。」
「俺は会いに行けなかったからな。」
「銀さん…。」
少しだけ憂いを帯びた表情はyouの罪悪感と女心を揺り動かすには十分過ぎる効果があり、
ハッと気付けば、ベンチに座っている自分の太股の上にいつの間にか銀二が頭を預けていた。
「ぎぎぎぎ銀さん?!!」
「あー……うん、いいな、こりゃいいな…クセになちまいそうだ。」
「もう、何言ってるんですか…。」
「俺だけ生のチャイナ見れなかったんだ、ここで会ったのも何かの縁だし、ちょっとくらいお前さんを独り占めさせてくれよ、な?」
「銀さんいつもクレバーでダンディーなのに、たまにオフの時可愛くなるのギャップあり過ぎて困る…。」
「別にオフじゃなくて、こういうのはyouといる時だけだぞ?」
「!!」
「そういう顔させたくてやってんだよ。」
そう言ってニッと口角を上げたあと、素直に「おやすみ」と呟いて目を閉じた銀二。
周囲の人間公認のイケオジである平井銀二の破壊力ある言葉に戸惑わないワケもなく…。
結局、銀二が自分で起きるまで、その場でずっと顔を赤くして膝枕を提供し続ける羽目になるyouなのであった…。
美味しいトコロは
フィクサーが攫っていきました!
零「あ、森田さんからだー!グループSMSにイベントの時の写真フォルダ作ってくれたみたい。」
カイジ「お、本当だ。」
零「何で新しいグループ……あ、これyouさん入ってない。」
カイジ「まぁ、you入れてたらフォルダごと自分の写真消すだろうしな…。」
零「確かに……それにしても眼福だなぁ、youさんのチャイナ!この恥ずかしそうに手でスカート押さえてるのとか…。」
カイジ「激しく同意。」
零「とりあえず自分のに保存しよ。」
カイジ「おれも。」
零「ん………ちょっと待って、ちょっと待って。」
カイジ「ん?」
零「何やってんの森田さん!!何でグループメンバーにアカギさん入れてんの!!」
カイジ「あ?あぁあああ!」
零「こういう時にアカギさん出し抜かないでどうすんの!森田さん何あの人、聖人?!」
カイジ「ア、アカギが気付かないうちに、早いとこメンバーから削除を…。」
零「カイジさん、早く、早くッ!」
カイジ「よし!メンバーから削……」
カイジ・零「「ギャーーーー!!全員既読ついたーーー!!」」
words from:yu-a
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